西尾潤のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これは、なんとも驚いたという…。
なんて言ったらいいのか、すべてが予想外のことで。
まぁ、何を予想して読んでたか、と言うのもおかしな話しなんだけど。
とにかくゆる〜い老後の話ではなく、かと言って慎ましく生活を切り詰めて、という堅実に生きる話でもなかったわけで…。
梨元ちとせ73歳は、同僚の古田中栄75歳と同じ職場の坂田パーキングエリアに膝の痛みを抱えながら通っている。
年金も医療保険もないひとり暮らしで老骨に鞭打って働き続けなければならない毎日である。
この職場の駐車場の車の中で遺体が見つかったあと次々と起こる出来事。
そのうち死亡した元夫の保険金が入るかもしれないと連絡が来てから思わぬ悪事に巻き込まれてゆく。
酷い顛末になるのだが、警察が来てどうの…ということがまったくなくて展開するのにもびっくりなんだが。
彼女の罪は、溶けたのか⁇
あらゆる意味で不可解だったが、夢中で読んでしまったことで★が多くなった。 -
Posted by ブクログ
高校卒業後に就職した会社で職場いじめに遭い、わずか1年で退職した真瑠子は、バイト先で知り合った男に誘われ、高級磁気マットレスを扱うネットワークビジネスの世界に飛び込む。姉と比べられて育った彼女にとって、そこは初めて自分が認められる場所だった。
最大の読みどころは、著者自身の実体験に基づく内側からの描写である。著者は20歳のときにマルチ商法にはまり、巨額の借金を抱えた経験を持つ。勧誘する側にも勧誘される側にも「認められたい」という切実な思いがあり、その心理が当事者の目線で描かれる。外から眺める批判では届かない説得力がある。
読んでいるうちに、読者もいつの間にかその世界に引き込まれていく。セミナーの高揚感や仲間との一体感が生々しく、「自分なら絶対に騙されない」という自信が揺らぐ。そのリアルさこそ、本作が現代の社会問題を見事に描き切っている証だと言えるだろう。 -
Posted by ブクログ
興味本意で読み始めた。
そして自分の反応に驚いた。
なるほど、「ネットワークビジネス」というビジネスのあり方は(自分は絶対にやらないけれど)とても合理的かもしれない…。
会社の平社員として目的意識も見いだせぬままに営業ノルマに泣かされる苦悩よりは、やる気がなければ売らなくてもいいし、やる気があれば育てた上司も含めてみんなで利益を得る、というシステムの方がよほど血が通っていたりもするのではないか。売っている商品そのもので人を深く傷つけている訳でもないし、この仕事にやりがいを見出す人が世の中のどこかにいてもいいんじゃないか?と。
で、読み進めていくうちにゆっくりとゆっくりと、そんな思いを一度でも抱いた自分が馬鹿だったと舌を巻く結果になった。うーん、なるほど、これはたしかに底なし沼だ。
風俗斡旋やドラッグなど、アンダーグラウンドな世界との繋がりを持つ様になったマルコがはたと気づいた時のセリフが、マルチ商法の本質的な恐ろしさを言い得ていた。(詳細は忘れたけど)人の繋がりがビジネスを動かしていくということは、どんな人間と繋がっていくかが全てであり、それをコントロールすることはできない云々…。
嘘が得意で都合の悪いことをすぐに忘れるマルコを好きになることは最後までできなかったけど、それでも最後まで同情、共感、応援させながら読ませてしまう作者の手腕がすごい。
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Posted by ブクログ
タイトルの通り、マルチ商法に関わった女性、真留子(まるこ)がマルチ商法にのめり込み、転落するまでを描いた小説です。
かなりリアルにマルチ商法の恐ろしさを伝えている点ではとても勉強になったし、沢山の方に読んでもらいたい一冊ですが、読後感はあまり良くありません。
ある意味、マルチ商法にはビジネスで必要なチームワーク、教育システム、承認欲求などでメンバーを動かしたり、成長に繋げるためのノウハウが詰まっています。でも、実際にマルチ商法で成功するには、不当に高額な商品を知人に売りつけたり、親戚に売りつけたりするだけでなく、ノルマ達成のために自爆営業を行うなど、かなりリスクの高いビジネスになるんだなということがよく分かります。ここで出てくる主人公も自爆営業のために借金を重ねていて、結局全然稼ぎになっていないのですが、ギャンブルと同じように、借金した分をなんとかしてマルチで回収しようという実態が描かれています。
主人公の真留子はそんな中でも疲弊しながらもなんとかランクを上げ、昇格していくが、それもずっとは続きません。借金がかさんでも、保証人がいるため、自己破産もできず、だんだんと周囲には詐欺集団、暴力団など違法な集団と関わるようになるという後半の転落ぶりはリアルで、恐怖でしかなかったです。
そして、主人公の気持ちは理解しつつも、物語を読む側は客観的に観察してしまうので、あーあーあー、そんなことしたらダメだ・・・と思いながら読んでいました。
