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Posted by ブクログ
面白かったー。大変恥ずかしながら登場人物をほとんど知らないし、ねじめ正一作品も初めてでしたが引き込まれました。実話を元に書いている小説のようですが、登場人物たちと著者の距離感が絶妙でなんとも言えない。あんな勝手な男どものそばに居るどの女性にも共感できないけど、詩人なんて、男なんて勝手なものなんだろうし身近でなければ勝手な人間の人生は面白いのだ。解説で西川美和が「夫を生かしているのは自分の支える<生活>であるという自負が妻達を生かしている。毒々しいまでのその自負が蔑ろにされることで、妻たちは壊れた」「生活を舐めたことで男は生活に復讐されたが代わりに生きた言葉の湧き出す人生を手にした」というようなことが書かれていて、その鋭さにまたまたうなってしまいました。
Posted by ブクログ
朝日新聞読書欄で女優の富士真奈美さんが紹介していた。好きなんだよね、富士真奈美さん。華やかで、でもどこか土着的で、そして知的で。その富士さんが勧めてるんだから、これは読まなくちゃ。
いや参った。圧倒された。息を詰めて一息に読んでしまった。この内容からして話題になったはずなのに、まったく引っかからなかったのはなんでだろ?戦後詩史に名を刻んだ人たちが実名で描かれるモデル小説で、北村太郎(あまり知らない…)を主人公に、詩誌「荒地」同人で友人の田村隆一(好きだー)や鮎川信夫、そして、彼らをめぐる女性たちや家族の姿が描かれている。
ここにあるのは事実そのままではないだろうが、かなりそれに近いと思われる。そのことにまず凄味がある。北村が、朝日新聞校閲部長という職も、長年連れ添った妻や子どもも、郊外の家も、何もかも捨てて恋に走る、その相手は高校時代からの親友田村の妻なのだ。しかも彼にとってこれが最後の恋というわけではなく、田村の妻明子も、一筋縄でいくような人物ではない。そしてまた、田村隆一の存在感たるやすさまじい。あの珠玉の言葉はこういう破滅的な生活から生み出されていたのか。
なんとまあ、と凡人の小市民は思うのである。この人たちはこんな風にしか生きられないのか。誰も幸せにはしない、そういう生き方をしなければならないほどに、心の自由が大事なのか。北村の甥が、詩人は嫌いと言いながら何故北村のことは好きなのかと尋ねられて、「おじちゃんは体を張ってるからね」と答えていた。各章の冒頭に北村の詩句が掲げられているが、通読後に見直すと、一つ一つの言葉がずしりと重い。
自身詩人である作者ねじめ正一さんの筆致は、端正で、抑制が効いている。こういうものを少しでも下品に語られたら、読むに堪えないだろう。北村の内面への入り込み方も絶妙で、多くを語らない所にかえって説得力があるように思った。
五十過ぎの北村が明子に対して子どものように駄々をこねる。「分別をなくすとは何と楽しいことだろう、と北村は思った」 この一文が忘れられない。
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