川崎賢子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
凝縮された完成度の高い短編が多く、何とも言えない美しい描写や人の性格の描き方が上手さもあって楽しく読める。時々立ち上る「ハイカラ」な香りも良い感じ。
「黄泉から」
話の筋よりも、おけいが死の間際にニューギニアで見た「雪」のシーンが実に素晴らしい。★★★★
「予言」
これは夢だったか妄想だったか、読んでいるうちに立っている平面が分からなくなる書きっぷりが絶妙。★★★★
「鶴鍋」
いやはや、良い話だなあ。といったところ。★★★
「無月物語」
これは十分に狂ってると思うなあ。★★★★
「黒い手帳」
これはいいね、実にいい。ルーレット必勝法を軸に、短いながらも話が二転三転、読ませる。★★★★ -
Posted by ブクログ
詩論。あえて評伝的な記述や左川の人生に関連させた論考は最小限にとどめられ、作品そのものを分析する態度で徹底されている。
アダプテーションやインターテクスチュアリティといった用語を使いつつ、左川は他者や自身のテクストを再構築し作りかえていったと指摘した箇所が面白い(pp69-70)。同じく改稿癖のあった稲垣足穂との対比では足穂は月、左川は太陽の詩人とされる(pp127-128)。本書の最後ではゴシックと左川を結びつけ、そこに左川の現代性と未来をみようとしているのだが(pp213-220)、この試みは逆に左川の可能性を狭めているように感じた。 -
Posted by ブクログ
斎藤真理子さんの『隣の国の人々』を読んで、詩を読む気分になって手に取った。
左川ちかさんは明治44年生まれで、25歳で病死した。
私は昔から詩が苦手で、1ページ目からやっぱりわからない。
でも、彼女が闘いながら、生を力一杯輝かせようと、美しい花を咲かせようとしていることは伝わる。彼女の強さも伝わる。
感情が迸り溢れるのを私もよく知っている。
私は弱いから絶望しかなかった。生きることが恐怖でしかなかった。
だから、彼女とは正反対だ。
でも、絵と詩は出口が違うだけで同じような気がする。内にある思いを私は絵にし、彼女は詩にした。
彼女の詩は美しい。
多分、リズムがいいのだと思う。それか