カンバンファのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者の短編集である「この世界からは出ていくけれど」、「わたしたちが光の速さで進めないなら」がとても面白くて、長編も読んでみたいと思い手に取った。
私はキムチョヨプさんの描く文章や世界観、人の心の温かさや愛情深さがとても好きなので、この本も総じて好きだし、好きな作家さんだと思った。
物語は3人の視点で描かれており、3つの物語が繋がって一つのストーリーになっている。それぞれ短編を読んでいるようでもあり、とても読みやすく一気に読める。
ナオミとアマラ、ジスとレイチェルのお話は、特に面白くて引き込まれた。著者は温かくて切なくてどこか悲しい人の感情を書くのが上手だと思う。
あと、著者あとがきの中の「わたしたちがすでに深く介入してしまった、後戻りできない、けれど今後も住み続けなければならないこの地球」、「とうてい愛せそうにない世界を前にしながらも、最後にはこれを立て直そうと決心する人々」という表現が心に刺さった。
ただ短編集にはあった、簡潔で無駄がないのに起承転結がはっきりしている点や、SFならではのワクワクする設定や気持ち、驚きが詰まっている点などの長所が損なわれてしまっていたと感じ、少し残念だった。
丁寧に全ての伏線を回収しようとしすぎて、終盤が冗長になってしまっている感じがした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ私の中で起きてた韓国エッセイブームだった頃、見かけて読んでみたいと思ったまま、時が経ってしまった。見つけたので、読んだ。
p53
内向的な人は、自分お不満を他人にぶつける時のプレッシャーに耐えられない。また、その不満をあらわにする自分自身もストレスになる。
p85
成功しているとは言えない自分の人生を悲しむことも、他人の人生が成功か不成功かをむやみに決めつけることもない。“他人から見た成功”=人生の成功では無いことを、人生の節目節目で実感しているからだ。
ずっと内向的な人間はこうとああだこうだと書いてある。だからと言って、外向的がこうだから内向的は大変なんだ苦労してるんだのような被害者意識がバリバリみたいなことを書いてあるわけではないので、面白い。
共感できるところもあれば、そういうのもあるのかと思った。
世の中いろんな人がいる -
Posted by ブクログ
ネタバレ韓国発、ダークツーリズムにスポットライトを当てた中編小説。
災害地を訪れるツアープログラマーのコ・ヨナ。
弱肉強食、栄枯盛衰の職場でそれなりの地位を得ていたものの、いつの間にか落ち目の扱いを受ける日々に浴していることに気付く。
嫌気が昂じて退職願いを出すも、表向きは出張扱い半ば慰労休暇の、廃止候補ツアーに自ら参加し商品としての存続可否のジャッジを下す任を受け入れ、その決断を先延ばしにする。
訪れた先で直面する観光地の虚構と欺瞞にまみれながらの生存戦略。
いつしか災害の捏造に加担することに。。
ミステリと謳われてはいるものの、謎という謎が現れるわけではなく、打ちひしがれたヨナの心情を抱えながら、その命運を辿るサスペンスのような、むしろ純文学のような趣きさえある。
にわかに現実感のない展開や、終盤のふわふわとした意識の流れと事実が混濁した描きぶりの地に足の着かなさはディストピア小説のようでもあり、少なくともミステリとは思えない何とも言えない読み心地だった。
2021年、CWA(英国推理作家協会)トランスレーションダガー賞受賞作。
著者あとがきに記された年(本国での発行年?)は2013年。
ゴールドダガーとかシルバーダガーはよく耳にするけれど、トランスレーションダガーは初耳だったのでちょっとググってみたら2019年には『新参者』が、2022年には『マリアビートル』がノミネートされていた!!
また、過去の受賞作を見るとピエール・ルメートルだったり、ヘニング・マンケルだったりがあり、こちらから見ると海外小説としていっしょくたになってしまうものが、英語圏からは翻訳小説として扱われていることに、当たり前といえば当たり前なのだが、新鮮な感覚を得た。
なお、アジア圏でのトランスレーションダガー賞受賞は本作が初とのこと。
日本勢も惜しかったねー。 -
Posted by ブクログ
271ページ、オールカラーで優しいタッチの絵に癒されます。作者は韓国のコピーライターで、日本人とは違う、独特の感性が表現されています。
1センチ見方を変えるだけで、世界は180度違って見える。たしかに。例えば、空色って、どんな色?
夕日の赤、曇りのグレー、真夜中の黒、どれも正解。水色は先入観。
じゃんけん、ババ抜き、長電話、かくれんぼ、1人でできないこと。1番すてきな1人でできないことは、愛し合うこと。
私を苦しめる人にも、その人を苦しめるものが絶対ある。もしかしたら、それは私が感じる以上の苦しみかも。
辛い時、自分自身に返ってくるのは、それまで生きてきた姿そのもの。
自分を苦しめるのは大体は現実じゃなくて想像。
疲れるのは、本当はやりたくないことをしているから。愛する人とのデートは疲れない。徹夜したってぜんぜん疲れない大好きを探してみよう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ血の臭いで目覚めるとそこには母の死体があり…というサイコサスペンス。
舞台はほぼずっと家とその周辺だけで、登場人物も身内だけ。
目覚めたとき前夜の記憶がなく、なぜこんなことになってしまったのか過去を振り返りながら徐々に真相が明らかになっていく…というような展開。
もっとアッといわせる展開かと思っていたけど、序盤からこうなるのでは?と想定していた展開とラストだったのでちょっと肩透かしをくらったような気にはなった。
部分部分で手に汗握る展開にはなるけどすこし薄かったように思う。
派手なハラハラドキドキを求めるている人より、サイコパスの思考に添って淡々と読み進めるのが好きな人に向いてる話かも。
最後のあたりは『太陽がいっぱい』をなんとなく思い出した。 -
Posted by ブクログ
朝、目を覚ますと、母親が首を切られ死んでいた。ユジンはその夜、癲癇の抗発作薬を服用していない所為で記憶が曖昧で自分が母親を殺したのでは無いかと思い誰にも助けを求めず思案していたが、ひとまず死体を屋上に隠し母親は旅行で不在という事にする。
ユジンの母親と叔母は、ユジンの父親や長兄が亡くなった事も有り異常な過干渉でユジンはストレスを抱えている上に抗発作薬を服用していない事で気分が高揚し昨晩は、海岸まで散歩に出掛け、帰宅して母親と揉めて剃刀で首を切って殺した様な気がする…
更に今朝のニュースでは、海岸で女性が刃物で殺されたらしいが、ユジンの手には見知らぬピアスが有った。
項を追う毎に、次第に明らかになってゆく殺人者の姿とユジンの苦悩、恐らく大半の読者が想像するであろう犯人像にストーリーはその動機の肉付けをしながら進む。凶悪なのか精神異常なのか何とも言えないが、犯人の生立ちに憐れみと僅かな共感を覚えてしまった。