菊池良生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレこの国は「皇帝の国」であるが故に、奇妙な歴史をたどったのかと思った。
神聖ローマ帝国は、イギリスやフランスなどと対比して語られるが、神聖ローマ帝国もそれが包摂する問題があったのだ。
「選挙で選んでいたから、国家としての統一性が失われていた。」などという意見もあるが、カノッサの屈辱を経験した皇帝も叙任権闘争などでローマ法皇と戦ったり、フランスと同じような権力を振るうこともあった。
しかし三十年戦争ののち、やはり選挙で選ぶことの弊害が顕れ、フランスのような自分の領地拡大をする契機がなかったのか、ヴェストファーレン条約によって小さな諸国が主権を得ることになる。フランスもそうならない保障はなかった。
のように、神聖ローマ帝国は「統一国家になりそこねた国家」とも言える。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『傭兵ピエール』を読むついでに参考になるかと思いつつ読んでみた一冊。ヨーロッパにおける「傭兵」の歴史上の影響について論じる。
傭兵は娼婦に続いて世界で2番目に古い職業。ローマ帝国滅亡の要因の1つに、ゲルマン人傭兵の増加があったことは有名である。また、中世の宗教勢力と王侯勢力の対立、ルネサンスと宗教改革の時代、近代国民国家の成立といった歴史の転換期には必ずと言っていいほど傭兵が絡んでいたこと。
興味深かったのは「ランツクネヒト」という主に貧農の次男以降から構成される傭兵部隊について。兵士集会と呼ばれる現在の労働組合に似た民主主義的な傭兵の組織があること、現在のベンチャー起業家のような感覚でランツクネヒトを立ち上げる者が多かったこと、酒保商人という食糧だけでなく、武具や雑貨、女に至るまで提供する御用達商人が存在したというのは知らなかったので驚きである。
他にも興味深い記述はある。また、三十年戦争による中間層(領主、諸侯層)の没落で王権の絶対化が進んだ頃にも傭兵は深く時代に関わりを持っていた。
有名なボヘミアの傭兵隊長・ヴァレンシュタインが神聖ローマ帝国皇帝から徴税権を獲得し、略奪の合法化と効率化を進めた上に、ユダヤ人金融資本家から融資を受けて15万人の傭兵隊を組織する。また、ヴァレンシュタインと戦ったスウェーデン王であるグスタフ・アドルフも自国の人口100万人の内、13万人を徴兵しようしたところ、欠員が出たためにそれを外国人傭兵で補った。三十年戦争は傭兵同士の戦争でもあったのだ。
近代になると国家の一体化という観点から徴兵制を導入する国が増加する。一方で傭兵の出番が減り、20世紀以降、組織や兵器の専門化が進むと志願兵制の国が増えて、活躍する傭兵が再び出てくるなど、軍隊を取り巻く環境も目まぐるしく変化する。今後どうなるやら…
著者は日本史と対比させて語るのが好きなようで、わかりやすく解説してくれている。なかなか勉強になった一冊。 -
Posted by ブクログ
警察の歴史を追いながら、近代ヨーロッパ成立までのからくりを探るという、野心的な一冊。古くは古代ローマから中世、近代ヨーロッパまで、各国の警察を巡って繰り広げられるストーリーは、人間の本質をさまざまな視点から浮き彫りにしており、非常に読み応えがある。
◆本書の目次
序章:江戸の「警察」組織
第一章:古代ローマ「警察」制度
第二章:中世の「警察」制度
第三章:中世の都市の発展
第四章:嫌われるウィーン市警備隊
第五章:パリ「警察」の成立
第六章:警察大改革前のイギリス旧警察
第七章:「ありがたき」警察
最終章:近代警察の誕生
本書は、著者の立ち位置が一風変わっている。さながら”お喋りなナビゲーター”といったところだろうか。警察という堅苦しいテーマの話が、すんなりと頭に入っているのも、この著者のキャラクターによるところが大きい。また、各章のねらいが前章の終わり付近に明記されていることも、本書を読みやすくしている。もしやと思い、著者の前作『ハプスブルク帝国の情報メディア革命』までさかのぼり、”あとがき”を見てみると、やはりある。本書の予告めいたものが明記されており、「人は自由を追い求めて遂に警察国家を作り上げた」というドストエフスキーの言葉が紹介されているのだ。
なるほど、「警察」について考えるということは、すなわち「自由」について考えることなのである。各国の歴史を追う中で最も印象的だったのは、「民衆が勝ち取った自治は、多くの場合、民衆自身の手によって投げ出される運命にある」ということだ。警察のない自由を追い求めていくと、必ず不自由に陥るという、不思議なパラドックスがそこには成立している。規制とは、自由にとって必要悪な存在なのである。
