喜瀬雅則のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
中日ドラゴンズを通して、名古屋の風土を論じた一冊。
立浪監督になり、球団初の2年連続最下位、それでも観客動員数が伸びるという不思議、星野、高木、落合という監督を比較しながら、その違いを検証したり、スタッフや元選手など、多くの証言やインタビューから読み解ける、ドラゴンズと名古屋、ファンの特徴などは、面白い視点で述べられています。ファンとしては勝ってもらいたいのですが、それでも名古屋の文化として残り続けるこの風土はある意味独特かもしれません。中日だけでなく、その地域に長く存在するチームは、その文化や風土を色濃く映すものだと思います。野球ファンだけでなく、地域の文化という面でも興味深い内容でした。
▼産業も盛んで豊か。スポンサー獲得にも困らない。だから、営業が育たない
▼名古屋にいればすべて事足りる。そこに新たなチャレンジ精神というものは、なかなか生まれないというわけだ。
▼取り組む、成功する。そして他に先んじる。するとブレーキがかかって、後退する。いつの間にか他が追随してきて、横並びになる。
▼直言こそが本音だと受け取って、むしろ喜ぶのが、関西の気質かもしれない。ところが、内輪の意識が強い、悪い言い方をすれば「排他的」といわれる名古屋では、こうした直言だと、やたらとあちらこちらで、角が立ってしまいやすいのだろう。
▼名古屋という”内向きの風土”では、その良し悪しは別問題として、星野のようにその機微を掴み、組織内に自らの確固たる立ち位置を見出だすことが、組織人として必要な立ち回り方なのかもしれない。
▼名古屋の中で完結できるシステムや工夫を施し、それを長く守り続けてきたという歴史ゆえに、新たなチャレンジになかなか踏み出せない。そうしたコミュニティー内でのやり取りでも、いつの間にか齟齬ができ、それが積み重なっていく。その許容範囲は、恐らく、地域ごとで違いがあるのだろう。
<目次>
序章 地産地消のコンテンツ
第1章 支え合う構図
第2章 半歩だけ前へ
第3章 星野王国
第4章 名古屋の流儀
第5章 フランチャイズ・プレーヤー
第6章 連覇でも退任した理由
第7章 「5年先」か「今」か
終章 立浪和義、不退転の決意 -
Posted by ブクログ
サンケイスポーツ記者によるプロ野球のチーム「阪神タイガース」をドラ1元選手、マスコミなど、阪神タイガースを取り巻く「熱烈な」関係者に取材をし、阪神タイガースとは何かを浮き彫りにした著書。
優勝争いをこれまで何十年にもわたって行い、1985年の日本一、2005年のセリーグ制覇以来優勝から遠ざかっている阪神タイガースがどうして優勝できないか、読んで感じたことは、阪神タイガースというコンテンツがマスコミを通して発信され、多くの関西人に愛されていることに尽きると感じた。阪神がここまで注目されることになったのは、阪神タイガースの盛者必衰感が人生にも置き換えやすいうえ、感情移入しやすいことにあるように感じた。マスコミも一般のファンも勝てば褒める、負ければ辛辣なコメントを送る。なんとも関西人らしいが、その関西人の思いも“どこか”理解できるのは、自分も関西人だからだろう。 -
Posted by ブクログ
タイトルの通り、阪神はなんで優勝でけへんのか、について、元新聞記者の著者が、さまざまなテーマ、視点から分析してまとめられていました
同じテーマで他にもたくさん本は出てますが、ここまで合点がいく内容は正直ありませんでした
最も印象に残った内容は、タイガースが万年最下位に低迷していた、いわゆる「暗黒時代」に起こった、監督人事問題のときに、トラ番記者として経験したスポーツ各紙に蔓延る派閥の話
この頃、既に私もなぜかクソ弱いのにタイガースファンだったので克明に覚えてますが、まさか裏であんなことが巻き起こっていたとは…
他にも、高卒若手が育たない理由や、ドラ1のプレッシャー、繰り返されるトレードや補強の失敗、ファンや球団内部のことなど、トラ番記者時代に培った人脈を充分に生かしながら、OBへの豊富な取材も織り込みながら、非常に緻密に分析され読み応えのある内容でした
私は、「暗黒時代」がちょうど少年期だったので、最もタイガースの試合を観ていて、その時代に特に重点を充てた内容だったことも、面白いと感じた理由かもしれません -
Posted by ブクログ
マスコミがあることないこと書きまくり、ファンがぎゃ〜ぎゃ〜騒ぎ、タニマチは夜の街に選手を連れ回し、OBは現場に口を出し、スカウトは有望株の選手獲得に手をこまねき、ファームは一軍で通用する選手を中々育てられず、監督招聘時は長期政権を約束しながら、芳しくないと見るや監督ひとりにその責任を押し付ける…。
阪神のスカタンぶりは、ファンになった小4の1973年当時から既に語られていた記憶があるから、その年季の入り方は只者じゃない。
例えば、〈阪神社会党説〉〈阪神相撲部屋〉〈優勝したら銭かかるから2位が一番〉〈たけし軍団より弱い阪神〉〈阪神は大阪の恥や〉等、すらすらと出てくる。極め付きはオリックスに入団した田口荘は、ドラフト直前に〈阪神に行きたくない10ヶ条〉を提示…。
ここまでボロカスに言われながらも毎年300万人を動員。ある意味、究極のブランドとも言える。『我々は提供する商品・サービスには日々革新に裏打ちされた自信と誇りの元、お客様を決して裏切りません』と高らかに謳うのがブランド。
