樋口恭介のレビュー一覧

  • Executing Init and Fini

    Posted by ブクログ

    これはすごい。実際に本を買った。完全に自分の作品の目指す方向性と一致していて、ここまで自分と系譜が近いことに驚いた。その高い前衛性には目を見張るものがある。商業出版で、しかもAIと共作でこのレベルのものが出てきているとなると、さらに未来のAI創作はさらに尖っていく気がする。

    何にせよ言語空間の精度が高く圧倒される。坂本龍一の"Love Is The Devil"の擬態的な電子音楽の匂いがする、超越性の超然。ある意味根底ではマキシマム・ザ・ホルモンの"刃渡り2億センチ"や"爪爪爪"のような血塗られた言語破壊的志向さえある。機械的精度によって言語実験の完了形態を現出させており、この作品によってこそ樋口恭介は円城塔に次ぐ作家となったと、大袈裟に言っても良いかもしれない。惜しむらくはルビの実験性の欠落。これはAIによって精度を高めているので、AIのプレーンな文体志向から逃れようとしてもよかった気がする(尤も樋口恭介はそういう実験も異常論文などで試み収録しているが)。

    0
    2026年06月05日
  • 21世紀を動かす思想 加速主義・プルラリティ・SFプロトタイピング

    Posted by ブクログ

    「加速と協働のあいだで、未来を扱う手つきを取り戻す」

    AIやWeb3の話題は、知っているつもりでも、全体像を“体感”として掴める人は多くないと思います。ニュースは刺激的な断片で溢れ、熱狂と冷静の間で、未来だけが宙吊りになる。そんな状況を前提に、この本は「未来は突然来るのではなく、語られ、準備され、やがて“現実”に変わる。だから見誤らないために、いま未来がどう語られているかを見届けよう」と、まず土台を置きます。

    本書の前半を貫く軸は、大きく二つです。
    一つは「加速」——AIを中心に、社会の前提ごと書き換えていく推進力(加速主義)。e/accの熱狂だけでなく、d/accが示す「どの方向にアクセルを踏むのか」という倫理と設計の問いまで射程に入れています。d/accの“d”が Defense / Decentralization / Democracy / Differential と多義的に整理されているのも、単なる技術論にしないための工夫だと感じました。

    もう一つは「協働」——分断が深まる社会で、差異を対立の燃料ではなく協働の源泉に変える設計思想(プルラリティ)。vTaiwanやPolis、QV/QFの話が出てくることで、「理想論」ではなく「手段としての民主主義アップデート」に触れられます。

    ここで私は、平野啓一郎さんの「分人」という考え方を思い出しました。人を単一の“個人”として固定しすぎると、違いはすぐに分断に転じる。逆に、関係性に応じて複数の自分を生きる前提に立つと、「違いを扱う仕組み」の重要性が見えてくる。以前、短い時間ですがオードリー・タン本人と話す機会があり、その感覚を言葉にしたことがあります。いま本書のプルラリティを読むと、あのときの感触と“同じ方向を向いた設計”が、後から立ち上がってきたように感じました。

    そして後半、この本は未来学へ接続します。未来学は、未来を当てる占いではなく、起こりうる複数の未来を扱い、望ましい未来を構想し、現在の行動に落とす営みだと整理されます。
    ここが本書の“価値の後半戦”で、シナリオプランニングやSFプロトタイピングが、知識ではなく「未来を扱う技法」として並びます。私自身、シナリオプランニングの実務・コミュニティ側に縁があった分、このパートは「読む」より「もう一度やってみよう」というスイッチが入りました。

    この本を「重要だ」と感じる理由も、そこにあります。AIやWeb3の個別論は多いのに、加速と協働を“思想”として並べ、さらに未来学の道具で扱える形に落とすところまで一気通貫で見せる本は、実はかなり少ない。だから難しくもあるけれど、この観点を持てる人が増えないと、未来はいつも“後追い”になる——私はそう受け取りました。