自由と規制、このやじろべえのような両者の均衡点は、近代イギリスにおいて、ある種の結実を迎える。「自由と規制の境界線を、あいまいにする」ことが生み出した、社会的受容によってである。しかし著者はこの均衡点も、現代における”相互作用の均質化崩壊”により、制度疲労をおこしていると警鐘を鳴らす。しかし、いつの時代、どこの国においても、大切なのは個々人の在り方ということになってくるだろう。つまり、我々自身が規制の輪郭を明確に認識し、その中の自由を十分に謳歌する、ということである。
一点気になったのが、冒頭の切り出しで紹介される「江戸の岡っ引き事情」が、全体にどのように寄与しているのか、さっぱり分からなかったことである。著者自身も、自由を謳歌してしまったということなのだろうか。それでも、著者の次回作は非常に楽しみである。 -
Posted by ブクログ
現在のドイツやフランスを中心とした西ヨーロッパ諸国の歴史を知る上で避けて通ることのできない神聖ローマ帝国だが、あまりにも沢山のキーパーソンがいるせいで、なかなか理解しにくいのも事実。長年に渡って存続したにも関わらず、ついに中央集権体制が確立されなかったのが、その所以。「ハプスブルク家」というキーワードこそあるものの,最終的に「○○家が絶対王政を築いた」とか、「○○家の世襲王朝が長年にわたって存続した」とか、そういった一定の切り口を与えにくいため、色んな角度から何度も復習しないと、複雑な歴史的経緯が全く見えて来ない。このあたりが、日本史や中国史との大きな違いかもしれない。
本書は、これ一冊で神聖ローマ帝国の歴史が概観できる作りになっており、入門編としても丁度良いボリュームだと思う。ただ、前述の通り、本書で概観しただけでは、おそらく神聖ローマ帝国の歴史はさっぱり頭に入ってこないだろうけれども。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
古代ギリシアの民主制の崩壊に始まり、中世を経て、ナポレオンの時代に至るまで、歴史の転換点で活躍したのは多くの傭兵たちだった。
[ 目次 ]
クセノフォンの遁走劇
パックス・ロマーナの終焉
騎士の時代
イタリア・ルネッサンスの華、傭兵隊長
血の輸出
ランツクネヒトの登場
果てしなく続く邪悪な戦争
ランツクネヒト崩壊の足音
国家権力の走狗となる傭兵
太陽王の傭兵たち
傭兵哀史
生き残る傭兵
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
見果てぬ夢「古代ローマ帝国の復興」を求め、抗争を繰り返しながらも、八百五十年間にわたり中近世ヨーロッパの中心に存在し続けた「帝国」の実像に迫る。
[ 目次 ]
序章 神聖ローマ帝国とは何か
第1章 西ローマ帝国の復活
第2章 オットー大帝の即位
第3章 カノッサの屈辱
第4章 バルバロッサ―真の世界帝国を夢見て
第5章 フリードリッヒ二世―「諸侯の利益のための協定」
第6章 「大空位時代」と天下は回り持ち
第7章 金印勅書
第8章 カール五世と幻のハプスブルク世界帝国
第9章 神聖ローマ帝国の死亡診断書
終章 埋葬許可証が出されるまでの百五十年間
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
本書のテーマは、古代ヘレニズムから近代に至るまでのヨーロッパ世界における「戦争の担い手」の姿を描き出すことにある。現代において一般的な徴兵や志願兵による国民軍は、必ずしも世界史においてはスタンダードな軍隊ではない。むしろ、中世から近世のヨーロッパにかけて、常に戦争の中心にいたのは、タイトルにもある「傭兵」であった。中でも、スイス人傭兵やランツクネヒトは至る所に出没し、戦争の趨勢を左右している。スペインハプスブルク家の栄光と没落にもこの傭兵戦力が関わっている。マウリッツ・オラニエやグスタフ・アドルフは、徹底した軍制改革よってランツクネヒトを時代遅れなモノとし、それぞれオランダとスウェーデンを歴史の表舞台に引き上げた。時代とともに移り変わる傭兵像を追いかければ、ヨーロッパ史が一層楽しくなる。高校時代にこういう本を読んでいたら、きっと世界史に苦手意識なんて持たなかったんだろうなぁ。
-
Posted by ブクログ
「え〜傭兵?マジ?」
「傭兵が許されるのはフランス革命までだよね〜」
「キャハハ、ハハ、キャフタ!」
二千年史といいながら、メインは近世ヨーロッパ。
悪名高き傭兵部隊、ランツクネヒトやスイス人傭兵の
活躍を中心に、ヴァレンシュタインをはじめ戦場のプロデューサである
傭兵隊長の生き様が描かれる。
ナショナリズムの誕生を傭兵を道具に逆説的に説いた一冊。
描き方がかっこよすぎて、むしろガリガリ読めなかった。
「戦争」のスタイルを別の視点で知ることが出来た。
兵站ってのは重要だなあ。太平洋戦争よろしく、ああいうことになって困るのは現地民ということか。 -
Posted by ブクログ
