ウィリアムギブスンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ相変わらずのカットアップ的な手法やジャーゴンの多用など、なかなか取っつきにくい部分は多いです。しかしながら、スプロール三部作は神話的構造をしている、ということを念頭に置いて読み進めたら、非常に貴重な読書体験となりました。
電脳空間での神の顕現("ニューロマンサー")、神の分裂および遍在("カウント・ゼロ")、神と人類との融合および離散(本作)といったプロットなのではないかな、と。
群像劇が飛び飛びに絡み合う、というのもまるでネットの構造を表しているようで、三部作を読むという行為自体が我々にジャック・インを体験させているのではないか、とも思います。 -
Posted by ブクログ
三部作を何とか読み終える。前作は3人だった章割りが、今作では一人増の4人の視点に。慣れたのか章が短いからか、行ったり来たりの読み辛さは前作ほどではない気がする。モナの住んでたフロリダや久美子が訪れる普通っぽいロンドンの描かれ方が割と普通だからかもしれない(治安は良くない)。
最後に来てT/Aや神話にまつわる謎が明かされて、あぁそういうことと分かる展開。この作品と連続して読まないと『カウントゼロ』は消化不良のままだったな。
”変化したとき”、80年代にすで予言されてることだし、AIが知性を持つシンギュラリティはそのうち来てしまうんだろう。そしてそれは人間から見れば神のような宗教的存在になるんだろうな、たぶん。わかる気がする… -
Posted by ブクログ
マトリックスの世界観の元になった作品だとかで、今年AppleTVでドラマ化の話が進んでいるとのこと
内容としては、凄腕電脳ハッカーだった男ケイスが自分の雇い主を裏切った代償で電脳世界に接続できない身体にされてしまう。
そこにその身体を直せるという不思議な男アーミテジが現れて、代わりにその男からの仕事こなしていくようになり、物語が進展していくといった内容
とにかく出てくる言葉や概念が難しく、巻末の解説を確認しながらではないと理解ができなかった。
ただそれでも、描かれている電脳世界の世界観やAIについては、1970,80年代の作品とは思えないくらいしっかりと描かれており、サイバーパンクの金字塔作品とも言われる所以の世界観を思う存分味わえます。
生成AIの活用やAIエージェントが当たり前になっていく今の世の中だからこそ、ニューロマンサーを読んでみてはいかがでしょうか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ『ニューロマンサー』から7年後。今回は3人の主人公による群像劇です。
傭兵のターナーは、ある技術者の企業からの離脱を支援する任務に、美術商のマルリイはジョゼフ・コーネルが手掛けたと思しき「箱」の出所を追う調査に、ハッカーのボビィはハッキング中に自身を助けた少女の行方を追う旅に、それぞれ身を投じていきます。
それぞれの事件を通して、「命」「感情」「情報」という異なるテーマに焦点を当てたドラマが描かれており、前作よりも取っつきやすい構成になっています。電脳空間へのハッキング(ジャック・イン)の描写や世界観の説明も前作より分かりやすくなっていました。
また、前作でケイスが成し遂げた冒険により巨大化したAIが野に放たれたことで世界情勢は様変わりしており、前作で提示された革新的な世界観をさらに深掘りした物語が楽しめます。
【テーマ】
前作がサイバーパンクの先駆けとなる革新的な世界観を提示した作品だとすれば、今作はその設定を深掘りした作品といえます。
前作は、人間がデータ(サイバースペース)に直接リンクできるようになった世界で人間がどう変わっていくのかというテーマを描いていたように感じましたが、今作はサイバースペースとの距離がさらに縮まったことで、人間とデータの境界が曖昧になった世界で生きる人々の心情へ焦点が移っています。
この世のどこにも実存と言い切れるものがなく、全てが虚構にも思える世界。「どこまでが虚構で、どこからが現実なのか?」という問いを一歩推し進め、実存は幻へ、幻は拡張された実存へと反転し、人間とデータが不可分となった世界の新たな現実の形が描かれています。
1980年代の作品でありながら、現代のVRやARに通じる価値観が描かれており、その慧眼には驚かされました。
野良AIを神として崇める、アナログとデジタルの価値観が混ざり合った独特な宗教観も、作者独自の世界観として興味深いポイントでした。
【ドラマ】
悪辣な環境の中で閉塞感に囚われた3人が「電脳空間に直結できるサイボーグ」「人の感情を閉じ込めた、最も複雑な振る舞いを持つ箱」「AIによる人知を超えたハッキング」と、それぞれの形で技術の極致を目の当たりにすることで、鬱屈した思いから解き放たれていく。
