辺見庸のレビュー一覧

  • 完全版 1★9★3★7 イクミナ (上)

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    [このクニは古来、主観的には無垢てあり、客観的に無恥なのだ。]

    いろいろと書いてあるのだが、とにかく、この一文が過去も現在もおそらくこれからも、このクニを表すに適切ではなかろうか、そのことだけでも十分。十分に絶望だし十分に納得だ。
    しかしとにかくいろいろ書いてあるのだ。頭がぐるぐるする。とても時間がかかり時々飛ばしたくなり、飛ばしてはまた戻る。
    亡くなる前に十分問うことが出来なかった父を打つ、執拗に想像して打つようなところはどうなのかと思い、その暗さと、細部へのこだわりが、何度も読みたくなくなるのだが、戦争のことも戦後のこともどうせわからぬ自分であるからそんな偉そうことはいうこともできず読む

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    2022年09月14日
  • コロナ時代のパンセ 戦争法からパンデミックまで7年間の思考

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    歳で情熱失ったせいか、哲学や思想めいた言葉は頭に刻まれることなく素通りしてしまう。辺見作品すべて読んでいたが…久しぶりの辺見サン、お金や老いを語るようになっているとは。「白い闇とは実相をわざと見ようとしないわれわれの現状そのもの」「間違いなくやってくるのは危機の日常化、社会の全体主義化」「コロナに乗じた同調圧力と相互監視。行動と内面の統制が一段とつよまりつつある」「感じまいとすることで、自己防衛してるのだ」賢しげに自己嫌悪交えながら、深い洞察で社会と世間を両断。まだまだ、いけそう。

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    2022年08月10日
  • コロナ時代のパンセ 戦争法からパンデミックまで7年間の思考

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    こんな時代だからこそ
    その著書が出るたびに
    読んでおきたい作家
    のお一人が
    辺見庸さんです

    辺見庸さんを読むたびに
    ーこの国はどこに向かおうとしているのだろう
    を 激しく自問自答させられてしまいます
    そして
    今 自分が立っている拠り所を
    しみじみ 考え
    今 自分が できることを
    改めて しっかり 確認させて
    もらっているようです

    この一冊を手に取った人と
    語り合いたい一冊です

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    2022年05月05日
  • 完全版 1★9★3★7 イクミナ (下)

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    まずはカバーが山下清の貼り絵に惹かれて購入。
    内容は正直難しいと感じるものもあるけれども、
    今まで読んだ事の無い視点で書かれている。
    同じ人が持つ残忍さと慈愛は状況で変化し、何故そうなるのかが問われている。
    下巻を読んだらその答えが分かるのかな…。

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    2022年01月31日
  • コロナ時代のパンセ 戦争法からパンデミックまで7年間の思考

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    20年以上前から追いかけている辺見庸さんの新刊。
    安保法制(いわゆる「戦争法」)から、新型コロナウイルスのパンデミックまで、7年間の論考をまとめたのが本書です。
    結論からいうと「辺見さんも老いたな」という印象を持ちました。
    政権批判の舌鋒は、もっと鋭かった気がします。
    その代わり、諦念が前面にせり出してきた感があります。
    「気がつけば、五体満足な友人などもうだれもいない。みんな、重かれ軽かれ、どこかしら病んでいる。たとえ本人がまだ病に伏していないまでも、両親ふたりとも、またはそのどちらか、子ども、義父か義母、兄弟姉妹、甥か姪……が、心身のいずれかをわずらっている。」
    リアルで痛切な感懐に、胸が

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    2021年05月16日
  • 自動起床装置

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    ◯◯。さーん。◯◯。さーん。
    起こしの達人に1度起こされてみたい。

    人と機械の関係性が睡眠をテーマに多様な角度から描かれている。時に神が現れ、時に樹木の図鑑を旅しながら眠りの世界に導いてくれる。

    辺見庸さんの文章は、いつも日常では遠ざけている人間の根幹を描くというより語る。語る。語る。

    読者を突き放すほどにあっさりしていた終わり方だけは何か寂しかった。

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    2017年09月17日
  • 反逆する風景

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    目を覆いたくなる現実を前にしても、決して目を背けない。そして、数字や文字で片付けられてしまいそうな事象を、そこにいる人の生きる姿や息づかい、感性としてとらえようとする真摯さ。そんな辺見先生が、世界で見たひとの暮らし。地位とか、思想とか、障がいとか、ひとはなにかとレッテルをつけ、意味合いを付けたがるけれど、それを拒み、地下茎のような、そこにただある真実を見る大切さを思う。

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    2013年06月09日
  • 月

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    この本は苦しい。
    介護がなくては生きていけないヒトを、一処に集めて他人に任せる。大抵そういう施設は街なかにはない。
    誤解を恐れずに言おう。
    綺麗事をいう人は介護される人の尊厳をとか言うけど、介護士の尊厳には言及しない。

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    2025年07月03日
  • 月

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    読むことに多大なパワーが必要だった。
    そして理解しようという事が辛かった。


    まず思ったのは、他作品を思わせるひらがなの多さ。ひらがなの多用で障がい者の状態を表現するのか。そしてその中で一般的に難しい漢字や言い回しなどで知性を感じさせられる。
    著者はきーちゃんの心の中を想像する中でその様な手法でこちらに、きーちゃんの様な状態でも表現できないだけなんだとこちらに伝える。
    その様な人が被害に遭ったのではないかとこちらに問いかける。
    そして世間の意識も『世界の隠された衝動』として表現する。

