児玉博のレビュー一覧
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大学の卒業式後の謝恩会で、先輩にあたる出井さんからの卒業生へのメッセージが流れていたのを覚えている。あの頃のソニーはカッコよくて品質への信頼も厚く、少し前のアップルのようなワクワクする存在。「デジタル・ドリーム・キッズ」というスローガンもイカしていて、オーディオやテレビ関係の家電は全部ソニー製品で揃えていた。そんなソニーの社長の出井さんは、強くてカッコよくて華のある人に見えていたが、毀誉褒貶がある中で、結局一体どういう人なんだろうと手に取った本。
そこには、一般人が外から見ていたソニーの印象との実態の乖離や、そして大ソニーを経営する者の重責や苦悩が生々しく描かれている。また、別の意味で印象に残ったのは、およそ一般的なサラリーマンらしからぬ出井さんが、サラリーマンであることに価値を見出し、その価値を最大限使い切るべきと言っていたこと。
ソニーを辞めてから、クオンタムリープ(非連続の飛躍)を設立し、さまざまな挑戦者を心から応援し、徹頭徹尾「Giver」だったという出井さん。読んで思ったのは、「やっぱりかっこいい人だった」ということだった。 -
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トヨタ自動車の中国事業を牽引した服部悦雄のノンフィクション。
服部は戦前の満州で生まれ、官僚の父親の意思で戦後も中国に残り、27歳まで中国で過ごした。当時の中国は中国共産党が暴政を強いた時期。中国社会で生きてきた彼は中国人の本質を「好死不如懶活(きれいに死ぬより惨めに生きたほうがまし)」という。
トヨタ自動車入社後、奥田碩に認められた服部は日本人とは異なる手法で実績を上げていく。進出に遅れていたトヨタの中国事業においても、知己の合弁候補先や政府要人との折衝を通じ事業成長の道筋をつける。当時社長就任前のポジションでアジア地域を統括していた豊田章男には大きな手土産を残した結果となる。しかしながら伝統的日本企業の枠を抜けきれなかった、服部は厚遇されることがなかった。
中国事業に絡む人間ならぜひ読んでおきたい一冊。 -
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出井さんが社長の時、あるいは退任した時、いい評価はされなかった。
むしろソニーを弱くしたとか、第二のウォークマンを作れなかったとか、
悪評の多い人だった。
しかし、この本はそれを否定している。
出井さんは10年先を読んで、ソニーを製造業からエンタテイメント業に変革する
礎を築いた経営者だと。
盛田さんにも大賀さんにもたてついて、自分の考えを通したと。
大賀さんに左遷もされたが社長に指名もされた。
「消去法で選んだ」というセリフは当時有名だったそうな。知らなかったけど。
製造業としてのソニーに危機感を持っていたのは間違いない。
その証拠に?今やソニーはパナソニックや日立とは全然違う道を歩んでいる。
製造業ではない。インターネット、エンタテイメントが主力の企業になっている。
東芝やシャープなど見る影もない。
早すぎた男。平賀源内みたいた。
彼の評価が低かったのは、社外だけでなく、むしろ社内。
カリスマ盛田社長の部下たちにとって、ソニーは製造業でなくてはいけなかった。
それを変えようとした出井さんには従えなかったということか。
サラリーマンは悲しいねえ。
序章 インターネットは隕石だ。このままじゃソニーは恐竜のように滅びるぞ
第1章 サラリーマンだからこそできる経験がある。左遷だって学びなんだ
第2章 岸辺を頼りに泳ぐ人より沖に向かって泳ぐ人
第3章 変革への意志がソニー・ピクチャーズを変え、”製造業神話”を破った
第4章 松本大は出井とネット証券を興し、冨山和彦は出井改革に勇気をもらった
第5章 日本のインターネットの始祖・鈴木幸一は「出井さんは不当な評価をされている」と訴えた
第6章 「前例がないからこそ意味がある」という価値観が起業家たちを後押しした
終章 18歳の高校生が出井と出会い、シリコンバレーで最も知られる日本人になるまで
エピローグ 出井伸之とは日本にとってどんな存在だったのか -
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面白い
世界の自動車メーカー トヨタ
その世界戦略の中で重要な中国
低迷していた中国でのトヨタを
トップに押し上げたのは
27年間中国で育ち
小鬼と蔑まれ 文革も経験し
厳寒の中労働し生き延びた男 服部
トヨタに中途採用から入社し
奥田という トヨタでは異才の上司に
見出され
才覚を現し中国でのてトヨタの礎を
造り
そして創業家の章男を社長にした男と
言われる
しかしその辣腕から
会社からは浮いた存在に
