川崎賢子のレビュー一覧

  • 久生十蘭短篇選

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    『黄泉から』は最後ぎょっとするのがよい。
    心構えなく、ふいにあちら側の世界を覗き込んでしまったような。

    でも、つぎの『予言』には度肝を抜かれましたね〜。
    途中いきなり福助人形が出てくるところは、本当にゾッとする。
    誰が語り手がわからなくて視点がふらすらするので、これは私が読み取れてないだけなのか?と思って調べたら、やはり意図して書かれているようですね。お話自体の結末もとてもよいし、最後に急に『われわれ』と言われて混乱しました。
    すごく面白いです。

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    2025年11月05日
  • 久生十蘭短篇選

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    初めて読む作家。
    何かで紹介されていて興味を持ったか、購入して積読になっていた。
    買っておいて良かったと思う。美文である。
    初出はほとんどが終戦から5〜6年のもの。
    まだ戦争の傷が癒えない時期で、戦争がらみの物語も多い。死が身近である。
    悲劇的な話多く、伝奇的な要素もあるが、おどろおどろしさは感じられず、透明感がある。
    描かれていることは無惨なのに、なぜか美しい。
    『母子像』なども、戦時中サイパンでの日本人の悲劇はあったが、物語の中の本当の地獄はそこではないところにある。
    『白雪姫』では、氷河のクレバスに落ちた女性の遺体が20年以上の歳月を経て生前のままの姿に凍り付いて出てくる。性悪な女だった

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    2023年12月30日
  • 左川ちか詩集

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    左川ちか(1911.2.14~1936.1.7)
    北海道出身の詩人。
    19歳で最初の詩「昆虫」を発表。
    え!?これが最初の詩なの?
    さぞや詩壇は沸いたことだろう。
    けれど病に倒れ、24歳で亡くなった。

    knkt09222さんのレビューから読みたくなり、すぐさま購入。
    表紙も素敵だった。
    よくよくレビューを拝読してから挑んだのだけど、難しかったなー。
    ただ、突如放り込まれる冷徹さにドキリとさせられる。
    「青白い夕暮れが窓をよぢのぼる。
    ランプが女の首のやうに空から吊り下がる。」
    であるとか、
    「夕暮が遠くで太陽の舌を切る。」
    であるとか、
    「その時私の感情は街中を踊りまはる
    悲しみを追い出すま

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    2023年09月28日
  • 久生十蘭短篇選

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    該博な知識がさらりと反映され、しかも物語は、決してしつこくないくせに充分な分量を語って心地良い。「小説の魔術師」の異名が、確かに相応しい作家に思う。理屈や感情で通るところにこの作家の文章はない。あっと言わせてやろうなどという作為もない。ただ、物語がくるくる渦を巻いて、読者が予想していたのとは「位相が異なる同じ場所」に落としていくイメージがある。位置的には予想通りであっても、空間が違うのである。私などはただ、語りの巧みさに釣り込まれて未知の世界へ落とされるばかりである。読後に独特の浮遊と満足があった。良い出会いだった。

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    2016年05月26日
  • 久生十蘭短篇選

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    文芸・演劇評論家、川崎賢子セレクト、
    主に戦後に発表された久生十蘭の短編選集。
    作品のテーマ・雰囲気に合わせて
    自在に文体を変えているが、どれも見事。
    個人的には終戦直後の作、
    どことなく内田百閒に似たテイストの
    「黄泉から」「予言」など、
    少し素っ気ない感じの話が特に好み。
    何となくいい雰囲気を醸して上手いこと誤魔化す、
    みたいな姑息な手を使わず、
    鋭い観察眼と深い洞察力で人間の心に切り込み、
    その断面を覗かせるような描き方が素晴らしい。
    女の読者に、
    登場する女性キャラクターを愛らしい、
    愛おしいと思わせる手腕たるや……(茫然)。

    三一書房『中井英夫作品集Ⅸ「時間」』自作解説にて
    「他人

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    2016年03月09日
  • ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在

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    たかが「ゆり」されど「ゆり」。奥が深いな~。面白いな~。これまで知ることのなかった「ゆり」小説の数々を知ることが出来た。

