前田裕之のレビュー一覧
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久しぶりにビジネス書で読んでいてワクワクしました。「失敗の本質」を再読しようと思っていたらちょうど書店にあり解説書くらいの気持ちで手に取りました。
でも、まったく違いますね。(タイトルで少々損している気が。。。)
「失敗の本質」がどのようにして生まれたのか?からスタートしていますが、その後は野中先生の組織論についての足跡をたどる一冊。
野中理論を体系だけで入り口を紹介しているので気になったところに関しては関連書籍を読み込むのが良さそうですね。まずは
・二項動態経営
・知識創造企業
を読みます。(2冊ともそこそこボリュームあるので時間をかけて丁寧に読む予定)
それ以外にも気になる書籍 -
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2015年に出版された本で、前から読みたいと思っていたのですがやっと読む時間ができました。読む前の期待感はかなり高かったのですが、期待は裏切られませんでした(合理的期待形成ができました)。岩井氏の貨幣論、資本主義論、法人論は別の本でなじみがありましたが、序盤に書かれている生い立ちや少年時代、そして東京大学やMIT留学時の話などは「私の履歴書」を読んでいるようで新鮮でした。子供のころはじめて読んだ本が図鑑で、それが自分の思考回路を決めたと著者が述べているように、岩井氏は物事を俯瞰的に見たうえで、各人の主張を位置付ける、ということが特徴的だと思います。一言で言えば視野が恐ろしく広い、ということで、
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主流の新古典派経済学を批判する様々な学説を打ち出してきた岩井克人氏の経済学者としての人生をインタビューを基に辿る。
知的にエキサイティングな内容で、大部だがのめり込んだ。経済学者として没落したと著者は自嘲するが、著者の貨幣論をはじめとする学説にはかなり説得力を感じた。
岩井克人氏というと、高校教科書に載っていた『ヴェニスの商人の資本論』の印象が強く、経済思想家みたいなイメージを持っていたが、バリバリの数理経済学者だったと知り、驚いた。しかし、流石に文章がうまい。自分は数式はよくわからないが、岩井氏の定性的な説明はとてもわかりやすく、納得させられるものだった。 -
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経済学者が自分の人生の歩みと合わせて経済学を語っています。著者の著作に慣れ親しんだ読者であれば、読んでみる価値は十分にあるでしょう。また、タイトルだけ見ると難解な印象を受けますが、インタビュー形式で進んでいくので、専門的な注釈を除いては、わりと読みやすかったです。
今回、この文庫版で再読してみると、経済学者というだけでなく学者として人生をまっとうしようとする姿勢が強く伝わってきました。アメリカの有名大学での研究生活を「絶頂」、その後の東京大学への就職を(少なくとも当時は)「没落」として捉えるあたりは、学者としての氏の人生観を反映しているように読めます。この点は、氏の妻であり作家である水村美苗 -
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不均衡動学という言葉だけは著書の名と共に知っていたが、近づかなかった、というより近づけなかった。いわゆる近経は、数学を駆使して理論を作り、経済現象を科学的に分析するもの、とのイメージがあって、偏微分に挫折した自分には到底理解できないものと思っていたからである。
岩井氏の著作を実際に読んだのは、『会社はこれからどうなるのか』だったが、あの本の内容は面白く読んだ記憶がある。
本書は、岩井氏が自らの学問について、その歩みとともに、一般読者にも分かりやすく説いてくれた本である。著者の学問関心、先人との苦闘が非常に生々しく語られている。またマルクス、ケインズ、シュンペーターといったビッグネームの -
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ネタバレ処分しようかと思いその前に再読した。ところが、改めてその完成度の高さに驚いた。業界の復習用、そして参考文献を参照するために、もう少し手元に置いておこうと思った。
本書の内容は、金融業界、なべても銀行業界の現代史である。業界そのものが小難しい固いイメージがあるが、本書は非常に読み口がなめらかでまとまり感が半端ない。従い、業界人が概観を復習するのみ読むのにも適しているし、銀行業界に興味のある方、あるいはそこを目指そうという方が近年の状況を勉強する為にも非常にお勧めできる。
改めて述べるが、本書の内容はタイトル通り、金融再編の20年史である。この端緒を大和銀行事件とし、次に長信銀、そしてメ -
