山井教雄のレビュー一覧
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十字軍物語を読んでいたり、昨今のパレスチナ情勢の背景を知りたかったので手にとりました。
ひとつひとつの事件や出来事(歴史ではバビロン捕囚や十字軍、近年ではナチスのホロコースト、イライラ戦争や湾岸戦争などなど)などは目や耳にする機会はあっても、一つの流れとして把握できてなかったのでとても勉強になりました。
ユダヤ人という考え方が民族(人種的なもの)ではなく、宗教的なものだったというのは新鮮でした。また著者も語ってますが、民族という単位で括るのは危険な考え方な気がしました。本来、ヒトの心を救うはずの宗教が争いの原因になってしまうのは悲しいことだと思いました。 -
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前作「まんが パレスチナ問題」はユダヤ人とパレスチナを歴史的に振り返るのに役立ったので続編となる今作品も手に取ってみた。物語の設定は前作から10年後。農園の約束を交わしたニッシムとアリが出会うシーンに始まる。ニッシムはイスラエル人で兵役を終えた後。パレスチナに住むアリとは双方の言い分に乖離がある事に気づき始める…。
戦争は外交の延長戦と言われる。話し合いで決着のつかない問題は最終的に力対力の構図をとる。イスラエルとパレスチナも長年その様な歴史を繰り返してきた。イスラエル側も首相が変わる度に対パレスチナ政策は変わるものの程度の差こそあれ威圧的な態度は変わらない。いや変われないといった方が正しいかもしれない。国民はパレスチナ強行姿勢をとる政治家を支持するし、双方が小規模大規模の戦闘・小競り合いを続ける。武力には武力を、復讐には復讐のスパイラルは変わらない。
アラブ世界はチュニジアのジャスミン革命に始まりエジプトやリビア、更に広範囲に革命的機運が広まった事で、一気に複数の独裁政権が打倒された。しかしその様な混乱した政治状況で従来からの過激なイスラム組織や国境を持たないイスラム国などが力を付け、益々混沌としている。背景にはSNSや動画サイト、検索サイトに国際的なハッカー集団の協力などネット社会を通じた圧倒的な拡大と拡散スピードにあると思われる。そうした仮想空間では人の移動やモノの流通よりも情報の伝播スピードは圧倒な早さを持つ。混乱に乗じて力を蓄えるイスラム国などもネットを駆使した世界規模の勧誘を続けており、傾倒する若者も少なくない。原因の一つは増加の一途を辿り世界に移民していくイスラム教徒の迫害がある。日本でも一時期はイスラム原理主義=テロ組織的な報道が大半で、ムスリムの人々に対する静かな恐怖心が植え込まれた。小さな恐怖が迫害を生み、ネットやニュースで流れる自爆テロに恐怖や誤解がさらに助長され、最後には迫害や憎しみにさえ変わっていく。大半の人は情報だけに支配されてしまう。
パレスチナ問題が平和的に解決されるためには、本書で言うネルソン・マンデラのような「相手を理解して許す」心がなければ難しい。
争いを道具に使う国や人々がいる限りは実現は程遠いが、イスラム教カリフを名乗ったバクダディも違うやり方であればアラブ世界の統一と平和を実現していたかもしれない。人権問題は彼ら自身が解決する問題だし、我々の価値観だけを押し付けてはいけない。バクダディがいなくなっても、根本的な考えの差や、復讐のスパイラルが消えない限りは第2第3のカリフが登場するだけかもしれない。
平和は尊いし誰もが望むもの。血を血で洗う世界に涙を流すのは女性や子供、お年寄りなど社会的に弱い立場にある人達だ。この様な漫画から先ずは知る事、そして平和について改めて考えたい。パレスチナだけでない。今日もスーダン内戦では多くの死者や怪我人が出ている。人は争いを止めることは出来ないのか?そんな事はないと信じ続けたい。 -
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19世紀末までは1/3、迫害され続けたユダヤ人はトルコ帝国で一応の居場所を得た、アラブ人の攻撃には無干渉。ナポレオン戦争以降の国家意識形成、トルコ帝国没落・崩壊でユダヤ人は本国を持ちたいという“シオニスト”運動を起こし(当時は領土概念が希薄)新たな迫害の口実となった…シオニズム運動へのロスチャイルド家の金銭的支援、イギリスの3枚舌外交(1915年のフセイン-マクマホン協定、16年のサイクス-ピコ協定、17年のバルフォア宣言)、1922年からのイギリスによる委任統治→ナチスによるユダヤ人迫害を国際社会は放置…「ユダヤ人はたび重なる差別やポグロム(無説明だがロシア語。大虐殺19~20C)に反撃しないできた…あげくナチスの600万ホロコーストだった。イスラエルは最後の安住地、ここから逃げる場所はない、から反撃することにした」1947年の国連でのパレスチナ分割案承認、1948年の委任統治の放棄とイスラエル建国、米ソのイスラエル即時承認、相次ぐ中東戦争、テロの横行と報復…1981年オシラク原発爆撃。本書には書いていないが、「売るほど」エネルギー源があるイラクが敢えて原子力発電所を持つ意図は(売ったフランスもどうかと思うが)核開発としか考えられない。核燃料が入れられる直前を狙った爆撃は「自衛的行動」と言っておかしくない。イラク側は、イスラエルが発表するまで、「誰がしたか」もわからなかった。
