喜瀬雅則のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
私には、この人を批評する資格はない。読み終わってしばらく本を置けなかった。帯を読んである程度結末がわかっていながらも、読みながら主人公の根鈴氏を応援してる自分がいた。日本は、はみ出しものや、異端児に冷たい社会だ。落ちこぼれという言葉がそれを象徴してる。個性が強いと言えばいいのだろうが、それすらマイナスのイメージがつきまとう。そして、彼らの心の中にこびりついた垢が溜まり過ぎてしまった時に、意図とは違う形で爆発して表れがちだ。そしてそれが誤解を生み、衝突を起こし、悪循環に陥ってしまう。その巨大なエネルギーを許容し、理解し、導いて行けると、すごいパワーが生まれ、すごい輝きを放つというのに、世間は得手してそれを知らないし、取り扱い説明書もない。根鈴氏の周りには、そういった素晴らしい大人もいれば、そういう境遇を理解しようとしない鼻持ちならないエリート主義者が対峙したりもしている。けれど、彼の得たかけがえのない様々な経験は、現在根鈴道場として発展し、オリックスのラオウこと杉本選手など多くの野球人に継承され始めている。本の中では、光の道を歩いた同期のイチローとの対比が描かれていくが、この無類の野球好きの二人は、最後の最後まで無様になろうとも完全燃焼してやり切ったという点で初めて交わる。二人とも人と違う道ややり方でも、悔いのない人生というかけがえのないものを人生で得ている。そこはやり切ったものにしかわからない清々しい境地で、凡人の我々には眩しいばかりに羨ましい。
-
Posted by ブクログ
不登校、引きこもり、高校中退、渡米、定時制高校、法大、再渡米、帰国し独立リーグ、現在は野球塾経営。移植の経歴の野球選手の半生。
高校野球の名門校に入学するも中退。日本ではコースを一旦外れると復帰は難しい。屈指の強打者は渡米や人との出会いを通じて野球を続けていく。そしてあと一歩でメジャー。イチローより早く日本人野手初のメジャーリーガー目前まで行ったという根鈴雄次という野球人。
根鈴の薫陶を受けた廣瀬純(元カープ)、GG佐藤など。2021年ブレイクしたオリックスのラオウ杉本も野球塾で打撃開眼しているそうだ。
高校から大学や社会人野球。名門校からプロという流れだけでない他の道。一人の野球人を追った屈指のノンフィクションです。
-
Posted by ブクログ
今やプロ野球の球団は親会社の広告でなく独立採算の時代、特にパ・リーグ。新時代のファンビジネス。野球ビジネスの概念が変わる。
従来はプロ野球の球団は巨人と阪神を除けば親会社の広告費を計上して年間数億円の赤字を補填してきた。
それが今ではファン向けのSNSの発信を始め、グッズの販売、コンテンツを球団がテレビ局に売っているという。
テレビの視聴率は大きく下がるがネットや直接の観戦者、野球場の直接の経営など大きく変わっており時代の変化を感じる。
本書はパ・リーグ中心の記述のためむしろセ・リーグの東西の人気球団の今後の方が気になってしまう。
野球の楽しみ方が増す一冊です。 -
Posted by ブクログ
6年で日本一を5回(!)という驚異の戦績を誇る、ソフトバンクホークスの3軍戦略について書かれた本。
選手の育成論としてはもちろんのこと、マネジメントやプロジェクト管理の観点からも非常に有意義な一冊です。
・新しい事には必ず反発があること。同調圧力に負けないこと。
・才能を磨くには競わせること。安心させないこと。
・やらせるのではなく、自主的に努力するような環境を作ること
・外から引っ張ってくるのではなく、中で育てた方が安上がりなこと
・納得感を持ってもらうには、機会を与えること
・そして機会がなければ上達しないこと
実際、千賀や甲斐といった育成(要するに戦力外)で入団した人たちが、今や日本のトップクラスの選手であるというのは、本当にすごいことだと思います。
本人の努力次第で何でも出来る…。
それは後に続く人に、本当に大きな夢を与えてくれると思います。
また選手以外にも、スタウトや球場スタッフなど裏方の話もてんこ盛りで面白いです。
野球に興味がない人でも、読めばきっとホークスを好きになれると思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ四国アイランドリーグ。野球好きなら、ご存知な方も多いであろう、独立リーグ球団。
そこの選手はプロ扱いだが、低給でNPB(日本のプロ野球)やメジャーを目指す、球団である。
“四国”であるから、当然4県愛媛、香川、徳島、高知に球団がある。それぞれ愛称があり、高知の場合は高知ファイティングドッグズだ。
Jリーグなどで概要に詳しい方もおられると思うが、地方の球団はその地方の企業や個人から寄付を受けて、試合を行い、地域貢献などをして、球団を運営している。Jリーグと違う点は、四国アイランドリーグは、NPBとは別個・無関係の球団だ。
当然、NPBからヘッドハンティングされることもある。今年のパシフィック・リーグ、千葉ロッテマリーンズの中心選手で、首位打者のタイトルを取った角中勝也選手は2006年のドラフト会議で同球団に7位で指名された。彼は当時高知ファイティングドッグズの選手であった。
