伊藤朱里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
すっかり騙されました。しかも後味の悪い方に。
途中で違和感を覚えつつも「まあ常識的に考えてそういうことはないよな」と思い込んでいた自分への、
これは罰か、それとも復讐か。
「名前も呼べない」ことの意味(もしくは意図)が、今になってようやくわかった。
名前には、意外といろんな意味が含まれているのだ。暗号のように、符丁のように。特に、その「響き」の中に。
陳腐な感想だけれど、女性はやっぱり恐ろしい。
主人公の恵那にはほんとうにイライラさせられた。自分が知る小説の登場人物のうちでも一二を争う「嫌な女」だ。少なくとも今年の内では一番の、「嫌な女オブザイヤー」である。
しかし彼女を打ちのめすのだから、亮子さんも相当な「嫌な女」だ。性悪だ。ほんとうに、恐ろしい。
それほどまでにこの二人は飢えていて、剥き出しで、朝井リョウ氏の言葉を借りれば「滾っている」。
例えば母と娘であろうと、姉と妹であろうと、親友同士であろうと、師と教え子であろうと、
女同士というのは結局どこかでライバル同士であり、もしかすると敵同士であるのかもしれない。
いや、そんな耳障りの良い言葉では表せないような、「名前も付けられない」関係性があるのだろう。
それだけにその関係性は正体がつかめなくて、時には強固であり、また逆に脆かったりもする。
けれどお互いが存在しないと、彼女らは敵同士にもなれない。
いくつかの「歪んだ愛」に翻弄された主人公が最後に求めるのものが、
「性別を超えた友情」であるところが印象的だった。
収録作の「お気に召すまま」では、主人公の父親と妹という肉親が重要な役割を担っている。
男女の性愛なんて、脆いものだ。
晩年の漱石作品をふと思い浮かべた。