あらすじ
ジャニーズ事務所が創始されたのは一九六二年。すでに五〇年以上の年月が経っている。ジャニーズは、その長い歴史のなかで、多くの魅力的な男性アイドルを輩出してきた。戦後日本の芸能史を通じて、つねにアイドル事務所のトップとして君臨しているのがジャニーズに他ならない。なぜこれほどまでに、ジャニーズに日本人は心をつかまれてしまっているのだろうか。新たな切り口で読み解く戦後アイドル論。
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Posted by ブクログ
アメリカのショービジネス、音楽シーンと文化への造詣を下敷きに、ジャニーズを論じた良書。
私はジャニーズになんの思い入れもない、すでに空気としてあった人間だ。
そんな自分がジャニーズを通して、戦後日本の音楽文化を肌で感じることができた。
キーワードは、自我、解放、民主主義。
ジャニー喜多川の哲学に感銘した。
Posted by ブクログ
ジャニ研!を読んだ後に、こちらを読みました。
前者は鼎談でジャニーズの音楽性やコマーシャルとの関わりなど様々な話題に触れているとしたら、後者は世の中の関心や所属アイドルの変遷について、ジャニー氏のエンターテイメントの考え方を軸に時代を追って解説がされています。
良くも悪くもジャニー氏が事務所の船頭であったことがよくわかりました。また、アイドルというコンテンツを消費してきた私たちの態度についても考えさせられました。興味深く読みました。
Posted by ブクログ
「手の届かないスター」ではなくて「身近で等身大のアイドル 」。さらには平成不況時代に、一緒に"がんばりましょう"と語りかけてくれる「国民的アイドル」。時代の変遷に伴って人々がテレビに求めるものも変わってきて、そうした中で色々苦労したり試行錯誤したりしながら、オンリーワンな地位を築いてきた存在。
SMAPについてそういった見方をしている点は、同じ時期に出版された他のSMAP本に同じですが、ジャニーズ全体を語る対象としている点と、その際に「日系アメリカ人であるジャニー喜多川という人が目指しているもの」を捉えようとしている視点、そして音楽好きである著者の矢野さんならではの楽曲に対する考察、このへんが特徴的。
◼️SMAPの「身近さ」については、「自由でカジュアルなクラブカルチャー」「飾らないリアルな自我」といったキーワードで説明している。
どちらも、ジャニーズらしくないともいえばらしくない。というのもジャニー喜多川がそれまで志向し実現してきたのは、日常からかけ離れた恍惚とファンタジーの虚構の世界であり、自我の表現なんていらない(その意味ではアーティストである必要はない)、それを提供できるエンターテイナーであれ、という方向性だったからだ。
でも、じゃあSMAPは異端で、ジャニーズの本流と対立関係にあるとか、そんな単純な話でもない。昨今のメディア報道では強権的な印象もあるジャニーズ事務所だが、この本によれば少年たちの育成面においては、何が下手でも、美男子じゃなくても、ピュアでさえあればいい、誰しも磨けば光る個性がある、とかジャニーさんもいいこと言っている。
こういう姿勢も含めて、ジャニーズとは、ジャニー喜多川という人は、戦後の日本にアメリカのショービズのみならず自由と平等と個性の尊重、つまり民主主義を教えにきた、そういう存在なのだ。と矢野さんは言っている。
◼️また、「がんばりましょう」「オリジナルスマイル」などの楽曲が、発表時の意図やら作詞・作曲者の思いやらとは関係なく、震災などのきっかけで応援歌として蘇り、再び歌われる様子などをとりあげ、これこそポピュラー音楽の醍醐味だよね~と言っているところも面白い。「世界にひとつだけの花」や「Triangle」なんかは、もちろん良い曲だけど、正直仰々しくて戸惑うわ、と言っているところも共感した。
