尾崎英子のレビュー一覧
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ネタバレフィンランドの森にひっそりと佇む「ホテルメドゥーサ」。そこを訪れるのは、年齢も性別もばらばらな日本人4人だった。
事件から逃げてきた占い喫茶のオーナー、亡くなった妻にどうしても会いたい男性、居場所を探し続けている女性、子育てを終えて幼い頃の不思議な体験を確かめに来た主婦。共通するのは「くらげキャラメル」と「異次元」というキーワードだけ。
読み進めるうちに、フィンランドの森の深い霧とその匂いまで感じられるような気がした。異次元という向こう側の世界がくっきりと描かれすぎていないぶん、想像がどこまでも広がっていく。
なかでも、ある登場人物が語る「後戻りできないからこそ今の自分がここにいる」という考え方には、す〜っと心が軽くなる感覚があった。やり直せないことを悔やむのではなく、その先にいる自分を肯定してくれるような言葉だった。
4人それぞれが抱える悩みも読み応えがあり、人生に迷いや後悔を抱えている人ほど、彼らに自分を重ねてしまうのではないかと思う。読み終えたあと、しばらく「自分なら異次元に行きたいと思うだろうか」と考えた。
悩みも不安もあるけれど、それでもこの世界で生きていくことは、悪くないのかもしれない。そう思える作品だった。 -
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不登校から全寮制のフリースクールに入所することにした中学2年生の主人公がの1年半にわたる生活を描いた小説です。
「学校に通う」ということだけがすべてではない。相手がどのように感じ、考えているかは決してわからないのだから、思い悩んで苦しむのではなく、自分の気持ちに正直に生きればいい。他人から指示されたことや望まれることに従うのではなく、自分が何をしたいのか、自分はどう考えたいのかということにじっくりと向き合うことがよい。
そんな、「ありのままでいること」の価値を改めて感じさせてくれる物語でした。
ぎくしゃくしていたり、どうしてもわかり合えずに反発している家族であっても、しばらく距離を置いてみたら以外とわだかまりが融けて、想像していたよりもストレスなく接することができる、なんてこともあります。
作中のセリフにもあるように、「スタンドバイミー(そばにいて)」と願う関係性だけでなく、「スタンドバイユー(世界が敵になっても、あなたのそばにいてあげる)」といえる関係を築くことができるような人生を、目指したいと思います。
人に自分の悩みや辛さを「話す」ことは、その痛みを「離す」ことにもつながる、だから人に話を聞いてもらうと楽になる、というセリフには説得力がありました。 -
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読みやすさ★★★★★
誰かにあげたくなる★★★★★
満足度★★★★★
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うつのみやこども賞の作品をいつか全制覇するぞ!と決め、一番最新の令和5年度第40回にて受賞された『きみの鐘が鳴る』を読みました。
児童書だからって甘く見てました。登場人物の子供たちの心情にリンクするように、まさかこんなに自分の心までぎゅっと締め付けられるなんて……。
中学受験に挑む小学6年生子供たちが主人公のお話ですが、中学受験を経験したことがない人、もしくはこれから自分の子供が中学受験を経験するという場面になった時こそ、親が読んで欲しい一冊だと思います。 -
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こちらも、子どもが四年生くらいになったら読ませたい。
成績の上下、合否判定、塾のクラス移動、
この年代の子どもたち特有の、クラスの友人との関係悪化や、教育虐待の毒親(私立小学生…)、保健室登校、いじめ。
中受の模様もさることながら、そういった環境面で辛いことがあった時のケアが何より親には重要なんだなと。
★家庭を安心できる場所にすること。
★友人や兄弟と比べないこと。
★子ども自身の意思で行きたい学校を目標とすること。(少なくとも強制ではなく)
息抜きの時間を尊重すること。
転塾を選択肢に入れること。
