菊池良生のレビュー一覧

  • 傭兵の二千年史

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    ネタバレ

     『傭兵ピエール』を読むついでに参考になるかと思いつつ読んでみた一冊。ヨーロッパにおける「傭兵」の歴史上の影響について論じる。

     傭兵は娼婦に続いて世界で2番目に古い職業。ローマ帝国滅亡の要因の1つに、ゲルマン人傭兵の増加があったことは有名である。また、中世の宗教勢力と王侯勢力の対立、ルネサンスと宗教改革の時代、近代国民国家の成立といった歴史の転換期には必ずと言っていいほど傭兵が絡んでいたこと。

     興味深かったのは「ランツクネヒト」という主に貧農の次男以降から構成される傭兵部隊について。兵士集会と呼ばれる現在の労働組合に似た民主主義的な傭兵の組織があること、現在のベンチャー起業家のような感覚でランツクネヒトを立ち上げる者が多かったこと、酒保商人という食糧だけでなく、武具や雑貨、女に至るまで提供する御用達商人が存在したというのは知らなかったので驚きである。

     他にも興味深い記述はある。また、三十年戦争による中間層(領主、諸侯層)の没落で王権の絶対化が進んだ頃にも傭兵は深く時代に関わりを持っていた。

     有名なボヘミアの傭兵隊長・ヴァレンシュタインが神聖ローマ帝国皇帝から徴税権を獲得し、略奪の合法化と効率化を進めた上に、ユダヤ人金融資本家から融資を受けて15万人の傭兵隊を組織する。また、ヴァレンシュタインと戦ったスウェーデン王であるグスタフ・アドルフも自国の人口100万人の内、13万人を徴兵しようしたところ、欠員が出たためにそれを外国人傭兵で補った。三十年戦争は傭兵同士の戦争でもあったのだ。

     近代になると国家の一体化という観点から徴兵制を導入する国が増加する。一方で傭兵の出番が減り、20世紀以降、組織や兵器の専門化が進むと志願兵制の国が増えて、活躍する傭兵が再び出てくるなど、軍隊を取り巻く環境も目まぐるしく変化する。今後どうなるやら…

     著者は日本史と対比させて語るのが好きなようで、わかりやすく解説してくれている。なかなか勉強になった一冊。

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    2011年06月06日
  • 傭兵の二千年史

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    傭兵は人類最古の職業だとか。近代〜現代に至る常備軍制度が成立する前の戦争の担い手は、期間労働者である傭兵でした。つまり彼らが歴史を動かしてきたのです。本書はこの傭兵の歴史を簡潔にまとめた良書です。

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    2011年05月25日
  • 警察の誕生

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    警察の歴史を追いながら、近代ヨーロッパ成立までのからくりを探るという、野心的な一冊。古くは古代ローマから中世、近代ヨーロッパまで、各国の警察を巡って繰り広げられるストーリーは、人間の本質をさまざまな視点から浮き彫りにしており、非常に読み応えがある。

    ◆本書の目次
    序章:江戸の「警察」組織
    第一章:古代ローマ「警察」制度
    第二章:中世の「警察」制度
    第三章:中世の都市の発展
    第四章:嫌われるウィーン市警備隊
    第五章:パリ「警察」の成立
    第六章:警察大改革前のイギリス旧警察
    第七章:「ありがたき」警察
    最終章:近代警察の誕生

    本書は、著者の立ち位置が一風変わっている。さながら”お喋りなナビゲーター”といったところだろうか。警察という堅苦しいテーマの話が、すんなりと頭に入っているのも、この著者のキャラクターによるところが大きい。また、各章のねらいが前章の終わり付近に明記されていることも、本書を読みやすくしている。もしやと思い、著者の前作『ハプスブルク帝国の情報メディア革命』までさかのぼり、”あとがき”を見てみると、やはりある。本書の予告めいたものが明記されており、「人は自由を追い求めて遂に警察国家を作り上げた」というドストエフスキーの言葉が紹介されているのだ。
    なるほど、「警察」について考えるということは、すなわち「自由」について考えることなのである。各国の歴史を追う中で最も印象的だったのは、「民衆が勝ち取った自治は、多くの場合、民衆自身の手によって投げ出される運命にある」ということだ。警察のない自由を追い求めていくと、必ず不自由に陥るという、不思議なパラドックスがそこには成立している。規制とは、自由にとって必要悪な存在なのである。