会長から感謝され伝えられた役員にも
遇されず
自家用ジェットも届かなかった
しかしトヨタの中にも
社長のポストに実力で異義を唱える
などした人物もいたんだ
これからこのマンモス企業が
どうなるのか面白い
久しぶりに読み応えのある本だった -
Posted by ブクログ
中国で終戦を迎え大躍進政策や文化大革命を生き抜き、トヨタ中国の総責任者まで努めた服部氏のインタービューを基にしたドキュメンタリー。氏の生い立ちたどる中で、インタービューで引き出される凄惨な実体験の数々。中国の近代史のリアルで非情な実態が炙り出されている。中国建国の英雄とされている毛沢東は日本の歴史の教科書でもそのような紹介がされているが実態は大躍進政策や文化大革命といった失政によって1億人近い人民を死に追いやった虐殺者でもある。全土で雀を徹底的に駆除する事を推奨された結果、害虫が発生して作物が育たなくなり飢饉が発生し4〜7千万人もの餓死者を生んだといあれているが、同じ事を書いた体験談が、評論家の石平氏の半生記でも記述されていて、それが偽りのない話であるという事が改めて思い知らされた。
冒頭に「日本人は中国人を分かっていない、本質をみていない」と言って服部が割り箸の袋の裏に書き留めて著者に見せた文字。
「好 死 不 如 櫑 活」hao si bu ru lai buo
「きれいに死ぬよりも惨めに生きたほうがまし」
これが中国人の本質だという。桜が散るみたいに潔く死ぬなんて、中国人は考えないと。かつて高杉晋作が上海を訪れた際に、列強に食い物にされていた中国を見て驚きを受けたエピーソードは歴史に記されているが、期せずして先週読んだ寺島実郎氏の「二十世紀と格闘した先人たち」の中で、高杉が「なぜ、戦わないのだ?」と町中の中国人に聞いて回った話が書かれていたのを思い出した。国がどうなろうと、死ぬよりはマシだということなのだろう。この言葉を知れただけでも、本書を読んだ価値があったと思う。 -
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これは面白い。
トヨタ自動車の中国市場を取り巻く歴史とそこに関わる歴代の社長陣を、服部悦雄という中国育ちの日本人で中国トヨタの立役者となった人物への対話から描いている。
ストーリー展開が秀逸で、あっという間に読み終えてしまった。
服部さんの生い立ちにも関わる、かつ、中国市場を語る上で欠かせないポイントが多いため、本の前半は満洲国解散〜近代における激動の中国近代史が記載されている。
その中で、中国人はどんな思いでどんな生活をしていたのかを服部さんが見た世界も含め記載されている。
何度も中国史は読んで来たがこんなにわかりやすく、イメージしやすく理解できるものは初めてだった。
後半ではトヨタ自動車の中での出来事が記載されている。
以前中国で働いていた経験からも、中国でのビジネスや中国人らしさというものには思い当たることが多かったが、特に服部さんが中国人らしいとして周囲の日本人から敬遠されるシーンもありありとイメージがわいた。
本書の中でも紹介されていたが、トヨタ自動車をモデルにしたトヨトミシリーズと、本書の作者である児玉さんが書かれている テヘランから来た男 西田厚聰と東芝壊滅も読んでみようと思う -
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ネタバレこれは面白いです! 自動車版『大地の子』で、タイトルとしては「中国の近現代史と自動車産業」のほうが正確かと思います(これだと売れないと思いますが…)。
中国で生まれ育った服部悦雄という元・トヨタ中国事務所総代表のインタビュー録です。「服部悦雄」は、『トヨトミの野望』では「八田高雄」で登場しますが、その『トヨトミの野望』も織り交ぜながら展開します。但し、こちらの本では全て実名。氏の経歴に合わせて、満州国解散から習近平時代までが描かれ、これを読むだけで中国の近現代史がわかります。
氏は、中国人の本質は「好死不如懶活(きれいに死ぬより、惨めに生きたほうがまし)」と言い切ります。毛沢東の大躍進運動(「雀撲滅運動」は初めて知りました)や文革、天安門事件など、マクロ面のみならず、この「本質」を裏付ける庶民の生きざまも描かれ、自動車事業に関係なくとも読める内容です。
児玉博氏は、かつて故・西田厚聰氏とのインタビューによる『テヘランから来た男-西田厚聰と東芝崩壊』を上梓していていますが、どちらもストーリー展開が秀逸。今回も一気読みコースでした。
実は、以前、トヨタが天津に進出する際に、天津汽車(後に第一汽車に買収)と部品合弁会社設立の交渉を担当しました。この本にある通り本当に大変で(一冊の本が書けると思った)、かつての体験を思い出し、ドキドキしながらページをめくりました。それ故とも言えますが、面白さは太鼓判の一冊です。