    読み終えたあとに残ったのは、知識の満腹感ではなく、「自分の現場で未来を試作してみよう」という感覚です。STEEPで要因を書き出し、2×2で4つのシナリオを作り、どの未来でも後悔しにくい一手を探す。SFプロトタイプで、未来を“物語”として一度走らせてみる。未来は怖いままでいい。でも、扱えるサイズにはできる。そんな手つきを取り戻す本でした。

    0
    2026年03月10日
  • 構造素子

    Posted by ブクログ

    世界の構造に始まり、登場人物が知覚することまで緻密に設計・表現されていて、私たちの「言葉」の意味や「記す」価値について考えさせてくれる奥深い物語でした。私はこれほどプログラム的な文章表現の作品をいままで呼んだことがないので、初めは冗長に感じたけれど、緻密な描写のために過不足ない適切な表現な気がしてきて、いつの間にか慣れていました。
    作者が評価したであろう作品達にまつわる名前がたくさん登場してSF好きとしても心地よかったです。

    0
    2026年03月06日
  • 反逆の仕事論 AI時代を生き抜くための”はみ出す力”の鍛え方

    Posted by ブクログ

    反逆の仕事論 AI時代を生き抜くための"はみ出す力"の鍛え方
    著:樋口 恭介

    近い将来必ず到来する「AIが人間の仕事を奪う時代」に、必要とされる人材であり続けるためにはどんなスキルが必要なのか。そして、そのスキルはどうすれば身につくのか。本書では、そんな実践的な話を「正しくはみ出せる人材」を根底として説明されている。

    今後到来する本格的なAI時代に、自分の人材価値を保ち、会社で自分の居場所を保持し続けるためには、「はみ出せる力」を身につけておく必要がある。

    構成は以下の5章から成る。
    ①マジメな社員から淘汰されていく
    ②今後生き残る「正しくはみ出せる人材」像とは
    ③上手にはみ出すための「妄想力」の高め方
    ④妄想を現実とつなぐ SFプロトタイピング
    ⑤周りを巻き込む力を補うコツ

    生成AIに対してどのように向き合っていくかという書籍は多く刊行されている。本書は書名、「反逆」と書いてあるものの、向き合い方について逆張りをしているものではなく、極めてその対応は王道を語っている。

    ITコンサルでもあり、SF作家という、ロジカルでもあり、現実的な妄想も描ける著者が描く近い未来像とバックキャスティングのロードマップは説得力があり、腑に落ちながら読み進めることができた。

    5章では、新しいテクノロジーである生成AI等の技術を使う前提や企業内でのルールやライン等への配慮等、実務の活かし方等が記されている。

    新しいテクノロジーであっても、自身のみではできず、仲間の巻き込み方や人の惹きつけ方等、時代が変わっても大切な仕事への向き合い方とコミュニケーション・協働について書かれている。

    生成AIと向き合い、解釈し活用していくのは当たり前。
    日々進歩し続けるその技術に対しての自信のスタンスを持ち、自分にしかないものを磨き上げていくことが急務となる。

    0
    2025年07月27日
  • 構造素子

    Posted by ブクログ

    自分がまさに読みたかったやつ

    人の生死 人生 物語 愛...

    言葉では表せないと分かっていても、それらを言葉というコードで記述しようと足掻くこと。人が紡いできたコードに今を生きる人々が書き足していくように、これまで続いてきた歴史を未来に繋げていくのだなと私は解釈しました。

    難解で、一周ではまだまだ消化不良なので、また今度読み直します

    0
    2023年03月18日
  • 異常論文

    Posted by ブクログ

    わけわからんものと面白いのが交互に出てくる感じ。掃除、SF作家、樋口一葉、四海文書、とかが良かったが最後のレナディアン語がすごく良い

    0
    2022年01月28日
  • 異常論文

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    * テクノミュティス
    円城塔とはいえ、最初にこれは心を折られるので、もっとわかりやすいやつを持ってくれば、と思ったが、異常論文というコンセプトとしては、読みやすいよりもむしろこういうやつだという気もするので難しい。
    数式が出てくると、なんとか意味を理解しようとトライしてしまうので勘弁していただきたい。
    予測と想像により存在そのものが上書きされるとかなんとか。

