なかにし礼のレビュー一覧

  • 夜の歌

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    なかにし礼の遺作。ガンの闘病中に死を予感する中、なかにし本人が謎の美女「ゴースト」と、創作の源を探るべく自分の半生を再体験する。若干ややこしいが、ご本人の歌詞と同じく「死」と「性(と言うかエロ)」の匂いに溢れていて引き込まれた。あと、「反応体」とは流石の言い回しだと思った。因みに私はなかにし礼自身の「歌」も好きで、「マッチ箱の火事(CD)」持ってて今でもよく聴きます。
    最近観た宮崎駿の「君たちはどう生きるか」もそうですが、死を意識した作家って、不思議な作品を作るものなんですかね。

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    2023年08月22日
  • 作詩の技法

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    技法と銘打ってはいるが、言うほど作「詞」のコツなどが書かれているわけではない。
    いや役に立つというかああそうだそうだと思い当たるような話はたくさんあるが。
    しかしそれ以上に人生観とか物の見方、心構えのようなものを学べると思うこの本は。
    最後のあとがきにある「作詩」という言葉に対するこだわり、五体と五感があってこその歌という言葉は、作「詩」家にとって金科玉条だと思う。

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    2023年05月21日
  • 血の歌

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    切なく読んだ。リアルタイムで森田童子にはまりLPをそろえ森田童子全曲集で歌詞も確認した。地方にいたのでコンサートには行けなかった。
    中西れいの兄(森田童子の父)目線で描かれている。自分宛ての歌詞として読み応えている。父が自分の失敗と読み取っているが、同世代のものとしては75年以降の青春群像の一コマと思う。
    久しぶりにLPを出してみるか?

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    2022年03月18日
  • 血の歌

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    なかにし礼の亡くなってから見つかった作品。激動としか思えない人生を生きた人。
    兄の放埒な生き方に、振り回されて、でもこの作品は、その兄の視点から、娘との関係を書いてある。どことなく、悲しい、寂しい作品。

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    2022年01月16日
  • 愛は魂の奇蹟的行為である

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    キャッチコピー「反戦とエロスの孤高の巨星」を実感。テレビでしか知らないが、歌謡曲の作詞家というより得体知れない危険人物だと思っていたが、予想を遥かに超えていた。若い頃、7人の女性とかわるがわる遊んでいたが面倒になり一軒家に住まわせて暮らしていた話に笑ったが、人間的な妖しい魅力と構えが昔から尋常で無かったのだろう。
    特に唸ったのは、小林秀雄が戦争協力者であり狡猾な人物と見抜けなかった自己の愚かさへの言及、加藤周一の天皇制批判と『九条の会』への賛同、そして平成天皇の政権に対する抵抗を評価しつつ平和憲法の尊重と遵守の表明。芸能の中心人物が音楽はもちろん文学、絵画、映画演劇を縦横に論じ、その根底で正し

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    2022年01月01日
  • 芸能の不思議な力

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    何だか怖くて近寄り難い作者の『芸能の不思議な力』(なかにし礼著:毎日出版社)読む。そう感じていたのは類い希な『観察者』だったからだ。
    「絶望を抱えた歌姫が至高の性愛を歌う。悲しみもだえる者が星と輝く。虚と実の間にいちばん深い喜びが花開く---。」、美空ひばりというのは、そういう芸能の天才だったのか。作者はこういう角度で才能を凝視しピタリと表現する。思想的な言説が時にあるが実に真っ当。左翼と言うのは当たらない。世情が右回転しているからそう思えるとしたら腹立たしい、直球ど真ん中勝負の平和主義、実に嬉しい。表紙で迷ったが、読んでよかった。

    美輪明宏、黒柳徹子、黒澤明、高島礼子、大竹しのぶ、北島三郎

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    2021年12月31日
  • 愛は魂の奇蹟的行為である

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    毎日新聞に連載されたエッセイをベースになかにしれいの本質を表している。人を愛し戦争を憎む。国家を信用はしないという姿勢。平和であるからこそ女を愛せる、
     これから生きる人への希望を語っている。

