小野正嗣のレビュー一覧

  • ファミリー・ライフ

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    ネタバレ

    父が外傷により一夜にして脳障害を負った身として、「他人事ではない」という心持ちで手に取った本。読んでみると純粋に主人公の体験を追っていた。分かりやすく公正な文章で、瞬間ごとの主人公の心の動きを丁寧に描写している。ドラマに酔うこともないが冷淡でもない、冷静なわけでもない、主観にも客観にも偏らない作者の描写における距離が、この小説に親しみと好感を抱かせた。
    私小説、ということで書くのに相当な年月がかかったということだが、この短さにまとめた技術は凄い。
    主人公のガールフレンドへの想いが印象的だった。どんなに他を圧するような出来事が起ころうとも、私たちの人生の「他の部分」は引き続きあり続ける。それが大

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    2025年01月13日
  • アイデンティティが人を殺す

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    世界の紛争が活発化する今、改めて読まれるべき本。
    アイデンティティは複数の要素の組み合わせであり、どの要素が重要になるかは外部の環境にあわせて大きく変化する。アイデンティティを狭く見るのではなく、広くもっていくこと、全ての人のアイデンティティが尊重されるよう、少数言語の保全に生物多様性のような情熱を傾けるべきであること。とても学びが多い。
    著者は作家で、柔らかく読みやすい文章。200ページにも満たないので挑戦しやすい。多くの人に読まれてほしい。

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    2024年08月03日
  • アイデンティティが人を殺す

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    「アイデンティティが人を殺す」chikumashobo.co.jp/product/978448… 宗教や民族や国家が生む排他性非寛容対立は、日本人には実感が難しいかもだけどスポーツの祭典や国別対抗に必ず現れる強大なナショナリズムが良い例だな(だからわたしは大嫌い) 母語英語に加えてもう1言語を習得するという提言がよかった

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    2023年07月09日
  • 歓待する文学

    購入済み

    世界文学への軽妙な案内

    普段読まない世界文学の案内書として購入しました。NHKラジオでの講座を書籍化したものなので、語り口も柔らかく、とても読みやすい一冊です。世界文学と言っても欧米ばかりでなく、アジア系の現代文学も取り上げています。

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    2022年06月26日
  • 歓待する文学

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    ネタバレ

    よかった。読んだ物もそうでない物もあるが、どちらもフムフム、なるほどーと楽しめた。どの作品もとても丁寧に開かれていく。

    『ヌヌ』はちょっと意外な選書だなと思ったけれど、この小説の怖さも充分なほど伝わってくるし、”歓待”の視点でなぜこれが取り上げられたかも、なるほどーと思う。

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    2022年01月10日
  • 九年前の祈り

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    文体は美しく、情景が湧き上がる。
    短編4つの話の重なり方がとても良い。
    読後に子供の頃の記憶を辿ったような感覚になる。

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    2021年08月13日
  • 九年前の祈り

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    九州の片田舎、離島、カナダ、結婚、離婚というさまざまなキーワードが絡み合いながら、今と9年前の記憶が交錯する。何度読んでもその都度楽しめる。でもちょっと複雑で、読めば読むほど面白くなる作品だと感じた。再読することになりそうだ。

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    2019年08月17日
  • アイデンティティが人を殺す

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    自身が生まれた国、育った国、そしていま住んでいる国の3つが同じでない人は、世界にどのくらいいるのだろう。
    レバノンで生まれ、内乱を機にフランスへ移住した著者は、事あるごとに「自分をフランス人だと感じるか?それともレバノン人だと感じるか?」という問いを投げかけられ、「その両方だ」と答えているという。そして、いくら「両方だ」と答えても、「自分のいちばん深いところではあなたは何者なのか?」と、問いは更に続き、著者は苛立ちと苦悩を深め、本書を著すに至った。
    この問いの裏にあるのは、人の帰属する先はひとつであって、生まれながらに定まっていて変わることなどない、という広く共有された人間観だ。一方、著者は、

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    2019年06月09日
  • ファミリー・ライフ

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    20180304朝日新聞掲載


    おかしなやつにならないと周りの人は気にも留めてくれない
    、グサッときた。

    最後の一文がどう続いていくのか

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    2018年08月28日
  • にぎやかな湾に背負われた船

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    何なんだろう、この感じは。どう形容していいのかわからないが、とても良かった。特に併録されている『水に埋もれる墓』は深く印象に残った。

    その人間と不可分な「土地」というものの残酷さと滑稽さ。ことさらに否定するわけでもなく肯定するわけでもなく。悲しさと優しさ。

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    2016年04月11日
  • 残された者たち

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    読み終えて、「え・・なんで?」って思う。そして何とも表現しがたい何色ともわからない渦がもやもやと広がってくる。そのもやもやの広がりに抵抗したくて、何かを掴みたい思いで後戻りしページをめくる。

    外の世界と遮断されてしまったかのような小さな小さな集落で、そこに居るのは村最後の生き残りとも言える校長先生、村でただ一人の子ども かおる、肌の色が違う兄 純、兄妹の父であるトビタカ先生、そしてかおるを教えている杏奈先生。

