あらすじ
左川ちか(1911-36)の詩の世界において,「馬」は発狂して山をかけ下り,「海」は天にあがる.乾いた抒情と躍動感に満ち,「緑」「太陽」「昆虫」「動物」「植物」といったモチーフが自在に変態するその作品は,読む者に常に新たな驚きをもたらす.神話化されたイメージを超えて,来るべき詩人・左川ちかを多角的に読み解く.
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Posted by ブクログ
詩論。あえて評伝的な記述や左川の人生に関連させた論考は最小限にとどめられ、作品そのものを分析する態度で徹底されている。
アダプテーションやインターテクスチュアリティといった用語を使いつつ、左川は他者や自身のテクストを再構築し作りかえていったと指摘した箇所が面白い(pp69-70)。同じく改稿癖のあった稲垣足穂との対比では足穂は月、左川は太陽の詩人とされる(pp127-128)。本書の最後ではゴシックと左川を結びつけ、そこに左川の現代性と未来をみようとしているのだが(pp213-220)、この試みは逆に左川の可能性を狭めているように感じた。