童門冬二のレビュー一覧
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ネタバレ江戸城の無血明け渡し前後、特に明け渡された後の東京への政策方針などを描いた作品。
高校時代に購入して、何度か読みました。
小説ではなく、(語り手である勝海舟を通して)小栗忠順から始まり、西郷隆盛、江藤新平、新門辰五郎、渋沢栄一といった人物を紹介・論評するスタイルで綴っています。
作品全体の鍵になっているのが、老中松平定信の時代から始まった七分積立金。
この備蓄金が幕府には残っており、使い道をどうするか?ということが話を進める上でのテーマになっています。
新政府軍との徹底抗戦を標榜していた小栗忠順は、本来、軍費として使いたいところでしょうが、「江戸市民への還元を目的として積み立てられた」という背景から、勝海舟に備蓄金を託します。
そして勝海舟は西郷隆盛に、江戸(東京)市民のために使って欲しいと依頼。結果的には東京府知事が使途を決められる……という流れに。(あとは読んでみてください)
特に興味深かったのは江藤新平に関する記述。
彼は江戸開城後すぐに庶民の暮らしを調査し、武士が国許へ帰ったため生活が立ち行かなくなり困窮している実態を把握。
「江戸を東京にすることで、こうした人々を救済する政策を打っていくが承認するか?するならば、無血開城の主要関係者として、庶民への責任を果たすべく東京府知事になれ」と勝海舟に迫ります。
七分積立金の使い道は、新しい東京を認めるかどうか?という話の枝葉に過ぎない、という考え方です。
彼の政治思想については本作で初めて読んだので「一般大衆の側に立った、大変民主的な考え方を持つ人」という印象が今でもあります。 -
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ネタバレこの書籍が伝えるものから自分が注目したのは以下の2点。
①和魂洋芸の伝授
学問所へ学びに来る者たちに対しては、常に儒学をもととする東洋の道徳を叩きこむのと同時に、砲術などの西洋の技術も学ばせていたようだ。また、本などで学ぶだけの座学に留まらず、実際に海防施設などを見学させる実地調査も勉学の一つとして取り入れていたようである。
②「飛耳長目」という言葉を大切にしていた吉田松陰の姿勢
「吉田寅次郎ほど日本を歩き回った青年はいない」と佐久間象山に言わしめた人物で、著者の童門冬二氏は「『何でも聞いてやろう、見てやろう』という果敢なジャーナリズム精神(中略)単なる好奇心とは違う。聞いたこと、見たことの底に、『どこに問題があるのか』と根底まで掘り下げる考え方」を有していたことを佐久間も感じていたと述べている。
以上の2点の姿勢は、私事ながら、自分自身にとっても大切にしたい在り方である。 -
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ネタバレ赤禰さんを扱った小説はあまりないので、読んでみた。
奇兵隊とタイトルにあるほど奇兵隊の同行を追うわけでもなく
淡々と赤禰さんの行動を作者が述べている、というような
時代小説の基本形で、あまり燃えるような展開や感情描写は
なかったように思う。
資料が多いとは言えない人物なだけに
丁寧に調べて書かれているのだろうし
だからこそ想像の余地があるのも良いところだと思うが
童門氏の見解が地文や赤禰の言葉に多分に入っており
けして中立な立場から描かれた物語ではない。
また、新選組との関わりがあったと聞けば
作家としてそこを膨らませたくなるだろうとは思うが
個人的には、だからと言って屯所に預かってしまい
短期間に局長、副長、沖田の3人セットでぽんと会ってしまうのが
ありえないしちょっとミーハー展開に感じてしまった。 -
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小説上杉鷹山を読んでから、すぐに読んだので、読み物としては小説の方が情緒的で重厚で良かった感ありつつ、確かにダイジェスト版として鷹山というか治憲のすごさを把握できる本。
象徴的な箇所を引用致します。
「経済の低成長期の湿潤な時期においても、発想の転換をし、複眼の思考方法を持ち、歴史の流れをよく見つめるならば、閉塞状況の中でも、その壁を突破する方法はあるのだということを、鷹山の軌跡は如実に示している。」