    みんな血が繋がっていないし年代もバラバラで、肌の色さえ違っていたりするのだけれど、それぞれ心に何か暗いものを抱えていて、それ故に善良で優しく明るい。

    かおるが連れてきたガイコツジン

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    2015年06月28日
  • ファミリー・ライフ

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    ネタバレ

    インドからアメリカに家族で移住した著者の実体験に基づく小説。

    夏のプールでの事故により要介護状態となった兄。
    父はお酒に溺れて依存症に、母は何かすがりつくものを求めたりしている。
    主人公は現状を受け入れなければと思い、もがいている。

    どうなるのかはらはらしたが、最終的には良い方向になってホッとした。

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    2025年05月12日
  • アイデンティティが人を殺す

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    世の中がアメリカナイズされていくと便利な一方で、個性が消えるというのが共感。
    日本も文化を大事にすべきだし、伝統文化に対して、維持・保護に金をかけるべき。
    唯一の自分を見失わないようにしたい。

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    2025年05月06日
  • あわいに開かれて

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    詩的で素敵な表現がたくさん。
    とても短い短編集で、どれも基本的に淡くぼかしたようなラスト。
    考える余地が多め。詩人や戦争の話はよく出てきた。
    ただやはりなんだか淡く夢の中のような感覚があるので、読んでいると眠くなる〜
    3日くらいかけて読んだが、何度か寝落ちした…。
    それもまた良い体験で、改めて少しずつ寝る前などに読み返したいなと思えるお話だった。

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    2024年01月17日
  • アイデンティティが人を殺す

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    ありとあらゆる教義も、時代により解釈がかわる。また宗教が歴史を変えるのと同時に、歴史も宗教を変える。たとえばアラブの連帯を目指したナセルは反イスラーム主義であり、1950年代後半において急進的イスラーム主義はアラブ国家の敵とみなされていた。
    故にイスラム教徒にとって、宗教的急進主義は決して必然的選択ではない。

    精神的な安定への欲求が宗教にもとめられるのは良いが、宗教をアイデンティティや帰属意識の問題から分離しなければ戦争は絶えない。。

    グローバル化の普遍性+と画一性−
    グローバリゼーションの画一化への不安
    1、文化が均一化され、乏しいものとなる(凡庸による画一化)
    2、アメリカナイゼーショ

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    2021年12月08日
  • 九年前の祈り

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    NHK日曜美術館で朴訥としゃべる小野正嗣さんの芥川賞受賞作「9年前の祈り」とその続編。妻が面白かったと読み終えた後に手に取った小説。大分県の南部、過疎の集落に息づく人々と異人まれびととの交流を描く。そこに小野さんの兄おそらく軽度の知的障害がある方を「タイコー」として織り込んでいく。人が住まなくなっていく地域を今現在として描いていくローカルでありながら、地域を超えた私の生きる今につながる空間として実感させる作品であった。今後も小野さんの作品を読み続けていこうと思った。

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    2021年11月25日
  • アイデンティティが人を殺す

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    唯一の本質としてのアイデンティティがいかに差別、分断、争いを生むかを自らの経験とも照らしながら論じた本。筆者はレバノン生まれのフランス在住ジャーナリストで、まさに加速するグローバル化の中で顕在化する問題に踏み込んでいる。そしてそれをいかに乗り越え、グローバル化の風に対して帆を向けて良い未来へと進むべきなのか指針を示している。もちろん島国日本も例外ではなく、宗教に馴染みがない人も日本教とでも思いながら読むと大いに参考になるのではないか。

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    2021年11月07日
  • ファミリー・ライフ

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    著者の実体験をもとにした半自伝的小説。プールの事故で寝たきりになってしまった成績優秀だった兄。介護のリアルが淡々と、粛々と物語は進む。表紙の絵も味わい深い。

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    2021年11月02日
  • 九年前の祈り

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    読書開始日:2021年8月29日
    読書終了日:2021年9月1日
    所感
    内容や構成は、視点が頻繁に変わるためかなり難解ではあったが、
    怒哀表現が完璧だと感じた。
    自分が感じたことのある心情が、包み隠さず詳細に描かれていた。
    本書は題別で話が進行していくと思っていたが、全てがつながっていくという自分好みの構成。
    ただやはり純文学ということもあり複雑で、しっかりとした繋がりは見せてくれない。
    ただ人間関係なんてそんなもので、実はつながっていても知らない、気づかない、思い出さないなんてざらだ。
    リアルに即していると思う。
    ここからは個人的な解釈だが、
    さなえは、過去のみっちゃん姉に救いを求めた。

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    2021年09月01日
  • アイデンティティが人を殺す

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    西洋化について考える良いきっかけになったと思う。
    確かに日本もヨーロッパやアメリカの影響を大きく受けていると思う。
    多数が洋服を身につけているし、欧風のカフェやホテルを利用している。
    このくらいの変化なら良いと思うのだが、時として争いや、差別の引き金になってしまうのは残念だと思う。
    それぞれが複数のアイデンティティを持っているという事を忘れないようにしたい。

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    2020年06月09日