前田裕之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「失敗の本質」含め他の著作も数冊読んでいたので網羅的に理解できた。著者のSECIモデルに至る思考が分かる。
SECIモデルがSECIスパイラルに進化していく訳であるが、そもそもその発想の原点は「失敗の本質」からだった。
そんな著者自身の思考の経路を解説した書籍だった。
もし過去著作をバラバラに読んでいた場合は、本書を読むことで理解が深まるだろう。
思考の経路はつまり、自身の研究人生についての話でもある。
いつどんな人物と出会い、どういう影響を受け、そして自分なりの思考に至ったのかの軌跡。
話は経営学について論文を書こうとしたところ、企業の失敗事例を集められずに断念した経験から始まる。
テーマを「戦争の失敗事例」に変更し、それが後に「失敗の本質」として出来上がった。
つまり著者は、元々戦争を研究する専門家ではないということなのだ。
それが返ってよかったのかもしれない。
一般の読者にとっては非常に分かりやすかった。
経営学を意識して書かれているだけに、戦争の戦略と、会社のビジネス戦略と重なるところが見えたのだろう。
私自身も「失敗の本質」は非常に共感できる部分が多かった。
(つまり「失敗した理由」そのものについて共感したということなのだが)
そもそもだが、日本人は戦略を立てることが本当に下手なのかもしれない。
勝つ見込みだけを考えて、負けた場合の対処を考えない。
しかも、負けたのであれば、その原因を追究し、次の戦いに活かせばよいが、そんなことをしようとも思わない。
これらのように問題点が指摘できているのに、日本人は相変わらずビジネス現場でも同じことを繰り返している。
本当にその点については、日本人は反省がないというか、学習しないというか、一向に改善の様子が見られない。(自身の反省も含めてここに記載している)
例えば、鳴り物入りでスタートしたプロジェクトも、失敗した場合は「無かったもの」として社内で処理されることが多い。
当然原因追及もされなければ、結果の分析もされない。
70年以上前の戦争の失敗と、現代の経営の失敗が重なるなんて、これはどういうことなのか。
リーダーの選択がお粗末なのは、それも日本人の特質なのだろうか。
その後、著者は戦争から離れて、経営学に邁進していく。
「SECIモデル」は、実際の現場で当たり前に行われている事象かもしれない。
それを理論化したからこそ意味があると言える。
職人技のような「暗黙知」を如何に共有化し、さらに「形式知化」して、内面化として自らの中に取り込んでいく。
戦争戦略の失敗からどうしてこれら理論に辿りつけるかは、野中教授の天才たる所以であるが、面白いフレームワークだと思う。
現場が強い日本は、意外と無意識にこれらSECIモデルを実践していたのかもしれないが、改めてこうして意識することは大事なのではないだろうか。
混沌とした正解のない今の時代は、過去の経験が全く活かされない。
つまり、今現在は個人として高いレベルの暗黙知を持っていても、すぐに陳腐化してしまう可能性があるということなのだ。
それだったら早めに形式知化して、メンバーで共有し、チームの力にした方がいい。
正解のない難問に立ち向かうためには、1人で戦うよりも、チームで戦った方が優勢なのは言うまでもない。
さらにそのチーム力をどこまでもレベルアップさせていくことが、この時代を乗り切るために必須とも言える。
ビジネスの現場を戦場と言い換える人もいる。
かつての日本軍のように、間違った意思決定をしないためにも、そして生き残るために勉強して学ぶしかないということなのだ。
(2023/1/3) -
Posted by ブクログ
ネタバレ経済学の学説を主流派・非主流派問わず概観し、各学説の前提を明らかにしようとする、野心的で意義深い一冊。
そしてその試みは、一定程度成功している。
大学で経済学を専攻していた頃、主流派と非主流派の違いを明示的に扱ったテキストがないかなぁと漠然と思っていた自分にとっては、これこそ、という一冊だった。
惜しむらくは、わかりにくい点もあったこと。その理由はいくつか思い当たる。
一つは、(限られたページの中で数多の学説を扱うという本書の特性上やむを得ないのだが)一つ一つの学説の説明はかなり端折られていて、初めてその学説に触れる人にはわかりにくいこと。学説によって、説明がわかりやすいものとわかりにくいものがあった。そこには、一人の著者が、限られた時間のなかで膨大な数の文献の内容をまとめていることも影響していると思う。
もう一つ、主に1章・2章で感じられたことであるが、たくさんの文献が引用されるあまり、全体を貫く骨子がわかりづらく、読みにくさを感じた。パッチワーク感があるといおうか。しかも、どこまでが引用されている文献での主張で、どこからが本書の著者の主張なのかもわかりづらい。この点は、文章の構成あるいは体裁が影響していると思う。例えば、引用文献の主張の前後に1行アキをつくる、字下げをする等の工夫をすれば解消された可能性はある。
本書の狙いや内容は★4〜★5である一方、上に挙げた「惜しい」点があり、トータルとしては★3.5といったところ。
とはいえ、冒頭述べたように本書の試みは非常に意義深いと思うし、関心のある読者には刺さる本だと思う。
読んでよかった、書いてもらえてよかったと思う。