喜瀬雅則のレビュー一覧
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本書は、プロ野球をビジネスの観点から見た現在の取り組みを紹介するものである。昭和時代は、親会社の広告宣伝媒体に過ぎず、球団が赤字でも、親会社が補填してくれた。しかし、現在はそういったどんぶり勘定は通用しない。私見では、楽天イーグルスが創立されたころから球団の経営が厳しく見られるようになったと思う。度肝を抜かれたのが、ソフトバンク球団の取り組みである。球場の隣に7階建てのビルを作り、1階はアイドルグループの劇場、3階は飲食店のテナント、4階は王貞治ベースボールミュージアム、5階はテクノロジスト集団のフロア、6階はeスポーツのフロア、7階はよしもと福岡の劇場である。野球とは関係ないものが多いが、球団の担当者は、ライトユーザーを取り込むというより、ドームや周辺の施設を箱としてとらえ、いろいろなコンテンツをそろえたということである。もちろん、球団も有力なコンテンツの一つであり、チームを強くするための投資は惜しまない。そしてゆくゆくは、球場を中心とした街づくりも視野に入れているというのである。豊富な資金力があるからできるのかもしれないが、それにしても、ソフトバンク球団の先見性やスケールの大きい発想力には驚愕させられた。ただ、自身は楽天イーグルスのファンであるが、楽天の取り組みがあまり紹介されていなかったのは、少々不満だった。プロ野球ファンは必読の本です。
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ネタバレここ数年のプロ野球は、ソフトバンク=反則的に強い、という印象があり、
(それでもなぜかレギュラーシーズンは西武が一位になったり、ロッテはソフトバンクに強かったりする番狂わせ感がパリーグの魅力なのですが、)
その強さの源泉の一つとして取り上げられる”3軍”について、一冊の新書が出ていると知り、入手したもの。
千賀や甲斐などの育成出身スター選手たちのエピソードがメインなのかと思いきや、
始まりから3分の1くらいまではソフトバンク3軍創設に至る背景(球界を取り巻く時代や社会の変化)や球団内外での動きについてしっかりと書かれていました。
第3章以降はこれまでの歩みを第一・第二・第三世代に分け、環境の整備具合や球団外からの評価の変化、各世代を代表するスター選手のインタビュー等を通じて、
ソフトバンク3軍の成熟のプロセスや選手の世代変化について紹介・考察されています。
プロ野球のファンでも普段これらのことに触れたり思いを巡らせたりすることはないので新鮮で面白かったです。
単なる野球本に留まらず普遍的な内容も多く、示唆的な部分もあり、良かったです。
以下、印象に残ったところ(&自分の気付きメモ)。
・「『支配型リーダー』の対極にいるのが『サーヴァント・リーダー』だ。イニシアティブを取る若手、中堅のリーダー格を『支援』する。つまり『やってみなさい』と、物心両面でバックアップをしながら、全体の足並みを巧みにそろえ、最終的に大きなゴールへの導いていくスタイルだ。大同小異。その”小さな異論”を乗り越え、部署間の対立を緩和していく。」(p.9)
→自分の職場でも”大同小異”はめちゃくちゃ多い。実働しなければならない層が適切な働きをしない。サーヴァント・リーダーシップがヒントになるか?
・日本経済の衰退→プロ野球界の『人材プール』の役割を果たしていた社会人野球の衰退。アマ球界トップの先細り→プロに至る道の先細り→プロ野球の魅力も失われ、ひいては野球人口の減少にも繋がる。こうした悪循環を食い止めるためにも、育成選手制度が必要。(p.16-17)
・シーズン前にはフロントとファームの首脳陣が集まり、若手選手を相対評価で「A」「B」「C」にランク分け。選手たちには知らされないが、現場とフロントの双方では常に確認され、共有されている。大金を投じて獲得したドラフト上位は「A」、育成は「C」。目標達成や評価のために出場機会を与える必要があるが、必然的にチャンスは「A」の方が多くなる。「A」の選手が年400打席なら、「C」は200打席。(p.70-71)
→期待されていればチャンスは多く回ってくるが、期待されていなければチャンスも少なく、結果を残すのがより難しくなる。
・「2軍、3軍ともに、日々の練習内容の進行具合、ゲームでのパフォーマンスを記したレポートが毎日作成され、フロントと現場首脳に一斉メールされる。(中略)律儀な王は『読みました』という返信を送るそうだが、これがうっかり、受信者全員への一斉返信になってしまっているときがあるという。」(p.73)
・小川一夫氏コメント。「今、花開いていなくても、可能性のある選手はいる。高校時代に頭角を現していなくても、大学や社会人で3年、4年とやったらドラフト一位になるだろ?半分くらい、高校時代には、名前がないんよ。(中略)そういう選手を仕掛けて、早く獲ってしまえと。」(p.112)
→事業投資みたい?