技術のブレイクスルーと個人の解放を重ね合わせながら、大きく変わりゆく世界と鬱屈した状況から一歩を踏み出す個人のドラマとの対比が読み応えがありました。
【総評】
前作と比べると、世界の革新を描く物語性よりもキャラクターの感情の機微を描く叙情性が重視されており、文学的な側面が強くなった作品です。
基本的には面白かったのですが、エンターテインメントとしての勢いは前作より弱く感じました。
ターナーの物語はスリリングで楽しめたものの、ボビィとマルリイのパートは終盤まで比較的地味です。
さらに、ウィレクやコンロイといった強敵たちが、主人公自身ではなくジェイリーンやロアたちの手によって倒されてしまうため、対立の決着としてのカタルシスも弱く感じました。
そうした点もあり、世界観の深化やテーマ性にはかなり惹かれましたが、純粋なエンターテインメントとしては前作の方が好みでした。 -
Posted by ブクログ
日本語だとギブスンは読みづらいというのはニューロマンサーなどで既知な事だとは思うが、決して翻訳が悪いという事ではない。だが、本作めちゃくちゃ積読してて、遂に読み終えた次第。
アイデア、雰囲気など相当面白いんだが、ストーリーが本当に書きたい事をどんどん詰めこんでみたというような感じで脈絡なく、もしかしたらそこが合作の妙なのかも知れない。フクサワユキチなる日本人も現れ、やりたい放題である。
作品雰囲気を体感するという意味では、近い時代を題材にしたアサシンクリードシンジケートというゲームがあり、当時のロンドンの街並みなどかなり参考になるかも知れない。
下巻に突入したわけだが、巻末に差分辞典なる付録があり、かなり細かい解説が付いている。これは是非とも上巻にあってほしいやつ。 -
Posted by ブクログ
ギブスン×スターリングのスチームパンク。
ざっと読んでみる。一気に読ませるストーリーはよいSFの特徴。まあそればっかりじゃないけど、今回は必要な力かと思う。こういう世界観を作ったことで古典として後々フィーチャー群と比較される運命だから。
あとスチームパンクは歴史改編物でもあるので、バベッジとかどういうキャラ設定をするかもみどころ。歌舞伎とか歴史小説みたい。そのあたりも機関の女王とか、噛んで味わうスルメ的な楽しみ方もできる。そういうときは事典が親切。
読み終わって二人の作者の手品が明かされる。なるほどね〜。そこでもう一回、伏線などを確認しながらじっくり読んでみようと思わせるのも、2つめの特徴。でもって二回目も期待に応えてくれるかな、と思いながら再度ジャックインではなくて機関駆動!
余談として、私はスチームボ○イをあんまり楽しめなかった。もっと黒々としたCGでやってほしい(アップルシード最高!)。ストーリーもSF映画の常で全〜然覚えてないし。 -
Posted by ブクログ
なんだろう。
なんというか・・・普通です、良い意味で。
いや、ディテールを細かく見ていくと、全然普通じゃないんですけどねw
サイバーパンク・ムーヴメントの代表格として名を馳せたウィリアム・ギブスンが1990年代に発表した「”橋”三部作」と呼ばれる作品群の、第一作だそうです。
読んでみて驚いたのは、「ギブスンなのに、読み疲れない!」
・・・いや、ちょうど昨年末から今年前半にかけて、ギブスンの「”スプロール”三部作」を読み終えたところだったので、その印象を残したまま取り掛かったら、まぁ読みやすい読みやすい。サイバーパンクという概念をそのまま言語化したかのようなスプロール三部作、あの読者の言語中枢と視覚中枢に挑戦するイメージの奔流たる三部作と比較すると、この「ヴァーチャル・ライト」は描かれた情景を想像することが極めて容易ですし、そもそもストーリー展開が基底現実から離れることがほとんどありません。地に足のついた世界の中で、血肉の温もりを感じられる生身の人間たちが、「ヴァーチャル・ライト」と呼ばれる謎の物体を追って丁々発止の争奪戦を繰り広げる、そんな物語です。
筋立ては確かにSFではあるんだけど、震災後のサンフランシスコを舞台としたフィルム・ノワール的な群像劇として、言葉はあれですけど「普通小説」?いや違うな、「主流文学」?なかなかうまい言葉遣いができないんですけど、敢えてSFに分類する必要性は薄い作品なのかな、と鴨は感じました。
1960年代のカウンターカルチャーを想起させる社会背景や人物が通奏低音のように立ち現れるところや、宗教に救いを求める人物の描かれ方(その人物に寄り添いつつも一歩引いた冷静な立場にいる人物の描かれ方も含めて)には、ディックやバラードの後期作品に通じる独特の退廃性と精神性も感じさせます。
「いつものギブスン」を想定して読むと、「あれ?」となります。でも、これはこれで、ギブスンの素が表出した作品なのかな、とも思います。次作「あいどる」も楽しみです!