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Posted by ブクログ
「自動起床装置」、日常生活には珍しいように感じるが、私も毎日起こしてもらっているスマホのアラームも似たようなものなのかもしれない。そういえば何十年も人に起こしてもらっていない。
一日のかなりの時間眠っているけど、人から見たら私の眠りはどんな風だろう。自分の眠っているとき、自分の意思が及ばない(むしろむき出しと言えるかもしれない)状態のため、それはとてもプライベートな姿だと感じる。また、「眠り」については考えても「起きる/起こす」ことについてはあまり考えたことがなかったことに気づいて新鮮で面白かった。
聡は自動起床装置の導入に危機を感じるが、それは自分の仕事を奪われるからではない。装置によって人を起こすことに危機を感じているのだ。はたから見たら不思議なこだわりだが、私もそういう謎のこだわり、持っていると思う。
「起こし屋」は、今はもう存在していない職業だろうか?ちょっと変わったお仕事小説としても面白い。
Posted by ブクログ
今、あらゆるものの機械化が進んでいる。
それは仕事や移動手段に限らず、生身の人間の生活にも影を落としている。本来存在する生物のうねり、その首根っこを掴み、冷たい無機物の顎に生命を放り込む。その機械の名は、「自動起床装置」――。
それただの目覚まし時計やろと思ってこの本を手に取った。
私は目覚まし時計ネイティブなので、むしろ目覚まし時計が機械化のやり玉に挙げられているのは新鮮に見えた。
しかし考えてみれば、私はいつから目覚まし時計を使うようになっただろうか。子供のころは親に起こしてもらっていた気がする。私はいつから、起床という生理現象を機械に外注するようになったのか。
我々は起きている時間を本来の自分と呼び、寝ている時間はある種自分とは切り離された状態にあると考えている。しかし、一日の少なくない時間を睡眠に充てているのだ。寝相や寝言、見ている夢までもが、連続的に続く自分ではないのか。
そしてその睡眠状態と覚醒状態を、機械によって操作してよいものか。本にも書いてあったが、入眠と同じくらい、起床についても慎重に扱うべきだ。
今、我々は起床を機械化する手立てを得ている。
では入眠はどうか?現在は睡眠導入剤という化学的手法でほぼ強制的に入眠することができる。しかし万人が使えるわけではない。
しかし、もし今後、もっと安全で確実に入眠する方法ができたら。睡眠と覚醒を、完全に切り離すことができてしまったら、眠っていた時の自分も完全に失ってしまうのではないか。
機械化は多大な効率化をもたらした。しかし、機械に奪われてはならない領域は確かに存在するのではないかという疑問を投げかける作品であった。
Posted by ブクログ
よく、小説では、人間的根源の要素をテーマにする、といった事が多いが、その大概は、性欲であったり、広大な煩悩に対する欲望に焦点が当てられており、他が蔑ろにされている気がしていた。その点では、表題作は、人間の三大欲求に分類される、「睡眠」という分野の荒野をただ突き詰めた、という斬新さを得た。まだ未読だが、作者は他にも「食」について注目した、「もの食う人びと」という作品もあり、いずれ読んでみようと思う。
さて、本書についての感想だが、現代社会の睡眠に対する意識の低さというのが、注目されるべきだと主張だと思われたのだが、私生活を覗いて見ると、社会人であれば、時間に余裕が無い場合、その余裕をどこから作り出すかという点に対し、まず睡眠時間というのもが出てくる。そのことについて、疑問を呈した一冊では無いだろうかと感じた。人が人を起こすことと、時代に合わせ、機械が人を起こすこと。起きていることと、寝ることは、同じくらい注意するべきなのではないか、という本書の言葉は、とても自然的であると同時に、現代では生物として最も欠落した意識の要素だと思われた。そういう点を踏まえての、この物語の結末というのは、ある意味、それでも人間は愚かにもその自然を打破しようと、そうする意図を感じとてるものとなっているのは、面白い。
同時に収録されている「迷い旅」は、海外の戦場の、ジャーナリストとしての日常の一瞬を切り取った様な、ルポルタージュの雰囲気も持つ短編だった。
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