宮崎智之のレビュー一覧
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昔はエッセイ好きだったけど、近年は著者のエゴの匂いが気になって読めなくなっていた。本書は、解説でも指摘されているが、著者が自意識との距離感がうまいので、読める。
例えば、アルコール中毒が原因で離婚した話、東京の西の郊外出身であること、35歳問題(同世代なのでよくわかる)、フィッシュマンズや東畑開人の引用など。背伸びしていないし、小手先ではなく、ちゃんと自分が身銭を切ったもの、人生の時間をかけたものというフィルターをかけてから書いていることがわかる。
ただ、不満もあって、①自分は弱いみたいな認識は、あえて表明することではないように思う。上に書いたことと矛盾するけど、②背伸びをしな過ぎと思う。その -
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晶文社のマークってサイ?と思いつつ購入。こういう日記が好きなのだ。そして分厚い。500ページ弱。著者はフリーライター。アルコール中毒から脱出して断酒中とのこと。そんな感じはあまりしない。
飼犬への愛情が微笑ましい。僕はここまで犬を愛してなかったなあと反省した。
鎌倉文学館は『豊饒の海』の松枝公爵別荘のモデルなのだそうだ。今度行ってみたい。
著者も「頷きすぎて、首がもげそうになった」と書いている長井短さん(モデル、女優さんらしい)の言葉の引用。
「ちょっと疲れたからもう全部やめて寝たい」とかすぐにでも大きな声で言いたいのに
「いやでも、今の私の状況は誰かにとってもとても羨ましいことであ -
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平熱のまま、この世界に熱狂したい
一見矛盾を孕んでいるように思えるが、その意味する内容がページを追うごとに朧げに輪郭を帯び、しっくりと心に馴染んでいくのが不思議だった
日常的に刺激を求め、何者かになろうとしたり、目標や希望を持って強くあろうと奮闘したり、そんな熱のこもった毎日を生きるのが是とされ、それが当たり前だと思ってしまうが、ふとした瞬間にその火力の不自然さ、違和感に気づくことがある
自分は何者でもなく、人生に意味などない、という理解できていたはずの当たり前の事実を何かの拍子に痛烈に自覚させられる
そうした折に、自分を鼓舞して前進のように思える何かに無理やり身を投じるのではなく、ありのまま -
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ネタバレ穏やかに読む。
**凪の生き方。**
「凪」という考え方。
できるだけ詰め込んで、コスパとタイパを上げるように迫る社会的風潮の中で、空白を恐れない余裕を確保するためにも、ひとつ、ためになる考え方です。
__無風状態のなかで世界を見つめ直すことにより、すでにそこにあったものの豊かさに気がつく。凪は、なにかが溢れ出し、なにかが変わる前兆でもある。
変化の激しい世の中で、凪の状態に身を置くこと。それは退屈な人生を意味したり、日常に埋没して思考停止したりすることではないのだ。日常にくまなく目を凝らし、解像度を高める。そして切り替わった瞬間の風を全身で、肌で感じとる。そういう生き方である。
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Posted by ブクログ
アルコール中毒と離婚を体験した作者の素朴なエッセイ。アル中の苦しみというよりは、なんでもない日々の生活や思い出のことなどが多い。タイトルには惹かれたものの、作者の真面目さがにじむ文章はつるつるした読み心地で刺さるところがなかったかも。平熱のままでというよりは、もっと生き生きこころを動かしていきたい、というのが最近の個人的な気持ちでもあるが。
親類に重度から軽度のアル中たちがいて、作者が酒について言っていることもなんとなくわかると思う。しかし私自身はアルコールで何かが解決するとか忘れられるというような実感が全く得られなくて依存することはなかった。そういうところからして作者とは感性がすれ違っている