【感想・ネタバレ】修道女フィデルマの叡智 修道女フィデルマ短編集のレビュー

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 7世紀のアイルランドを舞台に、アイルランド五王国の一つモアン王国先王の王女にしてドーリィー(法廷弁護士)であり、状況次第では裁判官としても活動できるアンルー(上位弁護士)の資格も有する修道女フィデルマが事件の謎を解き明かす短篇集。収録作は以下のとおり。

  聖餐式の毒杯
  ホロフェルネスの幕舎
  旅籠の幽霊
  大王の剣
  大王廟の悲鳴

 法律の高度な専門家としてたとえ王が相手でも物怖じせず、論理的に事件を解決するフィデルマの人物像やミステリーそのものとしてのおもしろさは充分。加えて、7世紀のアイルランドという未知の世界も素晴らしかった。その独特の風土に最初は戸惑ったが重要な単語はフォントの変化で示され、本文中にも解説があるので安心して読めた。

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2023年12月26日

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修道女フィデルマのシリーズ。
中世が舞台のミステリ、短編集です。

まだ若く美しい女性フィデルマ、じつは修道女であるだけでなく、高位の資格を持つ弁護士。
アイルランドの7世紀という古い時代に、実際にも女性がかなり活躍していたというのは頼もしい。
とはいえ、最初は若い女と見て侮られます。現代同様?
じることなく、真実を求めて突き進む姿勢がさわやか。
次第にその名が鳴り響いていくのですね。

「聖餐式の毒杯」はローマを訪れた若きフィデルマが礼拝堂に。同席の若者が死んだために謎を解く。
幼なじみの女性の救援に駆けつける話。
偶然立ち寄った雪の宿での、幽霊騒動に巻き込まれる話。
アイルランドの大王(ハイキング)継承にまつわる事件に挑む話。
代々の王が眠る墓地の、封印されたはずの廟所で発見された死体を巡る事件とバラエティに富んでいます。

ミステリとして変化があって面白く、歴史物としても興趣深く読める、しっかりした短編集です。
このシリーズは翻訳もいいし、表紙絵も魅力的ですね☆

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2015年09月07日

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ミステリ。短編集。
初めて読む作家。
7世紀のアイルランドという舞台設定が独特。非常に好きな世界観。
文章は簡潔で読みやすい。
取り扱う事件は殺人から窃盗、幽霊騒ぎと様々。
「大王廟の悲鳴」が個人的ベスト。
インパクトのある事件でありながら、シンプルな解決という分かりやすさが好印象。伏線の張り方が堂々としすぎていて、逆に見逃した。
このシリーズは全作読みたい。

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2022年12月16日

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ネタバレ

古代アイルランドの〈ブレホン法〉に則って裁判を行う弁護士〈ドーリィー〉であり、そのなかでも上位の〈アンルー〉という資格を有する修道女フィデルマが、聖餐のワインで毒死した青年、雪山の旅籠に夜な夜な出現する幽霊、消えた王家の大剣などの謎をその明晰な頭脳と法知識で解決する短篇集。


著者はケルトの歴史学者。このシリーズはミステリーの枠組みを使って古代アイルランドの社会を描くことを目的としたエンタメ小説である。
まずはなんといってもフィデルマの設定。王位継承者の妹という特権階級であることを差っ引いても、当時のアイルランドでは男女が同じ教育を受け、職業的に差別されることなく重要な役職に就けたという史実から生まれたスーパーウーマンである。
そんな彼女の武器は当時のアイルランド独自の法律、ブレホン法。この法律こそがフィデルマシリーズの二人目の主役と言っていい。婚姻や離婚における双方の権利の細かい取り決めや、王位継承者を一系の世襲ではなく集会で決定するなど、これまでローマ中心史観で〈未開人[バルバロイ]〉として語られることの多かった古代アイルランドの先進的な面を知ることができる。キリスト教ケルト派の大らかな思想と合わせ、先入観をひっくり返されるのがとても楽しく、作者の古代アイルランドに対する深い愛情を感じる。
収録作のなかでは、正当防衛とはいえ探偵役が犯人を撲殺して特に悪びれない「旅籠の悪霊」が印象的(笑)。あなた修道女でしょ?!(笑)聖職者だからか、フィデルマの探偵像はどこかブラウン神父に近しい。この邦題もそこを意識してつけられたのだろう。

