吉田奈保子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
デンマークのミステリシリーズ第6弾。
常に同じ品質ではなく、時とともに変わりゆく関係性が、なんとも切ない。
相変わらず読ませる。
この物語には、一人の魅力的な男性が登場する。
彼について、他者からどれだけ彼が魅力的か、は語られるのだけれども、ついぞ彼が本当に何を考えていたのかは示されない。いや、示されているともいえるんだけど、主人公らが彼と語り合う機会は与えられない。
そのことにより、物語を読み進めながら「この人はどんな人なんだろう」とずーっと考えさせられてしまい、その結果、彼がとてつもなく魅力的に見えるという不思議なことになった。
語らず想像させるってすごい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本『特捜部Q』シリーズを読むたびに思うのだけれど、この作家は冒険小説の書き手としての色合いが強いのではないだろうか。物語の各所に個性的な人間たちを配することにより生まれる劇的効果を狙うのがとても巧い作家ではないのだろうか。だからこそ、警察という組織の人間を主人公にしていながら、およそ警察機構とは相容れないような主人子と、これまた同様の部下二人、そして何よりも事件の中核となる副主人公を物語ごとに造形し特捜部Qと対峙させ、交錯させ、緊張で蓄えた力を大団円で一気に爆発させてゆく手法が活きているように思える。まさに血沸き肉躍る冒険小説みたいに。
それを強く感じさせてくれたのが本書である。交通事故に遭って木の上に飛ばされ、吊るされたままきみょうな死体となって発見された少女の話を、今回の特捜部Qは発掘する。その事件を取り憑かれたように調査していた老人が公衆の面前で拳銃自殺したのだ。衝撃的なスタートと言える。
一方で現在より数年前から、奇妙な教団に生きるある人物の描写が始まる。女性、悪の化身、そして殺人鬼である。教祖との距離がなぜか不明だ。教祖の正体もわかりにくい。しかしそれなりの力を持ったカルトであり、その女は教団の実務を握る立場の人物であると同時に、頭の切れる悪魔である。彼女の手によって誰にも知られず教団から消えてゆく女たちのことがこうして語られる。
カルト教団はこのような物語シリーズの中ではなかなか避けて通れない犯罪の火床のような題材であろう。教団そのものが健全であれ、そこに悪意のある人間、仮の姿を宿して金や力を行使できる人間の存在が、閉ざされた集団の中に特異に構築されたヒエラルキーに忍び込みやすい。そんな、古今東西を問わぬ宗教的悪の中で蠢く個の悪の姿が教団にも外界にも力を振るうことで、破滅を呼び込むという物語は宗教にも政治にも国家にもあり得ることであり、だからこそ冒険小説の骨格と似た造りになってきているのが、本シリーズなのではないかと思う。
本書では主人公たちも命が安泰ではなく、火の中に飛び込まざるを得ない存在として描かれる。第三者的ではなく、まさに冒険を余儀なくされ、体験を己の物語に変えられる人々としての捜査官なのである。
ちなみに本シリーズで冒頭から抱え込んでいる未解決事件=連続釘打ち機事件に、本書で大きな進展が見られる。カールたちを襲撃した銃が発見されたのだ。今後のシリーズ作品を通して、こちらの捜査も少しずつだろうが、露になるだろう。そしてあの事件で体の自由を奪われたハーディの人生も、自分の物語として冒険小説の道を伸ばし続けることだろう。今後も眼を離せない、注目のシリーズである。 -
購入済み
先が読めなく最後まで楽しめた
殺し方や、犯行の動機が変わっていてラストまで先が読めず一気に読んでしまった。主人公のキャラは最初不快だったが、読み終える頃には好きになっていた。シリーズ化してるようなので、さっそく次の『特捜部Q』を読もうと思う。
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Posted by ブクログ
ワシントン・ポーシリーズの翻訳版新作が出るまで、刑事もののミステリを読みたいなと思って手をつけたけどこれは大正解。読み始めは重たく感じたものの、世界観に入り込めてしまえばそこからはもうサクッと読める。ただ、とにかく続きが気になる!というよりは落ち着いて読み進められるタイプではある。伏線の張り方とその回収がスマートで良い。
特捜部Qの初仕事になることと、世界観や登場人物のお披露目もあることから大枠は非常にシンプルなんだけど、各章の展開の仕方や徐々に繋がりが見えてくる演出、主役であるカールと周囲を固めるキャラクターたちとの絡みはしっかりと濃く描かれていて面白かった。刑事/バディものでは醍醐味の一つであるアクションもしっかりある。
事件の内容は想像を絶する凄惨さで、頭の中でイメージこそするもののどうしてもマイルドになっていた気がする。現実には当然起きえないことなんだろうけど、妙にリアルでゾッとする。想定していた結末よりも斜め上の着地だったので、スッキリとはしないけれど、ああよかったと思える。
アサドの謎は最後まで謎のままだったけれど、カールにとって間違いなく最高のバディだしここから先の物語も楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
デンマーク発の警察小説シリーズ。
M・W・クレイヴンのワシントン・ポーシリーズを一気読みし、ポーロスに陥っていたところ、こちらの小説に出会いました。
捜査への情熱を失っていた刑事マークと、シリア系の変人アサドが、未解決事件の再調査を行うというストーリー。事件の内容はなかなか重たい内容でしたが、被害に遭ったミレーデと、捜査をするカール視点で描かれており、徐々に二つの視点が重なっていく過程が面白かったです。
今回の事件で、被害者が助かることがその後の被害者にとって本当に良いことなのか、問われる内容となっていましたが、カール自身が抱えていたその悩みに対する一つの答えが提示されており、最後は感動的でした。こちらの作品も少しずつ追っていきたいと思います。 -
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ネタバレ【2025年101冊目】
事件に巻き込まれ、怪我を負った警察官のマークが復帰後に配属されたのは「特捜部Q」と呼ばれる未解決事件を専門に扱う新部署だった。明らかに予算獲得のためだけに設置されたお飾り部署に配属されたのはカールの他にはアサドという中東人のみ。二人は自殺したと思われる女性議員の事件に取り組み始めるが——特捜部Qシリーズ第一弾!