    * レウム語
    一番好きかもしれない。ただし、現実と虚構が混ざっており、複雑。ザグロス山脈が存在するのか調べないようにしている。
    遺伝子に全員が聴覚異常を持つレウムという民族… 確かにそういうのは有り得そうではある。その民族は音声による会話ができないので、一人ずつ持っている石版に文字を書き、さらに石版を動かすという三次元的な動きで意味を伝えるという。
    そんなんあるかと思ったが、手話も手の形という二次元情報と動きの三次元情報の合わせ技という説明があり、なるほどと思った。音声言語って便利だな…
    ヒロイン?は双子の子どもたちで、しかも一人は空間認識力が低いため、レウム語もちゃんと「喋れる」わけではない。しかしきょうだいがそれを解読することでむしろ「喋れない」子が巫女のような存在になっている。
    数年後、通訳の子があっさりと事故で亡くなり、でも巫女の子が著者に話しかけてくる。その意味が詩のような形になっており、ただただエモく、切ない。
    あくまでも論文形式なのに感動させやがって…

    * インディアンロープトリックとヴァジュラナーガ
    これも現実と虚構を混ぜてくる系。どこからSFかわからなくなるし、そうなってしまう自分の現実知識に自信がなくなるのでSFは難しい。
    空中で上に伸びる縄を人が登り、てっぺんで人もろとも消えてしまうという手品についての説明。
    実は縄として使っていたのは絶滅した蛇、ヴァジュラナーガであり、その蛇はなにかの拍子に鋼のように固くなるという性質がある、と。

    * 掃除と掃除用具の人類史
    途中まで、銃・病原菌・鉄のように、人類史はこれこれがきっかけで発展した、という感じなのだが、「この一歩は掃除機がもたらした偉大な一歩である」とか言い出して、スッキリSFだとわかった。
    でも掃除をしないと不衛生になって病気になるという大事さとめんどくささ、掃除を効率的にできることで余暇ができ、発展したというのは納得力が高い。
    一気に理論が飛び、マイクロブラックホールを使った掃除とエネルギー創出、そしてブラックホールが宇宙すべてをきれいにしてしまって崩壊という切なさ。論文自体もスッキリと終わって、とてもあとがよろしい。

    * 5枚のスライド
    注釈をきちんと読んでいかないと単語の意味がどれもこれも分からないので、注釈含めて一つの作品ということに半分ほど注釈読まずに進めてて気づいた。考察系。理解する必要はないのだが、ちょっと理解してるかもと思えるところが面白く、楽しい。エンタメの楽しさというより、学びの楽しさ感。

    * internet2
    インターネットは素晴らしい。
    現在のネットにはありとあらゆる情報があるが、人類そのものがインターネットになってしまい、全能感ありながらも、すべての悲劇の当事者としても追体験しっぱなしなので切ない。

    * 裏アカシックレコード
    横浜駅SF作者、きたー。
    裏って、そういう意味だったのか。すべての嘘、なるほどー…
    この人の話は特に現実と虚構がいい感じに混ざる。ややこしいのではなく、「ありそう」。特に、検索に莫大な費用がかかる裏アカシックレコード機械を、政府の他に一人だけ富豪が持っているというあたりがとてもありそう。

    * 緑の人々
    過去のフランスで起きた「大恐怖」という出来事。ほんとにあったのかなかったのかわからないが、それの裏というか同時?に緑色のヒト様の生物が見られた、という話。どうやら宇宙人っぽいが、著者含め、調べようとした人が次々に死亡あるいは行方不明になっているという、実はホラーなSF。

    * 絶滅主義
    人類は、宇宙は滅ばなければならない。なぜかというと、生きていると幸せはあるが苦しみもあり、幸せはなくてもよいが苦しみはあってはならないものだから。
    第三次世界大戦で静寂機械/戦争機械という遺伝子地雷が作られ、知らぬ間に汚染されていて子供が確実に苦しんで死ぬという、ホラー極まりない話に。
    苦しむのを避けるために滅ぼすという理念のために、苦しむためだけに生まれる生き物を作ってどうする。門垣はマードックの発明を知ったらブチ切れたのではないだろうか。
    ともかく、修復不可能な遺伝子地雷により、人類全体で絶滅に同意し、宇宙全ても滅ぼすことに。うーん、死は救済。

