矢野利裕のレビュー一覧

  • 「国語」と出会いなおす

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    タイトルからくる内容のイメージとちょっと違った。
    文学と、国語試験の関係を、国語試験出題者自らが
    謙虚に分析している本だった。
    本の最後に、出題者と、その題材になった著者が対談をして、
    その出題を著者が答える、というのはシュール。
    御多分に漏れず著者が誤答する、、、

    文学が学校教育の国語に矮小化される。
    国威発揚、国民の洗脳に使われてきた歴史。
    そして今の試験。
    こんな試験の正解が大学選別に使われるなんて、
    違和感しかない。
    文学なんて自由に読めばいいはずなのに。
    世の中正解なんてないのに。

    著者はそれをわかってあえて出題者にもなっている。
    生徒と寄り添い、極力楽しく国語を教えながら。

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    2025年11月17日
  • 「国語」と出会いなおす

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    批評家、国語教師の二足の草鞋を履く筆者は、学校で文学を読むことの限界を見据えつつ、文学を読む意義を見出しています。その問題意識と、国語教育の未来を見据える姿勢に共感しました。

    この本の1番の読みどころは、入試問題の出題者である筆者と、問題として選んだ作品の作者(滝口悠生さん)との対談です。「作者に問題を解いてもらえるんだ。こんなこと本当に実現可能なんだ!」と興味津々で読みました。その他、最新教科書事情や文学史を学ぶことの意義についての見解も興味深かったです。

    先生の解釈を聞いている高校の現代文の授業は、正直言って退屈でした。しかし、夏目漱石の「こころ」や中島敦の「山月記」など、高校生のとき

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    2025年06月12日
  • 学校するからだ

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     刊行時に話題になっていたことは知っていたが、何となく敬遠してしまっていた。喰わず嫌いを猛省。

     評論家としての著者の主張には正直賛成できないところもあるのだが、本書で描き出された学校空間の遊動性と交響性はじつに卓抜で、「これは私の知っている学校だ」という感覚がはじめから最後まで薄れなかった。何より学校という制度、教員という職業、生徒という他者と(斜に構えているようで)正対している様子が伝わってくる。教員を目指す学生たちに薦めてみたい。
     
     「自分が生きられる場所について、しっかりと足もとから考えながら、少しずつ言葉を織り上げ」る姿勢を忘れず、とはいえ、過剰に役割や責任を背負うわけでもない

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    2025年05月17日
  • 学校するからだ

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    著者と同じ職に就いている自分にとって、とても面白いエッセイ?評論?だった。

    学校という現場は画一的な教育を施し、同じような人を増産していくような場所だと言われることも多いけれど、実際は様々な人が様々な思いを持ちながら毎日を過ごしている。「その違いも大切にしていこう」と著者の矢野さんが言っているように読んでいて思った。

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    2023年04月17日
  • 今日よりもマシな明日 文学芸能論

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    序論、町田康論、いとうせいこう論、西加奈子論とこの書籍のメイン部分を読んでいくと文学と芸能、そしてそれらと表裏一体である政治と社会の問題がスムーズに繋がっていくのがよくわかる。それが見事であり、町田康、いとうせいこう、西加奈子を読んでいない人でも問題なく読めるし、たぶん彼らの作品を読んでみたいと思うだろう。
    町田康はミュージシャンだった(現在も活動はしている)こともあり、彼の文体や言葉遣いが評価されることは多い。文体が物語を呼び、物語が文体を要請する。そして、その書き手である作家はある種「憑依」されている存在である。そのためには実は言葉を持ち、同時に持たない、という空洞さがいる。
    シャーマン的

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    2022年02月28日
  • ジャニーズと日本

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    アメリカのショービジネス、音楽シーンと文化への造詣を下敷きに、ジャニーズを論じた良書。

    私はジャニーズになんの思い入れもない、すでに空気としてあった人間だ。

    そんな自分がジャニーズを通して、戦後日本の音楽文化を肌で感じることができた。

    キーワードは、自我、解放、民主主義。

    ジャニー喜多川の哲学に感銘した。

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    2018年10月03日
  • 学校するからだ

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    複数の高校で非常勤講師を務める先生の著書。学校を「先生が教え、生徒が学ぶ」という一方通行の場ではなく、「さまざまな会話、体育だけでない動き、阿吽の呼吸、授業という舞台に立つ人間の演技」など、体を使って表現したり感じたりする場と位置付け、考察している。中等教育では、規範を教えることが中心だが、教えた後の生徒は、これまでと異なる変化した個人となるはずであり、規範を超えた人になるわけで、かなりの矛盾を孕んでいる。一見、確固たる仕組みのようで実は危うい先生ー生徒という人間関係、バランスの上に成り立っているのである。こういう立場から見直すと、学校って実に興味深い場所であり、高校生の相手をすることも増えて

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    2023年05月15日
  • ジャニーズと日本

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    ジャニ研!を読んだ後に、こちらを読みました。
    前者は鼎談でジャニーズの音楽性やコマーシャルとの関わりなど様々な話題に触れているとしたら、後者は世の中の関心や所属アイドルの変遷について、ジャニー氏のエンターテイメントの考え方を軸に時代を追って解説がされています。
    良くも悪くもジャニー氏が事務所の船頭であったことがよくわかりました。また、アイドルというコンテンツを消費してきた私たちの態度についても考えさせられました。興味深く読みました。

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    2023年05月01日
  • ジャニーズと日本

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    「手の届かないスター」ではなくて「身近で等身大のアイドル 」。さらには平成不況時代に、一緒に"がんばりましょう"と語りかけてくれる「国民的アイドル」。時代の変遷に伴って人々がテレビに求めるものも変わってきて、そうした中で色々苦労したり試行錯誤したりしながら、オンリーワンな地位を築いてきた存在。

