藤原章生のレビュー一覧
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[震源地から扉は開くか]世界的に注目を集めた欧州経済危機の発端の地となったギリシャと、それに続くと一部から目されてしまったイタリア。その両地を取材する著者が、危機の影響と今後の社会の行く末を、有識者とのインタビューを通じながら論考した作品です。著者は、毎日新聞の記者を務める藤原章生。
経済危機(そして近接する時期に起きた東日本大震災)からどのような社会的教訓が得られ、どのような未来が描かれるかということを筆者なりの視点でまとめており興味が持てました。資本主義の限界を指摘するその考えに賛同するか否かは別としても、読み手に市場や経済について様々に考える機会を与えてくれる一冊だと思います。
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毎日新聞記者として2008年~2012年ローマ支局長を担当された著者。現地にいるからこそ補完する、ニュースで見聞きするギリシア、イタリアの金融危機と、そのさなかにある国民たちの温度差を現実味をもって感じさせる一冊。
火炎瓶を投げ、警察が放つ催涙弾にくもの子を散らす暴徒たちが、一線を越えないのは、マンマが大切にした家庭の絆という文化があるからという歴史学者デッラ・ロッジャの主張は意外に感じると同時に、腹に落ちた。
そして福島出身の著者が海外からフクシマを見たとき、歴然と存在し、かつ誇張しない日常が、ニュースとの距離感、温度差の根底にあるという意味で、イタリア、ギリシアと繋がっていくという展開 -
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まるで映画のストーリーのよう。
こんな人生を送った人が実際にいるんだ。
主人公の永田東一郎は、一浪して東大に入りスキー山岳部に所属、1984年25歳にしてカラコルム山脈の難峰K7遠征隊の隊長を務め、初登頂を成し遂げた人物だ。
東京生まれて、高校2年の時に大酒飲みの父親(56)を亡くした。生活費が父親の酒代で費やされ質素な生活をしていたようだが、かなりしっかりした母親に育てられたようで、本に親しみ東大進学を考える。
そんな彼が、山登りに興味を示すきっかけになったのは、小4の1学期の時に、恐らく父親から少しでも離そうと自然が豊富な千葉の施設に、預けられたことがきっかけだったのかもしれない。そして -
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ネタバレ高山植物を調べるために、ネットで本の検索をしていて気になった『ぶらっとヒマラヤ』(藤原章生)。
「ぶらっと行けるような所じゃない」というツッコミから入ったようなものだけど……
今回もまた「死」に関する本を手に取ってしまったようで驚きました。
登山の話ももちろんあります。
「私の過去最高登山標高記録3776mを超えた先の世界」がどんなものなのか、興味深いお話でした。
その中に、「登山には「死のリスク」が常にある」事も書かれていて、
さらに、「死に近づく、あるいは死を見つめなくてはならない状況になるのは……それはとても健全」とまで言っている。
「……健全??」と不思議に思いつつ読んで -
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山に挑む人の本を読むのが好きだ。
極限に命をぶつけて得ようとする何かを知りたい、知ることができるかもしれないという期待に応えてくれそうだからか。
さらに、新聞記者をしていた人の文章が好きだ。ストレスなく読めて、この上なくわかりやすく、無駄がない。
この本は、山に挑んだ新聞記者による「ヒマラヤを舞台に一人の人間の心の移ろいをつづったもの」。両方を兼ね備えていて、自分にとってラッキーな一冊。
「登山を介し、それなりの年になった人間が考えた老い、恐怖、死、そして生についての記録」。今、いや昔からかもしれないけれど、そういうものを読むのが好きで、著者の人生とチャレンジ、思考をなぞることができたことが嬉 -
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毎日新聞の連載「原子の森、深く」を大幅加筆して書籍化。ちょっとそそられるタイトルである。あのノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士は、本当に広島への原爆投下計画を事前に知っていたのだろうか。しかしこのミステリーはあくまでも伏線であり、本線は、被爆という形で「原子力」との運命的な出会いをした、元日本原子力産業協会副会長、森一久の半生を浮き彫りにしたドキュメンタリーである。被爆後の人生において、原子力の在り方をジャーナリストとして、また原子力業界の中枢に入ってからはインサイダーとして、終生警鐘を鳴らし、研究し、自ら信ずる方向に向けて行動した続けた軌跡を、数多くのコメントを織り込みながらたどっていく
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ギリシャ危機の真実を、学者から庶民まで、複数のギリシャ人に取材しながら、これまでの歴史の経緯を踏まえて、簡潔に記した良書。
段落も多く、さらっと読めてしまう本ですが、引用をたくさんしたくなるほどの充実した中身で、ギリシャ危機の真相を知りたい人には必須の書だと思います。
中でも興味深いのは、ギリシャは、各種統計に関する国家としてのガバナンスがほとんど働いていないこと。つまり、ギリシャから出てくる統計数字は、全く当てにならないということ。
ウソの数字を作って、EUにも加盟してしまったほどの国です。つまり見た目真っ当な先進国に見えるギリシャも、中味は発展途上国と大して変わらない、悪い意味でのい -
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今巷で話題のヨーロッパ債務危機問題の中心国、ギリシャでの危機についてルポです。
日本や米国、更にはドイツやフランスといった外側からみたギリシャ危機ではなく、ギリシャ現地から見て感じてそして考えたレポートでした。
過剰な公務員、過剰な国の借金、過剰な年金支給、更には世襲政治がもたらす弊害等、様々な問題を浮き彫りにしてくれていて、興味深く読めましたし、ギリシャ人気質なんかにも触れられていて、思わず笑ってしまうような話もありました。
先日紹介した「ソブリン・クライシス」に比べるとかなりカジュアルな感じですし、分量も新書で140ページ程しかないので、2、3時間もあれば読み切れる手軽さ。
ギリシ -
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ネタバレ新聞の特集の連載を読んでいる気になるが、非常にわかりやすい。
ギリシャに関する事実はもっと細かいところまで書き込んでくれてよかったと思う。ちょっと薄すぎて、踏み込み不足のまま終わってしまった感がある。
でもこの本がすばらしいのは、日本を含む他の文化との比較していく中で時々出てくる、ちょっと斬新な視点。
p50「歴史を、あるいは過去を語るのに10年では短すぎる。しかし20年、あるいは30年となると、世代にもよるが、否が応でも時代の流れを感じる長さだろう」
p58「グローバリズムでどこも似たような暮らしぶりをしているように見えても、(日本とギリシャでは)70年代をどう生きたか、抱える歴史が -
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タイトルの「差別」という言葉に反応して読んでみようと思ったんだと思う。ちょっと言おうとしていることがよくつかめなかった。著者が中央大学で講義した21回分をまとめたものなので、ワンテーマに絞れるかというとそういうものでもなさそうだし、著者もそんなことを述べている。
差別とはどういうものかを説いてくれているような、それでいて自分の感覚とはズレがあるような……。差別について考えを巡らせているわけだけど、終盤で帰国子女で外国で日本人差別のような経験もある著者の連れ合いはあっけらかんとそういう人もいるんだと思っていると受け流す。差別をあげつらうのもいいけど、結局それって差別の渦中にいるわけであり、それよ