なかにし礼のレビュー一覧
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キャッチコピー「反戦とエロスの孤高の巨星」を実感。テレビでしか知らないが、歌謡曲の作詞家というより得体知れない危険人物だと思っていたが、予想を遥かに超えていた。若い頃、7人の女性とかわるがわる遊んでいたが面倒になり一軒家に住まわせて暮らしていた話に笑ったが、人間的な妖しい魅力と構えが昔から尋常で無かったのだろう。
特に唸ったのは、小林秀雄が戦争協力者であり狡猾な人物と見抜けなかった自己の愚かさへの言及、加藤周一の天皇制批判と『九条の会』への賛同、そして平成天皇の政権に対する抵抗を評価しつつ平和憲法の尊重と遵守の表明。芸能の中心人物が音楽はもちろん文学、絵画、映画演劇を縦横に論じ、その根底で正しい政治ときっちり通じている嬉しさは格別。そして、選び抜いた言葉がとてもわかりやすい。素直で親切な人だ。前にも書いたが、愛という感情を魂の行為と言い切る、わかったようでわからない標題(笑)が読後もさまよい続けている。 -
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何だか怖くて近寄り難い作者の『芸能の不思議な力』(なかにし礼著:毎日出版社)読む。そう感じていたのは類い希な『観察者』だったからだ。
「絶望を抱えた歌姫が至高の性愛を歌う。悲しみもだえる者が星と輝く。虚と実の間にいちばん深い喜びが花開く---。」、美空ひばりというのは、そういう芸能の天才だったのか。作者はこういう角度で才能を凝視しピタリと表現する。思想的な言説が時にあるが実に真っ当。左翼と言うのは当たらない。世情が右回転しているからそう思えるとしたら腹立たしい、直球ど真ん中勝負の平和主義、実に嬉しい。表紙で迷ったが、読んでよかった。
美輪明宏、黒柳徹子、黒澤明、高島礼子、大竹しのぶ、北島三郎・・・(第1章/芸能の不思議な力)。古今亭志ん朝、桂枝雀、市川團十郎、世阿弥、能の梅若・・・(第2章/古典の斬新)、韓国の詩人、映画『タクシー運転手』、Wカップ、栃ノ心、プーチンとストーン・・(第3章/異郷からの衝撃)。野坂昭如、アリと猪木、カズオ・イシグロ、田中一村、ポケモンGOの野村達夫、藤井壮太・・・・(第5章/芸能的な文芸論)。石原裕次郎追想(第6章)。省略してもこれだけ広範囲の対象。作者のそれらの人たちとの関わり方に感心した。そして、普通の人々が思う狭い『芸能』世界を一気に広げてくれた。そうか、『芸能』というのは連麺と続く無垢の楽しみか。無くても生きていけるが、無ければ人間とは言えない人生を送ることなのか。深い。
最も印象深かった箇所は、『ノーベル文学賞、カズオイシグロの寓意』。『わたしを離さないで』で描かれる臓器提供のクローン培養制度が「根深い帝国主義による新しい奴隷制度」と述べながら、それが「私たち日本人は・・・このクローン生徒たちと変わらない」にぎょっとし、その理由を「サンフランシスコ講和条約」がある限り日本が真に独立することはあり得ないのに。自主憲法憲法制定を言い続ける人がいて、それはイカサマ論法だと断じる。続けて、「私たちはアメリカという帝国主義が作り出した新種の臓器提供者かもしれない。」、この小説をこういう風に読む観察者が少し前までいてくれたのだ。 -
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ネタバレなかにし礼さんが時代に対して積極的に発言されていることは、何度か見聞きしたことがあったが、こんなに直接的に思いを綴った詩集をだしていられたとは知らなかった。
タイトルにもなっている、最初に掲載された詩「平和の申し子たちへ! 泣きながら抵抗を始めよう」は、「2014年7月1日火曜日」から始まる。
この日は「集団的自衛権が閣議決定された」日。「平和憲法は粉砕された/つまり君たち若者もまた/圧殺されたのである/こんな憲法違反にたいして/最高裁はなんの文句も言わない」「どんな時代よりも禍々しい/暗黒時代へともどっていく」と激烈な言葉で、でも、真実の言葉で、メッセージを発している。
こんな、真当なメッセージを力強く発してくれる著者に感謝する。連帯の意思を表し、今後の表現活動も注視していきたい。
今、多くの人に手にとってほしい一冊。できれば、身近にいる、著者のように戦火をくぐり抜けて来た方々が、この詩集を手に、若い「平和の申し子たち」に、肉声でその思いを伝えて頂ければと思う。「人間が人間であることを/やめたくなるような切望のうめき」(「さあみんな逃げるんだ」より)をあげなくてすむように、そんな時代にしないために。 -