    自由と規制、このやじろべえのような両者の均衡点は、近代イギリスにおいて、ある種の結実を迎える。「自由と規制の境界線を、あいまいにする」ことが生み出した、社会的受容によってである。しかし著者はこの均衡点も、現代における”相互作用の均質化崩壊”により、制度疲労をおこしていると警鐘を鳴らす。しかし、いつの時代、どこの国においても、大切なのは個々人の在り方ということになってくるだろう。つまり、我々自身が規制の輪郭を明確に認識し、その中の自由を十分に謳歌する、ということである。

    一点気になったのが、冒頭の切り出しで紹介される「江戸の岡っ引き事情」が、全体にどのように寄与しているのか、さっぱり分からなかったことである。著者自身も、自由を謳歌してしまったということなのだろうか。それでも、著者の次回作は非常に楽しみである。

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    2011年01月18日
  • 神聖ローマ帝国

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    現在のドイツやフランスを中心とした西ヨーロッパ諸国の歴史を知る上で避けて通ることのできない神聖ローマ帝国だが、あまりにも沢山のキーパーソンがいるせいで、なかなか理解しにくいのも事実。長年に渡って存続したにも関わらず、ついに中央集権体制が確立されなかったのが、その所以。「ハプスブルク家」というキーワードこそあるものの,最終的に「○○家が絶対王政を築いた」とか、「○○家の世襲王朝が長年にわたって存続した」とか、そういった一定の切り口を与えにくいため、色んな角度から何度も復習しないと、複雑な歴史的経緯が全く見えて来ない。このあたりが、日本史や中国史との大きな違いかもしれない。
    本書は、これ一冊で神聖ローマ帝国の歴史が概観できる作りになっており、入門編としても丁度良いボリュームだと思う。ただ、前述の通り、本書で概観しただけでは、おそらく神聖ローマ帝国の歴史はさっぱり頭に入ってこないだろうけれども。

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    2010年11月23日
  • 傭兵の二千年史

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    [ 内容 ]
    古代ギリシアの民主制の崩壊に始まり、中世を経て、ナポレオンの時代に至るまで、歴史の転換点で活躍したのは多くの傭兵たちだった。

    [ 目次 ]
    クセノフォンの遁走劇
    パックス・ロマーナの終焉
    騎士の時代
    イタリア・ルネッサンスの華、傭兵隊長
    血の輸出
    ランツクネヒトの登場
    果てしなく続く邪悪な戦争
    ランツクネヒト崩壊の足音
    国家権力の走狗となる傭兵
    太陽王の傭兵たち
    傭兵哀史
    生き残る傭兵

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

    0
    2010年11月21日
  • 神聖ローマ帝国

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    [ 内容 ]
    見果てぬ夢「古代ローマ帝国の復興」を求め、抗争を繰り返しながらも、八百五十年間にわたり中近世ヨーロッパの中心に存在し続けた「帝国」の実像に迫る。

    [ 目次 ]
    序章 神聖ローマ帝国とは何か
    第1章 西ローマ帝国の復活
    第2章 オットー大帝の即位
    第3章 カノッサの屈辱
    第4章 バルバロッサ―真の世界帝国を夢見て
    第5章 フリードリッヒ二世―「諸侯の利益のための協定」
    第6章 「大空位時代」と天下は回り持ち
    第7章 金印勅書
    第8章 カール五世と幻のハプスブルク世界帝国
    第9章 神聖ローマ帝国の死亡診断書
    終章 埋葬許可証が出されるまでの百五十年間

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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    2010年11月21日
  • 傭兵の二千年史