オスマン・トルコ帝国においては、婚姻・葬儀・相続などの問題はイスラム教徒はもちろん導師に、ユダヤ人は彼らのラビに、キリスト教徒は彼らの宗教裁判所にそれぞれ委ねられていた。現代のイスラエル居住の非ユダヤ人にも各集団の裁定が認められている(らしい)。前半で十字軍の野蛮や中南米でのコレキスタドールを語る文脈で傍観者の猫がp83「宗教って伝染病みたいなものだニャ(ユダヤ教は布教しません)」「本当に宗教って人間に必要ニャのか?」と問いかけるが、その考えを推し進めると「ユダヤ人でなくなれば殺されなかったのに」になる… -
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前作(2004年末)末尾で語り手のPL人とユダヤ人とが“民族”の無意味を鳴らしたが、’03年イラク戦争、’06年末フセイン大統領処刑にともない旧政権バース党を公職追放したことで「かつて有能だった官吏」がシナイ半島、および移民にまぎれてEU全体に拡散し“聖戦”ジハードを唱える「イスラム国」の原資となった。イラクは少数のスンニー派(世俗主義)が多数派(厳格主義)シーア派を押さえていたが(対立するイランはシーア派政権)、「自由な選挙」で選ばれたマリキ首相は米占領軍撤退後、スンニー派副大統領に欠席裁判で死刑判決…
イスラエルは日本と並ぶ「アジアの(民度の高い)民主主義国」である。パレスチナが国際的に認知されれば、≪敵意の海≫に浮かぶユダヤ人の国に対して人口がより多い橋頭堡ができ…最終的には再度≪大離散≫する以外のユダヤ人は抹殺されることだろう。アラファトPFLP議長はポロニウムという前代未聞の手段で暗殺された(おそらくロシアに)/「米国はユダヤ資本に配慮してイスラエルの肩を持つ」とするがWW2最中にFDRが米国への難民受け容れを拒否したのはトラウマでないか?ユダヤ人には石油のためにアラブに配慮していると見える。可哀そうは両方!
エジプト・ムバラク政権は長期にわたる専制だったから、むろん腐敗していただろう、しかしそれを打倒することが幸福とは限らない。作者は馬鹿だから「非暴力で倒した」と賞讃するが、結局「銃にプラカードは勝てない」。さきにイランで「イスラム革命」で厳格主義政権ができ、中東で(サウジを除けば)唯一親米の政権が打倒されたことに何者かの意図が感じないでもない。≪民意≫は「大きい声」を出し手に銃を持つ者の側に傾きがち。アフガニスタンで秩序を回復したタリバンが支持されたように。昭和十五年に対米戦争が民主的選挙で支持されたように!
文藝春秋2017年新年号「2016年の三冊」に4人もの人がフランス小説『屈服』を挙げた。極右ルペン当選を阻止するための妥協でフランス大統領にイスラム教徒が就任し≪融和≫政策がとられ…最終的に主人公がイスラムへの改宗を受け容れるマゾヒズム小説。「イスラム国(作者はISシンパと見られる)」に影響されたホーム・グロウン・テロを押さえるにはp127「移民の貧困や格差、宗教への差別をなくし、欧米が力で支配するのをやめることだニャ」フランスの第三子以降への手厚い支援はイスラム系住民の人口膨張となって脅威を与えている…
苦い現実のあと、読者に舌触りが良いように「日本は奇跡の国」と治安の良さを賞讃する(忘れ物が盗られないなんてことは在日外国人が多い戦後にはありえない)。市民が銃をもつアメリカ社会は軍隊を文民が押さえる事の出来る政治システムでもある。戦後日本は軍隊を日蔭者とし卑怯にも防衛をアメリカに依存して「守ってくれるかな」とビクビクしているが。アメリカがさらに弱くなり、いっけん日本人と見まごう民族が乱入できるようになれば、生態系に外来種が入り込んで固有種を絶滅させるような事態になりかねないが?集団的自衛権に反対する勢力? -
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「まんが パレスチナ問題」の続編で、その後の10年間(2005~2015年)を描いたもの。
前著と同様、わかりやすい説明で、ニュースなどで断片的に知っていたいろいろな話がつながってくる。
