川崎賢子のレビュー一覧
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初めて読む作家。
何かで紹介されていて興味を持ったか、購入して積読になっていた。
買っておいて良かったと思う。美文である。
初出はほとんどが終戦から5〜6年のもの。
まだ戦争の傷が癒えない時期で、戦争がらみの物語も多い。死が身近である。
悲劇的な話多く、伝奇的な要素もあるが、おどろおどろしさは感じられず、透明感がある。
描かれていることは無惨なのに、なぜか美しい。
『母子像』なども、戦時中サイパンでの日本人の悲劇はあったが、物語の中の本当の地獄はそこではないところにある。
『白雪姫』では、氷河のクレバスに落ちた女性の遺体が20年以上の歳月を経て生前のままの姿に凍り付いて出てくる。性悪な女だった -
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左川ちか(1911.2.14~1936.1.7)
北海道出身の詩人。
19歳で最初の詩「昆虫」を発表。
え!?これが最初の詩なの?
さぞや詩壇は沸いたことだろう。
けれど病に倒れ、24歳で亡くなった。
knkt09222さんのレビューから読みたくなり、すぐさま購入。
表紙も素敵だった。
よくよくレビューを拝読してから挑んだのだけど、難しかったなー。
ただ、突如放り込まれる冷徹さにドキリとさせられる。
「青白い夕暮れが窓をよぢのぼる。
ランプが女の首のやうに空から吊り下がる。」
であるとか、
「夕暮が遠くで太陽の舌を切る。」
であるとか、
「その時私の感情は街中を踊りまはる
悲しみを追い出すま -
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文芸・演劇評論家、川崎賢子セレクト、
主に戦後に発表された久生十蘭の短編選集。
作品のテーマ・雰囲気に合わせて
自在に文体を変えているが、どれも見事。
個人的には終戦直後の作、
どことなく内田百閒に似たテイストの
「黄泉から」「予言」など、
少し素っ気ない感じの話が特に好み。
何となくいい雰囲気を醸して上手いこと誤魔化す、
みたいな姑息な手を使わず、
鋭い観察眼と深い洞察力で人間の心に切り込み、
その断面を覗かせるような描き方が素晴らしい。
女の読者に、
登場する女性キャラクターを愛らしい、
愛おしいと思わせる手腕たるや……(茫然)。
三一書房『中井英夫作品集Ⅸ「時間」』自作解説にて
「他人 -
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戦後に発表された久生十蘭短編集。
作者の目線は冷静であり、しかし熱狂も感じる。時代柄戦時中から戦後の悲惨さ、高揚、異様さがごく自然に当時の感覚で語られる。後の時代の研究者がいくら戦時中を考察しても敵わない生の感覚。
小説の筋構成も見事ながら、読んでいる時は本当に読書の愉しみを味わえる作家だ。
作品のいくつかは初めにコトの結末(誰が死ぬとか)を提示するので外連味たっぷり、まさに「つかみはばっちり」それから一連を振り返る構成で、終わりはバサッと幕を降ろす。それが余韻を残す場合もあれば、もう少し説明がほしかったなと思われるものもあり。
着物と食べ物の描写が秀逸かつテンポが良い。漢字の使い方が絢爛でさ -
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りんごは赤くて丸い果実に決まっているという現実的な見方よりも、置いた場所によって変わる色合いや、実は赤くないかもしれないことや、切らなきゃどんな中身なのか分からないことの方が大切なんだと思わせてくれる。
周りの自然現象や、自分の感情を楽しく、空想的に捉えても良いのだなと、読んでいて楽しく感じました。
若くて瑞々しい感性に惹かれます。
ちかさんは早くに旅立ってしまったけど、遺された詩が彼女自身で、昔の女性の、今より役割や、らしさが重視されていただろう中で、本当の自分はこうなんだ、と生き生き語っているような詩が魅力的です。
最後の方に記載されている小文は、特にこれからも大事に読んでいきたいと思 -
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ネタバレ島田龍・編の「全集」が書肆侃侃房で刊行され話題になった1年後、文庫で出た。
岩波文庫なので、印象としては「列聖した」感じがするが、多くの研究者のタマモノなのだろう。
本書、編者は川崎賢子で、津原泰水界隈で知った人。
前年の島田龍への言及が、解説に一切ない(定本は2010年森開社版、とのみ)ので、ギョーカイ的になんかあるのかしらんと邪推。
読む前はぼやーっと、久坂葉子とか少女趣味とかかしらん、と早とちりしていた。
が、厳しく冷たい言葉遣いに、ガツンとやられた。
現代詩に疎いものだが、先日、「一九二〇年代モダニズム詩集 稲垣足穂と竹中郁その周辺」という本を読んだところ。
で、佐川ちかの詩ってモダ -
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久生十蘭の2冊目。1編を除いて戦後、1946年から1957年に発表されたものが収められている。1957年は十蘭が55歳で亡くなった年であり、この付近は晩年の作と言うことになる。
先に読んだ同じ岩波文庫の短編集『墓地展望亭・ハムレット』と同様に、非常に凝縮された見事な表現が目を惹くが、物語の構成も優れているし、予想外の展開になる作品も多く、やはり、一つ一つがキラキラ輝いているような粒ぞろいである。
しかし、何故か短編集として通読すると、ちょっと疲れてしまう。1編ごとに凝縮されて濃厚な上に、文学性が多岐にわたっており、多彩すぎて作家のコアな「声」が迫ってこない。技巧的で言語表現に凝りまくって -
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百合について、時に文学史的に、時にクィア理論的に、或いはもっと娯楽的に、と様々な観点から語られる。本文も数多のポップカルチャーを絡めて書かれており、百合入門(?)のためのメディアガイドもついていたため、気楽に読めた。百合とされるアニメについて理論的に分析した文も多いので、考察厨も楽しめると思う。
最も印象に残ったのは「百合は"出来事"」という考え方。あくまでも一瞬の出来事であるから、それ一つでセクシュアリティを決定するのは性急である、と。且つこの論は、百合に限らずBLやヘテロであっても適用されるものだという。これはLGBT界隈の常套句「セクシュアリティよりパーソナリティ」に