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    本書のテーマは、古代ヘレニズムから近代に至るまでのヨーロッパ世界における「戦争の担い手」の姿を描き出すことにある。現代において一般的な徴兵や志願兵による国民軍は、必ずしも世界史においてはスタンダードな軍隊ではない。むしろ、中世から近世のヨーロッパにかけて、常に戦争の中心にいたのは、タイトルにもある「傭兵」であった。中でも、スイス人傭兵やランツクネヒトは至る所に出没し、戦争の趨勢を左右している。スペインハプスブルク家の栄光と没落にもこの傭兵戦力が関わっている。マウリッツ・オラニエやグスタフ・アドルフは、徹底した軍制改革よってランツクネヒトを時代遅れなモノとし、それぞれオランダとスウェーデンを歴史の表舞台に引き上げた。時代とともに移り変わる傭兵像を追いかければ、ヨーロッパ史が一層楽しくなる。高校時代にこういう本を読んでいたら、きっと世界史に苦手意識なんて持たなかったんだろうなぁ。

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    2010年10月24日
  • 神聖ローマ帝国

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    文章が読みやすいというより読んでいて愉快になる。楽しい歴史書。といっても中身が軽いわけでもなく。
    二回は読んでいるはずだけど欧州情勢は昔っから複雑怪奇なので、もう手元に欲しい。

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    2009年12月10日
  • 傭兵の二千年史

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    世界史は必修で軽くやった程度なので少し面白みが減りました残念です。
    傭兵は世界で二番目に古い職業。

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    2009年10月08日
  • 傭兵の二千年史

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    「え〜傭兵?マジ?」
    「傭兵が許されるのはフランス革命までだよね〜」
    「キャハハ、ハハ、キャフタ!」

    二千年史といいながら、メインは近世ヨーロッパ。
    悪名高き傭兵部隊、ランツクネヒトやスイス人傭兵の
    活躍を中心に、ヴァレンシュタインをはじめ戦場のプロデューサである
    傭兵隊長の生き様が描かれる。
    ナショナリズムの誕生を傭兵を道具に逆説的に説いた一冊。

    描き方がかっこよすぎて、むしろガリガリ読めなかった。
    「戦争」のスタイルを別の視点で知ることが出来た。
    兵站ってのは重要だなあ。太平洋戦争よろしく、ああいうことになって困るのは現地民ということか。

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    2009年10月04日
  • 神聖ローマ帝国

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    その名のとおり神聖ローマ帝国の本です。
    歴史書としては比較的分かりやすく書かれていると思います。
    特に「カノッサの屈辱」のあたりが面白かった…!

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    2009年10月04日
  • 神聖ローマ帝国

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    著者も「皇帝列伝形式」で書いたと述べているとおり、神聖ローマ帝国成立前史の位置にあるカール大帝の西ローマ帝国から、ナポレオン戦争における神聖ローマ帝国崩壊までを、「皇帝」の事績を中心に語られています。近年(門外漢の偏見かもしれませんが)中世ヨーロッパに関する本はいわゆる社会史的な観点から書かれている本が多いような気がしますので、制度史が専門だった私には、こういった「古い」視点が逆におもしろさを感じさせてくれます。中世ヨーロッパは、この神聖ローマ皇帝とローマ教皇を縦軸に織りなされてきました。近世・近代と違い「地方」の力が「中央」をしのぐほどに強く非常に分かりづらい時代ではありますが、一つの軸をもってまとめてくれたこの本は、中世ヨーロッパ理解のための基本文献であることは間違いないのではないでしょうか。

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    2009年10月04日
  • 傭兵の二千年史

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    傭兵のことが通して解る本。イタリア人に邪悪な戦争とか呼ばれちゃうほどのスイス人傭兵の戦いっぷりってどれ程だったのかと……!

