児玉敦子のレビュー一覧
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ネタバレ北京五輪男子シングル金メダリスト・ネイサンチェンによる自伝。
普段のインタビューも紳士かつ真摯そして頭脳明晰(ゆえにやや速い英語)なネイサンが綴る自伝はその性格から来る落ち着きとアスリートとしての情熱を存分に感じられました。
小さいころから五輪を目指し一家が(特にお母さん!すごい!)ネイサンのために協力し合って金メダルに辿りいたときにはこちらも「やったね!」となり、北京五輪当時を思い出しました!
読んでいて馴染みのある方々のお名前も出てきたりしてそれも興味深かったです。
これからのネイサンもネイサン自身が信じる道を邁進していくことを願っています。
※KADOKAWAさんのキャンペーンに当選していただいた本です。ありがとうございました。
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五輪を目指す人というのはネイサンに限らず小さい頃から五輪そしてメダルのために頑張るという決意をする人が多いですよね。それが「五輪=テレビで観るもの」の凡人の私からすると本当に未知の世界でした。 -
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芸術の側面のあるスポーツを行うフィギュアスケーターとしては珍しくかなり理知的で論理的な方なので、文章もわかりやすかったです。どの試合でどういう状況でどんなミスをして、、ということをきちんと覚えているのがすごいです。
彼のように賢く理知的な人でも、北京五輪の直前はコロナ禍や五輪への不安で眠れなかったと吐露しているところが印象的でした。ただ彼のすごいところは、こうした不安が起こることを受け止め、時に専門家のアドバイスをもらいながら、そのアドバイスを自力で取捨選択し、自分にとっての最適な不安への対処法を見つけて実践しているところです。
体操をやれば選手コースに誘われ、スピードスケートのコーチにもスカウトされかかる、学業をやらせればさらりとイェール大学に合格する(当人にとっては自然なことだったのか、イェール大学合格に向けた努力については一切触れていないことも印象的です。SATの数学満点取れるくらいの勉強はしていたはずなのに。)等、何をさせてもハイスペックな彼ですが、両親や兄弟、スケートの先人たちへの尊敬と感謝を忘れない姿勢がさすがでした。
そんな彼でも、初めての五輪である平昌では自分をコントロールできなかったり、日々の練習でコーチや母にわがままをぶつけたりと、失敗もあるのですが、そうした失敗についてもきちんと書く姿勢に誠実さを感じました。 -
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人間の住む土地に凶暴な森が入りこみ、人の住める場所は砦として築かれた壁の中だけになっていた。壁で生まれ育った少女フェザーは、生まれて初めて出会った「よそ者」メリルドゥンのために砦の宝物である望遠鏡を無断で持ち出したが、メリルドゥンに奪われたうえに殺されかける。望遠鏡がなくては、壁に暮らす仲間を危険にさらしてしまう。フェザーは相棒のウロコフェレット、スリークとともに、住み慣れた壁を出て決死の追跡を始めた。
わたしたちが暮らす世界とは違う生態系が広がるこの作品では、森がとても危険な場所になっている。植物の成長力がとても強くなり、動物たちも人間に有害だ。なぜそうなったのか、どんな仕組みなのかは語られない。フェザーにわからないことは、読者にもわからないのだ。それだけに、壁の外という未知の領域に踏み出したフェザーの恐怖や不安がひしひしと伝わってくる。野営で満足に眠れないフェザーの疲労がリアルだ。
印象的だったのは、城の人々の考え方だった。自分たちが海を越えたら、森が無い安全な土地に種の形で森を持ち込んでしまうかもしれない。安全に暮らしている人々の生活を危険にさらすかもしれない。だから、大海原に漕ぎ出すことはしないのだという自己犠牲のような考え方は、なかなかできるものではないと思う。居るか居ないか分からない他の土地の人類のために、自らが森から解放される道を閉ざすなんて、よほど崇高な精神の持ち主たちなのだろうか? わたしには理解しづらいと感じた。
森と人類の関係は、本来の自然と人類の関係を彷彿とさせた。本来、自然とは人類よりも強いはずなのだ。人類は集団を作ることで自らを守り発展してきた。これから、人類が攻勢に転じることがあるのだろうか? 結末のあとに想いを馳せるのも楽しい作品だと思う。
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森に侵食され壁のなかだけに人が暮らしている世界。壁の一角灰色男の門集落に住むフェザーは、冒険心にあふれた少女だった。だが集落のはずれで出会って外の話をしてくれたよそ者メリルドゥンに手ひどく裏切られ、望遠鏡を盗まれたうえに崖から突き落とされてしまった。望遠鏡は灰色男の門にとってかけがえのないものだ、このままではみんなのもとに戻れない。フェザーはペットのフェレットだけを連れ、メリルドゥンを追ってひとり危険でいっぱいの森に踏み入った。
