辺見庸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
よく、小説では、人間的根源の要素をテーマにする、といった事が多いが、その大概は、性欲であったり、広大な煩悩に対する欲望に焦点が当てられており、他が蔑ろにされている気がしていた。その点では、表題作は、人間の三大欲求に分類される、「睡眠」という分野の荒野をただ突き詰めた、という斬新さを得た。まだ未読だが、作者は他にも「食」について注目した、「もの食う人びと」という作品もあり、いずれ読んでみようと思う。
さて、本書についての感想だが、現代社会の睡眠に対する意識の低さというのが、注目されるべきだと主張だと思われたのだが、私生活を覗いて見ると、社会人であれば、時間に余裕が無い場合、その余裕をどこから作り -
Posted by ブクログ
ネタバレ通信社で『起こし屋』として働く主人公と、聡。
仕事柄ある時間に起きなくてはいけない人々を、眠りを妨げることなく快適な目覚めと共に覚醒の世界に呼び戻すアルバイトに従事する2人。
眠りということに並々ならぬ哲学を持つ聡。その哲学に頷きながらも、どこか適当で迎合的なところがある主人公。
聡の並々ならぬ起こし技術と眠りへの哲学に影響されて、主人公と、もちろん聡は「起こし屋」としてのプライドを持ち、淡々と、しかし確実に仕事をこなしていく。
しかし、「自動起床装置」と呼ばれる定刻にゴム袋が膨らんだりしぼんだりすることで寝ている人を自動的に起こす装置の導入により、ささやかな抵抗を試みるも2人は起こし屋として