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    2009年10月04日
  • 神聖ローマ帝国

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    読みやすい、一気に読めた。ややこしい神聖ローマの歴史を簡潔にそれもエピソードを交えて書かれている。良い。

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    2009年10月04日
  • 神聖ローマ帝国

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    ネタバレ

    世界史の授業で習った時にいつも違和感を覚え理解しにくい国だった。神聖ローマ帝国の皇帝なのにスペンイ王だったり国の中に色んな国があって対立してるし・・・。この本は読んでいて分かりやすい(笑)成立から終焉まで分かりやすく書いてくれているので良いですね(笑)バルバロッサとか聞いたことはあるけどあまり知らない人物や全く知らない人物も知れた(笑)しかし30年戦争については他の本って・・・。買ってきたよ(笑)

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    2026年09月16日
  • ハプスブルク家の華麗なる受難(1)

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    日本の学生を悩ませる「神聖ローマ帝国ってなに?」がばっちり解決!たぶん。
    是非最後の皇帝フランツ一世まで描いてもらいたい。皇后の話も入れろなんてわがままは言いませんから。

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    2025年12月11日
  • ドイツ誕生 神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世

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    日本の歴史であれば、学校の授業で習うほかにも本を読んだりTVで見たりしてそれなりの知識を得ることができるが、外国の歴史になると、努めて知ろうとしないと高校世界史レベルの知識で終わってしまっている。例えば、本書で取り上げられる神聖ローマ帝国であれば、初代皇帝のオットー1世の名前くらいは覚えているが、それ以上の詳しいことは??である。
     本書は、オットー大帝の生涯とその事績をたどりつつ、当時のヨーロッパ情勢、そしてドイツ誕生の経緯を説明していく。
     本書で新たに学んだこと数点。
    〇ドイツの祖型となったのは、ライン川以東の領地を継承した東フランク王国であったが、同国は、10世紀初頭、フランケン大公領、ザクセン大公領、シュヴァーベン大公領、バイエルン大公領、ロートリンゲン大公領が割拠する状態になっていた。
    〇オットー1世の父であるハインリヒ1世は、ゲルマンの慣習であった分割相続を均一相続に改め、王国非分割原理を導入した。これにより王国の統一は図られるが、相続から外れたオットーの兄弟の反乱を招くこととなった。
    〇当時、マジャール人、ハンガリーの侵入が繰り返されていたが、955年のレヒフェルトの戦いに大勝し、東の国境地帯の平和を取り戻した。以後ハンガリーは徐々に遊牧生活から定住農耕生活に移行し、またキリスト教を受け入れるようになった。
    〇オットーは3次にわたるイタリア遠征を行った。この遠征により、ドイツ人意識が醸成されていった。
    〇オットーは中央集権化政策を進めていったのだが、度重なるイタリア遠征によりそれに相反する状況が生じてしまった。イタリア遠征に従軍する家臣たちはその褒章として領地の支配権ー関税権、裁判権、市場権、鉱業権等ーの強化を求める。これらの領は世襲となり土着勢力となっていく。こうした世俗領主を牽制するために司教領にも特権を授与する。こうして中央集権とはベクトルが逆に働き、ドイツは聖俗諸侯の割拠する乱立状態となっていく。

     良く知らない時代についての歴史であるので、大掴みで概要の説明がされるのはありがたいし、文章も平易でとても読みやすい。
     本当に戦いに明け暮れた人生だったし、兄弟や子どもたちにも多く先立たれた彼に、心の休まるときはあったのだろうか、そんなことを考えてしまった。
     

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    2024年08月27日
  • ドイツ誕生 神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世

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    神聖ローマ帝国の設立とそれが「ドイツ」というアイデンティティやナショナリズムにどのようにつながっていったのかをタイトルの通りオットー1世の事績をたどり人物像を推測しながら記述していく。各人物の事績が織りなすヨーロッパ中世のカオスな雰囲気はよくわかったが、その時々の社会状況や歴史的経緯からの影響した判断など大きなつながりや流れはつかめなかったかな。いや、掴みにくいからこそカオスと言われるのか。中世はどこも難しいなぁ。

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    2023年12月10日
  • 傭兵の二千年史

    購入済み

    傭兵の幅広さ

    傭兵というと、武器を片手に依頼者から少しでも依頼金を増やして酒と博打に変える賊と変わらぬ精神性で、規律正しい正規軍より弱いというのがイメージであった。

    本書は傭兵という職業の深さと、その定義の広さを教えてくれる。ギリシャやローマの兵役という重いステータスが貨幣主義で潰れていくと、苦役を代替する者、すなわち金銭契約で軍隊をやる者が出てくる。傭兵とは自らの肉体を使って稼ぐ娼婦と同じ立ち位置でそれだけに歴史も古い。日本で言えば封建制を建てた源頼朝よりも前、軍事力を使って朝廷に雇われていた平家すら傭兵だったのだ。