    * アブデエル
    預言書というSF。こういうのも、良い。
    翻訳者の意見だと正直に書いていたり、原文の意味がわからないところはハテナがついてたり、原書が破損してたり、リアルで良い。
    日本にも同じような話があるというのもまた熱い。

    * 火星環境下における宗教性原虫
    宗教性原虫、キリスト原虫、ブッダ原虫というパワーワード。更に宗教だけではなく、共産虫、資本虫など、響きだけで色々な方面に怒られそうな内容。
    とはいえ、宗教観が原虫の寄生による、という考え方はとてもおもしろい気がする。
    自然現象や言語にまず寄生し、そこから人類を宿主としていく。そして信仰様を発症したり、好死性をもつものだと死を恐れなくなったり。
    実際、宿主を自殺させる寄生虫もいるわけだし、トンデモ論ではないのかもしれない…
    でも、宗教性原虫だけでお腹いっぱいのところ、火星環境とまで来ると、短編なのに満腹感がある。

    * SF作家の倒し方
    タイトル通りだったわ。倒すな。

    * 異常SF創作講座
    飛浩隆さんも書いてた!異常論文を読み始めたときは気づいてなかったわ。
    そしてやはりやはりの入れ子構造。難解だが楽しい。「事態」が起きておかしくなった世界でのSF批評という論文。様々なSF作品?の批評をしている内に、実はこの批評している自分そのものが現実ではないのでは…?というゾクゾク感。

    * 樋口一葉
    どこからSFになるんだ…?と最後まで違う意味でドキドキした。普通の民話的怪談だった。
    そう言えばこの本、異常論文なだけでSFとはひとことも言ってなかったわ。叙述トリックか!

    * ベケット講解
    ベケット言いたいだけちゃうんか。
    と言うかベケット知らないけど、文体自体が本文で語られている小説に似ている。独特な句読点。
    本文で語られている、ベケットは読んでいると気持ちよくなる、みたいな感覚と似たような、読んでるだけで催眠にかけられるような謎な構成の文章。なるほどわからん!

    * ザムザの羽
    カフカの変身を題材にしてると思ったら著者本人が虫になっていてでも第三者視点ででもやっぱり身体にりんごを投げられて内臓を傷つけられて死んでしまう?あっちもこっちもザムザムザ。

    * 虫→
    ある意味テクノミュティスよりなんだかわからなかった。少なくとも矢印の意味はわかったようなそうでもないような… 虫に寄生されて書いた論文的なものということ…?

    * オルガンのこと
    なるほどわからん!
    話題がすごい飛ぶ。もはや飛んでるというよりは単に別々の話題が語られているだけといった感じ。
    腸内で微生物を育て、それを他人と共有する?
    腸を基準とした様々な世界の捉え方?
    ほんとになんだか分からないが、シャンバラ、虚船、プラトンのティマイオス、プロメテウス、アセファル…全体的に言葉遊びのような、歌のような、読んでて心地よくなってしまうのは確か。
    「イチジクの葉脈に神経系のイメージが重ね合わされる時、そこにはアダムとイヴの下腹部を包み込む神経叢が浮かび上がる。」
    なるほど、と呟いてしまったが、実際何一つ意味はわからない。なんかそれっぽいイメージが脳内に浮かんだだけなのに。

    * 四海文書注解抄
    怖い。いきなり頭にマジで「訳の分からない文章」が並ぶ。文字化けのよう。
    そして一見なんの関連もなさそうに見える【注】がずっと続く。それぞれが一つのストーリーを為していたり、やはり意味がわからなかったり。でも読んでいくとそれぞれが関連しており、その繋がりが少しずつわかってくる気がしてきて、それが怖い。知ってはいけないことを知っていっているような。
    それぞれの注の終わりにたまにある、漢字のルールが現代と違うだけで意味はなんとなくわかりそうな文章が、人間に似た知的生命がこの四海文書とやらの解読まとめを更に上から評価しているような形に見える。
    ドグラ・マグラ的な怖さ。最後まで意味はわからないが、こういうの好き。