ささやきの島でタッグを組んだエミリー・グラヴェットとのコンビ第二作。今回は、表紙が全て森の描写。ベースは黒。その上に森の様子が浮かび上がる。登場人物の描写は、本を開いてからになる。
フェザーたちの身なりが、髪は短く刈っており、囚人服のようだ。想像されるのは、ナチスドイツに駆逐される、戦争当時のユダヤ人だ。不気味に侵食してくる森は、自然破壊による、自然自体の人間への反乱とも受け取れるが、ユダヤ人に向けた迫害のメタファーとも受け取れる。そうなると、離れた場所にいる、それぞれに避難していた人たちが、連帯し、実現する未来は、実際に行われたゲットーの反乱とも。ただし、人々が目指しているのは森の消滅=一方の不在ではなく、自分たちが生き残る道=共存である。絵本なので、起承転結がはっきりしている。 -
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地球は生きているのだ。
人間中心にものを考えすぎている警笛に感じられるディストピア風冒険の児童書。
ちょっとナウシカを思い出す。
けれど今回もハーディングらしい世界観。
少女が問題解決のため奔走、大きな外界と向き合う勇気とガッツに引き込まれる。
過ちを正すのに命がけだ。
大きな危険な意思に飲み込まれない。
自己観察し、目標へひ走る。
望遠鏡は未来のビジョンや客観的視点としてよくメタファーとして使われるが道具そのものが大事な事なのではなく、人生経験そのもので補填できる。
そして…思いやりと恩返し。
それが離れた集団との協力に繋がる。
イラストもよくて大満足 -
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かつての繁栄時代につくられた〈壁〉に住む人々、少女が未知なる世界に旅立つ冒険小説 #千の目が光る森
■あらすじ
巨大な森に浸食された世界、かつての繁栄時代につくられた「壁」を住処としている人間たち。ある集落に住む女性フェザーは、世界を知っているというメリルドゥンと出会う。しかし彼に突然壁の上から突き落とされてしまい、望遠鏡も盗まれてしまった。フェザーは望遠鏡を取り戻すため、危険な森の中へ冒険に出ることになり…
■きっと読みたくなるレビュー
荒廃して森に浸食されてしまった社会を背景に、少女が未知なる世界に旅立つ冒険小説。
まるでジブリ映画をみているような感じですね。120ページほどの短いお話で、優しくのどかな挿絵も愛らしい。主にYA少年少女向けのファンタジー小説、どなたでも楽しめますよ。
まずエミリー・グラヴェット氏の挿絵が、ホント素晴らしいのよ。表紙を見て下さいよ、吸い込まれそうな森の緑と闇。そこに無数の眼の光。不気味で怖いけども、これから何が起こるか分からないといったドキドキ感が伝わってきますよね。
そしてパラパラをページをめくってみてください、かつての栄華が廃ったディストピアな世界。しかしそこは広大な森、植物、虫、動物といった、絶大な自然に包まれているのです。巨大な情報に追われ、目が回るほど忙しい毎日を過ごしている人こそ、本書を手に取ってほしい。きっと癒されること請け合いですよ。
物語としては少女フェザーが住んでいた望遠鏡を盗まれた上に壁から突き落とされ、未知の世界に出ざるを得ない状況に見舞われる。その中で様々な人や動物に出会い、経験を積み重ねていくというお話。
フェザーはペットのフェレットといつも一緒、でも特別な知識も能力もない。しかし彼女は一歩踏み出す勇気があり、感受性が豊かで、正義感と優しさにも溢れている素敵な少女。危険な森の中でも生きぬけていける理由が伝わってくるんすよね。
そして物語の後半、森の闇に足を踏み入れる。急に反転する世界観にドキリとさせられます。ペットを抱きしめて、暗闇を一歩ずつ慎重に歩いているような感覚になるのよ。こんなにも求心力が強い場面はなかなかありませんよ、素晴らしい表現力だったなー
さてフェザーは望遠鏡を取り戻すことができたのか、そして彼女の運命は? 特別に派手なこともなく彼女の冒険が終わるのですが、そこには時代や場所に限らない、人の温かさを感じましたね。
■ぜっさん推しポイント
本作はメリルドゥンが望遠鏡を盗むところから物語が始まる。彼がこの世界が何故荒廃したのか語るのですが、ここに現代の社会課題が詰まっている気がしますね。そして盗んだ望遠鏡はどうなったのか… その後のフェザー行動に、この難題を解決するためのヒントがあるんだと思いました。 -
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面白かった〜!良質なイギリス文学の冒険ファンタジーを読んだ満足感。
主人公は、トリスと呼ばれる女の子。建築技師の父を尊敬し、母の言いつけを守り、妹のペンを毛嫌いする。だが、実は、彼女大きな秘密が、と、あとはネタバレ。
最終的にこの家族の形が変わっていくのがいい。そして、トリスはトリステという名前をペンに付けてもらって、大切にする。まっすぐなゆえに捻くれざるを得なかった、ペンの変化は劇的だ。トリステの中に芽生える姉の意識も好き。
映画化を希望。『モモ』よりも個人的だけど面白い。あーだが、映像化すると少々グロい部分もあるか。アニメならOK?『コープスブライド』のようにストップモーションとか?
