【感想・ネタバレ】平熱のまま、この世界に熱狂したい 増補新版のレビュー

あらすじ

アルコール依存症、離婚を経て、取り組んだ断酒。自分の弱さを無視して「何者か」になろうとするより、生活を見つめなおし、トルストイとフィッシュマンズなどに打ちのめされながらも、すでにあるものを感じ取るほうが人生を豊かにできると確信する。様々な文学作品を引きながら、日常の風景と感情の機微を鮮やかに言葉にする。新たに3篇を加え増補新版として文庫化。

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Posted by ブクログ

エッセイは普段手に取らないが、普段自分が思っていることの言語化が綺麗にされていて購入。
自分には足りない語彙力や思考力、知識などの部分を著者がわかりやすく言語化しておりとてもスッキリできた。
普段自分感じられていない世界、もどかしかった理由に加えクスッと笑えるエピソードもありかなり読みやすかった。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

非常に良かった。
半径100m以内にある息苦しさとか、実は自分が気付きさえしていない矛盾とか、理想とのギャップとか。そういったことに向き合い、言語化をしてくれる。誰かの文章を引用しつつ、彼自身が受けとめていくプロセスを提示してくれるので、こちらもまた言語化できていなかった半径100m以内のモヤモヤを受け入れられるような、感じがする。自分もやっぱり文を書いてみたいなと思えた。こういった誰かをそっと支える文章は、あればあるほどいい。その人の視点からしか書けない文章があるし、なんというかあればあるほどいいのだ。

ーーなるべくなら楽しく生きたい。深く今に没頭し、喜びに浸りたい。しかし、それができない。現実はあまりにもあけすけで、人生はままならない。社会は身も蓋もなく、弱いものにはいつだって冷淡だ。もういっそのこと心をなくしたほうがどれだけラクなことか。考えるのが面倒臭くなって、幾度となくそう思いながら生きてきた。各す言葉でも、煽る言葉でも、奮い立たせようと親打つ言葉でも、はたまた諦めを誘う言葉でもなく、少しでも「この世界も、あながち悪いものではないかも」と思える言葉を、僕は探している。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

自分の心の中にあった何とも言えない漠然としてた感情を、突き詰め、言語化してくれている本だった。

著者は、本当の意味の優しさを持っている方であり、
等身大の自分で"弱さ"に向き合える"強さ"を持っている方なんじゃないかと思った。

章ごとに「本当に同一人物が書いているのだろうか...?」と思ってしまうほど、雰囲気が変わるのも良い。人間らしさががある。
同じ人間でも、その時の気分によって
感じることや見える世界は移り変わっていくのが当然で、そんな"ありのまま"が文章から感じられた気がした。


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2025年10月10日

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ネタバレ

今自分が欲しい言葉たちが沢山見つけられた本だった。多分今の私が吸い寄せた。刺さった。共感。

「寂しさ」に関するお話が心に残った。
寂しさとは人生への眼差しそのもの。常に視界を覆う薄い霧のような感情。
これを感じながら生きることは多分弱いもとのとして課された強さであり、そんなふうに平熱のままこの世界に熱狂したい、と思った。

あとは、誰かがつらかったら、周りも同じくらいつらい思いをしなければならないという考えはおかしい。という所に、言ってくれてよかったと救われた。楽できるならみんなもっと楽していいよね。

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2025年08月30日

Posted by ブクログ

著者自身が弱さを認めて、生活の中で起こる機微を感じて著者自身と向き合い、搾り出された雫を見事に文章に綴ったエッセイ集。
著者が人生をかけて丹念に磨いた宝物たちに出会える、そんな一冊です。

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2025年07月20日

Posted by ブクログ

「凪」という言葉が印象的に使われていて、まさに凪のような状態でいるからこその文体だった。これは諦観とか寛容とかとは違っていて、自分の弱さや寂しさを認めることで自分以外の人間の弱さや寂しさをも認められるようになった筆者の経緯に由来するものだと思う(良い表現が見つからないけど…)。

35歳問題はこれからその年齢を控える僕にとって特に印象的なテーマなんだけど、過ぎた時間や残された時間に対してシビアになってしまいがちな目線を少し和らげてくれるような言葉が綴られていて、どこかほっとする読後感が得られた。