    * 場所(Spaces)
    Spacesって、実際にあるオンライン会話スペースのやつか。本文中に著者のTwitterアカウント名も出てきて、どこまでが現実なのかわからなくなる。
    とりあえずツイッター見てみたら、12/6あたりになにか炎上したらしく、それの弁明や謝罪などをしており、割と真顔にさせられた。
    こういう仕込みをするならもうちょっとなんかこう…

    * 無断と土
    最初は明治天皇の短歌や、謎の詩、そして論文序文がわけわからんくて、思わず残りページを確認してしまったが、インディーホラーゲームという単語が出てきて俄然ととっつきやすくなった。知ってる単語パワー、強い。
    普通にSteamで2023年に発売されたインディーゲーム、とかも出てくる。同じ開発者の前作が2020年に出ており、事前に英語、ドイツ語、中国語を実装していたことによりランキング上位に食い込むようになり… と、Steamにやけに詳しくて面白い。
    というか本文内で普通に2020年のAutomatonの記事が参照されてる!
    菅原文草は存在するのか…?しなさそう。でも詩のほのかな怖さがたまらん。これこそ虚構論文だ!と言える傑作。途中わかりそうで結局最後にわからなくなる点も含めて。

    * 解説ー最後のレナディアン語通訳
    すべてが架空の小説。でもなんかタイトルを見て「あー、あれ、面白かったよね」と通ぶってしまいたくなる。
    と思ったらレナディアン語とは実は…という、普通にSFとして、サスペンスとして、作品として面白く、虚構論文的面白さではないが、普通に傑作だった。そしてタイトルに戻ってきて、なるほど… となってしまう。これは… ええやん。好き。

    ---
    結局異常論文とはなんなのか?なんなんでしょうね。
    でも作品として好きなものと、異常論文として好きなもの、と分けられる、気がする。
    作品として好きなのは「解説ー最後のレナディアン語通訳」、異常論文として好きなのは「レウム語」かな。でもレウム語も物語性が強いからな…「四海文書注解抄」かなぁ… 難しい。

    0
    2022年01月14日
  • 未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

    Posted by ブクログ

    冒頭は難解な内容で読み進めるのに心が折れかけた。が、SFプロトタイピングという考え方はビジネスを創出していく中で非常に有用な方法であると知ることができ、勉強になった。

    0
    2022年01月10日
  • 異常論文

    Posted by ブクログ

    面白い。みんな良い意味でポエムになっているが、小川哲の『SF作家の倒し方』…これ、よく怒られなかったなぁ…どの作品も面白い。

    0
    2021年11月20日
  • 異常論文

    Posted by ブクログ

    論文形式で書かれた短編小説集。ではこの作品は終わらない。小説と論文という正反対の方向性を持つ種類の文章の中間に全く新たなジャンルを確立している。文章は存在するはずだった世界を抜け出し、私たちのいる現実世界へと浸出すると同時に私たち自身もすでに異常論文の世界に取り込まれている。記述されている異常論文が読者によってコンパイルされ、脳内に展開を始めた時点で異常論文の時空世界はすでに新たな現実として存在を始める。

    0
    2021年11月12日
  • 異常論文

    Posted by ブクログ

    面白い。とても。
    星新一賞で初代グランプリの方の作品も論文形式を取っていた。他にも以前京都で開催された異世界生物学?みたいなものも異世界の事象(例えばドラゴンの吐く炎)を研究して考察するみたいなお遊び半分真面目半分のものでとても楽しかった。
    論文やレポートという形は現実と虚構の認識が重なって、空想の世界が現実のものとして感じられる。
    論文形式をとることでさらにSFの世界というか可能世界を体験することができる。
    『異常論文』は小説でありながらもしもボックスでありタイムマシンでありSFそのものだ。

    0
    2021年10月27日
  • 未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

    Posted by ブクログ

    SFを読みながら自分のキャリアのことを考えて日本の未来を考えて世界の行く末を考えて、、、我に帰った感じの本だった。
    SF作品としても面白いし、ビジネス書としても今までにない感じで良かったし、SF入門としても最高に良かった。