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    2021年09月30日
  • 平和の申し子たちへ 泣きながら抵抗を始めよう

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    ネタバレ

    なかにし礼さんが時代に対して積極的に発言されていることは、何度か見聞きしたことがあったが、こんなに直接的に思いを綴った詩集をだしていられたとは知らなかった。
    タイトルにもなっている、最初に掲載された詩「平和の申し子たちへ! 泣きながら抵抗を始めよう」は、「2014年7月1日火曜日」から始まる。
    この日は「集団的自衛権が閣議決定された」日。「平和憲法は粉砕された/つまり君たち若者もまた/圧殺されたのである/こんな憲法違反にたいして/最高裁はなんの文句も言わない」「どんな時代よりも禍々しい/暗黒時代へともどっていく」と激烈な言葉で、でも、真実の言葉で、メッセージを発している。
    こんな、真当なメッセ

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    2018年07月14日
  • 夜の歌

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    筆者が忘れようと思っていた戦争を思い出すことで作詞家として成功し、兄に翻弄されつつも戦争を克服し、平成へと時代が変わって作家として成功した話。
    ソ連侵攻後日本へ帰国する人たちへ笑顔で食べ物を10倍の値段で売る中国人。子どもを売ってくれという中国人。
    人生を真剣に生きようとするものは過去をなんども反芻する。

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    2017年06月28日
  • 戦場のニーナ

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    内容(「BOOK」データベースより)
    自分が拾われたのは戦場だったということ以外、両親の名前も、自分が何人であるかもニーナには分からない。しかしロシアへ遺骨収集に訪れたフクシマとの出会いが、ニーナに流れる日本人の血のルーツを呼び覚ました。エカテリンブルグから日本へ、ただひとりのロシア残留孤児ニーナの、魂が震える究極の愛の物語。

    残留孤児と言えば中国ですが、この本はソビエトです。第二次世界大戦の中国で全滅した日本軍の残骸から発見された幼い少女。ソビエトの将校に助けられ新たな人生を得ると共に、自分を見つけ出す為の長い長い旅が始まったのでありました。
    何度も変わる養父母、顔に残る傷、民族の違いによ

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    2016年12月23日
  • 生きる力 心でがんに克つ

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    なかにし礼を知ったのは『哀愁のシンフォニー』(キャンディーズ)の作詞家としてですので、もう40年くらい前でしょうか。
    細川たかしの『北酒場』や北島三郎の『まつり』など、大好きな歌をたくさん作詞してくださっています。

    本書は、そんな なかにし礼が2012年に食道がんになり、陽子線治療で完治した話です。

    なかにし礼は翻訳家&小説家でもあるので(完治したという結果を知っていても)とても面白いです。

    本書のポイントは、
     ・iPadで本人と奥様が情報収集に努めた
     ・標準医療ってなんだろう
     ・治ったよ
    です。

    まず、「iPadで情報収集」ですが、本当に良い世の中になったものです。
    私も、自分

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    2015年01月24日
  • 戦場のニーナ

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    自分は誰なのか。

    ただ一人のロシア残留孤児ニーナの、魂が震える究極の愛の物語。

    読み終わって、人を愛するということを何となく理解できたような気がした。

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    2010年03月26日
  • 血の歌

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    なかにし礼の亡くなった後に
    机から出てきた遺作でした。
    兄弟)とかぶる内容だが兄の娘が
    シンガーソングライターとして
    デビューする際は後押しした事
    借金と女狂いだった兄の娘だった
    から叔父として憐憫を持っていた事
    TVドラマ(高校教師)の主題歌で
    ブレイクしたけれど、デビューから
    ベールを被らせて(自分の姪だった事も)
    隠していたので余計に世間からは
    注目された事、深く姪の事を書いた
    作品ではなかった。
    苦労の多い幼少期からの生活から
    天才作詞家とシンガーソングライター(森谷王子)が作られた事は事実でした。

