宮崎嶺雄のレビュー一覧
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ネタバレ訳のせいか元の文章のせいなのか判断できないけど、だいぶ読みづらく感じる部分もあったし、中だるみに感じてしまう部分もあって途中気分がのらなかったりもしたけど、終盤は泣ける場面もあり爽やかながらも不穏さの残るラストまで一気読みだった。よかった。
私はドストエフスキーが好きで特にイワンやキリーロフが好きなのだけど、どうもリウーはイワン、タルーはキリーロフ、パヌルーはアリョーシャの影がみえてその部分でもとても楽しめた。
リウーの「子どもたちが責めさいなまれるように作られた世界を愛することはできない」というのはイワンの思想と同じだし、リウーとパヌルー神父の問答はカラマーゾフの兄弟の大審問官に近いものを感じた。
タルーはキリーロフとはそこまで似てると思って読み進めていたわけではないけど、「今こそすべてはよいのだ」と言ったあたりであぁキリーロフの影響を受けてるなと思った。解説にもそのように書いてあったし。
カミュはこの作品を反キリスト教的な作品と言ってたらしいけど、「神の存在いかんに関わらず信仰心のあるパヌルー神父と信仰心のないリウーの行動が結果一致するところが神の存在の無用さを示しているから」というようなことが解説に書かれていて納得した。
タルーとリウーが話す場面や海で泳ぐ場面は、辛くて不条理なことばかり起きるこの小説の中でとても輝いてみえた。
ふたりがペストが落ち着いた世界で普通に友人同士として笑いあえたら良かったのにと思うと切なかった。
ラストはやっと希望がみえるかと思いきや、ふとしたことでまた同じ地獄に叩き込まれるという不穏さがあって、私は好きだった。 -
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フランス領アルジェリアの港町オランで、突然ネズミの死骸が街にあふれ、人々は正体不明の病に倒れていく。病名はペスト。町は封鎖され、外界から孤立した住民たちは、それぞれの立場や信念でこの未曾有の災厄に向き合う。医師リウーを中心に、苦悩と希望、葛藤と連帯が交差する中、人々の本性と生き方があらわになっていく。
アルベール・カミュの『ペスト』は、単なるパンデミック小説ではなく、人間の本質をあぶり出す哲学的な物語だ。舞台は閉ざされた町・オラン。突然訪れた死と混乱の中で、人々は選択を迫られる。逃げるか、残るか、信じるか、絶望するか。
登場人物たちの選択はさまざまだ。病に倒れた妻を別の都市に残し、医師として使命を全うしようとするリウー。死刑を宣告する父を持ち、死とは何かを問い続けるタルー。帰郷できず孤立したランベール記者は当初脱出を望むが、やがて他者のために残る決意をする。また、パンデミックによって逮捕を免れたコタールのように、この異常な状況が終わらないことを願う人物もいる。
そして、信仰の立場から人間の罪を説いていたパヌルー神父は、無垢な子どもの死を前にして言葉を失う。彼の姿から、「正義とは何か」「神とは何か」「意味のある死とは」といった問いが読み手に投げかけられる。
この物語には、絶対的な正しさはない。カミュは登場人物のどれをも批判せず、読者に判断を委ねている。それぞれの信念、それぞれの恐れと希望があり、誰もが何かしらの「正しさ」を抱えている。だからこそリアルで、読み手の心に突き刺さる。
ペストの終息は唐突に訪れるが、リウーは「ペスト菌は決して消え去ったわけではない」と語る。それは病気だけでなく、人間社会が抱える問題、差別や暴力、戦争や不条理にも通じる。カミュは警告する。災厄はいつでも、どこでも、再び現れるのだと。
コロナ禍を経た今読むと、よりいっそう身につまされる。「正義」は一つじゃない。だからこそ、自分なりの正しさを持って、他者とともに生きることの大切さを感じさせてくれる一冊だ。
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舞台はフランス、スタンガースン博士が住んでいるグランディエ城の《黄色い部屋》で博士の娘マチルドが何者かに襲われる。部屋は内部から鍵がかけられおり、ドアを壊して踏み込んでみると、そこに犯人の姿はなかった……。
密室の古典ミステリとしては、かなり有名な作品です。
最初の事件だけでなく、その後も庭と廊下といった、状況的密室から犯人が消える事件が続けて起き、密室というキーワードが好きならば、楽しめる……と言いたいところですが、展開に強引さを感じたり、犯人ならこれぐらいはやってのけただろうといった説明で終わらしたりと、引っかかるところはあったものの、全体を通すと楽しんで読めた作品でした。 -
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もったいぶった言い回しや表現が多く、ややくどいように感じますが、
読み進める妨げになるほどではありません。
むしろ、ページ数の多さにしてはさくさくページが進みます。
