辺見庸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
[このクニは古来、主観的には無垢てあり、客観的に無恥なのだ。]
いろいろと書いてあるのだが、とにかく、この一文が過去も現在もおそらくこれからも、このクニを表すに適切ではなかろうか、そのことだけでも十分。十分に絶望だし十分に納得だ。
しかしとにかくいろいろ書いてあるのだ。頭がぐるぐるする。とても時間がかかり時々飛ばしたくなり、飛ばしてはまた戻る。
亡くなる前に十分問うことが出来なかった父を打つ、執拗に想像して打つようなところはどうなのかと思い、その暗さと、細部へのこだわりが、何度も読みたくなくなるのだが、戦争のことも戦後のこともどうせわからぬ自分であるからそんな偉そうことはいうこともできず読む -
Posted by ブクログ
20年以上前から追いかけている辺見庸さんの新刊。
安保法制(いわゆる「戦争法」)から、新型コロナウイルスのパンデミックまで、7年間の論考をまとめたのが本書です。
結論からいうと「辺見さんも老いたな」という印象を持ちました。
政権批判の舌鋒は、もっと鋭かった気がします。
その代わり、諦念が前面にせり出してきた感があります。
「気がつけば、五体満足な友人などもうだれもいない。みんな、重かれ軽かれ、どこかしら病んでいる。たとえ本人がまだ病に伏していないまでも、両親ふたりとも、またはそのどちらか、子ども、義父か義母、兄弟姉妹、甥か姪……が、心身のいずれかをわずらっている。」
リアルで痛切な感懐に、胸が -
Posted by ブクログ
読むことに多大なパワーが必要だった。
そして理解しようという事が辛かった。
まず思ったのは、他作品を思わせるひらがなの多さ。ひらがなの多用で障がい者の状態を表現するのか。そしてその中で一般的に難しい漢字や言い回しなどで知性を感じさせられる。
著者はきーちゃんの心の中を想像する中でその様な手法でこちらに、きーちゃんの様な状態でも表現できないだけなんだとこちらに伝える。
その様な人が被害に遭ったのではないかとこちらに問いかける。
そして世間の意識も『世界の隠された衝動』として表現する。
この作品は読み手にも刃を向けられた様な感じがした。それくらい切実に考えさせられる。
しかしその中で、政治 -
Posted by ブクログ
読後のスッキリしない気持ち。内容に対してじゃなくて、自分の無関心を晒され炙られ終わることへのスッキリしなさがすごい。
障がい者施設殺傷事件の起きる少し前から発生時を被害者の視点から描いた本作。語り手の重度障害者のきーちゃんの独白(きーちゃんは言葉を発せず、目が見えなく上下肢も動かない)で話が進んでいく。
その話のなかで障がい者という存在がいかに不可視化されているか、障がい者の社会的な位置づけが不確かでぞんざいなものかというのが感じられる。マジョリティの都合で可視不可視が決められてしまうなか、事件や特集のときだけ意見して普段は素知らぬフリをしていることへの指摘。終盤を読んでいてそこが心を抉ら -
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ネタバレエッセイ集。近づいてくる戦争の足音に耳を傾ける辺見庸氏の憂いが詰まった本だった。昔はこんな風に戦争を危惧する著名人が主流だったのに、現代では隅に追いやられつつある。いよいよなのかと気分が暗くなる。自分なんかはタモリの新しい戦前発言は政府からの間接的な国民への予告だと思っている。陰謀論めいているが、それ含めて芸能人やマスコミの仕事ではなかろうか。
しかし、墓場でガールフレンド?に接吻かました話はショッキングだった。日が暮れるまでとは、いったい何時間拘束していたのだろう。これが本当のエピソードであれば、後悔してるとはいえ性的暴行でしかない。気絶までした相手を海綿だかなんだに例えて文学的にまとめて