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    2014年12月16日
  • 久生十蘭短篇選

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    戦後に発表された久生十蘭短編集。
    作者の目線は冷静であり、しかし熱狂も感じる。時代柄戦時中から戦後の悲惨さ、高揚、異様さがごく自然に当時の感覚で語られる。後の時代の研究者がいくら戦時中を考察しても敵わない生の感覚。
    小説の筋構成も見事ながら、読んでいる時は本当に読書の愉しみを味わえる作家だ。
    作品のいくつかは初めにコトの結末(誰が死ぬとか)を提示するので外連味たっぷり、まさに「つかみはばっちり」それから一連を振り返る構成で、終わりはバサッと幕を降ろす。それが余韻を残す場合もあれば、もう少し説明がほしかったなと思われるものもあり。
    着物と食べ物の描写が秀逸かつテンポが良い。漢字の使い方が絢爛でさ

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    2020年03月05日
  • 久生十蘭短篇選

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    なにせ、知らない熟語、読めない漢字、初めて目にする言い回し、が随所に出てきて大変!。でも、久生が創り出す独特の美しい世界の”雰囲気”は楽しむことが出来ました。気に入った短編を繰り返し読んでみれば、その度に新しくわかることがあるかも。。。

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    2013年06月15日
  • 久生十蘭短篇選

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    万華鏡のような後味は他の作家にはないかもしれない。
    アコーディオンの伴奏にのせて物悲しく奏でられるBGM。モノクロの八ミリ映画の哀愁。ラジオから流れる雑音混じりの音声。懐かしい昭和の香り。「鶴鍋」「無月物語」が特に印象的だった。

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    2011年04月13日
  • 久生十蘭短篇選

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    河出文庫より先に出てたのに(そして先に買ったのに)、こっちのほうを後から読んじゃった。全15篇。……こちらに採られているもののほうが、私は好きかな(甲乙つけがたいような気もするけれど)。巻末「解説」が丁寧。この人の著作は初出と最終稿ではかなり違うらしい。自分の書いたものに後からジクジク拘る私としては他人事ならぬ。そしてこの岩波の編纂は、様々考慮して、「あえて定本全集とは異なる底本による短編集を編むことにした」とのこと、「ヴァリアントを読み比べていただきたい」とは、素晴らしいではないか。さすがの岩波文庫!!

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    2011年07月19日
  • 久生十蘭短篇選

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    古い時代の男性作家が読みたくて、読んだことのない久生十蘭(1902-57)を読んだ。

    1946〜19057年に発表された短篇15篇。

    初めは独特で苦手かもと思ったのに、読み続けるうちに十蘭ならではの文章と世界が心地良くなった。クセになるのも分かる。
    物語は最初と最後が好きだった。
    やっぱり古い文学は良い。

    初めて十蘭を読む私にとって丁寧な解説がありがたかった。非常に興味深かった。
    ちなみに十蘭のペンネームはシャルル・デュランから弄ったらしい。

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    2025年10月03日
  • 久生十蘭短篇選

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    冒頭『黄泉から』で一冊分の元は取れる。戦後すぐにこの内容で幻想文学を書きますか……。YA向けのアンソロジーで出逢って以来自分にとってずっと忘れえない作品。
    本屋で手に入りやすい作品から鑑みるに探偵小説作家として注目されることが多く、国語便覧などではあまり見かけないが、『黄泉から』『母子像』を読むと、久生十蘭とは戦争文学の書き手でもあることがわかる。
    岩波文庫では『湖畔』などが収録されたもう一冊が出ていて本書を補完する。または講談社文芸文庫の短編集ともかぶりが少ない(母子像だけかな)ため、併せて読んで欲しいやつだ。

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    2025年08月15日
  • 久生十蘭短篇選

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    短編集。
    戦後の作品のみで、すごく難しい文体ではないはずだが、ぼーっと読むと置いていかれる。
    いまいち内容が理解できていないものもあるので再読したい。
    黄泉から、予言、母子像、黒い手帖が面白かった。

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    2025年07月09日
  • 久生十蘭短篇選

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    久生十蘭の短編集ですね。
    久生十蘭(1902ー1957)函館生まれ。小説家。
    十五篇の短篇が納められています。
    解説の川崎賢子さんは『久生十蘭は、文学の諸ジャンルを横断し、複数の文化のあいだを越境し、おびただしい書物を批評的に引用し再編しつつ、戦時下・占領下の困難な現実にそこなわれることのない、珠玉のような作品を残した。』と語らされています。
    戦後期の文学を高めた名手と言えます。
    人間味あふれる、深みのある作品は読みごたえがあり、感慨深いですね。