◼️他にも、ジャニーズ事務所の歴史を音楽面から解説している点は、あまり類似の本がなく貴重なのでは(確認したわけではないけど、そういう評判だ)。取り上げられる楽曲を知らなかったり、使われる音楽用語を聞いてもピンと来なかったりするので、じゅうぶん理解できたとは言えないが、「機会があればそういう耳で聴いてみよう」と思えたという意味では楽しめた。
Posted by ブクログ
ジャニーズの歴史、アメリカと日本の関係性。いろんなものが大きく動くときにSMAPが解散した。そんなときにジャニーズという事務所、ジャニー喜多川という人物を照らすことでジャニーズに所属している、いたアイドルたちとその楽曲、ステージで彼が目指したものは何かが浮かび上がってくる。音楽とダンスは重力や差別から一瞬でも自由になる武器であり享楽だ。それを体現しているアイドル、ジャニーが目指したものとは違うものになりながら新しいアイドル像を作り上げたSMAPと受け継いでいった彼らの後輩たち。アメリカと日本の関係が今後どうなっていくか、そしていつか来る体制が変わるときにジャニーズの音楽や目指すべきステージはきっとまた変わっていくのだろうと予感させてくれる一冊。
Posted by ブクログ
あなたの知らないジャニーズの歴史がここに。
ジャニーズが何を求めてきたのか。何を表現しようとしてきたのか。そのすべてはわからないけれど、ジャニー喜多川氏のルーツがアメリカにあることからのアメリカ的なショービジネス志向やジャポニズムは、説明を受けるとなるほどと思うことも。
この本が出た後にジャニーズ事務所は大きな変化があった。今も激動している。ここからが正念場なのでは、と思う。
Posted by ブクログ
ジャニー氏のアメリカ的ルーツからジャニーズにおける「王道」が定義づけられているのがおもしろい。Johnny's WorldとかABC座のトンチキさが理解できたような気になれるよ!☆
が、筆者はSMAPに思い入れがあるのでしょう、(2016年12月刊でまだ三人の退所も決まっていない頃)後半はそんな「王道」ではないからこそ最初で最後の「国民的」アイドルになった彼らの処遇についての私怨がにじみでててもったいないと感じた。
Posted by ブクログ
なかなか。
ジャニーズ事務所の歴史が知りたくて読んでみた。
ジャニー喜多川さんはアメリカ人だったんだ。
宝塚に影響を受け、メンバーの教育に力を入れているとか。
アメリカと日本の良いとこどり、柔軟な対応が今につながっているのか。
まだ、お元気らしいが、高齢でもあり、次世代でどうなるかが難しいそう。
Posted by ブクログ
<目次>
はじめに
第1章 ジャニーズとはなにか
第2章 ジャニーズ結成~初代ジャニーズ、フォーリーブス
第3章 郷ひろみからディスコへ~郷ひろみ、田原俊彦、少年隊
第4章 それぞれのアメリカ~冬の時代、近藤真彦、ザ・グッバイ
第5章 80年代とジャパニズム~シブがき隊、光GENJI、忍者、関ジャニ∞
第6章 SMAPが開拓した道~SMAP、TOKIO、V6、Kinki Kids
第7章 ジャニーズがもたらしたもの~嵐、次世代、そして再びSMAP
おわりに
<内容>
ジャニーズ事務所のアイドルの歴史を追いかけながら、日本の音楽の歴史を語るもの。社会学書というよりも音楽書のような分析をしている(著者の略歴にも”DJ"という仕事が書かれている)。ただ、ジャニー喜多川が移民2世で、日本に「民主主義」を持ち込んだ(例えば、ジャニーズのアイドルは顔よりも”個性”が重視されているなど)とし、一方で途中までは「自我」が目覚めないうちが、「アイドル」だという話もある(「自我」が目覚めるとジャニーズ事務所を辞めたりする)。音楽的にも、局のコンセプトなども分析されていて、それなりに面白い。このタイミングで出版されている、他の「SMAP」本がどんな内容かはわからないが、この本は「SMAP」解散騒動の前から執筆されていたようなので、それを抑えた形で書かれている。