著者も「皇帝列伝形式」で書いたと述べているとおり、神聖ローマ帝国成立前史の位置にあるカール大帝の西ローマ帝国から、ナポレオン戦争における神聖ローマ帝国崩壊までを、「皇帝」の事績を中心に語られています。近年(門外漢の偏見かもしれませんが)中世ヨーロッパに関する本はいわゆる社会史的な観点から書かれている本が多いような気がしますので、制度史が専門だった私には、こういった「古い」視点が逆におもしろさを感じさせてくれます。中世ヨーロッパは、この神聖ローマ皇帝とローマ教皇を縦軸に織りなされてきました。近世・近代と違い「地方」の力が「中央」をしのぐほどに強く非常に分かりづらい時代ではありますが、一つの軸をもってまとめてくれたこの本は、中世ヨーロッパ理解のための基本文献であることは間違いないのではないでしょうか。
-
Posted by ブクログ
日本の歴史であれば、学校の授業で習うほかにも本を読んだりTVで見たりしてそれなりの知識を得ることができるが、外国の歴史になると、努めて知ろうとしないと高校世界史レベルの知識で終わってしまっている。例えば、本書で取り上げられる神聖ローマ帝国であれば、初代皇帝のオットー1世の名前くらいは覚えているが、それ以上の詳しいことは??である。
本書は、オットー大帝の生涯とその事績をたどりつつ、当時のヨーロッパ情勢、そしてドイツ誕生の経緯を説明していく。
本書で新たに学んだこと数点。
〇ドイツの祖型となったのは、ライン川以東の領地を継承した東フランク王国であったが、同国は、10世紀初頭、フランケン大公領、ザクセン大公領、シュヴァーベン大公領、バイエルン大公領、ロートリンゲン大公領が割拠する状態になっていた。
〇オットー1世の父であるハインリヒ1世は、ゲルマンの慣習であった分割相続を均一相続に改め、王国非分割原理を導入した。これにより王国の統一は図られるが、相続から外れたオットーの兄弟の反乱を招くこととなった。
〇当時、マジャール人、ハンガリーの侵入が繰り返されていたが、955年のレヒフェルトの戦いに大勝し、東の国境地帯の平和を取り戻した。以後ハンガリーは徐々に遊牧生活から定住農耕生活に移行し、またキリスト教を受け入れるようになった。
〇オットーは3次にわたるイタリア遠征を行った。この遠征により、ドイツ人意識が醸成されていった。
〇オットーは中央集権化政策を進めていったのだが、度重なるイタリア遠征によりそれに相反する状況が生じてしまった。イタリア遠征に従軍する家臣たちはその褒章として領地の支配権ー関税権、裁判権、市場権、鉱業権等ーの強化を求める。これらの領は世襲となり土着勢力となっていく。こうした世俗領主を牽制するために司教領にも特権を授与する。こうして中央集権とはベクトルが逆に働き、ドイツは聖俗諸侯の割拠する乱立状態となっていく。
良く知らない時代についての歴史であるので、大掴みで概要の説明がされるのはありがたいし、文章も平易でとても読みやすい。
本当に戦いに明け暮れた人生だったし、兄弟や子どもたちにも多く先立たれた彼に、心の休まるときはあったのだろうか、そんなことを考えてしまった。
-
購入済み
傭兵の幅広さ
傭兵というと、武器を片手に依頼者から少しでも依頼金を増やして酒と博打に変える賊と変わらぬ精神性で、規律正しい正規軍より弱いというのがイメージであった。
本書は傭兵という職業の深さと、その定義の広さを教えてくれる。ギリシャやローマの兵役という重いステータスが貨幣主義で潰れていくと、苦役を代替する者、すなわち金銭契約で軍隊をやる者が出てくる。傭兵とは自らの肉体を使って稼ぐ娼婦と同じ立ち位置でそれだけに歴史も古い。日本で言えば封建制を建てた源頼朝よりも前、軍事力を使って朝廷に雇われていた平家すら傭兵だったのだ。
金で雇われる傭兵は確かに訓練や規律という意味で劣ったが、その柔軟性と数を揃える速さに関しては正規軍とは比べものにならなかった。そしてその数こそが戦争においては重要だったというのが分かる。特に本書で扱われている大部分がが近代ヨーロッパというのがミソだ。古代からそうであるが銃はさらに物を言うのが「戦争は数である」ということなのだろうなぁというのが実感できる。
一方ナショナリズム、つまりは国家主義の近代軍隊と傭兵との関係を見るのが本書の目的だと挙げているがそれを達成できているかは疑問だ。フランス革命を通じた国家軍隊の話は良かったが、他のヨーロッパ諸国での軍隊成立について知りたかった。もっとナショナリズムと傭兵の相容れなさを語るならナショナリズムについて踏み込むべきであった。
またそれでいて、アイルランドのワイルドギースやアメリカ独立戦争時のドイツ傭兵など概要を述べているだけで中途半端な部分もある。
傭兵の概要書というのが本書の感想なのだが、まったく知らなかった概念について触れられたのは初心者としては行幸だったかもしれない。次はもっと詳しい本も読んでみたい。