斉藤詠一のレビュー一覧
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会社員としての仕事のかたわら、カメラマンとして活動する平山北斗は、学生時代の恩師で、現在も親交のある鳥類学研究室の樫野教授から、『君にいったん預けたいものがある』と頼まれる。しかし教授はその二日後に亡くなってしまう。本当に事故だったのか。教授は何を預けようとしていたのか。北斗は学生時代の友人や恩師の娘らとともに、恩師の遺した謎を追っていく。クメール王朝の遺物の正体とは――。
というのが、物語の導入で、様々な過去の歴史的な出来事が挟み込まれながら、現代を生きる北斗たちは、数奇な運命を辿るクメールの遺物を巡る戦いに巻き込まれていきます。簡潔で的確な文章から立ち上がる美しい情景描写、一筋縄では -
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2018年、突然の電波障害で南極に不時着した遊覧飛行中だったチャーター機。基地との連絡が取れなくなった南極観測隊。そして1945年、戦時下の兵士たちに下された極秘の指令。現在と過去が交互に語られ、見えてくるものは……。圧巻の舞台設定とスケールで描く江戸川乱歩賞受賞作。
この話の最大の謎は、2018年の電波障害と、1945年の戦時下の指令がどうつながるのか、というところなのですが、その謎が明かされるまでの各時代の描写がまず読ませる。
2018年では南極のリアルな描写が見もの。知識的な面はもちろんなのですが、食料や燃料を求め、今は使われていない基地へ向かう描写の迫力はかなりのもの。冒険小説として -
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ヤンキー冒険小説って何? と思いましたが。まさしくヤンキー冒険小説としか言えません(笑)。
高校時代に赤鬼青鬼コンビとして名を馳せた、赤城と青葉。二十数年の時を経て赤城は当時恋した少女・弥生と再会するが、実は彼女は不老不死の力を持った「ランガ」という存在だった。赤城はやがて、ランガ一族の中でも対立のあるとある陰謀に巻き込まれていくことになる。
赤城がとにかく、絵に描いたようなヤンキー。頭は良くて根は真面目なのに、直情径行型のバカというキャラクターが痛快です。赤城と青葉の友情、そして桐ヶ谷とのライバル対決も熱い熱い。ノリの良い展開でとても楽しいです。
一方で不老不死の力を持つランガ達。不老不死と -
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斉藤詠一『レーテーの大河』講談社文庫。
この著者の作品を読むのは『到達不能極』に次いで2作目。
結論から言えば、多少無理があるものの『到達不能極』を凌ぐ面白い小説だった。まずはタイトルの『レーテーの大河』という聞いたことの無い言葉が興味を唆るのだ。また、日本の高度経済成長期である昭和38年から39年を舞台にしているところも面白い。そして、何よりも全編を通じて描かれる壮大な謎と鉄道ミステリーの仕掛けと後半の予想外のアクションシーンが面白い。
昭和20年の満州で帝国陸軍中尉の最上雄介と石原信彦に助けられ、親と離れ離れになりながら、辛くも日本に戻ることが出来た天城耕平、藤代早紀子、小野寺志郎