・「甲斐は、その一つ一つの光景を、明確に、くっきりと覚えていた。リアルな表現ぶりに、聞いているこちらの脳裏にも、見えていないはずの光景が浮かんだ。」(p.180)
・「牧原の語る”若者への苦言”は、単なる年長者の説教ではなく、尊い経験から抽出される『今の時代の失われたもの』のような気がしてならない。」(p.219)
→世代により、備えているものは違う。
・石川柊太「そこで終われればいいけど、独立リーグに行ったり、自分で区切りを付けようとする選手、いっぱいいるじゃないですか。」(p.230)
・「NPB(略)が発表した『2018年戦力外、現役引退選手の進路調査結果』によると、調査対象の136人の平均年齢が『29.2歳』、平均在籍年数は『8.3年』。1つの会社に『10年以内』と考える新入社員が半数近いという先のデータと、ほぼ一致する数字でもある。」(p.236)
・「2019年(略)に活躍した甲斐野央、周東佑京、新人王の高橋礼が、車庫証明をもらうために市役所を訪れた時は、庁内がちょっぴりざわめいたという。」(p.274)
・「時代や社会の変化に伴って、選手たちの『気質』も、変化していることに気づかされた」(p.340) -
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福岡ソフトバンクホークスの育成(3軍)に焦点を当てて書かれた本。育成から支配下登録を勝ち取り、一軍に定着した6選手のエピソードを取り上げている。
育成と聞くとどうしても社会で言うところの非正規に近い印象(立場上弱い印象)を抱くことだろう。もちろん契約内容や条件においては全くもってその通りだが、ことスポーツにおいては大きく化ける可能性を秘めている。
ここで取り上げられている選手たちは、今やプロ野球ファンならいざ知らず、そして野球を知らない人でも一人二人は名前を聞いたことがあるのではなかろうか。もちろん、彼らの努力は計り知れないものがあるが、それに加えて球団としても多額の投資をしてきていることが本書からはうかがえる。
ペナントレースを勝ち続けるにはレギュラー組みが怪我なく安定した成績を残す必要がある。が、得てしてそれを目算するのは難しい。それが困難な場合は、控えの選手がレギュラーに代わる活躍でしっかりとその穴を埋められるかがカギとなる。
そのための準備としていつその時がきてもいいように、控えの選手たちは経験値を高めておく必要がある。現在、それが可能な球団は3軍制を導入している福岡ソフトバンクホークス、読売ジャイアンツ、広島カープ、そして抱える選手を厳選している日本ハムファイターズとヤクルトスワローズということになる。
近年の優勝という観点から見ると、3軍制導入はいい結果につながっていると言える。いずれ他球団もそれに倣う流れになっていくのだろうが、それまでに様々なデータを収集し環境を整えたチームが、やはりそのアドバンテージを得て、常勝チームとしてプロ野球界を引っ張っていくことになるであろう。 -
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ネタバレ<目次>
序章 「俺を使え」
第1章 3軍を創る
第2章 逸材を探せ
第3章 名古屋の運動具店
第4章 四国を沸かせた強肩
第5章 たたき上げのプライド
第6章 育成契約はリスクではない
第7章 野球の街
第8章 甲子園を超える
第9章 名門校からホークス3軍へ
第10章 イチローよりも速い男
終章 宮崎の白梅
<内容>
スポーツ記者による、ホークス3軍(育成)の誕生と創成期の選手(正規契約を勝ちとった選手)の秘話をまとめたもの。根本陸夫と王貞治、この二人の提案を中心に、東大卒のプロ野球選手だった、小林至、遠藤良平の実戦部隊の動き、小川一夫(現2軍監督)らの動きなどが語られる一方、千賀滉大、甲斐拓也、牧原大成、石川柊太、大竹耕太郎、周東佑京のエピソードが語られる。それは一芸に秀でたもの、故障上がりのものなどである。一方で、千賀に関して愛知のスポーツ用品店の店主の話、などがついてくる。後半の石川や周東のエピソードが短いが、さらに2、3軍のホ-ムグラウンドである筑後市や春季キャンプ地の宮崎の話など盛り込んで、結構読みごたえがある。 -