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内容(「BOOK」データベースより)
自分が拾われたのは戦場だったということ以外、両親の名前も、自分が何人であるかもニーナには分からない。しかしロシアへ遺骨収集に訪れたフクシマとの出会いが、ニーナに流れる日本人の血のルーツを呼び覚ました。エカテリンブルグから日本へ、ただひとりのロシア残留孤児ニーナの、魂が震える究極の愛の物語。
残留孤児と言えば中国ですが、この本はソビエトです。第二次世界大戦の中国で全滅した日本軍の残骸から発見された幼い少女。ソビエトの将校に助けられ新たな人生を得ると共に、自分を見つけ出す為の長い長い旅が始まったのでありました。
何度も変わる養父母、顔に残る傷、民族の違いによるいじめ、燃えるような恋そして裏切り。
人間生きる場所が有るだけでは満たされない、自分のルーツを知りたいという欲求。自分自身がそうではないので分からない部分もあるのですが、確かに父も母も分からず、祖国も判然としないというのは宙ぶらりんの状態なんだろうなと考えさせられます。
ニーナ一生懸命で胸がキュッとするなあ。 -
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なかにし礼を知ったのは『哀愁のシンフォニー』(キャンディーズ)の作詞家としてですので、もう40年くらい前でしょうか。
細川たかしの『北酒場』や北島三郎の『まつり』など、大好きな歌をたくさん作詞してくださっています。
本書は、そんな なかにし礼が2012年に食道がんになり、陽子線治療で完治した話です。
なかにし礼は翻訳家&小説家でもあるので(完治したという結果を知っていても)とても面白いです。
本書のポイントは、
・iPadで本人と奥様が情報収集に努めた
・標準医療ってなんだろう
・治ったよ
です。
まず、「iPadで情報収集」ですが、本当に良い世の中になったものです。
私も、自分がかかった脳卒中(脳梗塞+脳出血)についての知識だけならネットで調べてキンドルで専門書を読んで、かなり詳しくなったんじゃないかなと思います。
本書でも、放射線の意味すら怪しかった筆者が陽子線治療にたどり着き、理解し、治療を受ける気になったのは良いことだと思います。
情報デバイド?
次に「標準医療」についてです。
どこの医療機関に行っても標準医療が進んでいるため、医師からほぼ同じ治療を勧められます。
本書で言う「『癌は(抗癌剤で)たたいて、(手術で)切って、(放射線を)当てる』という標準治療をどいつもこいつも言うだけで、患者の話を聞こうとしない」ってやつです。
標準治療が確立してきたので(同じ治療を奨めるはずなので)セカンドオピニオンを快く許す医者が増えたという話を聞いたことがあります。いいのか悪いのか。
最後に「治った」です。
これは、いろいろ批判のあるところでしょう。運が良かっただけという人もいますし、転移なく局所的で治療がしにくい体の奥の方にできた癌には(患部に到達するまでの組織に影響を与えず癌細胞をやっつける)陽子線治療が有効とか、保険がきかない一回300万円の治療ってどうよとか、晩酌の高アルコール(50度超)のウイスキーをキッパリ止めたから治ったんじゃない、、、などなど。
私は、症例が増えて有難いと思いました。
別に私や家族がガンにかかったわけでもないのですが、近藤本を読んでからいろんな人が何を言っているか気になっています。 -
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ネタバレ血の歌
著者:なかにし礼
発行:2021年12月25日
毎日新聞出版
初出:サンデー毎日2021年12月26日号、2022年1月2・9日合併号
謎の歌手、森谷王子(もりやおうじ)は私の娘なのです。私の二番目の娘、美納子なのです。
そう言いたい衝動にしばしば駆られるが、中西正一はこらえる。
(中略)
王子の歌う「ぼくの失敗」という歌が、テレビの金曜ドラマ「教師の恋」の主題歌に採用され、番組の高視聴率とともに、王子の歌も爆発的に売れはじめた。
「森谷王子」を「森田童子」に置き換えるとすぐ分かる。
「ぼくの失敗」は「ぼくたちの失敗」であり、「教師の恋」は「高校教師」であることが。