『嘘の木』を先に読んだが、こちらの方が、アクション多めで私の好み。『ホームズ』より南洋一郎訳の『ルパン』シリーズにハマった人にオススメ。 -
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そんなことする?という展開は、まさに海外ファンタジー。日本で同じことをしたら、常識がないとか迷惑かけるとか、人のことばっかり気にしちゃうけど…ほんと外国文化を感じる…!
迷惑かけられても、外国文化では後を引かないのかな。日本だとネチッこく覚えてるものだよな。ストレス溜めず、案外生きやすい文化なのかも。
後半から徐々に面白くなってきて、最後の展開もなかなか臨場感があり楽しかった。
文章から情景を思い浮かべるのは、やや難しかったけれど。映画化されたら面白いと思う。
翻訳書を久しぶりに読んだけれど、こんな感じだったかなぁ…。直訳とは言わないけど、たぶんこんな単語を訳したのかな、という箇所がちらほら。ストーリーよりそっちも気になってしまった。 -
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面白かったです。ハーディングは大人が読んでも面白いです。
困難に立ち向かっていく自己形成小説が特徴であり、今回も少女の冒険活劇だったけれど、舞台設定とキャラ設定が秀逸。
ピューリタン革命前の1634年頃のイギリスの激動の時代に、霊を憑依させた上、共存するという不気味で奇抜なアイデア。
10歳〜15歳。人生経験も少ないし味方もいない天涯孤独。
どんな能力をもってしても、一人ではか弱いほんの子供だけれど、メイクピースはたくましく大胆に周到に準備していく。生き残るために誰を信じて共存するか?
そのあたりも見守っていたくなる。
ピューリタンであろうがプロテスタントであろうが、王党派であろうが、議会派であろうが、大事なのは生きて出られることと立ち向かっていく強さ。
内なる声と話し合うのは誰もが天使の声悪魔の声ぐらいは持っているだろうけれど、
思えば本を作っていくこととも、人生そのものとも似ているだろう。
自由を得るため、ただ生き残るために奔走する異能の少女の味わい深いゴシックファンタジーだった。 -
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ファンタジーであり、ミステリーであった。
児童書であり、歴史書であり、伝記であった。
そして小説であり、自叙伝であり、哲学書であった。
これが児童書なのかと驚いた。様々な側面を持つ、何とも読み応えのある本。
翻訳本特有の読みづらさも少ない。
文庫本なのに1200円もするだけはある。
女性の権利があまりにも低く、読んでいるだけで嫌気がさすような差別を受ける中、それでも強く自分の信じた道を歩く女性が沢山出てきた。
序盤、話の中心は男性だったが、後半になるにつれてその舞台には多くの女性が台頭してくる。真っ直ぐにそれぞれの自分の信念を貫く母娘、どちらの気持ちもわかってしまい胸が苦しくなった。
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世界の運命を決する戦いに巻き込まれてゆくわけではない。死と生の均衡を保ち世界を救うために旅に出るわけでもない。
渡し守は、霧深い小さなマーランク島で、なすべき仕事を粛々と果たす存在だ。
敬意は払われていても、あくまでも職人として、家業として、死者が島に留まって災いを招かないように、壊れた塔の島へと船で運び続けてきた。
渡し守に向かないと父に告げられた少年が、悲しみや怯えに屈っしそうになりながらも、父のやりかけた仕事を引き継いで船を出すのは職責を全うする意志からだ。
この父と息子の厳しくも認め合う関係性が、死とは何かという幻想的な物語の芯となっている。
死者に思いを巡らし、死者の声に応えることは、仕事に必要ないどころか命取りでもある。
耳を塞ぎ、心を閉ざすのが必然。
感受性や共感する心を持ちながら、渡し守として生きることは、どう考えてもしんどいことに思えてくる。
優しさゆえに死者が残してゆく想いを受け取って生きることは、ときとして重荷を背負っていくことに他ならないのだから。
それでも、人は死に方だけでなく、生き方も選べない。ただ自分だからできることを、ただ自分らしく精一杯にやって、生きる。
決意とも違う、少年の柔らかな覚悟がさわやかだ。