あらすじ
「給料が上がらず生活が苦しい」という国民の実感と「景気は緩やかに回復している」という政府の発表は食い違っている。テレビや本で紹介される経済学者の言うことは現実問題と関係が無いとすら思える。どうしてデータと実感がズレるのか。GDPや景気動向指数はどのような仕組みなのか。景気の問題と二百年以上向き合ってきた経済学の歴史から、現代の政策に至るまで「景気」の実相を究明し、不透明な日本経済に光をあてる。
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Posted by ブクログ
政府は景気が悪くなったとはいいたくない。足踏み、などという。
少子高齢化、人口減などで人手不足が慢性化している。完全失業率、有効求人倍率は指標として適切か。
持ち家、現物支給、自家消費は帰属価格をGDPに入れている。キャピタルゲインはGDPに入らない。消費すれば入る。GDPの定義には議論がある。
高度成長期のGDPの伸びの寄与率は、資本の伸びが50%、技術の進歩が35%、労働力の伸びが15%。人口増加率は1%程度だった。
社会保障制度には不信感と不安感がある。かつて安定していた日本型の企業システムと社会保障制度は、いまや不安を掻き立てる材料になっている。
GDPを生んだのは、大恐慌と第二次世界大戦。
国防、司法、教育、公衆衛生などの政府支出は消費の一部としてGDPにいれる。豊かさの指標ではない。
国民所得計算(GDP)は、ケインズ経済学の道具になった。当時は経済が単純で、全体を把握しやすかった。生活の豊かさの指標ではない。地球環境への配慮がない。格差や不平等を隠蔽している。
経済学は、経済問題に受け売りの解答ではなく、学者にだまされないために学習するもの。
ワルラス、ジェヴォンズ、カール・メンガーによる限界革命。一般均衡では均衡に至る道筋はわからない。一般均衡論は思考実験の場。
ケインズの「一般理論」は、経済学者たちを説得するために書いた本。マクロ経済学の始祖。財政政策の中身や、規模手法、引き際は見えてこない。
計量経済学は、ケインズ経済学を支える武器になった。
スタグフレーションで、ケインズ政策の有効性が疑われるようになり、ルーカスの合理的期待形成仮説で批判された=人々は合理的期待によって行動を変えてしまうから、政府の裁量による政策は効果を発揮できない、とした。
リアルビジネスサイクル=景気変動は均衡点からの乖離ではなく、均衡点の移動。同額的確率的一般均衡(DSGEモデル)に発展。新古典派が主流。
低成長の継続で、日本型格差社会が定着した。理論ではなく、実際のデータで実証する必要が出てきた。
市場の失敗は明らかだが、世間には自由市場や自由貿易を養護している。
ミクロ経済学は、効用は個人的なものであり、他人の効用とは比較しないことを前提にしている。
Posted by ブクログ
「景気」とは何か、「景況感」とは、「GDP」とはetc…を整理し、19世紀以降の動きを振り返りつつ、世界に大きな影響を与えた3人の経済学者(経済理論)を紹介し、最後は現代に生きる我々の「経済学にまつわる思考法」のあり方まで…
大局的な話が多いが興味深く読めた。