あらすじ
「ギブスン復刊計画」第5弾
〈橋〉三部作新版刊行開始!
大震災で崩壊したサンフランシスコ。視神経
に作用し、視覚を発生させる謎の装置V L
をめぐる争奪戦の背後に隠された秘密とは!?
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Posted by ブクログ
なんだろう。
なんというか・・・普通です、良い意味で。
いや、ディテールを細かく見ていくと、全然普通じゃないんですけどねw
サイバーパンク・ムーヴメントの代表格として名を馳せたウィリアム・ギブスンが1990年代に発表した「”橋”三部作」と呼ばれる作品群の、第一作だそうです。
読んでみて驚いたのは、「ギブスンなのに、読み疲れない!」
・・・いや、ちょうど昨年末から今年前半にかけて、ギブスンの「”スプロール”三部作」を読み終えたところだったので、その印象を残したまま取り掛かったら、まぁ読みやすい読みやすい。サイバーパンクという概念をそのまま言語化したかのようなスプロール三部作、あの読者の言語中枢と視覚中枢に挑戦するイメージの奔流たる三部作と比較すると、この「ヴァーチャル・ライト」は描かれた情景を想像することが極めて容易ですし、そもそもストーリー展開が基底現実から離れることがほとんどありません。地に足のついた世界の中で、血肉の温もりを感じられる生身の人間たちが、「ヴァーチャル・ライト」と呼ばれる謎の物体を追って丁々発止の争奪戦を繰り広げる、そんな物語です。
筋立ては確かにSFではあるんだけど、震災後のサンフランシスコを舞台としたフィルム・ノワール的な群像劇として、言葉はあれですけど「普通小説」?いや違うな、「主流文学」?なかなかうまい言葉遣いができないんですけど、敢えてSFに分類する必要性は薄い作品なのかな、と鴨は感じました。
1960年代のカウンターカルチャーを想起させる社会背景や人物が通奏低音のように立ち現れるところや、宗教に救いを求める人物の描かれ方(その人物に寄り添いつつも一歩引いた冷静な立場にいる人物の描かれ方も含めて)には、ディックやバラードの後期作品に通じる独特の退廃性と精神性も感じさせます。
「いつものギブスン」を想定して読むと、「あれ?」となります。でも、これはこれで、ギブスンの素が表出した作品なのかな、とも思います。次作「あいどる」も楽しみです!