その定義に照らせば、真逆も真逆。リーグ優勝は1950年の2リーグ制になって以降、わずか5回。ちなみに巨人は38回。
そんな体たらくにもかかわらず、開幕ダッシュを果たせば、早々と10月の前売りを先買い、いざ観戦となれば車中からユニホームを着用、選手毎の応援歌を諳んじ、かつてはジェット風船をひとり何個も膨らませ、勝てばもちろん六甲おろしを放吟、負けてもヤケにならずきちんと阪神電車を整列乗車。
これまで書かれた阪神タイガース論って〈繰り返されるお家騒動-監督の首のすげ替え・スター選手の放出等-を例に取り暗黒史を紹介し、優勝どころか常勝チーム化できない温床は球団運営にあり〉と筆は向かうが、本書は一線を画す。
著者は元サンスポのトラ番記者。阪神の表も裏も知りつくすも、グラウンド外の暗闘はあくまでも遠目にとらえ、歴史・看板・風土・戦略・育成・苦悩・誤解・派閥・アレの9の枠組で、元選手たち(谷村・遠山・野田・中込・山村・薮・藤田…)らの生の声にフォーカス。関西という独特の風土に根づいた超人気球団の戦士たちの悲哀・重圧・懊悩・戸惑いを抽出。
いずれも、それは生々しく、えげつなく、掛布以降の生え抜き高卒野手が育っていないのも〈さもありなん×むべなるかな〉って思ってしまう。
タイガースの元敏腕スカウトは語る。ドラ1ともなれば技量に加え、『看板』の重さに耐え得る図太さが不可欠で、例えを出すなら井川慶の〈マイペースさ〉と鳥谷敬の〈ストイックさ〉が成功へのファクターであると。藤浪が突如伸び悩んだのは、結局のところ看板の重さだったのか…。
350頁にわたり綴られた『負の歴史』は、阪神というソフトウェアと大阪・関西というハードウェアと不適合が招いたとも読める。
15年ぶりに再び指揮を執る岡田彰布は、生粋の大阪人であり、1979年ドラ1。看板の重圧を嫌というほど知る御仁は、はたしてどんなタクトを振り、いかなる戦績を残し、次なる指揮官を育てバトンを渡すのか…。ファンは今日の勝利に酔いながらも、なんとしても良質なソフトウェアとして作動してよ!とひたすら願っている。 -
Posted by ブクログ
どこの球団にもこういう歴史はあるのだろう。でもこの球団だけが持っている歴史がある。かつて長嶋巨人が二年続けて日本シリーズで負けたのもこの球団の前身の阪急だし、再登板した長嶋が負けたのも仰木のオリックスだった。その年は、仕事が終わらなくて出前をとるんだけど食べてしまうとやる気が失せてしまってたことを思い出すなあ。
新書だから全てではないけれど、この球団のダメなところも良い(良かった?)ところもエッセンスがギュッと詰まっている良い本だったなと思う。
にしても今年の日本シリーズ観ていて思ったけど中嶋監督はマスクしてるからかもしれないけど、ほんと無愛想で、とっつきにくそうな監督なのに、実はコミニュケーションだったり公平な起用という点では名将だったんだな。来年から吉田がメジャーに行ってしまうし由伸だってその後行きそうなんだろうけど、加藤さんという人が作った世代の流れが上手く継承されれば、このチーム、まだまだ勝つんだろうな。 -
Posted by ブクログ
「最下位からの優勝は必然だった」と帯のコピーにあるが、それも当然と思わされる。
この本を読むと、パリーグ制覇は誰か一人のお陰というわけではなく、スカウト改革や、春季キャンプの場所の変更など、さまざまな要素があったことがわかる。
それほど、これまでのオリックスバファローズに改革すべきところがたくさんあったとも言える。それまでドラフトで獲得した選手が育っていなかったため、外部から来たスタッフが改革しようと試みるも、なぜ獲得したのかという記録がなかったというところなど、ダメな組織の典型という感じがした。
しかし、5年後を見据えてスカウティングを改革したこの人物も短期間では結果を出せず、オリックスから去っていく。
野球関係者はもちろん、組織作りに関心のある人には役立つほんだろう。
-
Posted by ブクログ
25年ぶりにリーグ優勝したオリックスバファローズの前回の96年の日本一からの道のりをスポーツライターである著者が迫った一冊。
イチローを中心とする96年の日本一のメンバーが抜けてからのオリックスの低迷期やオリックスと近鉄が2004年に合併した際の仰木監督の命を賭けた采配について知ることができました。
また、日本一から今回の優勝まで12人もの監督が変わったり、合併からAクラスも2度のみと日本一からの低迷が続いたオリックスバファローズについてどのようにして優勝まで辿り着いたのかを采配面や戦力面など様々な点から書かれており、優勝の秘訣を知ることができました。
MVPの山本由伸、2年連続首位打者の吉田正尚をはじめ、宗佑磨、杉本裕太郎、宮城大弥、紅林弘太郎など優勝の原動力になった選手のプロ入りまでや活躍までにした努力なども知ることができました。
そして、スカウトなど補強面やキャンプ地や二軍球場の移転などチームや選手にとって有益となる施策を打っていたことは中嶋監督の采配だけではなく球団に入った新しい血によってチームが活性化されていったことも知ることができました。
2020年の五輪に向けて戦力となる選手を獲得し、成長させその実を結び前年最下位から巻き返しリーグ優勝を果たしたオリックスバファローズ。
低迷期の理由、強くなった要因など本書でチームを深掘りすることができました。
日本シリーズでの激闘は野球の素晴らしさを改めて感じるものでありその感動を作ったチームの数々のエピソードを知ることができ、本書を読んでこれからの応援にますます熱が入る一冊でした。