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    2024年04月07日
  • 左川ちか詩集

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    りんごは赤くて丸い果実に決まっているという現実的な見方よりも、置いた場所によって変わる色合いや、実は赤くないかもしれないことや、切らなきゃどんな中身なのか分からないことの方が大切なんだと思わせてくれる。
    周りの自然現象や、自分の感情を楽しく、空想的に捉えても良いのだなと、読んでいて楽しく感じました。
    若くて瑞々しい感性に惹かれます。

    ちかさんは早くに旅立ってしまったけど、遺された詩が彼女自身で、昔の女性の、今より役割や、らしさが重視されていただろう中で、本当の自分はこうなんだ、と生き生き語っているような詩が魅力的です。

    最後の方に記載されている小文は、特にこれからも大事に読んでいきたいと思

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    2024年03月25日
  • 左川ちか詩集

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    左川ちかは、若くして亡くなった昭和初期の詩人。静と動、寒と暖を併せ持った言葉を生み出す人だと感じた。圧倒された。

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    2024年03月09日
  • 左川ちか詩集

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    ネタバレ

    島田龍・編の「全集」が書肆侃侃房で刊行され話題になった1年後、文庫で出た。
    岩波文庫なので、印象としては「列聖した」感じがするが、多くの研究者のタマモノなのだろう。
    本書、編者は川崎賢子で、津原泰水界隈で知った人。
    前年の島田龍への言及が、解説に一切ない(定本は2010年森開社版、とのみ)ので、ギョーカイ的になんかあるのかしらんと邪推。

    読む前はぼやーっと、久坂葉子とか少女趣味とかかしらん、と早とちりしていた。
    が、厳しく冷たい言葉遣いに、ガツンとやられた。
    現代詩に疎いものだが、先日、「一九二〇年代モダニズム詩集 稲垣足穂と竹中郁その周辺」という本を読んだところ。
    で、佐川ちかの詩ってモダ

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    2023年09月25日
  • 久生十蘭短篇選

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     久生十蘭の2冊目。1編を除いて戦後、1946年から1957年に発表されたものが収められている。1957年は十蘭が55歳で亡くなった年であり、この付近は晩年の作と言うことになる。
     先に読んだ同じ岩波文庫の短編集『墓地展望亭・ハムレット』と同様に、非常に凝縮された見事な表現が目を惹くが、物語の構成も優れているし、予想外の展開になる作品も多く、やはり、一つ一つがキラキラ輝いているような粒ぞろいである。
     しかし、何故か短編集として通読すると、ちょっと疲れてしまう。1編ごとに凝縮されて濃厚な上に、文学性が多岐にわたっており、多彩すぎて作家のコアな「声」が迫ってこない。技巧的で言語表現に凝りまくって

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    2021年11月12日
  • ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在

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    百合について、時に文学史的に、時にクィア理論的に、或いはもっと娯楽的に、と様々な観点から語られる。本文も数多のポップカルチャーを絡めて書かれており、百合入門(?)のためのメディアガイドもついていたため、気楽に読めた。百合とされるアニメについて理論的に分析した文も多いので、考察厨も楽しめると思う。
    最も印象に残ったのは「百合は"出来事"」という考え方。あくまでも一瞬の出来事であるから、それ一つでセクシュアリティを決定するのは性急である、と。且つこの論は、百合に限らずBLやヘテロであっても適用されるものだという。これはLGBT界隈の常套句「セクシュアリティよりパーソナリティ」に

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    2016年01月17日
  • ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在

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     今日、女性同士の親密な絆を示す言葉として「百合」というキーワードがある程度の市民権を得ている。
     また、いわゆるLGBTの事柄についても、良かれ悪かれ話題になりつつある。

     しかしながら、否、だからこそ、改めて百合とは何なのか?ということを、あるいは、文芸作品が人と人との絆(もちろん、そこには百合も含まれる)をどのように描き出してきたのかについて考える必要性があるのではなかろうか。
     本書は、上記ののような「百合論」を考えるきっかけになる本だと私は思う。

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    2015年11月15日