黒田龍之助のレビュー一覧
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私を言語多様性の世界へと誘ってくれたバイブル的な本といえば、大修館書店の『世界のことば小辞典』である。(その改訂版とでもいうべき、『事典 世界のことば141』というのもある。)各言語について、それぞれの専門家がコンパクトな解説を書いているので、マイナーな言語の概略を知りたければこちらに当たってみるのが良い。
それに対してこの本は、一人の著者がとにかく色んな言語について書いてみようと試みたものだ。90の言語について、2ページずつエッセイがしたためられている。言語学者とはいえ(いや、だからこそかもしれないが)、あらゆる言語を知っているわけではない。著者の造詣や思い入れの深さの違いを反映して、エッセイも玉石混淆である。
著者の専門はロシア語なので、スラブ系の言語やそれ以外の東欧の言語もテリトリー内である。マケドニア語とかリトアニア語とか、著者の実体験に基づいたエッセイは、読んでいて楽しい。一方、アジアの言語(とりわけ南アジアや東南アジア)に対しては、あまり著者の愛が感じられない。アフリカ・オセアニアの言語はほとんどリストに含まれていないし、南北アメリカ大陸・オーストラリア・ニューギニアに至っては、完全にスルーされている。ナバホ語とケチュア語くらい入れて欲しかった。全体的に言って、軽いエッセイだからすぐに読めるのだが、カバーしてる言語の広さ、個々の言語に対する深さ、どちらもやや物足りなかった。『世界の言語入門』という教科書的なタイトルも、あまり相応しくない。
それにしても、アジアの言語は話者数が多い。ベンガル語、パンジャブ語、ジャワ語、テルグ語、マラーティー語、タミル語、ウルドゥー語あたりは5000万人以上もの話者を擁する巨大言語なのに、学習者の何と少ないことか。 -
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言語学者の黒田龍之助さんが書かれた新書。
タイトルは『語学はやり直せる!』と題されている。
この本を読めば、断念した語学が必ず身につく!というような、
手っ取り早く身につけたい人にとってはありがたーい、言い方を
変えれば都合のいいことが書かれているわけではない。
むしろ間逆のことが書かれている。語学は時間がかかる、
復習が大事などなど。しかし、黒田さんのテンポの良い文章が
そうさせるのか、諦めた語学をもう一度始めてみようかな、と
挫折のトラウマから解放されたような、背中をポンと押してくれ
たような、そんな気にさせられるから不思議だ。
黒田さんの軽快な文章そのものも魅力の一つだと思う。
語学をやり直そうなんて思っていない人でも読み物として
楽しめるのではないだろうか。
さて、僕は何語を始めようかな。
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Posted by ブクログ
ネタバレ≪内容≫
黒田龍之助が世界に溢れる言語のうち、90言語を紹介。
世界の言語について、一人でどれだけのことが語れるか。
≪感想≫
冒頭で書かれているように、本書は言語学の入門ではなく、どちらかというと90の言語に関するエッセイ。それこそ著者の専門としての言語についての詳しい記述も面白いが、ただ漠然としたイメージだけで語ってみたり、小説からの引用だったり、極個人的な経験をつらつらと述べてみたりと、どうにか90言語をクリアしようという冒険心みたいなものが窺われて面白く読めた。言葉に対する平等な姿勢だったり敬意だったり、そういうものが随所から溢れているので、著者につられて新しい言語を学んでみようかなという気持ちになれるかもしれない。数ある言語に対する興味を持つための、ちょっとしたイントロダクションとしては好著だと思う。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
90言語で世界一周!英語、仏語からサーミ語、ゾンカ語まで。
[ 目次 ]
アイスランド語
アイヌ語
アイルランド語
アゼルバイジャン語
アフリカーンス語
アムハラ語
アラビア語
アルバニア語
アルメニア語
イタリア語〔ほか〕
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
世界のあらゆる言語の中から著者が勝手に90を選んで、それらの言語について著者の考えるところを見開き1ページで述べたエッセイ。
「著者の考えるところ」というのは本当に雑多で個人的なもので、言語名からもつイメージ、その言語を著者が学習したエピソード、話されている地域に旅行した話、などが中心で、それぞれの言語の概説といったものでは全くない。そういう意味で「世界の言語入門」というタイトルはいささか内容とはあっていないので、もっとエッセイ風の軽いタイトルをつけた方が良いと思う。よく似た町田健の『言語世界地図』とも趣が異なる。様々な言語についての知識を得ようとする本ではない。
個々の言語についてのエッセイそのものは他愛のない内容だが、著者の人柄や言語学習への想いが率直に伝わってきて、とても面白かった。また、タミル語については大野晋批判(おれも日本語起源説に胡散臭さを感じて全然大野晋の著作を読んでいない)、ビルマ語は俳優・矢崎滋のお父さんの話(矢崎滋の従兄がおれの大学の時のゼミの先生だった)、ラオス語は外大の比較言語学の授業の話(おれが卒業した直後の比較言語学の担当が黒田先生でなんか悔しい)なんかが、おれ個人的な思いもあって面白かった。「言語学コラム」も、特に「言語連合」「語族」が面白い。この本を読んでこの著者のほかの本も読みたくなったし、また四人称のあるアイヌ語とか色々な言語を勉強してみたくもなった。(09/01/21) -
Posted by ブクログ
黒田さんの本はたいてい躊躇することなく買って読んできた。外国語を愛する姿勢はいつもさわやかだ。ただ、この本はちょっとひっかかるところがいくつもあった。
黒田さんは講演でよくよばれるらしく、そこで出た外国語学習についての質問の一つの解答が本書なのだろう。前半はたしかにそうだが、後半はプロ、教師のための章になっている。これで学習者は満足するだろうか。本書で黒田さんが主張していることはたいてい頷ける。語学は時間がかかるとか、暗唱に持続と復習が大事だとか。語学の常識に対する異議というのもわかる。その外国語を話す恋人をつくればいいのかとか、現地に行けばいいのかとか、コンピューターをつかわなくてはいけないのかとか、直説法だけではまどろっこしいとか、検定試験はその人の実力を示すのかとか。でも、最後のは使い方だ。これはぼくも書いたことがあるが、検定はうまく使えばいい目標になる。もっとも、最終的な目標はやっぱりコミュニケーションの楽しさにおきたいとは書いたが。
教師向けのところで言う、楽しく教えるというのは同じ気持ちだ。でも、「だじゃれは自己顕示欲の実現」はちょっと言い過ぎ。もちろん、教師だけもりあがって学生はしら〜ってこともあるけど、たまにはいいんじゃないでしょうか。文法用語を乱発しないというのもわかる。でも、使わないでやることも「まどろっこしくてしかたがない」(p136)というのは矛盾してませんか。発音がよくなくてはいけないというのもわかる。でも、本当にネイティブのようにできているかはあやしい。発音は一生かかってもそこまでいかないと言うべきではないかな。それは外国語そのものについても言えるんだけど。
黒田さんがスペルということばを使ったら(ぼくも使う)、だれかが、それはスペリングというべきだ。こんなことも知らないのでは「語学教師として致命的なミス」という投書がきたという。ぼくや黒田さんが使っているのは日本語だ。ネイティブだって、正確にはネイティブスピーカーというべきだけど、そんな長い単語を使ってはいられない。だから、短くなる。こんな一言で「語学教師失格」というのは全く揚げ足取り。「お前こそ人間として失格」と言ってやりたい。無視すればいいんだけど、こんな人がけっこう世の中には多いからいやだ。