【感想・ネタバレ】学校するからだのレビュー

あらすじ

時にはラジオDJのように、時には演劇人のように語る教師。その振る舞いにそれぞれに反応する生徒。このリズムが学校するからだを踊らせる!
──ダースレイダー(ラッパー)

小中高全部大嫌いだったが行かなきゃよかったとは思わない、学校(あなた)も日々悩んで迷って動いていたんだね。
──小山田浩子(小説家)

学校、そしてそこでの学びを、文学・音楽・お笑いを横糸に、生活に根ざした言葉で描いた一冊。読めば、つい、学びたくなる。
──平尾剛(スポーツ教育学者)

ブラックでも青春でもない!
からだとことばが躍動する異色の〈学校×身体〉ノンフィクション

「shhh…」と小声を発して返事をそろえるサッカー部員、広島出身ではないのに広島弁を操るヤクザ的風貌の生活指導。旧エヴァを愛し、シン・エヴァに失望した生徒との対話、破格の走りで男子をごぼう抜きにした女子生徒、そして肝心なところで嚙んでしまう著者自身──。 現役教員の著者が、学校のなかの〈からだ〉と〈ことば〉が躍動するマジカルな瞬間を拾い集めた、異色の〈学校×身体〉ノンフィクション。


「大事なことはおうおうにして、対立するふたつのあいだに存在する。とりわけ、僕が学校現場で味わうマジカルな感触は、正論と現場のあいだに存在している。本書では、そのような学校をめぐる言説のなかで抜け落ちてしまうものを拾い集めたい。 学校とは、生徒と教員がそれぞれの身体でもって生きられる場所だ。そんな躍動的な学校の姿を活写したい。多くの問題を抱えた部活動の制度に埋め込まれつつ、自由にグラウンドでボールを追いかけるような、そんな身体の躍動とともにある姿を。」
(「はじめに」より)

【目次】

はじめに 「shhh」をしのばせているヤツがいる!

1章 部活動
サッカー部新米顧問、おおいに迷う
ダンス部の「ズレる身体」
スウィングする吹奏楽部
転向する軽音部

2章 授業
GTOに憧れて
教壇は舞台である
「走れメロス」を読解してみた
KRS・ワン流の教育を
ラップと作文

3章 教員
高踏派先生の檄
ヤクザ先生、ふたたび
アヴァンギャルド先生との別れ
無頼派先生の涙
ミーハー先生の特別授業
東京インディー先生の音楽と生活
どこまでも自由なハンドメイド先生
筋肉先生の詩的言語
K先生とマイメン先生

4章 生徒
ちっとも思い通りにならない言葉
大事なことはだいたいギャルに教わった
「本当に分からなかったです」
提出物をめぐる闘争
足りない引き出し
たたかう生徒会

5章 行事
ごぼう抜きの彼女──体育祭
演しもの顚末──文化祭
学校はうたう──合唱コンクール
アイヌの「いま」が躍る──古典芸能鑑賞
「内地」から沖縄へ──修学旅行

6章 コロナ以後の学校
一斉休校の衝撃
「境界線を作っていくということですね」
回復していく学校生活
卒業式

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Posted by ブクログ

 刊行時に話題になっていたことは知っていたが、何となく敬遠してしまっていた。喰わず嫌いを猛省。

 評論家としての著者の主張には正直賛成できないところもあるのだが、本書で描き出された学校空間の遊動性と交響性はじつに卓抜で、「これは私の知っている学校だ」という感覚がはじめから最後まで薄れなかった。何より学校という制度、教員という職業、生徒という他者と(斜に構えているようで)正対している様子が伝わってくる。教員を目指す学生たちに薦めてみたい。
 
 「自分が生きられる場所について、しっかりと足もとから考えながら、少しずつ言葉を織り上げ」る姿勢を忘れず、とはいえ、過剰に役割や責任を背負うわけでもない著者の遊動的なスタイルは、「ネタ」と「ベタ」の往還が日常である学校空間の秀逸な参与観察を生み出していると思う(だが、ここでキャラ化された教員や生徒たちは、この本を読んでどう思っただろうか)。

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2025年05月17日

Posted by ブクログ

著者と同じ職に就いている自分にとって、とても面白いエッセイ?評論?だった。

学校という現場は画一的な教育を施し、同じような人を増産していくような場所だと言われることも多いけれど、実際は様々な人が様々な思いを持ちながら毎日を過ごしている。「その違いも大切にしていこう」と著者の矢野さんが言っているように読んでいて思った。

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2023年04月17日

Posted by ブクログ

複数の高校で非常勤講師を務める先生の著書。学校を「先生が教え、生徒が学ぶ」という一方通行の場ではなく、「さまざまな会話、体育だけでない動き、阿吽の呼吸、授業という舞台に立つ人間の演技」など、体を使って表現したり感じたりする場と位置付け、考察している。中等教育では、規範を教えることが中心だが、教えた後の生徒は、これまでと異なる変化した個人となるはずであり、規範を超えた人になるわけで、かなりの矛盾を孕んでいる。一見、確固たる仕組みのようで実は危うい先生ー生徒という人間関係、バランスの上に成り立っているのである。こういう立場から見直すと、学校って実に興味深い場所であり、高校生の相手をすることも増えていることから、とても参考になる一冊だった。いろいろ試してみたい。

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2023年05月15日

Posted by ブクログ

それなりの期間を生きてきた人は、自分というものを持っている。著者もそうなのだが、彼は批評家という立場でもあるのであって、そういう意味では感覚を言葉にする技術にはたけている。そんな彼が教師という立場から、学校というものを批評する。教育論、というのとは違う気がする。いろいろと語られているが、おもしろいのは、そこにいる人たちについての描写だ。
この本の中で試みられているのは、人や出来事と接したときに、著者自身が受けた印象や感覚といったものを、自分の考え方や知識といったものをもとに批評しつつ、なにかを受け入れたり発見したりするという工程だ。それは未知の体験、カオスであったものを丁寧に受け入れて分析することによって、自分の言葉で表現するという作業だと思う。
本になるようなクオリティになっているのは、彼が批評家という職業でもあるからなのだが、我々素人も自分の感覚を掘り下げて言葉にしてみるのは大切なことだと思う。
冒頭で述べられている「自分が生きられる場所についてしっかりと足もとから考えながら、少しずつ言葉を練り上げていくことが、まずは批評の条件ではないか。だとすれば、批評の言葉とは自分が生きられる空間の感触とともになければ嘘ではないか」。これは著者が批評家だからこういう言い方になるのだが、人は、それぞれ自分の生きる現実に対して、マインドフルネスに接して解像度を上げていく必要がある。そうすることによってはじめて見えてくるものというのがあると思う。

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2023年04月23日

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