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四国アイランドリーグという日本プロ野球機構とは別の独立リーグに所属する高知ファイティングドッグスというチームの創設からいまに至る流れを知れる一冊。
個人的に四国、高知と言えば坂本龍馬や山内一豊、中岡慎太郎といった幕末の志士の産まれた町、仕事で何度か訪れてものすごく豪快な飲み方をする人々に出会った町。
阪神ファンを続けてきたので、他のチームに目を向けることなく、四国アイランドリーグのこともほとんど知らなかったが、球団を存続させるため、野球を続けるため、選手自ら野菜を育てたり、牛を育てたり、さらには監督、オーナーまでもが、スタンドにビールを売ったりとお手製で頑張る姿は感動を誘う。
とは言えチームを存続させるほどの集客力があるわけでもなく、苦労は絶えないのだろうが、地元の人が地元の為に取り組む事で、新たな力を巻き込み、地域振興の鍵となるくらいの力を持ち始めているようだ。
これで終わりではない、日本にはこのような場所がまだまだたくさんあるだろうし、増えてくるかも。
そんな時にこのような形で地域が盛り上がれることで、更に人が集まり、活性化されるようになればいいなぁ。
そんな簡単ではないとは思うがオリンピックに向けて東京中心に盛り上がっている。その先に待っているのは?
そんな時代を見据えて動き出すのにはもう遅いくらい。
今こそ一歩踏み出そうという気持ちにさせてくれる。 -
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ネタバレナンバーに連載がされていた頃から読んでいた記事が書籍化されたということで購入したのが本書になる。
今では大谷だけではなく複数の日本人選手が活躍するようになったメジャーリーグに実質的に初めて挑戦した野茂が日本時代に最後のシーズンを過ごした1994年の近鉄バファローズを取り上げるということで、かなり興味をそそられるテーマだった・・。
野田が実は1994年の情報というのは全体の7割くらいで、残り3割は野茂のメジャーリーグフィーバーを取り上げている。
正直言うと、その部分は多くの情報が溢れているのでやはり野茂がいなくなる前の最後のバファローズにもっと注目してほしかった。本書の中でも書かれているが、監督である鈴木を取材することができたら、ぐっと深みを持つことになったのではないだろうかと思わずにいられない(体調により取材はできなかったとのこと)。
その鈴木のコメントなしでは、采配に対して各選手が心が離れてしまったという一方的な内容になりかねず、著者はまさにそのようになることを危惧して、一歩踏み込みが浅くなってしまったという印象は拭えない。 -
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ホークスの育成選手と言えば、千賀や甲斐が有名である。これら2人に共通することは、ある一芸に秀でていて、ひりひりとした反骨心や、ハングリー精神の持ち主であること。そしてこれらの埋もれた才能を見つけ出すのが、スカウトの腕の見せどころである。成長する伸び代を見抜き、どの球団よりも先に獲得する。また、才能を開花させるのもコーチ陣や環境の整備などソフトバンクは長けている。千賀という育成選手からの大成功例は、携わってきた人々のモチベーションに繋がり、同じ育成選手の憧れや希望となり、ビジネスの好循環となる。人の人生を大きく左右するスカウトは楽な仕事ではないがが、引っ張った選手の活躍が糧となり縁の下からチームを支える大事な存在だと感じた。