あらすじ
学派の「壁」を越える、初めての知的冒険
現代経済学への批判が絶えない。日本の大学では、標準的な履修コース(ミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学)が普及しているが、学生の間からは数式やグラフばかりで学習する意味を見出せないとの声をよく聞く。「経済学は役に立たない」と切り捨てるビジネスパーソンも少なくない。
経済学とはどんな学問で、根底にはどんな考え方があるのか? 経済学の「前提」をよく理解せずに教科書や入門書を手に取り、経済学を学ぶ意義が分からないまま、消化不良を起こしてしまう人が多いようだ。
そこで、本書では主流派と異端派の諸学説の原典や基本的な考え方を網羅し、経済学という学問の本質を掘り下げたうえで、経済学との付き合い方を提言する。
著者は日本経済新聞で、日本銀行や大蔵省をはじめとした経済官庁や銀行などさまざまな業界を取材する一方、岩井克人『経済学の宇宙』を手掛けるなど、ジャーナリズムとアカデミズムを自由に行き来してきた、経済論壇では稀有の存在だ。正統派と異端派の学派の壁を軽やかに飛び越え、一冊で経済学のすべてを描き切った渾身の経済学案内。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
経済学の学説を主流派・非主流派問わず概観し、各学説の前提を明らかにしようとする、野心的で意義深い一冊。
そしてその試みは、一定程度成功している。
大学で経済学を専攻していた頃、主流派と非主流派の違いを明示的に扱ったテキストがないかなぁと漠然と思っていた自分にとっては、これこそ、という一冊だった。
惜しむらくは、わかりにくい点もあったこと。その理由はいくつか思い当たる。
一つは、(限られたページの中で数多の学説を扱うという本書の特性上やむを得ないのだが)一つ一つの学説の説明はかなり端折られていて、初めてその学説に触れる人にはわかりにくいこと。学説によって、説明がわかりやすいものとわかりにくいものがあった。そこには、一人の著者が、限られた時間のなかで膨大な数の文献の内容をまとめていることも影響していると思う。
もう一つ、主に1章・2章で感じられたことであるが、たくさんの文献が引用されるあまり、全体を貫く骨子がわかりづらく、読みにくさを感じた。パッチワーク感があるといおうか。しかも、どこまでが引用されている文献での主張で、どこからが本書の著者の主張なのかもわかりづらい。この点は、文章の構成あるいは体裁が影響していると思う。例えば、引用文献の主張の前後に1行アキをつくる、字下げをする等の工夫をすれば解消された可能性はある。
本書の狙いや内容は★4〜★5である一方、上に挙げた「惜しい」点があり、トータルとしては★3.5といったところ。
とはいえ、冒頭述べたように本書の試みは非常に意義深いと思うし、関心のある読者には刺さる本だと思う。
読んでよかった、書いてもらえてよかったと思う。