謎のシンガーソングライター森田童子の父親は、中西正一。中西正一は作詞家・作家のなかにし礼の兄。つまり、森田童子はなかにし礼の姪だった。――昨年12月にこの本が出版され、この事実が判明したことにより、多くの人々が衝撃を受けた。中森明夫や伊藤彰彦といったカルチャー系の有名ライターもその衝撃を筆に残している。ただ、検索してみると、2018年の時点で一部の人からはそう推測されていて、当時のツイッターやミクシーでの書き込みが見つかる。
あとがきを礼の子息(中西康夫氏)が書いているが、2021年夏に著者の妻が遺品を整理していると机の引き出しから原稿が見つかり、原稿の原本をとっておくことさえしなかった礼がわざわざ人目につくところに残していた点を考え、出版を思いついたという。康夫氏は、執筆年次を1995年、代表作「兄弟」の習作として書かれたものと推定している。
実の兄・正一をモデルにした小説「兄弟」は、ビートたけし主演でテレビドラマ化もされ、正一の常軌を逸した行動によって、礼も金銭的な負担や汚名を着せられるという大きな迷惑を被った過去が世間に知れ渡るところとなった。
立教大学に通い、映画や文学に精通し、ダンスが得意、男同士の遊びも人後に落ちない、まさにスマートで理想的な青春時代を送っていた兄・正一。映画監督を目指していたが、時代に呑まれるように陸軍特別操縦見習士官の道に進んだ。単独飛行の最後の訓練のとき、機械の不調を訴えるも換えてもらえずそのまま離陸。不時着して飛行機から投げ出されるも、一命は取り留める。しかし、「天皇陛下から賜った」大事な飛行機を燃やしてしまい、しかも助かったと批難の目を向けられてから、人生の歯車がうまくかみ合わなくなる。戦後は、博打のような事業展開に何度も失敗して借金生活。
そんな中で、次女がシンガーソングライターとしてデビューすることに。なかにし礼と女性音楽プロデューサーが、本人(森田童子)の出自や身分を隠すことにした。おじさんの七光りで世に出たくないという本人の希望に加え、反体制、非体制、アングラでマイナーなところから出発させたいというプロデューサーの思惑もあった。そして、礼とプロデューサーは、正一に娘のことはしばらく忘れてくれ、蒸発したと思ってくれ、とお願いをする。
正一は、次女(森田童子)が小さな頃、祭りに連れて行き、箸の先についたメロン色のアイスクリームを買い与えた。手は引いていなかった。娘は転んだ。箸の先が口にささり、メロン色が血の色になった。それでも娘はアイスクリームをなめ続けた。
そのことを小説では父親・正一は最後まで忘れず、こだわり続ける。あの時、オレが手を引いていれば・・・
きっと、娘の歌は「血の歌」に聞こえたのではないか。小説の締めくくりには、そう思わせる。 -
Posted by ブクログ
かの衝撃作『兄弟』のスピンオフか続編のようなものかなと思いきや、『兄弟』の習作として書かれた遺稿なのですね。これは意外でした。だからなるほど、主人公は“王子“というより正一なわけか…。先日SNSで知り早速読みました。他のレビューサイトでは、薄いとか高いというコメントを見かけますが、抱き合わせる小説があるわけでなし…仕方ないかなと。世に出してくれてありがたいです。星1つ減は、著者が出版を望んでいたのかわからない(「あとがき」を読むに、恐らく望んでたと思うけど)からだけです。頁数は少なくても中身は濃いです。ドラマは3回観た私。どうしても礼三と正一は、私の頭の中でトヨエツとたけしに置き換わってしまいます。この2人はハマり役でした。今度はどなたかに“王子”を主人公にして、書いて欲しいなぁなんて思ったりしました。
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Posted by ブクログ
三つの短篇集。
どれも深すぎず浅すぎず、ちょっと昭和の匂いがする。
遺言歌は遺言を歌の様にという意味なのかと勝手に思い読み始める。
無言歌というメンデルスゾーンの曲集を想像するが
それとも違い少し渡辺淳一チックだ。
奥様の冒険は、それは大冒険笑笑
突然隣にカラオケ教室が出来たら誰だって嫌だよな。
静かに過ごしたくても音が漏れるから心の平穏って保てなくなる。
そんなご近所物語なんだけど、これからの展開はホント冒険。
ベル・エポックは銀座のシャンソン物語でお店の閉店にまつわるお話。
業界を離れる人もいれば、なんとか業界でやってる人もいる。
歳を重ねて時代の移り変わりが駆け抜けて。
ちょっぴり切なくてロマンチック。
初めてのなかにし礼さんでしたが、満州生まれで立教のフランス文学科とは、遺言歌とベル・エポックに織り込まれていたのですね。