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Posted by ブクログ
2018年、突然の電波障害で南極に不時着した遊覧飛行中だったチャーター機。基地との連絡が取れなくなった南極観測隊。そして1945年、戦時下の兵士たちに下された極秘の指令。現在と過去が交互に語られ、見えてくるものは……。圧巻の舞台設定とスケールで描く江戸川乱歩賞受賞作。
この話の最大の謎は、2018年の電波障害と、1945年の戦時下の指令がどうつながるのか、というところなのですが、その謎が明かされるまでの各時代の描写がまず読ませる。
2018年では南極のリアルな描写が見もの。知識的な面はもちろんなのですが、食料や燃料を求め、今は使われていない基地へ向かう描写の迫力はかなりのもの。冒険小説としての面白さも持ち合わせている。
一方での1945年でのエピソードは18歳の少年兵を語り手に話が進む。軍事的な部分であったり、航空機の描写などもリアルに描かれているけれども、少年兵の初恋の感情であったり、戦争へのモヤモヤ、同じ部隊の仲間との関係性など、心理描写がみずみずしくそこも良かった。日本兵たちの目的地というのも、かなり荒唐無稽なのだけど、そこも描写がきちんとなされているので、話がすっと入ってくる。
そして二つの話がつながるとき、明らかになるのは全世界を巻き込む大きな危機。ここにきて話はより壮大になり、荒唐無稽さもより増していくのだけど、ここに至るまでの各エピソードや心理描写が詳細かつリアルに描かれているので、個人的にはわりとすんなり受け入れられました。
乱歩賞路線の作品というよりは「このミステリーがすごい!大賞」路線の話かもしれない。なので従来の江戸川乱歩賞を期待していると、だいぶ面食らう展開かもしれません。でも作品自体のパワーや熱量は、これまで読んできた乱歩賞作品とは全く違う方向に振り切られていて、純粋に楽しめました。
今回初収録という「間氷期」は『到達不能極』の登場人物の過去を描いたもの。短編ながらこちらもワールドワイドな舞台と設定で、他の小説家ではあまり読んだことのない路線で面白かった。
そして『到達不能極』も「間氷期」も単にスケールの大きい娯楽作というわけでなく、今の世界や社会が抱える問題に切り込んでいるあたりも印象として良かったです。
著者の斉藤詠一さんが、今後どんな路線で作品を書いていくのかはわからないけど、この路線、この完成度の作品が続いていくなら、解説にある通りミステリ史に偉大な足跡を残す作家さんになる可能性も十二分に感じます。それだけスケールの大きさを感じる作品でした。
第64回江戸川乱歩賞
Posted by ブクログ
斉藤詠一『到達不能極』講談社文庫。
第64回江戸川乱歩賞受賞作。
2018年の南極大陸と1945年のペナン島の日本陸軍とを交互に描きながら、南極大陸の『到達不能極』の謎を描いたSFミステリー小説。期待を大きく裏切る凡作だった。そして、ついでに収録された表題作のスピンオフ『間氷期』も、さらに傷口を広げたばかりという有り様。この種の小説の場合、決定的な何かを描かないと迫力が出て来ない。
2018年に南極大陸を遊覧中に通信障害とシステムダウンで不時着を余儀無くされたチャーター機。チャーター機に乗っていたツアーコンダクターの望月拓海は、アメリカ海軍特殊部隊のランディ・ベイカーと共に物資を求め、『到達不能極』基地を目指す。1945年にナチスドイツが南極大陸で秘密裏に行っていた実験とは……
本体価格840円
★★★
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小説・文芸
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