    金で雇われる傭兵は確かに訓練や規律という意味で劣ったが、その柔軟性と数を揃える速さに関しては正規軍とは比べものにならなかった。そしてその数こそが戦争においては重要だったというのが分かる。特に本書で扱われている大部分がが近代ヨーロッパというのがミソだ。古代からそうであるが銃はさらに物を言うのが「戦争は数である」ということなのだろうなぁというのが実感できる。

    一方ナショナリズム、つまりは国家主義の近代軍隊と傭兵との関係を見るのが本書の目的だと挙げているがそれを達成できているかは疑問だ。フランス革命を通じた国家軍隊の話は良かったが、他のヨーロッパ諸国での軍隊成立について知りたかった。もっとナショナリズムと傭兵の相容れなさを語るならナショナリズムについて踏み込むべきであった。
    またそれでいて、アイルランドのワイルドギースやアメリカ独立戦争時のドイツ傭兵など概要を述べているだけで中途半端な部分もある。

    傭兵の概要書というのが本書の感想なのだが、まったく知らなかった概念について触れられたのは初心者としては行幸だったかもしれない。次はもっと詳しい本も読んでみたい。

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    2020年06月21日
  • 傭兵の二千年史

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    書題の通り、古代オリエントから19世紀の国民国家の形成まで、西洋世界で用いられてきた傭兵、つまり「金のために自らを軍事力として売り渡してきた人々」の歴史を通して、「祖国のために自ら望んで軍事力となった人々」を主戦力とする近代国家のナショナリズムの形成について論証しようとした書。

    “ しかしそれにしても不思議だ。「途方もない数の人々が自らの命を投げ出そうとした」ナショナリズムはどのようにして出来上がったのか? この「ナショナリズムの由来」(大澤真幸)を探る旅は途方もなく長く険しい。
     この長い旅程にある男たちがたたずんでいる。地域愛郷主義のためでもない、ましてや祖国のためでもない。ひたすら己が食うため、生きるため、金のために、つまりは近代国家の祖国愛はむろんのこと、近代以前の地域愛郷主義ともまったく無縁に戦ってきた傭兵の群れである。彼らは王家の私利私欲が剥き出しな武力衝突となる無数の王朝戦争の際にも決して一つの特定の王朝に忠誠を誓うことはなかった。それでいてナショナリズムが生まれる近代以前、戦争は彼ら傭兵たちが主役であった。というよりか傭兵は古代オリエント以来、市民軍、封建正規軍、徴兵軍と並ぶ最も基本的な軍制の一つであった。つまり古来、戦争とは忠誠、祖国愛といった観念とは対極に位置していた傭兵たちによって担われていたのである。それがいつしかナショナリズムにより途方もない数の人々が祖国のために身を捨てる国民戦争に変質したのである。であるならば、これら傭兵たちの歴史を覗けばひょっとしたら近代のナショナリズムの仕組みが逆説的にほの見えてくるかもしれない。
     本書はこんな淡い期待のもとに書かれた。”(本書5頁より引用)




    著者の意図がどこまで果されたのかについては、失礼ながら疑問が残ると言わざるを得ない。ベネディクト・アンダーソンの出版資本主義により、ラテン語のような聖なる言語が俗語に取って代わられることと、俗語による読書家層が各国民・各民として、自らの住む行政単位の人々に「ネイション」を見出す過程に、とりわけアンダーソンが重視していた18世紀末のラテンアメリカのクレオール(クリオージョ)達による先駆的なネイション形成と、本書の傭兵の話がどのように結びつくのかは定かではない。ラテンアメリカの植民地時代にスペインの戦争に動員されたパラグアイの「イエズス会国家」に住む先住民族グアラニー人の戦士達は、本書で言う「傭兵」だったのか?あるいは、ラテンアメリカの独立革命に動員され、見放されたガウチョや黒人といった層の人々は、どこまで近代国家の国民軍であり、どこまで傭兵だったのか。1806年にブエノスアイレスにイギリス軍が侵攻した際に、イギリス軍を攘夷したポルテーニョ民兵隊はどこまで「ネイション」だったのか。以上は私がラテンアメリカに特別の興味を抱いているゆえの疑問だが、せっかくベネディクト・アンダーソンを叩き台とするのならば、やはり一章ほどで良いので章を割いて、西洋世界の傍流的な流れとしてのラテンアメリカの兵制とナショナリズムについて書いて欲しかった。