タイトルは「パレスチナ問題」なのだが、内容的には、アラブの春とその後、そして、ISの話が中心。
パレスチナ問題が改善に向かったわけでもなく、こう着状態におち入り、状況が悪化しているなかで、中東問題は、 ISやシリアなどの問題にフォーカスが移っていることをあらためて実感する内容。
パレスチナ問題は、今や、そうした中東問題との関連においてしか語ることができないようだ。
一時は、希望に思えた「アラブの春」も、その後の混乱のなかから生まれるのは、内戦状態であったり、独裁的な政権の復活だったり。。。。
独裁者を倒せば、なんらかの民主的なプロセスが生じて、より平和で自由な体制が生じる、という期待は、なんども打ち砕かれる。
最初は正義の人も政権にながくいると腐敗して、結局は独裁政治になってしまう。そして、体制を維持するために秘密警察や軍隊の力を使うようになる。
権力は腐敗する。絶対権力は絶対的に腐敗する。
という言葉をまた思い出してしまう。
そして、中東からの難民の増加は、ヨーロッパの混乱を招き、多民族に対する不寛容さをさらに強めてしまう。そして、ヨーロッパ社会から阻害された若者が、テロリストとしての訓練をうけて、ヨーロッパでテロを引き起こし、それがさらなる不寛容さを高める、という悪循環。
この循環をかえるレバレッジポイントはどこだろうか? -
Posted by ブクログ
相手を思いやることが一番大事なのかもしれない。
何が幸せかは人によって異なるだろうが、
健康で平和がある世界で、家族や友人と過ごし、
やりたいことや夢を見て生きていけるのがよい世界なのではないだろうか。
ただ人の欲は留まることを知らず、憎しみはすべてを破壊しようとする。
得た利益は手放したくはない、もっと欲しい。
そこから一歩離れて、
人ためにやれることがあれば、
世界は大きく変わっていけたのかもしれない。
暴力と憎しみが溢れた近代史を少し理解できたような気がしました。
(以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
○アメリカは「日本上陸作成を行えば、100万人以上が死んだだろう。
原爆を使って35万人が死んだが、本土上陸作戦なしで戦争が終結したのだ。
つまり差し引き65万人の命が助かったのだ」ニャんて、
兵隊が戦死するのも、非武装の一般市民を殺戮するのもゴチャ混ぜにして
堂々と正当化しているニョだ。(P.25)
○今じゃアメリカの軍事予算は年間約6500億ドル、世界の軍事費の半分。
一家族4人で8600ドルの税金が、毎年、軍と軍需産業に流れる・・・。
教育や医療などに活かすべき税金が軍事に消えるんだ。
もう、軍需産業がすっかりアメリカ経済の構造の一部になっちゃってて、
アメリカ経済を支えている。
適当に軍拡競争をしたり、戦争したりしないと、アメリカ中が不景気になり、
失業者があふれちゃう。
景気刺激のために、どの大統領も例外なく戦争をやるわけだよな。(P.53)
○働けば働くほど稼ぎが増える個人農場では、みんな見違えるほど働くようにニャった。
全農地の3%に満たない個人農場で、
ニャンと全農作物の4分の1を生産してしまったニョだ。(P.105)
○ワシらが間違っていたのだろうか?
いや、人間の知性とモラルが共産主義のレベルに達していないのだ・・・。(P.110) -
Posted by ブクログ
現代史について広く浅く学べるかと思い、手に取りました。この作者の本では、「まんが パレスチナ問題」が有名だったんですね。
まんがと言っても、コマ割りのあるストーリーまんがではなく、一コマ「漫画」です。
内容は、副題のとおり、「アメリカが戦争をやめない理由」が中心です。
私はあまり詳しいことはわかりませんが、偏りのある見方をされてる人なんですかね(^^;;
キャラに色々なことを話させているため、感情移入しやすい本でなのでちょっと注意が必要ですかねー。
これ一冊だけで物事を判断するには速すぎますが、とっかかりにはいい本だと思います。
アメリカがベトナム戦争で負けた理由のあたりはわかりやすく、参考になりました。ゲリラ戦になると泥沼化は避けられず、目的の完遂は難しいとのこと。
日本では、兵役もないし、爆撃に怯えることもないし、必要なものはだいたい必要な時に買えるし、食べ物もたくさんあります。平和が当たり前です。
でも、世界には毎日安心して眠ることもできない人がたくさんいるんだなあということを改めて思い知りました。
これだけITが発達して、世界がボーダレス化しているのに、いつまでも遠い世界のことだと思っていたらいけませんね。
そういうことを考えるきっかけになるという意味では、いい本なんじゃないでしょうか。