★模試やテストの結果に一喜一憂しないこと(無理かも)
★未来を見据えること。幸せな未来を信じること。
他人は客観的に見て、愚かだと判断したら気にしない、相手にしないこと。逃げは大事。
万が一のことがあっても子どもを責めない。親がBプラン、Cプランを考える。全落ちは禁忌。 -
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ネタバレ自由奔放に生きてきた母仁子が末期ガンに罹患していることが分かってから、亡くなるまでの数か月を過ごす家族たちの物語。
周囲の人々の優しさとか、死にたいする心構えとかが感銘深くて良い。優兄ちゃんの優柔不断さ、ミカ姉ちゃんの緩和医療に携わる者の覚悟、文子の愛情深さ。こんないい人たちを育てた親、すごくいい人だろうと思いきや。
本当の主人公ともいえる、彼らの母仁子がとにかく奔放すぎる。俺の親がこんなだったらどうだろう?彼ら兄妹のように優しく(勿論けんかやもめ事はあるのだが)接することができるのだろうか?少なくとも配偶者の親だったり兄妹だったりの関係なら、縁切りしてるだろうなぁ。父親もなんとも頼りないくせに頑固だし。
家族の中って、外野には分からない色々があるもんだろうと、この歳になって思うけど、その色々も含めて家族親族なんだろうけど…。 -
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中学受験に挑む少年少女の姿を描いた青春小説でした。
『青春小説』というと、青春時代を描いた作品=中高生〜青年の作品というイメージがありました。小学生が主役の話をあまり青春ものとして捉えたことがありませんでしたが、こちらの話は中学受験というものに挑む彼らの、ともすれば早すぎると思うほどに濃い青春の話だと思いました。
中学受験。どこも受験せずとも、どこがいいと自分で選ばずとも、住んでいる地域で自動的に振り分けられた学校に通うことができる中学校であるのに、あえて小学生のうちから必死に勉強に取り組んで、身も心も追い詰めて、そこまでする必要があるのだろうかと私などは思っていたものですが、読んでいて少し考えが変わりました。
他のお友達が遊んでいても、ゲームをしていても、他の楽しい習い事やクラブ活動をしていても、その分の時間を塾や勉強に費やして、受験に向けた勉強一色にしてしまうなんてと思っていたし、楽しいことなんて何もなさそうだと思っていたものですが、12歳というのは私が思うよりずっと強くて、繊細で、しなやかな時期なのかもしれないと感じました。
自分の未来を掴み取るために必死で、全力で挑む彼らに、『勉強ばかりで可哀想』なんて感想は違ったな、と今の私は思っています。
何の努力も選択もなく行ける中学校だからこそ、それに全力で向かった人にしか見えない景色がある。
彼らと、彼らの保護者たちが、最後にどんな未来を掴み取るのか、読んでいるこちらまで最後までドキドキとさせられる話でした。
私にはもう挑むことのできない山ですが、いつか機会があれば、選択肢としても良いだろうと思います。 -
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ネタバレ主人公は40代のシングルマザー、息子は不登校、夫はがんにかかり死別。日々必死に生活する中で、偶然に高校時代の恋敵に再会する。
主人公の人生にとっては少し波立つ日々を描いているが、それでも大事件みたいなことは一切起こらない。それでも波の一つ一つの描写がなんとなく良くて、ついつい読みふけってしまう。
特に、恋敵の旧友を自宅に招いて食事するシーンは、ドキドキしてワクワクした。本当に何気ない、どこにでもありそうな女性2人の食事と会話の中、主人公は旧友にあることを謝罪するのだが、ここがすごくすごく良い。今まで読んできた会食シーンの中でも屈指の良さで、思わず何度か読み返してしまった。
あと、旧友との恋合戦の相手に再会するシーンも良い。凡百な小説だとこっから13時半にかって民放メロドラマみたいに台無しにしそうなもんだが、ここはしっかり力を抜いてほっと安心させる。ここらへんの匙加減も上手いなぁと思う。
尾崎英子、初めて読んだが良い小説を描く。他の作品も読んでみよう。 -
