宮崎智之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
非常に良かった。
半径100m以内にある息苦しさとか、実は自分が気付きさえしていない矛盾とか、理想とのギャップとか。そういったことに向き合い、言語化をしてくれる。誰かの文章を引用しつつ、彼自身が受けとめていくプロセスを提示してくれるので、こちらもまた言語化できていなかった半径100m以内のモヤモヤを受け入れられるような、感じがする。自分もやっぱり文を書いてみたいなと思えた。こういった誰かをそっと支える文章は、あればあるほどいい。その人の視点からしか書けない文章があるし、なんというかあればあるほどいいのだ。
ーーなるべくなら楽しく生きたい。深く今に没頭し、喜びに浸りたい。しかし、それができない -
Posted by ブクログ
そろそろ自分が何者になるかを考えろと先輩に言われて、本書の目次からぴったりなタイトルを見つけて、購入しました。
本書を読み終わりましたが、何者になるかの答えは、まだ私の中で漠然としている。
それでも、「平熱のまま、この世界を熱狂したい」という生き方はどこか自分に合っているのではと思い、好きな表現の1つとなりました。
医者から飲酒をストップされるほど、著者がアルコール依存症であることなど、自分の弱さを表現できるところに共感を集めるのだと思いました。
泥臭い中に、奥に秘めた力強さが感じられました。
悩んでいる人、何かにもがいている人におすすめしたい一冊です!
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Posted by ブクログ
ユーモアがあり個人的なエピソードがおもしろおかしく描かれている。W解説で、どちらの方も「距離感の取り方が上手い」と評しており、語る対象との距離感、また自己愛との距離感が絶妙であり、それが著者独特の作風を生み出している。
また、文芸批評家の方なため多様な文学作品が引用されており、知らない世界が知れる。個人的には「イワンイリッチの死」のくだりが心に残った。
また著者自身が自分の弱さと向き合い、著者と同じく「弱いままで生きていくことを決めた人」が「この世界も、あながち悪いものではないのかも」と思ってくれることを願うとあとがきが締められているなど、読者のことを思って書かれた本だと感じた。 -
Posted by ブクログ
印象的なタイトルに惹かれて購入し宮崎さんの文章も初めて読んだのですが本当に読んで良かった。アルコール依存による入院と人生の変化という大きな出来事がどうしても目立つけど、1人の人間の前にあるのはあくまでも過ぎていく時間と続いていく生活なのだ。喪失や破綻、人生のままならなさと他の人はどう向き合っているのだろうかと、「弱さ」に向き合うことに触れる本を読むときには特に関心があるのですが、その関心のさらに奥にあった自分の言語化できていなかった感覚を言葉にしてもらえた気がする。たくさん引用される文学や音楽も良かった。
ひさしぶりに中也の詩を読みたくなったし、未読だった作品も多くいくつか読んでみたくなった。 -
Posted by ブクログ
文芸評論家・エッセイストの宮崎 智之さんのエッセイ本。全員に読んでみてほしいと思える一冊だった。
2024年現在、文學界で「新人小説月評」という歴史ある書評コーナーを担当されている宮崎さん。本文で用いられる引用のドンピシャ度が半端なく、万葉集から音楽まで多ジャンルに及ぶのが圧巻だった。
誰がどこに何をどんなニュアンスで書いていたのか、それが自分の伝えたいことをどう裏付けするのか、宮崎さんの尋常ではない読書量の一部をお裾分けいただいたようで、全てのエッセイをワクワクしながら読んだ。
アルコール中毒と離婚を体験し、それが宮崎さんの人生を語るに切り離せない切実なものとなっていること。自分の弱さを -
Posted by ブクログ
ネタバレ著者が自身の経験を通して得た「弱さ」についての学びや気づきを、さまざまな角度から認めているエッセイ的な本。
印象に残っているポイントがいくつかあって、
一つは、自分が誰かに必要とされている実感がないと人間は生きていけない、そういう弱さがあるんじゃないかというところ。
人間って複雑だよなぁと思うのは、誰かにとってかけがえのない存在でありたい、自分がいないと困るくらい誰かに必要とされる存在でありたいという思いがある一方で、自分がやらねば、自分がいないと、という責任感とか義務感みたいなもので自分自身を苦しめてしまうこともあるということ。
何かしらの「役割」が必要だから結婚とかするのかな、と思った -
Posted by ブクログ
個人的な弱さを受け入れる、あるいは向き合うという「覚悟/決意」を「平熱/日常」の中でしていくこと、その豊かさを情緒豊かに書いたエッセイだった。
読んでいてここで書かれている「弱くある贅沢」はどこか立川談志師匠が言われていた「業の肯定」のようだなと感じた。とてもやさしい視線と人情味がある。
強いか弱いかで分けてしまいがちの世界。そして社会がグローバル化していって、「強い」ことが以前よりもさらに正しいことになっていくとどうしても息苦しさが出てきて、「弱い」ことがダメだったり悪だということになってしまう。
そういう世界では一度負ければ終わりだし、正しさを証明するためには勝ち続けなければならない(