大手新聞社の社会部で鎬を削る黄金世代の同期6人を描く物語。
自分に当てはめると、1年後輩の世代がそうした出来る世代だったが、1年入社が早いというだけで、偉くなった彼らから丁寧に扱ってもらえるだけ得したな。
前半3話、それぞれが頭角を現した分野から、警視庁の植島、調査報道の名雲、検察の図師と呼ばれる
...続きを読む3人の話が描かれる。
のっけから他紙に抜かれたり、上司や同期同士で揉めてたり、家庭でもすれ違いだったり、新聞記者って大変ねと思わす。
植島を見ては「『会社で偉くなっていくことしか妻を幸せにする方法は思いつかなかった』なんてことを言ってる奴ぁ、そんなに偉くなれないぞ。もっといけしゃあしゃあと生きている奴に先を越されて、だけども自分も中途半端に出世して責任だけ重くなって苦労するのが落ちだ」と思い、南雲を見ては「軋轢を望まないなんて、部下の立場で平穏にやっている間はいいけれど、責任者なったら同じ立場の周りは軋轢を望む奴ばかりだからストレス溜めるばかりだな。部下も物分かりのいい奴ばかりだといいけど、訳分かんないのが一人でも出たら大変だ」と思い、図師を見ては「妻から別れる時に『窮屈で嫌になったのよ』と言われたけど、コンプレックスを励みにする生き方っていうのはあっても良いな。ただ、人の上に立つ立場になった時には漂わすべき余裕というか器量というものに欠けるような気がするからどこかで切換えなくてはならないけど」と思う。
ここまでは、それぞれに悩みを抱える年頃のことに自らを歩いてきた道を振り返る感じになってしまったが、それはそれとして、どの話もなんとなくどんよりした感じで物語としてはどうかな…。
4人目の、遊軍の城所の話から “人事”の話になって少し様子が変わってきた。
『今は会社に入って数年で評価され、一生が決まっていく時代』とあるが、今や会社に入る前の面接で篩い落とされて行く過程で勝ち負けが決まっていく世の中だものな。そうした世界の中でしっかりと人を見極めようとする話に好感。
そこから、人事の土肥、そして社長秘書から人事になった北川の話に続くが、ここまで語られたことを伏線にしながら、しっかりと物語の体をなしてきた。
私は、他所の上司と一緒になって部下を責めるようなことはしないと決め、部下を信頼して、実務を分からずにハンコを押すからには不始末があった時には責任は取るつもりでやって来たけれど、土肥のように、部下から裏付けが取れていない記事を送られて、それを信用して大見え切った立場は辛く、まして自分の檄がきっかけになっていたり自身が左遷と思われる配置になると、これはキツイな。
上司と部下の信頼関係や人が人を見極めるという話に、誰が社会部長になるかという話と、社会部vs政治部の確執が加わり、そこに人事部長としての北川の読み筋が絡んで、まずまず面白い話になった。
話の中心が、誰が先にデスクになったとか、次期社長を巡っての暗躍とか、社会部と政治部の全面戦争とか、社内の諍いが中心で、最後のエピローグも良い収まり方なのだけど、この記事を載せた時の社会に対する影響は論議されておらず、全体的に話が小さくなってしまっているのは残念ではある。