    と、ここまで私の個人的な不満だが、それを差し引けば、本書はヨーロッパを中心とした西洋世界にあって、

    “ つまり売春と傭兵はともに、やがて古代ギリシャ、ローマ、キリスト教文化と発展していくヨーロッパ文明の礎を築いた古代オリエントの時代に既に自分の生身を切り売りして銭を手にする哀しい職業として存在していたのである。売春と傭兵家業の最大の共通点はその古さにあるというわけである。だとすれば、「売春が世界最古の職業ならば、俺たち傭兵は世界で二番目に古い職業についている」(『傭兵部隊』ジェイムズ・マギー)という二十世紀のある傭兵隊員の科白もあながち間違いとはいえないだろう。ともあれ、傭兵制は古代オリエントにおいて、最も基本的な軍事制度の一つに組み入れられていたのである。”(15頁より引用)

    という、自らの身体を金に変える点で売春に次ぐ古さを持つ、傭兵という仕事について、豊富な知見を提供してくれる本となっている。とりわけ本書で興味深かったのは、中世南ドイツのランツクネヒトのように、自由を求めて傭兵部隊に加わった人々が、絶対主義国家が形成された近世にあっては、完全に国家権力の手駒でしかなくなったしまったという点の指摘だった。


    なお、著者は親切なことに、「本書の種本」(本書224頁より引用)として、次の四冊を挙げているので、興味がある方はこれらの書に当たってみるといいかもしれない。

    ・アルバート・ホッホハイマー『裏切られて、売られて』(邦訳なし)
    ・ラインハルト・バウマン『ドイツ傭兵(ランツクネヒト)の文化史』(新評論)
    ・京都大学文学部西洋史研究室編『傭兵制度の歴史的研究』(比叡書房)
    ・藤木久志『雑兵たちの戦場』(朝日新聞社)

    内容に関して少しだけ概略すると、冒頭で売春と共に触れられている古代オリエントの傭兵制の後、アテナイを例とした古代ギリシャの都市国家の兵制は当初は市民による志願兵制だったが、アテナイそのものの帝国化と共に、市民階級が戦争や疫病などで経済的基盤を失って没落するとともに、都市国家は軍事力を傭兵に頼るようになる(本書16-23頁)。私が本書で興味深かったのは、ギリシャの後のローマや、ルネサンス時代のイタリアの都市国家フィレンツェなど、西洋世界の都市国家でこの例が何度となく繰り返されている点についての指摘だった(29-33頁、56-57頁)。

    都市国家以外の中世ヨーロッパの傭兵制は、カール大帝が築き上げた封建制度の中の正規軍だった騎士階級から、中世ヨーロッパの経済成長による貨幣経済の進展を背景に、相次ぐ戦乱の中で土地によらず金によって自らの生命を軍事力として売るということが常態化したとのことである(38-48頁)。また、14世紀にスイス農民兵部隊がハプスブルク家の皇帝軍を打ち破ったことを契機に、スイス傭兵の評判が高まり、1474年にフランス王国とスイス傭兵隊の契約が結ばれた(72-76頁)。スイス傭兵に次ぎ、南ドイツ出身の傭兵「ランツクネヒト」は中世後期~近世ヨーロッパの傭兵として名を馳せた((86-110頁)。本書ではランツクネヒトについて詳しく記されている。