密室の謎自体は、出版から100年以上経ち、
トリックや伏線を組むのが巧みなミステリー作家の著作も増えた今となっては、
驚くというよりも、そうなんだぁ、という感じでしたが、
キャラクター造詣が巧みで、細かな描写が多く、
まぁ、よくも頭がこんがらがらずに、こんな話を書いたわ!と感心しました。
乱歩先生が選抜するのも頷けます。
解説にもありましたが、この『黄色い部屋の謎』と、続編の『黒衣婦人の香り』は、
ふたつでひとつといってもいい位に密接した話だそうで、
機会があれば読んでみたいと思いました。 -
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ネタバレ高校生の時読んで感動したけれど、今読んでみて読みづらい。よくこんなの読めたな。
町は出入り禁止になり、埋葬方法が簡略化され、埋葬場所が不足する。埋葬に関わる人の不足を失業者で埋めることになる。ここまでではなかったけれどコロナの時を思い出す。でも皆夜に酒を飲むために集まっている。オペラもやってる。
ランベールは最初は自分無関係なのに、と市から出ることに躍起になっていたが、リウーが病気の妻と離れ離れになっているのに全力で闘っているのを見て心変わりした。
医師なのに「彼の役割はもはや治療することではない、診断することであった。隔離を命ずるためにそこに控えているのであった。」この状況はしんどい。そしてカステル医師が作成した血清に望みを託したが効かず、オトンの息子が長く苦しんで絶叫して亡くなったのを見て、耐えかねたリウーは癇癪を起す。
この少年の死はバヌルー司祭の心も動かした。しかし彼は変節したペスト菌で亡くなったのだろうか?
タルーの考えがよくわからない。犯罪者に対して死刑を求刑する側になりたくない??その犯罪者が相手に対して何をしたかは不問なの?
グランもペストに罹ったけれど生還。徐々に生還率が高くなる。が、「ペストと生とのかけにおいて人間がかちうることができてものは、知識と記憶であった」という結果はシビア。
そして最後にタルーが罹患して死んでしまう。リウーの妻の死も知らされ、この上ない不条理な世界。
コタールはペスト中は逮捕されないし、彼の能力を遺憾なく発揮する機会(密輸)にも恵まれてご機嫌だったけれど、ペスト終息後逮捕された。多分こういう人もいるんだろうな。 -
Posted by ブクログ
コロナを経験してから、読もうと思いつつ今まで読めていなかった。
2020年以降、感染症はとても身近なものになったけれどだからこそ、この本の登場人物にもある種の共感と憐れみをもって挑めた気がする。
とはいえカミュの言い回しは苦手かもしれない!一文がかなり長い上に抽象的(かつ馴染みない言葉での例え)が多いから、なんの話してるか忘れたりすることも。淡々としてる訳ではないけど、かといって大袈裟でもなく、なんか独特の文章な気がした、、初めてのカミュだから、2作目読んだら違う感想を持つかもしれないけれど
淡々とやってくる感染症と、似た温度感で進む物語だった。起承転結なんて分かりきってるわけで、実体験もしてるわけで、じゃあなぜ読むかというと、私の場合は当時を思い出すためだし、リウーが書くのは故人を偲ぶためなのだなと。 -
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ネタバレ新型コロナの流行とともに再注目された作品だが、古い作品だけあり言い回しも難しかったりして、読むのに時間がかかった。しかし日本語としての不自然さはほとんどなく、機微な心の動きを表す比喩などはしっかり翻訳されている感じがわかり、患者が苦しみながら亡くなっていく様子などはあまりに壮絶だった。街が封鎖されて愛する人と引き離される人々の苦悩や、当てのない不安に抑え込まれる街の様子が、時代は違えど現在の世界と重なったのは、歴史は繰り返すということ、また時代が変わっても人間はそうは変わらないということを感じさせた。ペストが収束した駅での人々の再会シーンのような世界がまた来るように願いたい。
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Posted by ブクログ
デフォーのペストの後に拝読。
デフォーのそれがドキュメンタリー的に語られるのに対し、カミュのそれは観念的で、なかなか入り込みにくい感じがした。
カミュのペストが出たのは1947年。第二次世界大戦後の荒廃からどう生きるか模索されていた時期であり、そういう社会情勢を鑑みれば、観念的であるのは当然と言えるだろう。
カミュといえばキリスト教ともコミュニズムからも距離をとった異邦人的な「第三の立場」を思い浮かべるが、その思想がいかんなく表現されている。
現代の私たちはコロナ禍でもネットがあり、コミュニケーションは取れるし、いくらでもエンターテイメントがあったので、多少息苦しさは紛れたが、100年前はもっと陰鬱だったのだろうと思いを馳せた。
再読の価値あり。