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ドキュメント 銀行 金融再編の20年史─1995-2015
2015/12/26 著:前田 裕之
銀行とはどんなところで、何を考え、どう行動しているのか、よく知っている人は少ないのではないだろうか。
メガバンクを中心に日本の銀行は今、経営が安定しているようにみえるが、銀行は本当に安全なのだろうか。バブル経済が崩壊し、不良債権問題を抱えて瀕死の状態に陥った銀行界が立ち直ったと言えるのは、ほんの10年前である。日本の銀行は総じて影響が小さかったが、2008年秋のリーマン・ショックが引き金となり、世界の金融機関の経営が大きく揺らいだのは記憶に新しい。
「銀行業とは何か」、「銀行は安全なのか」と -
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ネタバレ失敗の本質やSECIモデルの構築で世界的に有名な野中郁次郎がこれまでの研究を振り返る一冊。タイトルからは失敗の本質についてより詳細な解説を加えるような内容を記載していたのだが、実際には野中郁次郎がこれまでの人生と研究生活を振り返る一冊だった。
当初の期待とは違ったわけだが、それではつまらなかったかというと決してそんなことはない。彼がどのような問題意識のもとで研究を始めたのかとか、失敗の本質を読むだけではわからない彼の持つ思想的な背景などもよく理解できて、野中郁次郎についてあまり詳しくない人にとっては入門的な一冊になると思う。
ただどうしても新書ということもあり、また彼の研究生活が非常に広い -
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ネタバレ政府は景気が悪くなったとはいいたくない。足踏み、などという。
少子高齢化、人口減などで人手不足が慢性化している。完全失業率、有効求人倍率は指標として適切か。
持ち家、現物支給、自家消費は帰属価格をGDPに入れている。キャピタルゲインはGDPに入らない。消費すれば入る。GDPの定義には議論がある。
高度成長期のGDPの伸びの寄与率は、資本の伸びが50%、技術の進歩が35%、労働力の伸びが15%。人口増加率は1%程度だった。
社会保障制度には不信感と不安感がある。かつて安定していた日本型の企業システムと社会保障制度は、いまや不安を掻き立てる材料になっている。
GDPを生んだのは、大恐慌と第二次 -
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とあるセミナーで推奨されていたので手にしてみた。元新聞記者の立場(学者ではない)立場から、経済学の全体感を捉えに行く視点で書かれている。学者になると所属する学派への忖度から、他の学派への正しい理解が期待しづらい事から、客観的な視点で解説を期待した。
前半は各学派の説明が主で正直退屈。限られた分量の中で膨大な量をまとめるので、個別の議論が薄くなるのはやむを得ないか。後半いくつかハッとした内容あったのでメモ。
比較制度学:
制度が誕生した経緯、変化、地域による違いに目を向ける理論。日本の終身雇用制度は、大多数の企業が採用しているため、個々の企業も採用するのが望ましく、社会全体に定着しているため -
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「失敗の本質」含め他の著作も数冊読んでいたので網羅的に理解できた。著者のSECIモデルに至る思考が分かる。
SECIモデルがSECIスパイラルに進化していく訳であるが、そもそもその発想の原点は「失敗の本質」からだった。
そんな著者自身の思考の経路を解説した書籍だった。
もし過去著作をバラバラに読んでいた場合は、本書を読むことで理解が深まるだろう。
思考の経路はつまり、自身の研究人生についての話でもある。
いつどんな人物と出会い、どういう影響を受け、そして自分なりの思考に至ったのかの軌跡。
話は経営学について論文を書こうとしたところ、企業の失敗事例を集められずに断念した経験から始まる。
テーマを -
Posted by ブクログ
ネタバレ経済学の学説を主流派・非主流派問わず概観し、各学説の前提を明らかにしようとする、野心的で意義深い一冊。
そしてその試みは、一定程度成功している。
大学で経済学を専攻していた頃、主流派と非主流派の違いを明示的に扱ったテキストがないかなぁと漠然と思っていた自分にとっては、これこそ、という一冊だった。
惜しむらくは、わかりにくい点もあったこと。その理由はいくつか思い当たる。
一つは、(限られたページの中で数多の学説を扱うという本書の特性上やむを得ないのだが)一つ一つの学説の説明はかなり端折られていて、初めてその学説に触れる人にはわかりにくいこと。学説によって、説明がわかりやすいものとわかりにくいも