    “……軍隊に制服が導入されたのは近代以降のことだ。つまり傭兵たちは皆てんでんばらばらの格好をしている。つぎはぎだらけのみすぼらしい者もいれば、少し金回りのよい者は派手に着飾っている。
    ランツクネヒトの世界に飛び込んでくるのは故郷で食い詰め、定住社会に背を向けた連中が大半である。彼らは故郷にしがみつくことでそこそこ食べていける小心者たちを負け惜しみを兼ねて思いっきり馬鹿にしたがる。やつらには自由がない、と。そして彼らは村を離れ、都市を離れて得た「自由」をとてつもなく異様な衣装で表現するのだ。"
    (本書93-94頁より引用)

    “ ランツクネヒトのアイデンティティーの根幹をなしているのは「自由戦士」像である。兵士たちはよんどころない事情で傭兵稼業に身をやつしていても、ランツクネヒト部隊に身を投じるかどうかは基本的には兵士たちの意志による。ここに兵士たちの共同決定権の根源がある。軍隊史上稀に見るランツクネヒト部隊の民主制が傭兵隊長を始めとする軍当局の様々な締め付けにより単なる擬制に過ぎなかったとしても、その擬制を存続させ得るエネルギーが兵士たちにはあった。だからこそ彼らは軍当局の理不尽な命令には不服従をもって応えたのである。”(本書125頁より引用)


    ランツクネヒトは「自由」を求めて傭兵になった人々の集まりであったが、近世に入り17世紀の三十年戦争で萌芽的に芽生えたナショナリズム(167-168頁)や、ヨーロッパの諸王国の絶対主義化により、次第に傭兵から「自由」が失われ、18世紀には君主の命令で死地に赴く戦争の駒となっていった(185-187頁)。

    他方、17世紀前半にオランダのマウリッツの下で進んだ軍制改革は、プロイセンを筆頭にヨーロッパ中に波及し、傭兵に頼る戦争のあり方を時代遅れのものとしていった。ヨーロッパ初の士官学校であるオランダのジーゲン士官学校の開校が1616年、プロイセンの陸軍幼年学校の開校が1704年、イギリスの士官学校の開校が1747年、フランスの士官学校の開校が1776年(194頁)。ヨーロッパ主要国は、絶対主義時代の終わり頃に、傭兵隊長ごと傭兵部隊を金で雇う方式から、自前の士官学校で育てた将校に兵卒の指揮を執らせる方針に切り替えていた。

    1789年のフランス革命勃発後、1792年9月20日にヴァルミーの戦いでフランス革命軍がオーストリア・プロイセンの同盟軍を破ったことにより、傭兵に頼る絶対主義の軍制は終わりを迎え、国民軍の時代が始まった(206-210頁)。19世紀に入ると、古代オリエント以来基本的な兵制であった傭兵制は廃れ、自由の名の下に拡大した徴兵制による国民軍が戦争の主役となる(214頁)。ただし、事実上の傭兵部隊である外国人部隊を作り出したのもフランスであった(215頁)。1831年にオルレアン朝のルイ・フィリップにより創設されたフランス外人部隊はその後の帝政や共和制への移行後も存続しつづけ、フランス帝国主義の植民地戦争の最前線に投入されることになる(215-217頁)。

    本書の最後の本の数頁に、フランス外人部隊に身を投じた人々の、出身国にいた際のデータについて触れられているが、意外なことに医者や法律家のような専門職や、イギリスやモナコやセルビアの王族の姿がそこには存在する(218-219頁)。

    “ かつてランツクネヒト部隊には食い詰めた都市プロレタリアートや貧農が食うために群れをなして入隊してきたが、なかには都市貴族の子弟、れっきとした市民、職人、学生、富農の連中がわざわざ飛び込んできた。いずれも静謐な定住身分社会に飽き足らぬ冒険野郎たちである。
     フランス外人部隊に身を投じた君主一族や門閥の子弟、医者や学者や音楽家もその類であろう。そして逃亡ドイツ兵の大部分も、恐らくは巨大な機械に変質した近代の国民軍という組織の持つ個を圧殺する原理に背を向けたのであろう。”(本書219頁より引用)

    ひょっとしたら傭兵というあり方は、殺生を身に課すことで自由を生きるという生き方の選択だったのかもしれない。

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    2020年06月14日