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    2025年06月04日
  • 血の歌

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    ドラマ高校教師が放送していた時は、私はちょうど高校生でした。森田童子のオープニング曲がなんて暗くて切ないメロディなのか思春期の私を驚愕させた。
    血の歌は、父親の存在その物なんだ。森田童子のメッセージでもあり、かつ中西家その物なのか、、、。
    今度は『兄弟』を拝誦させて頂きたい。
    習作ではあるが本当の遺言ともとれる本作を再び読み返してみたい。

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    2022年05月29日
  • 血の歌

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    ネタバレ

    血の歌

    著者:なかにし礼
    発行:2021年12月25日
    毎日新聞出版
    初出:サンデー毎日2021年12月26日号、2022年1月2・9日合併号

    謎の歌手、森谷王子(もりやおうじ)は私の娘なのです。私の二番目の娘、美納子なのです。
    そう言いたい衝動にしばしば駆られるが、中西正一はこらえる。
    (中略)
    王子の歌う「ぼくの失敗」という歌が、テレビの金曜ドラマ「教師の恋」の主題歌に採用され、番組の高視聴率とともに、王子の歌も爆発的に売れはじめた。

    「森谷王子」を「森田童子」に置き換えるとすぐ分かる。
    「ぼくの失敗」は「ぼくたちの失敗」であり、「教師の恋」は「高校教師」であることが。

    謎のシンガ

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    2022年03月11日
  • 血の歌

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    かの衝撃作『兄弟』のスピンオフか続編のようなものかなと思いきや、『兄弟』の習作として書かれた遺稿なのですね。これは意外でした。だからなるほど、主人公は“王子“というより正一なわけか…。先日SNSで知り早速読みました。他のレビューサイトでは、薄いとか高いというコメントを見かけますが、抱き合わせる小説があるわけでなし…仕方ないかなと。世に出してくれてありがたいです。星1つ減は、著者が出版を望んでいたのかわからない(「あとがき」を読むに、恐らく望んでたと思うけど)からだけです。頁数は少なくても中身は濃いです。ドラマは3回観た私。どうしても礼三と正一は、私の頭の中でトヨエツとたけしに置き換わってしまい

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    2022年02月06日
  • 血の歌

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    なかにし礼自身に発表する気があったかどうかはわからないが、やはり習作として終わらせるべきでない、短編として力のある一作だと思う。兄、姪(森田童子)、母親、それぞれを描く距離感、濃さの使い分けが絶妙で、物を書く才能とはこういうことかと感心した。「兄弟」も読んでみよう。

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    2022年02月02日
  • 遺言歌

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    三つの短篇集。
    どれも深すぎず浅すぎず、ちょっと昭和の匂いがする。

    遺言歌は遺言を歌の様にという意味なのかと勝手に思い読み始める。
    無言歌というメンデルスゾーンの曲集を想像するが
    それとも違い少し渡辺淳一チックだ。

    奥様の冒険は、それは大冒険笑笑
    突然隣にカラオケ教室が出来たら誰だって嫌だよな。
    静かに過ごしたくても音が漏れるから心の平穏って保てなくなる。
    そんなご近所物語なんだけど、これからの展開はホント冒険。

    ベル・エポックは銀座のシャンソン物語でお店の閉店にまつわるお話。
    業界を離れる人もいれば、なんとか業界でやってる人もいる。
    歳を重ねて時代の移り変わりが駆け抜けて。
    ちょっぴり

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    2022年01月31日
  • 血の歌

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    何というタイミングだろう今月からドラマ『高校教師』の再放送が始まったこともリンクしてライヴ感が加わり、短編ながらも強く深く引き込まれた。読みながらアタマで鳴っていた「ぼくたちの失敗」の聴こえ方が変わる。

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    2022年01月14日
  • 夜の歌

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    時代を築き時代と寝たなかにし礼の最後の著作。小説っぽく書いた自伝である。個人的には一番華やかな、有名人の仲間入りをしたころの高揚感あふれる描写が、同じ時代を過ごした自分が、遠い光景を目を細めて見るように懐かしく思えた。

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    2021年04月19日