    この作品は読み手にも刃を向けられた様な感じがした。それくらい切実に考えさせられる。

    しかしその中で、政治

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    2025年06月04日
  • 月

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    他人の無意識にこんなにずっぽりと入ったのは、初めてかも。誰に聞かせるでもなく徒然なるままに、脈略なく飛んだり、ものすごく広がったり縮まったりする妄想とか、とても人間ぽい。
    こんなにも頭はお喋りでも、おこころはないって見なされたら、さとくんの「人間の定義」から外れる。さとくんという名の、不特定大多数。さとくんの思想は、誰しもが罪悪感と共にもっている考え方だと思う。知らないフリ、聞こえないふり、可哀想で片付けたい感情。
    時代や国が変われば、思想なんてガンガン変わる。でも、流されるのではなく自分の頭で考えなきゃね、と思わせる本だった。

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    2024年10月22日
  • 月

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    苦しくてやめそうになる
    苦しいのはサトくんの行為がぜったいに間違っていたのかわからないから?もしかしたら、いやもしかしなくても彼のほうがちゃんと考えていたから?だって当事者だから
    「心、ありますか?」突き刺さる

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    2024年09月12日
  • 月

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    ドグラ・マグラを読んでいるような気分になった。
    誰が本当に存在するのかが読み取れず、非常に難解だった。

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    2024年02月13日
  • 月

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    映画を観終わってから気になって仕方がなかった。
    正直言って読みにくい。
    『きーちゃん』の目線。でも目は見えない。もちろん浮遊も出来ない。
    そういう所から語られてる思いで話が進んでいく。
    『さとくん』が登場するといくらか読みやすく感じるものの、犯行の最中であろうストーリーの『音』と表記されている部分に震える。
    『月』というのはそういう意味もあるのかと。
    読み終わり思うことは、
    攻撃的でありながら寄り添っている著者なのだなということと、
    私は薄っぺらい言葉も出ない異常さも感じない『無』なのだろう

    こんな読後はなかなかない





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    2024年02月05日
  • 月

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    好き嫌いの別れる作品かと思います。私は嫌いというわけでなく、と読みにくいと感じたため、低い星ですが、ぜひ多くの人の目に触れてもらいたい作品でした。

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    2024年01月02日
  • 月

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    読後のスッキリしない気持ち。内容に対してじゃなくて、自分の無関心を晒され炙られ終わることへのスッキリしなさがすごい。

    障がい者施設殺傷事件の起きる少し前から発生時を被害者の視点から描いた本作。語り手の重度障害者のきーちゃんの独白(きーちゃんは言葉を発せず、目が見えなく上下肢も動かない)で話が進んでいく。

    その話のなかで障がい者という存在がいかに不可視化されているか、障がい者の社会的な位置づけが不確かでぞんざいなものかというのが感じられる。マジョリティの都合で可視不可視が決められてしまうなか、事件や特集のときだけ意見して普段は素知らぬフリをしていることへの指摘。終盤を読んでいてそこが心を抉ら

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    2023年12月23日
  • 入り江の幻影 新たな「戦時下」にて

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    久しぶりの辺見さん。懐かしい“物狂おしくなる”。日常の“老い”のユーモアも加わり、まだまだ健在。「人間はなぜこうまで愚かなのか。人間は結局なににでも慣れる」「世界とか未来とか正義とかの“大きな言葉”を忌み、ミニマムな世界に埋没するのかもしれない」「9.11から20年、人類にはまったく不思議なほど進歩がない」「政治とはどのみち徹頭徹尾相対的インチキでしかない」「新たな戦前」が来ている。警鐘どこまで届いているのか…

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    2023年10月20日
  • 入り江の幻影 新たな「戦時下」にて

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    ネタバレ

    エッセイ集。近づいてくる戦争の足音に耳を傾ける辺見庸氏の憂いが詰まった本だった。昔はこんな風に戦争を危惧する著名人が主流だったのに、現代では隅に追いやられつつある。いよいよなのかと気分が暗くなる。自分なんかはタモリの新しい戦前発言は政府からの間接的な国民への予告だと思っている。陰謀論めいているが、それ含めて芸能人やマスコミの仕事ではなかろうか。

    しかし、墓場でガールフレンド?に接吻かました話はショッキングだった。日が暮れるまでとは、いったい何時間拘束していたのだろう。これが本当のエピソードであれば、後悔してるとはいえ性的暴行でしかない。気絶までした相手を海綿だかなんだに例えて文学的にまとめて

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    2023年09月07日
  • 沖縄と国家

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    20170926 同じ年代の作者なのに同じ国の話に感じない。この歳で初めて知る事も多かった。沖縄問題と言うのは米軍基地だけの話では無く、日本としての民俗問題でもあったのですね。恥ずかしいです。

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    2017年09月26日
  • 自動起床装置

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    睡眠にも人間性が現れるものですな。起こされると殴る人とか勘弁してほしい。起こし屋の聡が囁くように呼びかけるシーンは何か異常な世界を垣間見てしまったような背徳感があった。聡の彼女が入眠を誘う側だったり、いかにも芥川賞らしい作品だった。私はもう長い事iPhoneのアラーム音で起きているが問題なし。

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    2017年02月27日
  • 自動起床装置

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    人を起こすバイトという着眼点が面白い。そしてその役を装置に取って代わられたら?つきつめて考えると、これって最近世間を賑わせてる「AIが進化したら人間の出番は?」の問題と同じではないか?なんとも著者は20年以上も前に問題を予言していたというのか?っという深さを考えながら読むとなお面白い。

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    2016年11月27日