    0
    2021年07月15日
  • すべて名もなき未来

    Posted by ブクログ

    SF小説を私自身多く読めていないのが現状なのでこの本の批評という観点で見るのは難しいですが、読み物としては非常に面白かったです。
    気になる小説も多く見つかったのでぜひ読んでみたいと思いました。

    0
    2025年10月27日
  • 未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

    Posted by ブクログ

    感想
    面白いものに気づく。現在の延長にないものを探す。見つけたらそれを拾う。自分が望む未来を実現できるか。常に仮説は検証され磨かれる。

    0
    2024年01月01日
  • 異常論文

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    物によっては☆5もあり、☆3もあり、論文もあり、小説もあり…というごちゃ煮でした。試みとしては面白いと思うし、この形態であるが故に生まれた作品も多々あり、引き続き楽しみにしていますという感じ。

    特に好きだった作品は以下
    ・「掃除と掃除用具の人類史」松崎有理
    ・「裏アカシック・レコード」柞刈湯葉
    ・「『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延──静寂機械・遺伝子地雷・多元宇宙モビリティ」難波優輝
    ・「SF作家の倒し方」小川 哲
    ・「四海文書(注4)注解抄」酉島伝法
    ・「解説──最後のレナディアン語通訳」伴名 練

    特に「四海文書(注4)注解抄」は読んでいる最中にどんどん面白くなって、これ続き読みたい!!となりまくっております。

    ・「掃除と掃除用具の人類史」松崎有理
    …インドの人たちは人生には「四つの苦」があると考えた。病気、老化、死、掃除である…
    といった脚注からわかるように、真面目にパロディしていく感じが読んでてくすくす面白かった。ジョークという感じ。

    …無秩序には勝てない、引き分けにすら持ち込めない。増大する無秩序が宇宙を終わらせる運命だと知って、市長は絶望のあまりセーヌ川に身を投げた。*5
    *5 この不幸な市長の名はジャベールという姓のみが伝わっている。
    ここ読んで、チャララチャララチャララチャララ…There, out in the darkness‥‥
    A fugitive running, Fallen from grace~~~♪って再生されたんですが、私だけじゃないはず笑

    ・「裏アカシック・レコード」柞刈湯葉
    発想の勝利

    ・「『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延──静寂機械・遺伝子地雷・多元宇宙モビリティ」難波優輝
    雰囲気はまさにアンナ・カヴァンというか、『標本作家』というか、氷と雪とが全てを吸い込んでいく感じ。絶滅=救済という主張の下、淡々と進む論調は、形式ではなくトーンが静謐な小説で、好きでした。

    ・「SF作家の倒し方」小川 哲
    もうずっとwwwwだった、面白すぎた笑
    改めて柴田勝家好きだわ…ってなったし、編者の樋口恭介が、マナー講座を経たあとに、「樋口恭介に至っては、「相手が自作を読んでいるということを前提にする」という大罪を犯しただけでなく、「しかも自作が刺さっていると前提する」というとんでもない思いこみで話かけてきたのです…」でwwwってなりました。

    (番外編)「ザムザの羽」大滝瓶太
    美があるところ、美は滅びねばならぬ、美はつねに滅びる、様式は内容とともに滅びる、世界は個人とともに滅びる、かかる単純明快な理由から、そこには必ずや哀れを知る心がある。 ウラジーミル・ナボコフ
    というエピグラフから始まったのですが、果たしてこれは本当にナボコフのものなのでしょうか…

    ・「四海文書(注4)注解抄」酉島伝法
    一番好きでした。最初はなんじゃ読みにくいと思っていたのですが、あれとこれが交わってきて、そしてそれは単なる新興宗教の顛末ではなく、実はそこに人類ではない知的生命体の存在・影響があったとしたらー?知的生命体の存在がうっすら見えてきてから読むと、全然受け取り方が違うので、そこの転覆感も楽しみました。長編として読みたい…。なんか既視感と思いましたが、おそらくグレッグ・ベアの「鏖戦」かな‥難しい漢字!