アマプラで映画をながら見して面白かったので、キャストが変わる前までシリーズを全部みてからの原作でした。おかげでマークもアサドもイメージの中でしっかり動いてくれて楽しく読めました。映画の話を先にすると、しっかり原作を大事にして作ったんだなということがわかりました。映画を見たのは数ヶ月前でしたが、「そうだったそうだった」と思い出しながら読みました。
本シリーズは事件そのものも面白いのですが、やっぱり主役二人の人間臭さが魅力的だったりします。特にシリーズ一作目の今作は相棒のアサドのことは全て明かされないので謎めいた男としての今後の活躍にも期待できてしまいます。
現在と過去が交互くらいに語られ、果たして交わることがあるのか、と初見だったら思うような被害者にとってかなりシビアな事件なわけですが、ラストがとっても良かった。あと、生きる力が強すぎる、人間ってすごい。
外国小説ならではの独特のテンポがありますが、それもひっくるめて楽しむのがいいんじゃないかなと思います。次作以降も時間をおいてじっくり楽しんでいきたいところです。 -
Posted by ブクログ
新たに手を出したシリーズもの。
こちらはデンマーク産。
自らのチームが事件の最中銃撃を受け、
1人が死亡、もう1人は一命は取り留めたものの
体が麻痺状態に。
トラウマから立ち直れない主人公は
通常業務から外され、特捜部Qと言う部署へ移動。
窓際族のような状態に。
特捜部唯一のメンバーは謎のアラブ人、アサド。
この人がすごく良い!
癒し系?すっとぼけ系?いや、実は切れ者?
この方がいれる甘ーいお茶、飲んでみたい。
まだまだ謎だらけなので、この先明かされる真実に期待。
事件の方はかなり狂気に満ち溢れてる。
「檻」に閉じ込められた女性の章と
カールとアサドが地道に捜査をする章が交互に綴られ
徐々に真相に近づいていく。
エピソード多めで、名前も含め、わかりづらい部分も多く、繋がるかと思ってたところが、あ、そこは関係ないんかーい、だったりしたものの、
全体的には楽しめ、満足。
ラストシーンに涙。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2002年と2007年と場面が変わるうち、これはきっと現在進行形の事件に違いないと戦慄させられ、祈るような気持ちで読み進めていった。事件がこんなふうに繋がるなんて想像もできなくてスリリングな体験ができた。
ミレーデの監禁シーンはこちらまで苦しくなってくる。終盤はハラハラさせられて胸が痛いくらいだった。
優秀だが怠惰なところのあるカールと、優秀だが変わり者のアサド。コンビの相性が良いのか悪いのかよくわからず、面白かった。アサドはあくまでもアシスタントであって警察官ではないというところがポイントで、結果的に型破りな捜査になるのが予想を上回っていてよかった。意外と屈強なところも頼もしい。
このコンビが熟練になったらどうなるのか、シリーズを追ってみたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ今回は、タイトルこそまた蹂躙された少年少女の事件のようだが、実は徹頭徹尾身勝手な大人たちのボタンの掛け違いが悲劇を大きく広げたのだった。
だから、「吊るされた少女」にはもちろん同情はするけれども、今までの事件ほどは胸が痛まずに読めた。
天性の人たらしであった青年と少女の出会いが事件の引き金だったとしても、そしてその二人が、あまり周囲の人たちの気持ちを忖度しないとしても、それが二人の罪であると糾弾するのはいささか酷だろう。
過去のひき逃げ事件と現在の宗教団体内部の諸問題。
いったいいつこの二つが交差するのだろう、と思いながら、どちらも興味深くぐいぐい読んでいたのだが、二つの事件が交差したとき、一つの解決を見た!と思ったのは単なる思い違いで、そもそも語り手自身が誤った前提で動いているのだから、その後の結果がどんどん思惑からずれて行ってしまう。
真犯人はあっちだったか。
いや、違うの?
懺悔なの?復讐なの?
残り数十ページになっていきなりの二転三転する展開に、読書スピードまで急上昇してしまった。
ぜいぜい。
カール、アサド、ローセそれぞれが抱える過去も、今回捜査の一環でセラピーしてもらったおかげで、次巻からぐっと深堀されていきそうな気がする。
願わくば、彼らにも安寧の日々が来ますように。