ねじめ正一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
還暦を迎えきりりと鉢巻きを締め直すかのような著者と、いよいよ介護が必要になった老母のことなど。
これまで、老母と中年の娘といった関係の物ばかり読んできて、切羽詰まり、ある時は母を憎み、自分も体調を崩し、やっと見送ってホッとする…という本が多かったので、男性はやはり少し違うなと思ったのだった。
まずは、前向きなご自身の還暦生活だが…
(やっぱり団塊の世代はたくましいですね)
初タカラヅカで大いにはまったり、還暦のジュリーのコンサートを2回にわたってエッセイに物したり、俳句を始めて夫婦共通の楽しみを見つけ、娘さんから深夜のカラオケに誘われて、親子ながらお互いに気を使い合って絆を深めあったり。
詩人らしく、阪田寛夫、まどみちお、谷川俊太郎といった方々に関するお話、地元の商店街の今昔など、内容がバラエティーに富んで面白い。
しかし、後半に行くにしたがって、老いて行く母親の話が増える。
それもいたってカラッと書かれているのだが…
気が強く、「自分でやらないとボケる」と言い張り、ベッドからトイレに手押し車で往復するまで30~40分、タオルやセーターをたたむのに1時間…
針の穴に糸を通すのに30分以上、朝起きてから着替えるまでに3時間。
それでも、手を出せば怒るので見守るしかない。
気が長くならざるを得なかった著者であるが、時々はイライラするらしかった。
ただ、『還暦を過ぎたら無理をしなくては!』と頑張る著者と『やれることは自分でやる』といって介助をこばむ老母と…少し離れてみればそっくりではないかと思ったら微笑ましかった。
ただ、著者は母親と同居はしておらず、通いである。
一番ストレスをためているのは2世帯で同居している弟さんの奥さんなのではないかと思った。書かれていないけど。
ちょっと余裕をもって接することが出来るのはやはり、ちょっと離れていられるからなのだろうな、と思ってしまう。
この本の読み方はそこではないと分かってはいるけれど。 -
Posted by ブクログ
朝日新聞読書欄で女優の富士真奈美さんが紹介していた。好きなんだよね、富士真奈美さん。華やかで、でもどこか土着的で、そして知的で。その富士さんが勧めてるんだから、これは読まなくちゃ。
いや参った。圧倒された。息を詰めて一息に読んでしまった。この内容からして話題になったはずなのに、まったく引っかからなかったのはなんでだろ?戦後詩史に名を刻んだ人たちが実名で描かれるモデル小説で、北村太郎(あまり知らない…)を主人公に、詩誌「荒地」同人で友人の田村隆一(好きだー)や鮎川信夫、そして、彼らをめぐる女性たちや家族の姿が描かれている。
ここにあるのは事実そのままではないだろうが、かなりそれに近いと思われる。そのことにまず凄味がある。北村が、朝日新聞校閲部長という職も、長年連れ添った妻や子どもも、郊外の家も、何もかも捨てて恋に走る、その相手は高校時代からの親友田村の妻なのだ。しかも彼にとってこれが最後の恋というわけではなく、田村の妻明子も、一筋縄でいくような人物ではない。そしてまた、田村隆一の存在感たるやすさまじい。あの珠玉の言葉はこういう破滅的な生活から生み出されていたのか。
なんとまあ、と凡人の小市民は思うのである。この人たちはこんな風にしか生きられないのか。誰も幸せにはしない、そういう生き方をしなければならないほどに、心の自由が大事なのか。北村の甥が、詩人は嫌いと言いながら何故北村のことは好きなのかと尋ねられて、「おじちゃんは体を張ってるからね」と答えていた。各章の冒頭に北村の詩句が掲げられているが、通読後に見直すと、一つ一つの言葉がずしりと重い。
自身詩人である作者ねじめ正一さんの筆致は、端正で、抑制が効いている。こういうものを少しでも下品に語られたら、読むに堪えないだろう。北村の内面への入り込み方も絶妙で、多くを語らない所にかえって説得力があるように思った。
五十過ぎの北村が明子に対して子どものように駄々をこねる。「分別をなくすとは何と楽しいことだろう、と北村は思った」 この一文が忘れられない。 -
Posted by ブクログ
今、野球解説者の中でもっとも実況解説を聞きたいと思わせるのが落合博満。ぶっきらぼうな物言いだが、深い意味がある。当たり前のことではなく、誰も気づかないことに注目する。とにかく解説内容が為になる、聞いてよかったと思わせる稀有な存在。
ねじめ正一「落合さんはやっぱり敵の中に入って光る人。だから、自分は嫌われているという思いがあると思う。」
もしかして、むしろ嫌われる様に喋っているのでは、という気さえする、群れを嫌う孤高の野球職人。
彼は小さい頃から野球の才能に恵まれるも、上下関係や練習嫌いでなかなか才能が開花するチャンスが来ない。高校の野球部監督の口利で受けた東芝府中の野球部も臨時工という身分。そんな雑草が日本の球界を代表する選手になる様を、なぜ今まで誰も映画化しないのが不思議な位です。
本書の対談相手冨士眞奈美「落合さん、宮本武蔵の『五輪書』みたいなものを書けばいいのに」にも賛成です。
「落合博満、変人の研究」に続く著者の一方的で屈折した落合愛を感じさせる作品です。