    ・「解説──最後のレナディアン語通訳」伴名 練
    こちらも趣としては「四海文書」と同じで、読み進めるうちに謎が明かされるというか全体像が見えてくる。最後まで読ませるのがさすがの伴名練でした

    0
    2023年11月30日
  • 未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

    Posted by ブクログ

    コンサルとSF作家の2足のわらじを履く樋口恭介氏が、未来を創造するという思想について書いた本。
    主旨は、未来は自分たちの行動が反映される余地があることから完全には予測できず、そして逆に言えば自分たちで創り出すことができる、ということを述べている。
    コンサルではロジックが大事だが、そのロジックの出発点は各個人が実現したい未来のビジョンがもとになっているので、まずはそのビジョンを取り戻す。そしてそれを具体的にやる手段としてSFプロトタイピングがあると述べて、その具体例を説明していくという流れになっている。
    文章のプロが書く文章なので非常にわかりやすく、すんなり読める「いい歯ごたえ」をもった本でした。

    0
    2023年02月04日
  • 異常論文

    Posted by ブクログ

    しばらく前に買い、読み進めていたものの途中で挫折。ゴールデンウィークに時間があったため、ようやく読み終えることができた。

    内容は本当に意味不明。巻頭言にもあったが、現実と虚構が入り混じりすぎている。登場している作家ですら現実なのか虚構なのか、実際にはいないんじゃないかと思ってしまうほどの異常さ。自分の知らないどこかで実際に起こっていそうな出来事や事件、それらの表現とリアルさ。理解しようにも理解できない。わかりたくてもわからない。不気味で脳内がぐちゃぐちゃになるのに読み進めたくなる作品。スペキュレイティブ・エンジン。

    ここに評価を書きたくなったのも、異常論文が紛れもなく「強い小説」だったからだと思う。

    0
    2022年05月05日
  • 異常論文

    Posted by ブクログ

    なかなか読むのにエネルギーを費やした本だった。そもそも論文を読みなれていないので、正常な論文と異常な論文との区別がつかない私である。どう読み、どう感じればいいのか戸惑う作品だった。異常論文とは事実を追求すると見せかけた虚構と思えばいいのだろうか。難しい作品ばかりだが、最初の「決定論的自由意志改変攻撃について」(円城塔)は未来を予測できないことを尤もらしい数式で読者を煙に巻くようで面白かった。最後の「解説--最後のレナディアン語通訳」(伴名練)は最も小説らしい作品で素直に楽しめた。

    0
    2022年01月08日
  • 異常論文

    Posted by ブクログ

    学術論文の体を取った虚構作品を”異常論文”という定義し、23本の作品を収めたSFアンソロジー。23本もあれば多様性も極めて高くなっており、質のバラつきはあるものの、数作品に関してはちょっと驚愕してしまうようなクオリティであり、アンソロジーとしてのレベルは非常に高い。

    最も驚愕したのは、鈴木一平+山本浩貴による「無断と土」という作品。これは架空のVRホラーゲームの謎を解説した人文学の論文テイストの虚構であるが、その作品で引用される菅原文草なる20世紀前半の詩人にフォーカスする。実際のテクストなどの分析を元にしながら、このVRホラーゲームでなぜ彼の作品が引用されたのかを明らかにしていく体を取っているのだが、しっかり脚注での解説や参考文献なども用意されていることから、全てが史実のように見える完成度を誇りつつ、微妙に虚構が入り混じっており、何が真実かなのかがわからなくなってくるうちに、どっぷりとその世界にはまってしまう仕掛け。

    ”異常論文”という概念によってバラバラだった作品間に1つの関連性を見出しつつ、新たな虚構世界を作り出すためのテクニックとしても十分に可能性を秘めているということがこの豊饒な作品を読むと深く理解できる。幾人かの作家についてはこれを機に単著を読みたいとも思ったし、日本の若手SF作家を知るためのアンソロジーとしても有益。

    0
    2022年01月02日
  • 未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉

    Posted by ブクログ

    SFプロトタイピングによる未来の創り方の本。未来は予測できるものではなく、スペキュレーション(思弁/思索/投機)すべきものととらえます、とあり、その必要性・必然性、そして手法論を紹介。未来はキャッチボールで投げるボールのような、というたとえが文中にあり、じぶんの中の「未来」感がアップデートされた本。

    0
    2021年10月31日