で、なんで私がこの本の書評を書こうと思った訳は、独立リーグは「プロ」を名乗っているのにもかかわらず、彼らはほとんどは無名で、かつそうでなくとも、諸般の事情で社会人チームを辞めたり、大学を中退した選手が最後の望みをかけて、死に物狂いで野球(を含む球団行事)をがんばっている。いい意味でのスポーツマンシップの持ち主たちなのだ。
高知県といえば、ご存知の方も多いと思うが全国最貧県の一つで、上場企業も数えるくらい。法人スポンサーもなかなか思うように集められない。そんなわけで、球団の方針として、多角化経営をしている。
その一つが、本書の題名ともなっている、「畜産」である。高知ファイティングドッグズの職員はオーナーが球場で、高知名物の「帽子パン」を売る、練習後選手は農作業に精を出す。畜産をする。まさに「牛を飼う球団なのだ」。
ここでこのブログを読んでいる方は、オーナーがどういう方か知りたいと思うだろう。名前は北古味鈴太郎、短髪で少し太った好青年といったいで立ちだ。
彼は高知の名門・土佐高を卒業後二浪し、大学進学を断念。様々な職を遍歴した後、不動産会社の経営者となった。そんなエリートサラリーマンに故郷からSOSが届いたのだ。
それは「高知ファイティングドッグズにメインスポンサーが見つからない」ということで、オーナーを球団が公募するということだった。
リーグCEOの鍵山誠は鈴太郎に会うとともに、意気投合。
「この人に任せたい。すぐにそう思いました」と述懐している。その結果、鈴太郎は晴れてファイティングドッグズのオーナーとなったのだ。
そこで鈴太郎のオーナーとしての営業が始まる。
球団経営には最低基本的に6千万円程度必要。当時の収入ベースは4000万円に過ぎなかった。
高知球団の2014年の人件費総額は5600万円に上った。これに経費が加わってくる。
「4000万円足りない!」年間2000万円くらいなら、「自分で何とかなるんですよね。(鈴太郎談)」したがって2000万円足りない。メーンスポンサー探しが始まった。
大阪市に本社を構える整水器メーカー創業者社長の森澤紳勝は、高知県土佐清水市の出身。一代で東証一部に上場する企業を作り上げた名経営者だ。
森澤のもとには、高知県選出の国会議員や、高知の政財界など、あらゆるルートから球団救済の声が届いていた。
鈴太郎は大阪本社の日本トリムに森澤を訪ねる。「2000万円を3年間」無理を承知の話だ。しかも鈴太郎にとってはこれがオーナーとしての初仕事。
この商談の内容は本書には詳述されていないが、森澤は快諾。理由が「君のような若い経営者を支える。それが、僕の仕事だ」しかし「だから、口の出しようがないねん。訳が分からへんしね」金は出すけど、口は出さない。ベストなオーナーの有りようだ。
鈴太郎マジックは他にもあった。
なんと「越知(町)と佐川(町)」をファイティングドッグズのホームタウンにしたのだ。
つまり、過疎の町に球団の拠点を置くという球団の新構想だった。
高知に詳しい人なら既知のことかもしれないが、越知も佐川も清流で有名な仁淀川沿いの典型的な田舎町。越知町の人口は6065人。高齢化率も43・8%。小学校も一校しかない。
片や隣接する佐川町は人口が13,607人、銘酒「司牡丹」を製造する酒蔵が並ぶ街並みである。JRの駅も5つもある。
この越知町に高知のグラウンドを作ることにしたのだ。総額1億4000万円のプロジェクトには補助金も付き、財政面でも高知ファイティングドッグス球団には有利に働いた。
これには越知町の住民大喜び。「“わかいし(=若い人)”が越知で野球をやってくれゆう」ということである。町おこしになったのだ。
佐川町でも、ファイティングドッグズは素晴らしい経営戦略を打った。佐川駅前に建つかつてのJRの官舎を選手寮にする(3LDKで18室)。ただし、固定資産税の金額のみを賃料とするという、破格の条件であった。
練習では越知、住居は佐川。不平も聞こえた。しかし鈴太郎は高校の先輩である高知県知事の尾崎正直氏が越知・佐川の両町長が手をつなぐという演出をして、互いのメンツを立てた。
本書の表題にもなっている「牛を飼う球団」についての概要は、本書をみてもらうとして、
このように四国アイルランドリーグの高知ファイティングドッグは日本の地方スポーツのいい事例となっている。
過疎、経済低迷、人口減少・高齢化日本を解決するエッセンスが本書には記載されている。土佐高関係者は必読書。お願いしますよ~あと、高知県人もね!
がんばれファイティングドッグズ! -
Posted by ブクログ
「勝てないのになぜ人気なのか」それは名古屋という土地の雰囲気が結構関係していて、ある意味閉鎖的な地域性だがその分内に対してはものすごく優しいのが本書を読んで伝わってきた。たしかに地元出身者とか、チーム一筋の選手にはやっぱり甘くなっちゃうよな。
あと落合と星野の比べ野球以外でのファンサービスをしっかりやることで星野がここまで神格化されているんだなと。落合の野球は好きだし勝つこともとても大事だけど興行の一環としての活動もしっかりやる必要があるんだな。あとドラフト戦略の話も興味深い。落合政権は黄金期迎えたが彼の手腕もだがその前の星野のドラフトのおかげも多分に有り素材型か即戦力型かでチームの形が大きく変わるんだな。落合が、獲得した選手はことごとく大成しなかったがその時々で結果を出す必要があるプロ野球の性質から即戦力をとりたい気持ちもわかる。
作者がフォーカスしたチームは優勝すると断言していたが残念ながらまだしばらくは出来なさそう。