    SMAPについてそういった見方をしている点は、同じ時期に出版された他のSMAP本に同じですが、ジャニーズ全体を語る対象としている点と、その際に「日系アメリカ人であるジャニー喜多川という人が目指しているもの」を捉えようとしている視点、そして音楽好きである著者の矢野さんならではの楽曲に

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    2017年05月05日
  • ジャニーズと日本

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    ジャニーズの歴史、アメリカと日本の関係性。いろんなものが大きく動くときにSMAPが解散した。そんなときにジャニーズという事務所、ジャニー喜多川という人物を照らすことでジャニーズに所属している、いたアイドルたちとその楽曲、ステージで彼が目指したものは何かが浮かび上がってくる。音楽とダンスは重力や差別から一瞬でも自由になる武器であり享楽だ。それを体現しているアイドル、ジャニーが目指したものとは違うものになりながら新しいアイドル像を作り上げたSMAPと受け継いでいった彼らの後輩たち。アメリカと日本の関係が今後どうなっていくか、そしていつか来る体制が変わるときにジャニーズの音楽や目指すべきステージはき

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    2016年12月27日
  • 「国語」と出会いなおす

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    ●「文学」について考えるために「国語」と向き合い、「国語にとって文学とはなにか」あるいは「文学にとって国語とはなにか」という問いを通して、「文学/国語」のありかたを再設定しようと試みた本。
    ●その結論の一つとして、「『文学』とは、文字を通じて再獲得された《私》たちが互いにコミュニケーションをする場所である」ということを著者は導き出した。ただ、これは本書でも語られた国語の授業風景が多分に含まれたがゆえの結論だと感じた。物語の共同性という視点には同意できるが、文学というものは「《私》たちが互いにコミュニケーションの場所」というよりは、やはり個人的な営みと考える人の方が大勢ではないだろうか。

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    2025年11月14日
  • 「国語」と出会いなおす

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    国語教育を通じて我々は異なるインクのしみを眺めているはずが同じ「物語」を読んでいるように感じる共同性を獲得しており、読解に必要な常識を無意識に身につけているが、それは時に解釈の枷になっているかもしれないとハッとさせられた。

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    2025年10月26日
  • 「国語」と出会いなおす

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    国語嫌いが増えている現在、何をしたら国語が好きになるのだろうか、といつも思っている。文学と国語が切り離されている感じはしていたが、本書の指摘を読んで少しなるほどと思った。

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    2025年10月18日
  • 学校するからだ

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    それなりの期間を生きてきた人は、自分というものを持っている。著者もそうなのだが、彼は批評家という立場でもあるのであって、そういう意味では感覚を言葉にする技術にはたけている。そんな彼が教師という立場から、学校というものを批評する。教育論、というのとは違う気がする。いろいろと語られているが、おもしろいのは、そこにいる人たちについての描写だ。
    この本の中で試みられているのは、人や出来事と接したときに、著者自身が受けた印象や感覚といったものを、自分の考え方や知識といったものをもとに批評しつつ、なにかを受け入れたり発見したりするという工程だ。それは未知の体験、カオスであったものを丁寧に受け入れて分析する

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    2023年04月23日
  • ジャニーズと日本

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    あなたの知らないジャニーズの歴史がここに。

    ジャニーズが何を求めてきたのか。何を表現しようとしてきたのか。そのすべてはわからないけれど、ジャニー喜多川氏のルーツがアメリカにあることからのアメリカ的なショービジネス志向やジャポニズムは、説明を受けるとなるほどと思うことも。

    この本が出た後にジャニーズ事務所は大きな変化があった。今も激動している。ここからが正念場なのでは、と思う。

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    2020年07月11日
  • ジャニーズと日本

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    ジャニー氏のアメリカ的ルーツからジャニーズにおける「王道」が定義づけられているのがおもしろい。Johnny's WorldとかABC座のトンチキさが理解できたような気になれるよ!☆
    が、筆者はSMAPに思い入れがあるのでしょう、(2016年12月刊でまだ三人の退所も決まっていない頃)後半はそんな「王道」ではないからこそ最初で最後の「国民的」アイドルになった彼らの処遇についての私怨がにじみでててもったいないと感じた。

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    2018年01月12日
  • ジャニーズと日本

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    なかなか。
    ジャニーズ事務所の歴史が知りたくて読んでみた。
    ジャニー喜多川さんはアメリカ人だったんだ。
    宝塚に影響を受け、メンバーの教育に力を入れているとか。
    アメリカと日本の良いとこどり、柔軟な対応が今につながっているのか。
    まだ、お元気らしいが、高齢でもあり、次世代でどうなるかが難しいそう。

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    2017年02月04日
  • ジャニーズと日本

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    <目次>
    はじめに
    第1章  ジャニーズとはなにか
    第2章  ジャニーズ結成~初代ジャニーズ、フォーリーブス
    第3章  郷ひろみからディスコへ~郷ひろみ、田原俊彦、少年隊
    第4章  それぞれのアメリカ~冬の時代、近藤真彦、ザ・グッバイ
    第5章  80年代とジャパニズム~シブがき隊、光GENJI、忍者、関ジャニ∞
    第6章  SMAPが開拓した道~SMAP、TOKIO、V6、Kinki Kids
    第7章  ジャニーズがもたらしたもの~嵐、次世代、そして再びSMAP
    おわりに

    <内容>
    ジャニーズ事務所のアイドルの歴史を追いかけながら、日本の音楽の歴史を語るもの。社会学書というよりも音楽書のような

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    2016年12月31日