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Posted by ブクログ
とあるセミナーで推奨されていたので手にしてみた。元新聞記者の立場(学者ではない)立場から、経済学の全体感を捉えに行く視点で書かれている。学者になると所属する学派への忖度から、他の学派への正しい理解が期待しづらい事から、客観的な視点で解説を期待した。
前半は各学派の説明が主で正直退屈。限られた分量の中で膨大な量をまとめるので、個別の議論が薄くなるのはやむを得ないか。後半いくつかハッとした内容あったのでメモ。
比較制度学:
制度が誕生した経緯、変化、地域による違いに目を向ける理論。日本の終身雇用制度は、大多数の企業が採用しているため、個々の企業も採用するのが望ましく、社会全体に定着しているため。
制度的保管性:
経済システム構成する様々な制度は、相互に保管し合っている。日本企業の株主持ち合い制度は、戦後GHQが発端。株価下落と買い占めを防ぐために企業グループ内で株式を持ちあった。内部昇進制度、長期雇用、企業内組合などと補完しあって安定したが、低成長環境下、改革を妨げる壁になっている。
新古典派:
根本のところで日本社会に固有の文脈に適合していないため、世間一般の認識とずれがち。
★日本の場合、学会は新古典派、政界はケインズ経済学が根強い。(アベノミクスの金融緩和政策はケインズ制作の一種だった)
Posted by ブクログ
経済学の学説を主流派・非主流派問わず概観し、各学説の前提を明らかにしようとする、野心的で意義深い一冊。
そしてその試みは、一定程度成功している。
大学で経済学を専攻していた頃、主流派と非主流派の違いを明示的に扱ったテキストがないかなぁと漠然と思っていた自分にとっては、これこそ、という一冊だった。
惜しむらくは、わかりにくい点もあったこと。その理由はいくつか思い当たる。
一つは、(限られたページの中で数多の学説を扱うという本書の特性上やむを得ないのだが)一つ一つの学説の説明はかなり端折られていて、初めてその学説に触れる人にはわかりにくいこと。学説によって、説明がわかりやすいものとわかりにくいものがあった。そこには、一人の著者が、限られた時間のなかで膨大な数の文献の内容をまとめていることも影響していると思う。
もう一つ、主に1章・2章で感じられたことであるが、たくさんの文献が引用されるあまり、全体を貫く骨子がわかりづらく、読みにくさを感じた。パッチワーク感があるといおうか。しかも、どこまでが引用されている文献での主張で、どこからが本書の著者の主張なのかもわかりづらい。この点は、文章の構成あるいは体裁が影響していると思う。例えば、引用文献の主張の前後に1行アキをつくる、字下げをする等の工夫をすれば解消された可能性はある。
本書の狙いや内容は★4〜★5である一方、上に挙げた「惜しい」点があり、トータルとしては★3.5といったところ。
とはいえ、冒頭述べたように本書の試みは非常に意義深いと思うし、関心のある読者には刺さる本だと思う。
読んでよかった、書いてもらえてよかったと思う。