一雫ライオンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
主人公の片陵礼子が雑誌の取材をうけているシーンから始まる。
片陵礼子はいずれ最高裁判所判事になるであろう、将来を期待された東京地方裁判所の判事。
日々の判決の起案に追われているなか、片陵礼子が判決を下した元服役囚の蛭間隆也が毎朝裁判所の前に立って、裁判所を見上げていることを知る。
礼子は自分の判決に不服があるのだと思い蛭間隆也のことをを調べる。
調べてゆくと礼子は蛭間隆也が今までどのように生きてきたのかを知ってしまう。同時に蛭間隆也の人間性にも触れてしまう。
今まで判事として必要ないと考えていた、感情が礼子の中に芽生えはじめる。
蛭間隆也が起こしたとされる傷害致死事件は、妹をかばっていたのだった。片陵礼子は蛭間隆也に、再審を請求するように説得する。
事件の真実が徐々にあきらかになっていくにつれ、お互いに惹きつけられる力も強くなってゆく。立場が違う二人が恋に落ちて、周りが見えなくなる描写は引き込まれた。
まさかと思った。切なくやりきれない思いが込み上げてくるラストだった。 -
Posted by ブクログ
いやぁ、良かった!読み終えてしばらく鳥肌が立っていました。読後感の良い作品はやっぱりいいですね!
1985年、北海道のバスツアー。バスの転落事故により、乗っていた乗客がほとんど亡くなってしまった。その事故の生存者であった小学4年生の修一と、6年生の由里子。
それから14年後の東京で、ホームレスの首吊り自殺があった。早期退職を希望する警察警官の真宮が現場で偶然目にした2人の男女。なんとなく心に引っかかりを覚え、2人を探っていくうちに、過去の事件も2人が関わっていることに確信を持つようになる。
この物語は、犯罪者側と警察側の両方の目線で進んでいくわけですが、物語が進むにつれ、修一と由里子に警察の影が近づいてくると、どうか捕まらないようにと願いながら読み進めました。
で、おそらくこんなラストだろうなぁと、読んでいくと、こんな仕掛けがあったとは!最後、ちょっと驚きが待ってます。
それにしても、汚い大人たちに翻弄された子どもたち。そういう大人たちのせいでこんな思いをしながら生きなければならないことに激しい憤りを感じつつも、ラストで大いに救われました。 -
Posted by ブクログ
物語は1985年の北海道・知床半島ウトロから始まる。初日の出を拝むために札幌を出発した「北斗流星号バスツアー」は、大晦日の深夜、吹雪の峠道で崖から転落するという悲劇に見舞われる。豪華バスに乗っていた若者たちは、センセーショナルな事故の渦中に巻き込まれ、人生の軌道を大きく変えられてしまう。
時は流れて1999年、東京・新宿で身元不明の遺体が発見される。同時期に政界の重要人物が殺害される事件も発生。定年退職を控えたベテラン刑事・真宮は、若手刑事・香下とバディを組み、二つの事件の真相を追うことになる。
捜査を進める中で、北海道の事故と東京の殺人事件が一本の線で結ばれていく。真宮は足で稼ぐ古風な捜査スタイルを貫き、香下はインターネットを駆使する現代的な手法を用いる。対照的な二人が衝突しながらも、互いの信念を理解し、刑事としての矜持を共有していく。
物語の鍵を握るのは、事故に巻き込まれた若者たちの過去と、ラジオ番組を通じて交錯する人間関係。2000年を目前にした日本社会の不安と希望が交錯する中、事件の真相が明らかになるにつれ、登場人物たちの人生もまた大きく動き出す。
『流氷の果て』は、単なるミステリーにとどまらず、時代の空気と人間の内面を巧みに描いた作品だ。1985年のバブル期と1999年のミレニアム直前という二つの時代を舞台に、社会の変化と個人の葛藤が交錯する。
特筆すべきは、刑事・真宮と香下の対照的な人物造形。真宮は「昭和の刑事」の典型であり、現場主義を貫く頑固な男。一方の香下は、眉を整え、ボディクリームを使う「平成の若者」。二人の価値観の違いが、捜査の過程で浮き彫りになり、やがて互いの信頼へと変わっていく様子は、読者の胸を打つ。
また、ラジオ番組の存在感も印象的だ。テレビが主流メディアだった時代に、ラジオが築いていた濃密な人間関係や文化が、物語の展開に深みを与えている。メッセージ募集やパーソナリティとの交流が、事件の鍵を握る要素として機能しているのも興味深い。
本作は、過去の事故と現在の事件が交錯する構造を持ち、読者に「時間の重み」を感じさせる。登場人物たちは、過去の選択や出来事に縛られながらも、未来へ向かって歩み出そうとする。その姿は、ミステリーの枠を超えた人間ドラマとしての感動を呼び起こす。
最後に、本作のタイトル「流氷の果て」が象徴するものは何か。流氷は、冷たく孤独な記憶の象徴であり、果てとはその先にある希望や再生の予感なのかもしれない。読後、静かに胸に残る余韻が、読者に深い問いを投げかけてくる。