小野正嗣のレビュー一覧
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ネタバレ父が外傷により一夜にして脳障害を負った身として、「他人事ではない」という心持ちで手に取った本。読んでみると純粋に主人公の体験を追っていた。分かりやすく公正な文章で、瞬間ごとの主人公の心の動きを丁寧に描写している。ドラマに酔うこともないが冷淡でもない、冷静なわけでもない、主観にも客観にも偏らない作者の描写における距離が、この小説に親しみと好感を抱かせた。
私小説、ということで書くのに相当な年月がかかったということだが、この短さにまとめた技術は凄い。
主人公のガールフレンドへの想いが印象的だった。どんなに他を圧するような出来事が起ころうとも、私たちの人生の「他の部分」は引き続きあり続ける。それが大 -
購入済み
世界文学への軽妙な案内
普段読まない世界文学の案内書として購入しました。NHKラジオでの講座を書籍化したものなので、語り口も柔らかく、とても読みやすい一冊です。世界文学と言っても欧米ばかりでなく、アジア系の現代文学も取り上げています。
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自身が生まれた国、育った国、そしていま住んでいる国の3つが同じでない人は、世界にどのくらいいるのだろう。
レバノンで生まれ、内乱を機にフランスへ移住した著者は、事あるごとに「自分をフランス人だと感じるか?それともレバノン人だと感じるか?」という問いを投げかけられ、「その両方だ」と答えているという。そして、いくら「両方だ」と答えても、「自分のいちばん深いところではあなたは何者なのか?」と、問いは更に続き、著者は苛立ちと苦悩を深め、本書を著すに至った。
この問いの裏にあるのは、人の帰属する先はひとつであって、生まれながらに定まっていて変わることなどない、という広く共有された人間観だ。一方、著者は、 -
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読み終えて、「え・・なんで?」って思う。そして何とも表現しがたい何色ともわからない渦がもやもやと広がってくる。そのもやもやの広がりに抵抗したくて、何かを掴みたい思いで後戻りしページをめくる。
外の世界と遮断されてしまったかのような小さな小さな集落で、そこに居るのは村最後の生き残りとも言える校長先生、村でただ一人の子ども かおる、肌の色が違う兄 純、兄妹の父であるトビタカ先生、そしてかおるを教えている杏奈先生。
みんな血が繋がっていないし年代もバラバラで、肌の色さえ違っていたりするのだけれど、それぞれ心に何か暗いものを抱えていて、それ故に善良で優しく明るい。
かおるが連れてきたガイコツジン -
Posted by ブクログ
ありとあらゆる教義も、時代により解釈がかわる。また宗教が歴史を変えるのと同時に、歴史も宗教を変える。たとえばアラブの連帯を目指したナセルは反イスラーム主義であり、1950年代後半において急進的イスラーム主義はアラブ国家の敵とみなされていた。
故にイスラム教徒にとって、宗教的急進主義は決して必然的選択ではない。
精神的な安定への欲求が宗教にもとめられるのは良いが、宗教をアイデンティティや帰属意識の問題から分離しなければ戦争は絶えない。。
グローバル化の普遍性+と画一性−
グローバリゼーションの画一化への不安
1、文化が均一化され、乏しいものとなる(凡庸による画一化)
2、アメリカナイゼーショ -
Posted by ブクログ
読書開始日:2021年8月29日
読書終了日:2021年9月1日
所感
内容や構成は、視点が頻繁に変わるためかなり難解ではあったが、
怒哀表現が完璧だと感じた。
自分が感じたことのある心情が、包み隠さず詳細に描かれていた。
本書は題別で話が進行していくと思っていたが、全てがつながっていくという自分好みの構成。
ただやはり純文学ということもあり複雑で、しっかりとした繋がりは見せてくれない。
ただ人間関係なんてそんなもので、実はつながっていても知らない、気づかない、思い出さないなんてざらだ。
リアルに即していると思う。
ここからは個人的な解釈だが、
さなえは、過去のみっちゃん姉に救いを求めた。
さ