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2021年03月27日

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 7世紀のアイルランドが舞台。著者は、歴史家としても著名とのことで、その世界を身近なもののように伝えてくれる。美貌の修道女という設定も魅力ですが、初期のキリスト教とアイルランドの古いしきたりとの軋轢を教えてくれるのも楽しみです。

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2019年06月24日

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フィデルマが赤毛なのはアイルランド人であることを強調したかったからか。修道女が裁く事件でも基本的に動機は愛と物欲と権力欲。ローマカトリックとも違うアイルランド独特のカトリックが興味深い。アイルランドというと幻想、下手すると迷信深いという印象があるが、そういう面もあるけれど、ここに描かれるアイルランドの知性は合理的論理的。司法制度の在り方とか。女卑でもないし

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2018年05月15日

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修道女フィデルマ・シリーズの8作目の短編集(原作順で)。

面白かった。
短編集の方が良いかも。

聖餐式の聖体拝領で毒殺されたり、
「魂の友」が夫と息子の殺人の容疑者になり、
大王の剣は盗まれ、
大王の墓から悲鳴が聞こえたりと、
いつもより少々ドラマチックな感じだが、
フィデルマがさっさと事件を解決してくれるので、爽快な印象。

「魂の友」の事件が、ちょっとフィデルマにはつらかったのではないかな。

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2016年05月14日

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短編集。フィデルマのシリーズの中でも割とエモーショナルな事件が多い印象。ちょいちょい引き合いに出る大王の宝剣の事件もこれに掲載。
絶対解決するってわかってても、面白いのはやっぱり物語のうまさかしら。
説明っぽくないのに、時代背景や当時の法律などがするりと入ってくるのが毎回すごいなーと思うのです。

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2014年02月05日

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タイトルにひかれて、初めて手にした作品でしたが、とても楽しめました。海外の作品は、翻訳との相性もあると思うのですが、この作品の場合、とてもヒロインの雰囲気にあった文章で、読みやすく思いました。
フィデルマ修道女は、肩書きも実績もある美人だけど、いわゆる頭でっかちのようにも思われ、自身の情緒面には不器用な可愛い女性なのかもしれないな、という印象を受けました。他の短編集ももちろん、長編もぜひ読んでみたいです。

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2013年12月23日

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中世好きな友達が薦めてくれた1冊。法廷弁護士であり王族でもある美貌の修道女フィデルマが、関わった事件を凛と解決していく短編集。小気味良い。中世好きも特にそうでなくても、絶対楽しめると思います。

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2012年10月03日

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古代アイルランドの王国の王女にして、上級裁判官兼弁護士「キルデアのフィデルマ」の名推理を描く短編集。古代アイルランドの風俗を背景としながら、発生する驚愕事件をフィデルマが見事に解決していくのが楽しい。
主役のフィデルマは、上から目線の知的な美人という人物設定で(笑)、最初は少しとっつきにくかったのであるが、わっさわっさと奇妙な事件を速攻解決していくので、逆に頼もしさを感じました。(笑)物語の進展も、奇妙な謎の提示→論理立てた回答という流れで、特に奇をてらった解決でもないのであっさり感もあるのだが、短編集ということでこれはこれで良いと思いました。
自分として良かったのは、旅路の旅館で遭遇する幽霊話の「旅籠の幽霊」と、封印されているはずの大王古墳の中から声が聞こえ・・・の「大王廟の悲鳴」のエピソードで、どちらも謎の不思議性と明快な推理が魅力的だ。
テレビドラマ向けのミステリーのようにも思える。ドラマ化して日本放送してくれないかな。

