宮崎嶺雄のレビュー一覧
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医師リウーは、ある日鼠の死骸を発見する、その後、円済みは町から姿を消し、猫も同じ道筋を辿った。そのころから、人間には原因不明の熱病者が蔓延することになる。その正体はペストだった。見通しの立たない隔離生活と一方的な「不条理」を押してけられた人間達の行動と心情を描くフィクションである。
まず、驚いたのが新型コロナウイルスが流行したときの状況と似ている描写が多いことだ。あのとき、私はこれから社会の病気に対する意識や生活の変化にほんの少しだが、不安を覚えた。だが、その過程と結末は本書に書いてあったのだとすら思える。それくらい、似通っているエピソードを描いたカミュの洞察力と言語能力に感服する。
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某YouTuberがレビューをしていて気になって購入した一冊
何気ない日常に唐突にやってきて、あっという間に街中の全ての日常を変えていった"ペスト"という病気の中で、現状において①絶望するのか②歓喜するのか③理由付けするのか(陰謀論?)④自分ができることを少しずつでも行っていくのかという内容
今回"コロナ"という病気が世界的に流行った中においても、大きくこの4つに分かれたのではないかなと思う
それ以外にも普段の生活においても、唐突に今まで送っていた環境がガラリと変わることはしょっちゅう起きうることなのだと、その時に自分は上の4つのどれに当てはまるの -
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フランス領アルジェリアの港町オランで、突然ネズミの死骸が街にあふれ、人々は正体不明の病に倒れていく。病名はペスト。町は封鎖され、外界から孤立した住民たちは、それぞれの立場や信念でこの未曾有の災厄に向き合う。医師リウーを中心に、苦悩と希望、葛藤と連帯が交差する中、人々の本性と生き方があらわになっていく。
アルベール・カミュの『ペスト』は、単なるパンデミック小説ではなく、人間の本質をあぶり出す哲学的な物語だ。舞台は閉ざされた町・オラン。突然訪れた死と混乱の中で、人々は選択を迫られる。逃げるか、残るか、信じるか、絶望するか。
登場人物たちの選択はさまざまだ。病に倒れた妻を別の都市に残し、医師とし -
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舞台はフランス、スタンガースン博士が住んでいるグランディエ城の《黄色い部屋》で博士の娘マチルドが何者かに襲われる。部屋は内部から鍵がかけられおり、ドアを壊して踏み込んでみると、そこに犯人の姿はなかった……。
密室の古典ミステリとしては、かなり有名な作品です。
最初の事件だけでなく、その後も庭と廊下といった、状況的密室から犯人が消える事件が続けて起き、密室というキーワードが好きならば、楽しめる……と言いたいところですが、展開に強引さを感じたり、犯人ならこれぐらいはやってのけただろうといった説明で終わらしたりと、引っかかるところはあったものの、全体を通すと楽しんで読めた作品でした。 -
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もったいぶった言い回しや表現が多く、ややくどいように感じますが、
読み進める妨げになるほどではありません。
むしろ、ページ数の多さにしてはさくさくページが進みます。
密室の謎自体は、出版から100年以上経ち、
トリックや伏線を組むのが巧みなミステリー作家の著作も増えた今となっては、
驚くというよりも、そうなんだぁ、という感じでしたが、
キャラクター造詣が巧みで、細かな描写が多く、
まぁ、よくも頭がこんがらがらずに、こんな話を書いたわ!と感心しました。
乱歩先生が選抜するのも頷けます。
解説にもありましたが、この『黄色い部屋の謎』と、続編の『黒衣婦人の香り』は、
ふたつでひとつといってもいい -
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「オペラ座の怪人」で有名なガストン・ルルーの古典的名作。100年も前の密室トリックとしては本当に見事です。逃げ出せるはずのない密室からいなくなってしまった犯人、廊下のT字路で3方向から追いつめたのに消えてしまった犯人…。
ややアンフェアなところやアラもあるとはいえ、伏線もそれなりに回収してるので個人的には満足でした。探偵同士の推理合戦や犯人の意外性など、現在の推理小説に多大な影響を与えた記念碑的作品と言えそう。
18歳の新聞記者である主人公が裁判所で大勢の聴衆の前で謎解きをする場面はまるでアニメ・ゲーム的展開で思わず笑ってしまった。逆転裁判のなるほど君かと。 -
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デフォーのペストの後に拝読。
デフォーのそれがドキュメンタリー的に語られるのに対し、カミュのそれは観念的で、なかなか入り込みにくい感じがした。
カミュのペストが出たのは1947年。第二次世界大戦後の荒廃からどう生きるか模索されていた時期であり、そういう社会情勢を鑑みれば、観念的であるのは当然と言えるだろう。
カミュといえばキリスト教ともコミュニズムからも距離をとった異邦人的な「第三の立場」を思い浮かべるが、その思想がいかんなく表現されている。
現代の私たちはコロナ禍でもネットがあり、コミュニケーションは取れるし、いくらでもエンターテイメントがあったので、多少息苦しさは紛れたが、100 -
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ネタバレペストという不条理に対して、医師、キリスト教者や新聞記者など、さまざまな立場に置かれた人々がそれぞれの善を求めて奮闘する様が描かれている。各人が不条理に立ち上がるその動機が、ただ人が死んでいくからというような簡単なものではなく、それぞれの信念を汲んだ納得のできるものであるところに、分断された社会に生きる我々が希望を感じ得る要素があるのだと思う。限りなく装飾のない現実を反映した文体が、それを可能にしている。
感情的な部分を削ぎ落とした文体で書かれたペストの記録であり、キリスト教者や不条理人などの身近でない考えを持った人がたくさん出てくるので、とっつきにくく感じた。しかしその装飾のない文体の中に