同じようなありふれた不幸を経験したものとしては、心から共感できるものだった。
子どもに突然訪れた不幸は、もちろん人生を変えるが、その変わり方は親ときょうだいでは違う。親はとことん悲しみ、必死に状況を良くしようと努力する。生きることの中心が不幸な子どものことになる。が、きょうだいはどこか客観的に見て
...続きを読むしまう。学校に行ってその不幸を一瞬忘れ、楽しく感じたりもする。親がすがるまじない師を滑稽だと思ってしまう。しかし、いつも100%楽しめるということはないし、自分が普通に生きることについての違和感を抱えながら生きることになる。
そのあたりが、本当にリアルに描かれている。
物語にカタルシスを求める人には薦められないが、きっとたくさんの似た経験をした人(訳者もそうだ)には、同じ後ろめたさを感じている人がいることは、救いになるのではないかと思う。
幸いにしてこういう経験はしないで大人になった読者は(あんまりこういう本を読みたくならないような気もするが)、こういう人も自分の身近にきっといる、学校でなんだか嫌なことばっかり言ってた嫌われ者にも、もしかしたら深いわけがあったのかもしれない、と考えてくれたらいいな。