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ネタバレ騙されやすく、夫の稼いだお金を湯水のように遣い、人に貸したりして家族に迷惑をかけつつ、その奔放さゆえか、憎み切れない母が癌になった。
頑固なうえマイペースなので、突然治療をやめたりもする。この病気では死なないと信じている、この天真爛漫さが私には羨ましい。家族は、この人らしい死に方のサポートに徹するのだ。
在宅専門の看取り医である長女の言葉
「死は負けじゃなくて、ゴールです。病気になったことで結果的に亡くなったからといって、負けたというのはおかしいじゃないですか。その人らしく生きてきたように、その人らしい亡くなり方があるんだと思うんです」
人間は致死率100%
産まれたその日から、逃れられないゴールに向かって、どう生きるのか。どう死んでいくのか。
私らしい死に方を考えて生きたい。 -
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有村家の母仁子さんが余命宣告を受けた。
自由奔放で頑固な仁子は、自分の信じる方法で最後の時間を過ごすことを望んだ。
夫照夫、長男優、長女美香子、二女文子、嫁の真弓、それぞれの目線で見る仁子の終末期。
自分勝手で奔放な仁子に振り回された家族ではあっても、深い愛情で皆仁子の最期を見届けていました。
自分の親だったら大変かもしれないけれど、よそから見るととてもチャーミングな仁子さん。
そんな彼女だったから、亡くなった後の各人の思いに涙が止まりませんでした。
医者である美香子の、亡くなる人は本人の意思でその時を選んでいる、という話が印象的でした。
自分の家族にも伝えていきたいと思います。 -
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ネタバレ書評家 北上次郎氏(2023年1月没)が本の雑誌で毎年発表しているベスト本2022年の第8位が本書。地味な感じであまり食指が動かなかったものの、やはり北上次郎推奨なだけあり、出来上がった感じの上手な筆運びによる読みやすさ。海が見える街で過ごした少女時代の恋愛&友情をシングルマザーが振り返る…という既視感あるストーリー。しかし不登校の息子を抱える現在の話と、交互に描かれる色彩にあふれた高校時代の淡い初恋物語が胸が痛くなるものの、とても良いのです。
最終的にはすべてが現在形のほろ苦いストーリーに回収されてはしまうのですが、息子と一緒に亡き夫を想うシーンはとても穏やかな気持ちになりました。
北上次郎氏の偉大さと不在の大きさをあらためて感じた一作です。3.9 -
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ネタバレ小学校の友達と上手くいかず転塾するツムギ、親が厳しすぎるリョウマ、発達凸凹のユウナ、リーダーだけど姉が受験に失敗しているカリン。
我が家は真面目なこどもに教育熱心な父親という牛窪家のようになりそうなので、彼の母親のように子どもを守れるだろうか、と思った。彼の家の結末はエピローグで家出したと語られる程度なので、もっと読みたかった。ツムギが滑り止め落ちた時の母親の豹変っぷりも怖かった。
受験によってこどもに負担をかけないように、と思っていたのでカリンの「期待され過ぎないのも辛い」というのは盲点。こどもによって伴走方法は考えなければならないのだろうな。
ツムギを虐めてた子は途中からフェードアウトして結局何がいじめの原因だったかは分からない。でも現実だってそんなもので、思春期のこの時期だからこその苦難を乗り越えていく力をつけることが大事だなと思う。 -
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中学2年生の夏、学校に行けなくなってから引きこもり気味だった主人公の少年が、東京の山の中にある寮制のフリースクールに入る話。小中学生向けかな。
そこにいる子供たちは、皆心のどこかに傷を抱えている。
最初は心を開けず、ぶつかり合っていた子供たちが、そこで共に過ごすことによって心の内を打ち明け合うことが出来るようになり、少しずつ心の傷を癒していく。
主人公の抱えていた傷が痛くて、スタバで涙してしまい、慌てて読むのを止めた。そして家に帰って続きを読んで号泣した…。
スタンド・バイ・ミー(そばにいて)より、スタンド・バイ・ユー(そばにいるよ)。
とても心に響いた。