ピーター・トレメインのレビュー一覧
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今巻は、シリーズの中でも最大の政治的陰謀。
それに加えて、アイルランドに古くからある精霊信仰の根強さが重要なテーマになっていて、読みごたえがあった。
ここらへん、日本人には理解しやすいが、この手の土着の信仰を「異端」として排除するのがローマカトリックの真骨頂なので、エイダルフが戸惑うのも当然だけど、今巻ではそういう小さな齟齬が二人の間にちらほら見えて、コンビネーションがいまいち、というのももどかしかった。
最後は両人とも、背中がかゆくなるほど鈍すぎだし!お互いに、もっとストレートに話そうよ!と、大きなお世話を焼きたくなる。
超人的なまでに何でもできる完璧かつ独善的なヒロイン、フィデルマも、自分の色恋沙汰はニガテなのね、と思うと、少しかわいらしい(笑)けど、このコンビが見られなくなるのはイヤだ。
今後のモアン王国の立て直し方とか、犯人の処罰とか、せっかく法廷劇の形式になっているのだから、最後まできちんと決着をつけるところまで書いてほしかった。 -
Posted by ブクログ
このシリーズの最高に面白いところは、馴染みのない古代アイルランドと、当時のキリスト教についてうまく解説しつつ、その「ほとんど異世界」である舞台にすんなり読者を連れて行ってくれるところだと思う。
作者は本職のアイランド歴史学者だそうだけれども、だからといって、蘊蓄が語られすぎることもなく、登場するキャラクターもフィデルマと、ワトスン役のエイダルフ修道士はじめ、魅力的なキャラクターばかりだ。
今回もモアン王国を襲った未曾有の危機に際して、ほとんど孤軍奮闘するフィデルマとエイダルフ、筋立ては複雑で、読者もミスリードされまくる。
しかし、あえて難を言えば、いくつかの仕掛けはわりと最初の内に見えてしまうということと、ラストはせっかく法廷劇のしつらえであるのに、実際にはすぐさまいつもの、フィデルマによる「名探偵みんな集めてさてと言い」になってしまうところ。
現国の弁護人ソラムがあくの強いキャラクターであるだけに、法廷劇らしい部分がとても短かったのは残念だ。
そして、「真犯人」がどのように処断されたのかについても曖昧なまま。これは読みようによっては竜頭蛇尾とも感じられる。 -
Posted by ブクログ
古代アイルランドの王国の王女にして、上級裁判官兼弁護士「キルデアのフィデルマ」の名推理を描く短編集。古代アイルランドの風俗を背景としながら、発生する驚愕事件をフィデルマが見事に解決していくのが楽しい。
主役のフィデルマは、上から目線の知的な美人という人物設定で(笑)、最初は少しとっつきにくかったのであるが、わっさわっさと奇妙な事件を速攻解決していくので、逆に頼もしさを感じました。(笑)物語の進展も、奇妙な謎の提示→論理立てた回答という流れで、特に奇をてらった解決でもないのであっさり感もあるのだが、短編集ということでこれはこれで良いと思いました。
自分として良かったのは、旅路の旅館で遭遇する幽霊話の「旅籠の幽霊」と、封印されているはずの大王古墳の中から声が聞こえ・・・の「大王廟の悲鳴」のエピソードで、どちらも謎の不思議性と明快な推理が魅力的だ。
テレビドラマ向けのミステリーのようにも思える。ドラマ化して日本放送してくれないかな。 -
Posted by ブクログ
たなぞうで知った本。中世アイルランドが舞台であり、探偵役が修道女であるという点は異色だが、謎解きやトリックは正統派のミステリ。端正な雰囲気がある。キリスト教が支配的になりつつも古い信仰の影響も色濃く残る時代、ともすれば迷信に捕らわれがちななかで、理性的に事件を解決していくフィデルマが爽快。作者ピーター・トレメインは歴史学者でもある。この時代の法律「ブレホン法」や、フィデルマがその資格を持つ「ドーリィー(法廷弁護士)」など、アイルランド中世史を垣間見ることもできて楽しい。このシリーズは他に3編の長編が既訳。短編・長編合わせて未訳のものが十数編あるようだ。結構、固定ファンがつきそうなシリーズだと思う。機会があれば長編も読んでみよう。*何だか一時期、たなぞうでしょっちゅう見かけたような気がしていたけれど、登録されている感想は4人分。・・・あり・・・? もっと見かけた気がするのに・・・?*本の内容に文句はないが、この邦題はいまいちかなぁ。何だか取って付けたようで。『修道女フィデルマ短編集』で十分だと思うのだが。