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

平熱のまま、熱狂
その感覚がすーっと落ちる素敵な本
この作者の温度感や世界の感じ方がとても好きだと感じると同時に、随所に散りばめられる文学からの引用に、少し圧倒される
沢山読み込み、自分の中に言葉を取り込んだからこその気づきが綴られていて、読んでいてとても楽しかった
人生を味わうこと、人間であることを楽しむことに繋がるような、でもとても身近に感じる、心地よい距離感の本でした。

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2025年06月21日

Posted by ブクログ

そろそろ自分が何者になるかを考えろと先輩に言われて、本書の目次からぴったりなタイトルを見つけて、購入しました。

本書を読み終わりましたが、何者になるかの答えは、まだ私の中で漠然としている。
それでも、「平熱のまま、この世界を熱狂したい」という生き方はどこか自分に合っているのではと思い、好きな表現の1つとなりました。

医者から飲酒をストップされるほど、著者がアルコール依存症であることなど、自分の弱さを表現できるところに共感を集めるのだと思いました。
泥臭い中に、奥に秘めた力強さが感じられました。

悩んでいる人、何かにもがいている人におすすめしたい一冊です!

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2025年05月01日

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ユーモアがあり個人的なエピソードがおもしろおかしく描かれている。W解説で、どちらの方も「距離感の取り方が上手い」と評しており、語る対象との距離感、また自己愛との距離感が絶妙であり、それが著者独特の作風を生み出している。
また、文芸批評家の方なため多様な文学作品が引用されており、知らない世界が知れる。個人的には「イワンイリッチの死」のくだりが心に残った。
また著者自身が自分の弱さと向き合い、著者と同じく「弱いままで生きていくことを決めた人」が「この世界も、あながち悪いものではないのかも」と思ってくれることを願うとあとがきが締められているなど、読者のことを思って書かれた本だと感じた。

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2025年03月03日

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印象的なタイトルに惹かれて購入し宮崎さんの文章も初めて読んだのですが本当に読んで良かった。アルコール依存による入院と人生の変化という大きな出来事がどうしても目立つけど、1人の人間の前にあるのはあくまでも過ぎていく時間と続いていく生活なのだ。喪失や破綻、人生のままならなさと他の人はどう向き合っているのだろうかと、「弱さ」に向き合うことに触れる本を読むときには特に関心があるのですが、その関心のさらに奥にあった自分の言語化できていなかった感覚を言葉にしてもらえた気がする。たくさん引用される文学や音楽も良かった。
ひさしぶりに中也の詩を読みたくなったし、未読だった作品も多くいくつか読んでみたくなった。

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2024年11月30日

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文芸評論家・エッセイストの宮崎 智之さんのエッセイ本。全員に読んでみてほしいと思える一冊だった。

2024年現在、文學界で「新人小説月評」という歴史ある書評コーナーを担当されている宮崎さん。本文で用いられる引用のドンピシャ度が半端なく、万葉集から音楽まで多ジャンルに及ぶのが圧巻だった。
誰がどこに何をどんなニュアンスで書いていたのか、それが自分の伝えたいことをどう裏付けするのか、宮崎さんの尋常ではない読書量の一部をお裾分けいただいたようで、全てのエッセイをワクワクしながら読んだ。

アルコール中毒と離婚を体験し、それが宮崎さんの人生を語るに切り離せない切実なものとなっていること。自分の弱さを心から認めることで、見えてきた本当の自分。これほどまできちんと、誤魔化すことなく自分と向き合っている人を知らない。全てに一生懸命取り組むしかないという覚悟が伝わってきた。

———紹介(公式より)———
アルコール依存症、離婚を経て、取り組んだ断酒。自分の弱さを無視して「何者か」になろうとするより、生活を見つめなおし、トルストイとフィッシュマンズなどに打ちのめされながらも、すでにあるものを感じ取るほうが人生を豊かにできると確信する。様々な文学作品を引きながら、日常の風景と感情の機微を鮮やかに言葉にする。新たに3篇を加え増補新版として文庫化。

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2024年09月04日

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ネタバレ

エッセイはこれまでも好きだったが、それはエッセイの中に表れる筆者の棘、毒っ気の痛快さや新鮮さへの感動という意味合いが強かった。
この本には棘や毒っ気を全く感じなかった。それでも不思議とこの本はすごくささった。解説で述べられているように筆者の飄然さ、自己愛との付き合い方の上手さが文章をとても魅力的なものにし、読者を惹きつけるのだろう。

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2024年08月22日

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時々、絶望的で真っ暗闇な寂しさに襲われて、時が流れていくのが怖くなることがある。ずっとこの寂しさは自分の心の問題だと思っていたが、宮崎さんは「寂しいという感情に寄り添いながら生きることこそ人生」だとおっしゃっていた。心の弱さや寂しさと向き合い続ける宮崎さんとこの本が、自分の理解者であり仲間だと思えた

