フランシス・ハーディングのレビュー一覧
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◼️ フランシス・ハーディング エミリー・グラヴェット絵「ささやきの島」
才能の出逢い。死と生の狭間。別れと再生。
考えさせる児童小説。
イギリスで評価の高い児童小説作家と、同国を代表する絵本作家、挿絵画家。2人の女性に編み込まれた作品。人の情に基づいたストーリーとファンタジックな世界観、追跡劇。ふむふむ。
領主の娘が死に、渡し守である父のもとに、娘の母親から死者の青い靴が持ち込まれる。娘と同じ14歳のマイロは父に、渡し守には向いていないと言い渡されており、兄のレイフが主に手伝っていた。死者の魂を、靴とともに船で「壊れた塔の島」に連れて行き昇天させるのが渡し守の役割だ。
領主がマイロの家に来て、靴を返せ、と命じる。魔術師の力で生き返らせようと目論んでいるのだ。領主は力づくで靴を取り上げようとした。揉み合いの中で父は突然死んでしまい、レイフは囚われてしまう。靴を持って逃亡し、初めての航海に出たマイロに、父の霊がピタリと付き添うー。
追跡する領主の船には白と藍の2人の魔術師、首のない鳥を操り、5人の死者の魂を連れて船を動かしているマイロに迫るー。
日本神話のイザナギは、死んだ妻イザナミを追い、黄泉比良坂を越えて黄泉の国に至る。また仏教では三途の川が此岸と彼岸の分かれ目だ。マイロの世界の渡し守の航海はまさに死と生のはざまの旅といえる。霧に覆われた海と島へのアーチ・・物語のテンポの速さとはざまの世界、その掟の想像力に読み手の心を委ねる感覚。
領主は暴力を使う。しかし根底には娘への想いがあり、娘の魂もそれを感じている。マイロには父の魂が寄り添っている。少年の大きな体験、それは不器用な父の仕事を通しての、親子のふれあいでもあった。
やがて島に着き、死者が解き放たれる、その表現もまたどこかで聞いたような、でもああ、と感慨を持って見送るような形だった。近しい者にとって死者との永遠の別れは身体の根っこに堪えるような悲しさがある。死者も生への執着があるだろう。再生の形と、悲しみの中の安堵、その見えるところと見えざる新世界とのあわいの意味深さを想う。
フランシス・ハーディングはオックスフォード大出の英才で「嘘の木」「カッコーの歌」などで数々の賞を受賞している。ググると出てくる、黒いつば広の帽子を被り微笑む写真がいかにもな肖像だなと。絵のエミリー・グランヴェットもまたイギリスを代表する絵本作家で日本でも著書が刊行されているとか。
絵の方は白黒青の3色。版画チックでシンプルにも見えるが、幻想的な世界を実に見事に表している。文章のブロックの間にも、靴やロープや船のマークを入れたりと細かく工夫されていて、気がきいている。
いまショパン国際ピアノコンクールの予備予選が行われている。ショパンは、リストが評したように、アンビバレントな感情をメロディに込める。悲しみと喜び、別れと希望、過去と未来。そしてそのあいだ。
コンテスタントのマズルカやスケルツォをこの作品に重ねながら読み終えた。 -
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『嘘の木』の著者による異世界ファンタジー。発表は2014年で『嘘の木』より前。
舞台は地下都市カヴェルナ。生まれつき表情を持たない人々は訓練を受けて"面"(おも)と呼ばれる表情を身に付けて暮らしている。チーズ作りの匠•グランディブルのトンネルに突然現れた少女•ネヴァフェル。五歳くらいの少女は、それまでの記憶を無くしていた。外界から遮断されたトンネルの中で、チーズ作りの弟子として七年を過ごした彼女は、ちょっとしたきっかけからトンネルの外に出ることになる…。
ハイ•ファンタジーとしての"創り込み"が徹底しています。…と言うより、あまりにも手が込んでいて、とても万人受けする物語とは言えない。例えば、"ワイン"とは''記憶をあやつる効果をもたらすために醸造されるもの"で、『ワイン=魔法薬』と考えながら読まないといけません。
さらにしんどいのは、「まるで〜」「〜のような〜」という比喩表現が無茶苦茶多いこと。比喩は読み手に具体的イメージを喚起させる役割なのだろうが、あまりに多用、あまりに突非なので、注意が必要です。
…と、余り好意的ではない事を書き連ねたけれど、結末はしっかりしていて納得の終わり方です。約500ページ•全33章のうちの25章辺りまで(!)延々と積み重ねられた謎や疑問はきちんと解読されます。ただそこまでが長い…。
すごく魅力的だけど、重度のハイ•ファンタジー愛好者向け…ですかね。 -
Posted by ブクログ
現実世界にも作中の『書記長』がいて法律や契約を反故した者には死の裁きを…という事であれば、現在、市政に関わる多くの為政者は死を免れないであろう。 今まさにトピックされているキャッシュバック騒動に加担している輩は言わずもがな、選挙活動中『国民のために』とうそぶいた奴らもという事になれば、一体どれだけの政治家がサバイヴ出来るのか?
そして、
それはこの国に限らない。
今、世界中で勃発している戦争や紛争を先導、或いは加担している奴らの殆どは指導者では無く、権力者…いや、肥大した自己顕示欲を抱える狂人なのだ。
そんな輩によって、
今、世界は憎悪と怨嗟に満ちている。
世界中に『呪い』が蔓延って、作中の彼をもってしても最早容易にほどくことはままならないだろう。
いっそ虐げられた者達の呪いが束になって、奴ら全員カモメにでも変えてしまえば良い。
俯瞰から見下ろせば、キ○ガイどもにも新しい視野が生まれるかもしれない。
…そんなこたぁねぇか(笑)。
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Posted by ブクログ
児童文学とは思えぬダークミステリー。
これはファンタジーとされているが
ミステリー要素が最初から散りばめられ
学者の父が犯した捏造の噂から逃れる為
一家はある島に逃げる様に移住する。
そして、父親の不審死から謎の植物の存在
が発覚する。
それは人間の吐く嘘を養分にして大きく
実がなり、それを食すと世の中の理や真実が
ビジョンとして頭の中に映し出される
と言う不思議な力をもった植物だった。
この時代の女性達は男性に従ってしか
生きられず、娘は父の死の謎を解き明かす
為に今までの抑圧された生活から
一歩踏み出し、嘘の木と父親の死の謎を
解き明かす。
抑圧されたこの物語の全ての女性達は
最後の最後に嘘の木の消滅と共に
全ての鎧を脱ぎ捨て、力強く生きるのだ。 -
Posted by ブクログ
時代背景をよく表した本であると思った。
当時の女性は、こうあるべきだ、といったものがとても強かったのだろう。
そして、そのように生きなければ生きられないくらい厳しい時代だったのも事実。
だが、そんな中でも少数派として生きていく人は、誰かに共感してほしく、どうにかして自分を貫いて、表には出ない形で活躍していく。
主人公の周囲を考えないで突き進んでいく行動力はよくもあり、悪くもあるが、こうあるべきだ、という概念が強すぎる時代には必要なのかもしれない。
今の比較的自由な価値観を持つことが許されるようになった時代の前には、数々の苦労があったと思う。その苦労があったからこそ、今の自由があるのだと感謝して生きていこうと思った。