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2011年04月20日

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たなぞうで知った本。中世アイルランドが舞台であり、探偵役が修道女であるという点は異色だが、謎解きやトリックは正統派のミステリ。端正な雰囲気がある。キリスト教が支配的になりつつも古い信仰の影響も色濃く残る時代、ともすれば迷信に捕らわれがちななかで、理性的に事件を解決していくフィデルマが爽快。作者ピーター・トレメインは歴史学者でもある。この時代の法律「ブレホン法」や、フィデルマがその資格を持つ「ドーリィー(法廷弁護士)」など、アイルランド中世史を垣間見ることもできて楽しい。このシリーズは他に3編の長編が既訳。短編・長編合わせて未訳のものが十数編あるようだ。結構、固定ファンがつきそうなシリーズだと思う。機会があれば長編も読んでみよう。*何だか一時期、たなぞうでしょっちゅう見かけたような気がしていたけれど、登録されている感想は4人分。・・・あり・・・? もっと見かけた気がするのに・・・?*本の内容に文句はないが、この邦題はいまいちかなぁ。何だか取って付けたようで。『修道女フィデルマ短編集』で十分だと思うのだが。

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2011年07月15日

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【収録作品】聖餐式の毒杯 The Poisoned Chalice/ホロフェルネスの幕舎 At the Tent of Holofernes/旅籠の幽霊 Our Lady of Death/大王の剣 The High King's Sword/大王廟の悲鳴 A Scream from the Sepulchre 
 世界史の知識があれば、もっと楽しめるのかもしれない。

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2021年03月29日

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フィデルマはアイルランドのキャシェルの先王の王女であり、上位弁護士の肩書をもった美貌の修道女。彼女の行くところに事件あり、な短編集。

巡礼の地、ローマの小さな教会で起きた毒殺
フィデルマの幼なじみにかけられた夫、子殺しの嫌疑
吹雪の中、逃げ込んだ山荘に出る亡霊
大王即位に必要な宝剣の盗難事件
千五百年前の王の墳墓から見つかった死体

淡々と事件を解決するフィデルマがカッコイイ!
事件解決後の一言がじんわりした後味だったり。
まずは短編で様子をみて、と手に取ったけど、長編も読みたくなる。
中世アイルランドの政治、キリスト教のせめぎ合いが絡むのでそういう意味でも面白かった。

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2021年01月09日

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中世の時代のアイルランドを舞台にしたミステリ。
アイルランドの王国の国王の妹で修道女であり、弁護士であるフェデルマが様々な事件を解決していく話。
短編集です。
当時のアイルランドの様子だけでなく、歴史や法政界の仕組みなども描かれていて、歴史小説のようにも読める。
勉強にもなるミステリで、この時代のヨーロッパ好きな人はもっと詳しくなれるからおすすめ。

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2020年02月03日

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7世紀アイルランドの修道女兼弁護士のミステリ。
正当防衛とはいえ、旅籠の幽霊にはびっくり…。
この時代の弁護士や教会の制度は馴染みがないので、なかなか興味深かったです。

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2015年07月25日

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ネタバレ

中世ヨーロッパが舞台。こんな昔のアイルランドなんて想像もしたことがなかった世界。
ヨーロッパというより、お伽の国のできごとのよう。
でも、作者はきちんとした歴史家とのことで、荒唐無稽なわけではないんでしょう。
長編の評価が良いので、そちらも早く読みたい。

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2014年03月03日

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王女で弁護士で裁判官で修道女でしかも美人、というハイスペック極まる女探偵が活躍する中世ミステリ。

ハイスペック設定だけ見ると、富豪刑事(筒井康隆)を思い出しました( ^ω^ )
財産を湯水のように使って犯人逮捕の罠を張る神戸大介も良かったですが(笑)、今作のように教会の権威や王族を前に堂々と渡り合うタイプの探偵も良いですよね〜( ^ω^ )私はこれこれこうする権限を持ってるのよ!と事件現場に颯爽と登場する修道女の姿は読んでいて小気味良いです\(^o^)/