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2024年07月15日

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「僕は強くなれなかった」という章で始まるエッセイ。引用される本の多くがわが家の本棚にもある本なので、親近感を持って読み進めた。コロナ禍前後の時期のもののためすこしダレたりしながら、各章ごとに刺さる文章があった。また読み返したいし、大切な本になりそう。

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2024年07月09日

Posted by ブクログ

本屋でタイトルに惹かれ手に取って、「打算的な優しさと〜」を少し読んで購入を決め、「35歳問題」で毎週父の見舞いに帰省した事を思い出し感傷的になり、「ヤブさん、〜」で思わず破顔し、好きな作家さんがまた増えた。

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2024年10月16日

Posted by ブクログ


なんて逆説的なタイトルか!と惹かれて書店購入。

読んでみて、私が思う本書の
キーワードは『凪』や『平熱』。

社会(自分を取り巻く世界)と
調和しながら生きていくためのヒントだなぁ。

自分を取り繕うのではなく、
自分の弱さと思う部分や、
変化することをありのままに受け入れてみる。
まずはそこから。


この世界に辟易したり、嘆き、何者かになろうと必死に焦るのではなく、
わたしたち一人一人の人生を鷹揚に送るためのメッセージが詰まった本だと思った。

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2024年09月18日

Posted by ブクログ

面白かったなぁ。
物書きとしての知識量や現象に対しての向き合い方が程よい。
遠すぎもなく、近すぎもなく。
ものを自分の世界で見るコツを教わった気がする。
序盤は筆者の人生にまつわること。
後半はこれからの人生も見つめている。

平熱のままこの世界に熱狂したい、という言葉には納得できるものがあった。それを感じるために生きているんじゃないかと思うほどに。
オレンジアンドタールで言えば、オーリーをする瞬間、星野源で言えば、世界はアメーバ状になるみたいなことだろう。
いずれにしても、学びの多い本になったことは間違いない。日常を丁寧に生きる!

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2024年09月18日

Posted by ブクログ

昔はエッセイ好きだったけど、近年は著者のエゴの匂いが気になって読めなくなっていた。本書は、解説でも指摘されているが、著者が自意識との距離感がうまいので、読める。
例えば、アルコール中毒が原因で離婚した話、東京の西の郊外出身であること、35歳問題(同世代なのでよくわかる)、フィッシュマンズや東畑開人の引用など。背伸びしていないし、小手先ではなく、ちゃんと自分が身銭を切ったもの、人生の時間をかけたものというフィルターをかけてから書いていることがわかる。
ただ、不満もあって、①自分は弱いみたいな認識は、あえて表明することではないように思う。上に書いたことと矛盾するけど、②背伸びをしな過ぎと思う。その慎ましいスタンスは同時代の自分も取りがちだが、そこが鼻につく時もある。
解説が山本貴光・吉川浩満という意外性。たしかに、引用うまい。

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2024年09月10日

Posted by ブクログ

多くの人は飾ったり隠したりするようなことも、あまりに率直に語られるのでこういう知り合いがいたような気がしてしまう。とてもさらっと読めて、大事なことを読み落としているような気がする。

折り返し地点の栗の木。今をとらえる。

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2024年09月06日

Posted by ブクログ

気持ちが湧き上がるでもなく、前を向かせるわけでもない。
ただ、今と日常を愛おしく思う、そんな作品でした。

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2024年08月19日

Posted by ブクログ

「私たちが真に求めているのは自由ではない」。漠然とした願望を表現するのではなく自由とはどういう事実かを考えることができた。何もかもを手放してしまいたくなる時があるが、よく考え何が自分にとっての自由か吟味していきたい。

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2024年08月09日

Posted by ブクログ

感想
弱さ。向き合っているようで目を逸らしている。なんとか戦わないで済むように。それでは成長しない。楽しくない。ずっと続く孤独への誘い。

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2024年07月16日

Posted by ブクログ

著者の宮崎さんは、自分への解像度が高いひとだなと思った。私は、自分自身や世の中への自分なりの解像度が高い人に憧れがある。これだけ見つめられる人であることを羨ましいと思った。
自分が忘れかけていたものを思い出させてくれたような節がたくさんあって、自分もまた、世界を見つめ直してみようと思えた。

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2024年06月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

