なかにし礼のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
キャッチコピー「反戦とエロスの孤高の巨星」を実感。テレビでしか知らないが、歌謡曲の作詞家というより得体知れない危険人物だと思っていたが、予想を遥かに超えていた。若い頃、7人の女性とかわるがわる遊んでいたが面倒になり一軒家に住まわせて暮らしていた話に笑ったが、人間的な妖しい魅力と構えが昔から尋常で無かったのだろう。
特に唸ったのは、小林秀雄が戦争協力者であり狡猾な人物と見抜けなかった自己の愚かさへの言及、加藤周一の天皇制批判と『九条の会』への賛同、そして平成天皇の政権に対する抵抗を評価しつつ平和憲法の尊重と遵守の表明。芸能の中心人物が音楽はもちろん文学、絵画、映画演劇を縦横に論じ、その根底で正し -
Posted by ブクログ
何だか怖くて近寄り難い作者の『芸能の不思議な力』(なかにし礼著:毎日出版社)読む。そう感じていたのは類い希な『観察者』だったからだ。
「絶望を抱えた歌姫が至高の性愛を歌う。悲しみもだえる者が星と輝く。虚と実の間にいちばん深い喜びが花開く---。」、美空ひばりというのは、そういう芸能の天才だったのか。作者はこういう角度で才能を凝視しピタリと表現する。思想的な言説が時にあるが実に真っ当。左翼と言うのは当たらない。世情が右回転しているからそう思えるとしたら腹立たしい、直球ど真ん中勝負の平和主義、実に嬉しい。表紙で迷ったが、読んでよかった。
美輪明宏、黒柳徹子、黒澤明、高島礼子、大竹しのぶ、北島三郎 -
Posted by ブクログ
ネタバレなかにし礼さんが時代に対して積極的に発言されていることは、何度か見聞きしたことがあったが、こんなに直接的に思いを綴った詩集をだしていられたとは知らなかった。
タイトルにもなっている、最初に掲載された詩「平和の申し子たちへ! 泣きながら抵抗を始めよう」は、「2014年7月1日火曜日」から始まる。
この日は「集団的自衛権が閣議決定された」日。「平和憲法は粉砕された/つまり君たち若者もまた/圧殺されたのである/こんな憲法違反にたいして/最高裁はなんの文句も言わない」「どんな時代よりも禍々しい/暗黒時代へともどっていく」と激烈な言葉で、でも、真実の言葉で、メッセージを発している。
こんな、真当なメッセ -
Posted by ブクログ
内容(「BOOK」データベースより)
自分が拾われたのは戦場だったということ以外、両親の名前も、自分が何人であるかもニーナには分からない。しかしロシアへ遺骨収集に訪れたフクシマとの出会いが、ニーナに流れる日本人の血のルーツを呼び覚ました。エカテリンブルグから日本へ、ただひとりのロシア残留孤児ニーナの、魂が震える究極の愛の物語。
残留孤児と言えば中国ですが、この本はソビエトです。第二次世界大戦の中国で全滅した日本軍の残骸から発見された幼い少女。ソビエトの将校に助けられ新たな人生を得ると共に、自分を見つけ出す為の長い長い旅が始まったのでありました。
何度も変わる養父母、顔に残る傷、民族の違いによ -
Posted by ブクログ
なかにし礼を知ったのは『哀愁のシンフォニー』(キャンディーズ)の作詞家としてですので、もう40年くらい前でしょうか。
細川たかしの『北酒場』や北島三郎の『まつり』など、大好きな歌をたくさん作詞してくださっています。
本書は、そんな なかにし礼が2012年に食道がんになり、陽子線治療で完治した話です。
なかにし礼は翻訳家&小説家でもあるので(完治したという結果を知っていても)とても面白いです。
本書のポイントは、
・iPadで本人と奥様が情報収集に努めた
・標準医療ってなんだろう
・治ったよ
です。
まず、「iPadで情報収集」ですが、本当に良い世の中になったものです。
私も、自分 -
Posted by ブクログ
ネタバレ血の歌
著者:なかにし礼
発行:2021年12月25日
毎日新聞出版
初出:サンデー毎日2021年12月26日号、2022年1月2・9日合併号
謎の歌手、森谷王子(もりやおうじ)は私の娘なのです。私の二番目の娘、美納子なのです。
そう言いたい衝動にしばしば駆られるが、中西正一はこらえる。
(中略)
王子の歌う「ぼくの失敗」という歌が、テレビの金曜ドラマ「教師の恋」の主題歌に採用され、番組の高視聴率とともに、王子の歌も爆発的に売れはじめた。
「森谷王子」を「森田童子」に置き換えるとすぐ分かる。
「ぼくの失敗」は「ぼくたちの失敗」であり、「教師の恋」は「高校教師」であることが。
謎のシンガ -
Posted by ブクログ
かの衝撃作『兄弟』のスピンオフか続編のようなものかなと思いきや、『兄弟』の習作として書かれた遺稿なのですね。これは意外でした。だからなるほど、主人公は“王子“というより正一なわけか…。先日SNSで知り早速読みました。他のレビューサイトでは、薄いとか高いというコメントを見かけますが、抱き合わせる小説があるわけでなし…仕方ないかなと。世に出してくれてありがたいです。星1つ減は、著者が出版を望んでいたのかわからない(「あとがき」を読むに、恐らく望んでたと思うけど)からだけです。頁数は少なくても中身は濃いです。ドラマは3回観た私。どうしても礼三と正一は、私の頭の中でトヨエツとたけしに置き換わってしまい
-
Posted by ブクログ
三つの短篇集。
どれも深すぎず浅すぎず、ちょっと昭和の匂いがする。
遺言歌は遺言を歌の様にという意味なのかと勝手に思い読み始める。
無言歌というメンデルスゾーンの曲集を想像するが
それとも違い少し渡辺淳一チックだ。
奥様の冒険は、それは大冒険笑笑
突然隣にカラオケ教室が出来たら誰だって嫌だよな。
静かに過ごしたくても音が漏れるから心の平穏って保てなくなる。
そんなご近所物語なんだけど、これからの展開はホント冒険。
ベル・エポックは銀座のシャンソン物語でお店の閉店にまつわるお話。
業界を離れる人もいれば、なんとか業界でやってる人もいる。
歳を重ねて時代の移り変わりが駆け抜けて。
ちょっぴり