ただ、謎解きに関しては論理性にやや欠けているような印象を受けました。牽強付会とまでは言いませんが、根拠が薄弱だったり発想の飛躍が目についたり…。そこを強引に思わせず軽やかにねじ伏せながら推理を披露するフィデルマの手腕、これに尽きるような気がします。

提示される謎自体は非常に魅力的で読み応えがあるので、「読者が犯人当てを楽しんだり探偵の推理展開を楽しむ」と言うより、このフワフワしたミステリアスな世界観を楽しむ方が正解な作品です。多分←



◎聖餐式の毒杯…教会で聖体拝領の儀式が執り行われる中、最初に聖杯のワインに口をつけた青年が急死した。偶然その場に居合わせた美貌の修道女・フィデルマが解決に乗り出すが…。

◎ホロフェルネスの幕舎…夫と子供を殺した容疑で拘束された親友を救う為、捜査に奔走するフィデルマ。殺害動機や目撃証言など、状況証拠が圧倒的に不利な状況下、彼女は親友を救うことができるのか?

◎旅籠の幽霊…吹雪を避ける為、助けを求めた旅籠の主人夫婦は、奇妙な現象に悩まされていた。果たして幽霊の正体とは?

◎大王の剣…王位継承の正当な証として不可欠な剣が、即位式の前日に何者かに盗まれてしまう。

◎大王廟の悲鳴…悪名高い暴君が眠る墓から響いた断末魔の悲鳴。掘り起こした廟からは、つい先ほど絶命したばかりの男の死体が発見される。

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2013年05月31日

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科学鑑定のない歴史ミステリは、探偵の論理が命。明敏で時に冷徹なフィデルマは、宗教界に身を置きながらも論理的な推理で真相を追求するのだけど、厳格な法律家に徹しすぎてエイダルフがいないところでは人間的な可愛げがないんだなあ。…あっ、これがツンデレっちゅーやつか。

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2012年01月26日

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アーサー王だの、ローランの歌だの、中世以前のヨーロッパの物語の雰囲気は独特。またケルト人がらみや、修道院ものの話も同じような「匂い」を感じる。嫌いではないが、本なのに異邦人のような居心地の悪さをいつも感じる。
 雰囲気を味わうとか、歴史ものとして読むには楽しい本だが、ミステリとしての評価が加わると、どちらかというと特に面白いということもない。 
 長編だとおもしろいのかも・・・

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2011年10月20日

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最初、時代観をつかむのに時間がかかりもたもたしたが、いったん話に入り込めれば、結構おもしろかった。親友さえも疑う冷静な心と素晴らしい知能でばしばしと事件を解決していく様は爽快。

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2011年09月07日

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通勤帰りに読む本がなくなり何となく購入。面白かったです。

この間「大聖堂」を読んだのでその頃と少し世界観が似ているのかしら、と思って買ったのもあるのですが中世の時代背景や制度が細かく書かれてて勉強になりました。
長編もあるそうなので是非 今度読んでみたいな〜と思いましたよ。

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2009年10月07日

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気になってた本。本日購入♪(8/14)

7世紀のアイルランドを舞台に、先王の王女で、法廷弁護士(ドーリィー)で、
しかも、状況によっては判決を下すことも出来る上位弁護士(アンルー)の資格をもつ、美貌の尼僧フィデルマ。
むむむ、解説が長くなってしまう。
しかし、このステキな解説のせいで手にしてしまったのだが・・・。
先に、長編2作品が発刊されていたことは知らず、5編の短編からなるこの作品から読み始めた。
入門編にちょうどいい感じ。
古代アイルランド、という特殊な舞台設定なため、巻末の解説なしでは理解がむつかしい。
というか、解説が結構おもしろかった。
時代を超えても、人間のエゴや虚栄心は変わらない。
事件に直面したフィデルマが、ひとりひとり丁寧に聞き取り、現場を見て、答えを導き出す。
そのまま現代に置き換えても、なんら違和感の無い探偵物。
どんな時代でも、人の心が一番怖いのだな、と・・・。
(10/12)

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2012年08月16日

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