非日常が好きな人は多い

その理由は、ワクワクするから。というのはあまりに単純すぎるのではないか

"非日常には非日常しか起こらない"
"非日常では、その非日常性がもたらす何かに焦点が絞られる"

日常だと気づきすぎる様々な細部な物事への、気づきのストレスは非日常では見えないがゆえにもたらされない

それがストレス解消の正体のひとつなのかもしれない


そうして、それがきっと熱狂でもあるのだと思う
平熱は現実、日常に在る自分
そんな平熱を抱きながら熱狂することは壊れない対策とも言えるように感じた


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2025年06月22日

Posted by ブクログ

エッセイ。
弱い自分を見つめることは難しいが、そこに挑み、受け入れるまでの紆余曲折のようなもの。
そして、受け入れた先の優しさが溢れている。
日常の風景の切り取り方、感性が独特で、文学作品との引用で、より際立つ。
でも、どことなく暗さを纏っている本なのは、人生がそうゆうものだからだろうか。

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2025年04月03日

Posted by ブクログ

平熱のまま、この世界に熱狂したい
一見矛盾を孕んでいるように思えるが、その意味する内容がページを追うごとに朧げに輪郭を帯び、しっくりと心に馴染んでいくのが不思議だった
日常的に刺激を求め、何者かになろうとしたり、目標や希望を持って強くあろうと奮闘したり、そんな熱のこもった毎日を生きるのが是とされ、それが当たり前だと思ってしまうが、ふとした瞬間にその火力の不自然さ、違和感に気づくことがある
自分は何者でもなく、人生に意味などない、という理解できていたはずの当たり前の事実を何かの拍子に痛烈に自覚させられる
そうした折に、自分を鼓舞して前進のように思える何かに無理やり身を投じるのではなく、ありのままの自分を通して知覚する確実な存在に目を向けていきたい、凪の時間に感覚を研ぎ澄ませることでもっと鮮やかに、等身大に、世界を経験したい、そう思わせてくれるエッセイだった

何かを喪失しなくても、元来人間は寂しさを感じた状態であり、寂しいとはdoではなくbeなのである、という表現が好き

そもそもエッセイはあまりタイプではないけれど、文献からの引用がどれも巧みで、文学への並々ならぬ愛が伝わってきた、物語の方が好きだけど!

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2025年01月22日

Posted by ブクログ

エッセイといえば日常のクスッとしたことや、モヤモヤしたことを描いた軽い作品、というイメージでした。

それに比べてなんと知的なことか。
心に刺さることを書こう、とか
哲学的なことを書こう、として書いていないのに、結果としてそうなっている。

また引用される文献のすべて未読、どころか存在もしらないものばかりで、
なのにそこから導かれる内容には納得できる。読み直すことでまた違う価値観を見つけそうな作品です

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2024年09月28日

Posted by ブクログ

大事な事、素晴らしく共感できる事の9割は補章の方に描かれているのでこれから読む方はぜひ増補新版を読んで欲しい。

残りの1割はヤブイヌの話。
ヤブイヌ…先月から東山動物園で公開してる…
かわいい…超見たい…

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2024年08月02日

Posted by ブクログ

アルコール中毒と離婚を体験した作者の素朴なエッセイ。アル中の苦しみというよりは、なんでもない日々の生活や思い出のことなどが多い。タイトルには惹かれたものの、作者の真面目さがにじむ文章はつるつるした読み心地で刺さるところがなかったかも。平熱のままでというよりは、もっと生き生きこころを動かしていきたい、というのが最近の個人的な気持ちでもあるが。
親類に重度から軽度のアル中たちがいて、作者が酒について言っていることもなんとなくわかると思う。しかし私自身はアルコールで何かが解決するとか忘れられるというような実感が全く得られなくて依存することはなかった。そういうところからして作者とは感性がすれ違っているのかもしれない。

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2024年07月11日

Posted by ブクログ

一部は著者の弱さを中心とした世界観が展開される。哲学よりのエッセイで、引用される文章も興味深くグッと引き込まれた。著者の弱さを描かれることで、とても親近感のようなものも覚えた。

後半にいくにつれて歳も重ねていくと、なんだか立派な感じがしてきて、引用もなんだか説教のように感じられてしまってハイハイ…と楽しさが減速してしまった。結局、結婚もしてアル中も治って子どももいるということ、著者の“まとも”感に裏切られたように感じてしまった。(勝手に前半でシンパシー抱きまくった自分が悪い。)

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2024年07月06日

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