最後は真留子自身も詐欺に加担することとなり、被害者でありながら加害者の立場になってしまうのですが、本人が罪悪感を全く持たない、自分が悪いとしっかりと認識できない人なんだな〜と感じる箇所がいくつもあり、なんか救いようのない一面を感じてしまいました。
物語としては面白く、マルチ商法を知らなかった僕としては学びも多い一冊でしたが、なんか、優しい気持ちにさせてくれるような甘々な一冊を口直しに読みたくなりました(笑) -
Posted by ブクログ
「『僕はね、こう考えるんですよ。”幸せ”は心の中で感じるものであって物質じゃない。つまりは脳で感じる”虚構”だとね。でもね、それは究極で言えば、我々ホモサピエンスの進化の歴史でもあるわけです。人類は、愛とか神様とか宗教とか、見えないものを肩じて発展してきた。つまり虚構を肩じて、人間はこの地球上で生き残ってきたんです。飢餓の時も、戦争の時も、流行病の時も。
見えない何かを信じてね。』」p268
マルチ・レベル・マーケティング。
まず、マルチって稼げないだろうから副業的な感じでやっているものだと思っていたので、がっつり仕事としてとらえていることを知らなかった。
不協和認知をなくすためにどんどん身を削っていく。でも、それでも、信じたいものだけを信じる。 -
Posted by ブクログ
人生って、本当にどこでどうなるか分からないものだなぁ…と、改めて感じました。
「マルチにはまる」ということは、これまでの自分の人生では身近に経験したことがなくて、正直、どこか「なぜはまってしまうんだろう?」と思っていた部分もありました。
でも今回、そこに至るまでの出来事や、その時々の気持ちの動きを読んで、「あぁ、こうやって少しずつ引き込まれていってしまうんだ」と、その過程がすごくリアルに伝わってきました。
最初から「マルチにはまろう」と思っている人なんてきっといなくて、その時の環境や人との出会い、自分が置かれている状況、心の隙間だったり、いろいろなものが重なった先にあるんだなぁと。
だからこそ、決して特別な人だけに起こることではなくて、人生のタイミング次第では誰にでも起こり得ることなのかもしれない、と考えさせられました。
知らなかった世界を、単なる結果だけではなく、そこに至るまでの気持ちまで含めて知ることができて、とても印象に残りました。 -
Posted by ブクログ
甲斐に心を揺さぶられているあたりでは、ちとせさんにイライラしたりしたけれど、読み終わってみると、ちとせさんと栄さんの友情というか、絆に感無量になった。シスターフットってわけでもないけど、老女ふたりが懸命にその場その場を立ち回りながら一生懸命頑張っているところに、なんというか尊ささえ感じてしまった。
そしてまさか権田さんがそんな頼れるというか、裏稼業している人だなんて想像もしなかった。まさかまさかで驚いた。権田さんもなんだかんだいい人だった。
この作中で100%の悪もんは甲斐だけで、それがちゃんと成敗されたのもよかったな。
そこで警察じゃなくて隠滅にいっちゃうところが、いつもツッコミ所ではあるんだけど、まぁそうしないと物語が進まないから。こういうときに一緒に隠蔽してくれる栄さんのような人に救われるのかもなぁ。
そういえば、また死んだ姑のなりかわりで年金を不正取得シーンがまた出てきて、原田ひ香といい老年期と貧困を書くときはよくあるシーンなのか?など思った。
章良さんの障害者と痴呆症の親族の車中介護シーンがすごいきつかった。この人も結局罪が暴かれることなく終わったのにも驚いた。
でもこの人は可哀想すぎるものね。ただただいい人で可哀想だからこのまま罪を抱えながら生き続けてほしい。
というか誰の罪も裁かれないのも珍しい。
なぞの清野整備会社と清掃会社もスルーされてしまったのも恐ろしい。 -
Posted by ブクログ
『マルチの子』を読んで
読み始めてまず、以前ニュースで見たマルチ詐欺の若者たちの姿が頭に浮かんだ。主人公を含め、登場する人たちがそのとき見たニュースの若者たちと重なって見えてしまい、最初からずっと、なんともいえない気持ち悪さがあった。
途中では、「いつまでこんなマルチ商法をしている人たちの話を読んでいるんだろう」と思って、もう読むのをやめようかと思ったくらいだ。
特に主人公の口癖である「知らんけど」が妙に印象に残った。その言葉が、彼女の生き方そのものを表しているように感じられて、読んでいて余計に腹が立った。自分で深く考えず、流されるように生きているように見える彼女の姿と、「知らんけど」という言葉が重なって感じられたからだ。
ところが、最後の最後で思いがけない展開が待っていた。そこからは、まるでホラー小説を読んでいるような感覚になった。
あれほど「気持ち悪い」「もう読むのをやめようか」と思っていたのに、読み終わってみれば、結果的には面白かった。嫌悪感を抱きながらも、最後まで読ませてしまう力のある小説だった。