「鷹山が甦らせたのは、米沢の死んだ山と河と土だけではなかった。彼は、何よりも人間の心に愛という心を甦らせたのである。現在の世でもっとも欠けているのは、この愛と労りと思いやりの心であろう。この心を除いては、どんなに立派な経営計画も決して成功はしない。鷹山の治績は、そのことを如実に物語っている。」 -
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・攘夷のトップは船に乗せ、大阪湾から陸の防護を見せ、贅沢合戦をしていた奥の院は庶民の場に遊ばせる。何を見せ、その人の世界を覆すか、その気にさせるか。
・京都、大阪の攘夷過激派の若者が幕府方(新撰組など)とぶつかり、人財が無為に失われるので一時攘夷の若者を北海道に移しのちに海軍に組み込もうとしていた。新撰組の池田屋襲撃がなければ幕府も志士側を承諾していた。
・凡人と非凡の差は、職責を超える仕事ができるか、できないか。また、求められたらそういう職責を超える仕事をやる勇気があるか、ないか。
・海舟が唯一師と公言した喜仙院(くじの祈祷師)。「女の目とすっぽんの目が屈託になってしまった。それは、恐らく、自分が人間の筋道を違えたからだ。」 -
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元々 黒田官兵衛孝高については詳しくない。増して隠居後の如水となると 号の名くらいは知っていても そもそも一体どうして急に隠居を決め込んだのかについてさえ 何の知識ももたずに過ごしてきた。あんなに明晰な頭脳をもった人が まだ充分働けそうなのに……と その「明晰な頭脳」こそが彼の宿痾だったことを知ったのは 竹中半兵衛を学ぶようになってからである。この物語は私が初めて特に触れる官兵衛であり 題名通り隠居後の姿を描いたものだから その現役時代については未だ疎いということになる。
物語は 新本拠地となった筑前(福岡県)福崎の地名を 一族の故地:備前(岡山県)福岡の再興をかけて「福岡」に改めたい如水と それに伴い博多の地名までもが失われるのを嫌う博多商人:島井宗室との対立で幕を開ける。細々と詳細が語られる訳ではないが この豪毅な商人気質と 処世から離れること叶わない武士の鋭い眼光とは 時に反撥し時に共鳴し合いながら 作品の根底に終章まで横たわって存在する。一風変わったメインテーマではあるが 私は素直に如水の足跡として読み進めた。
処世術で言うなら きっと細川藤孝(幽斎)や藤堂高虎の方が巧みだっただろう。勿論いつの時代でも世渡り上手な人というのは 半ばやっかみを含んだ冷たい視線を世間から浴びるものだけれど 如水の場合は常に自ら蒔いた種で窮地に追い込まれて居たように映る。だが 同時に彼は打たれ強い。現役時代の一年近い獄中体験は 彼の身から健康を奪った代わり 魂には強靱な生命力を授けたに違いない。そこから生まれる不屈の精神 それが無かったら たとえ有り余る知謀があっても生きて活かすことは出来ない。官兵衛を真に支えてきたのは この不屈の精神だったように想う。
隠居後の官兵衛 すなわち如水の最大の山場は やはり関ヶ原合戦の混乱に乗じて目論んだ九州征服だろう。不屈の精神が見せた乾坤一擲である。中央で悶着している間に 東軍として九州の西軍勢力を成敗し 勢いを駆って中国地方に上陸 毛利領を平らげ 天下人への餞としようというのだから 殆ど “空き巣狙い” だ。何しろ加藤清正の勢力以外 九州は悉く西軍に与して主力不在なのである。更には「天下人への餞」などと言うのは建前で 如水の本心は西軍勝利を願っている。西軍が勝てば 大将の石田三成に合戦後の各家を統べる力量は無い。その時こそ 己が天下を目指すのだ と。
が 残すは島津家の薩摩のみとなったところで 呆気なく関ヶ原合戦は終わってしまう。二度とは巡らぬだろう如水最大の好機も そして野望も共に潰える。たったの一日で天下分目の大決戦が東軍勝利で終わったことに落胆したのは 我らが上田城の眞田昌幸公だけではなかった訳である。冒頭にて如水と激論を交わした博多商人:宗室も 戦乱の波の内に気骨と気概とを失い やがて逝く。
だが 総てを悟った如水は寧ろ爽やかで在る。宗室とその精神の死によって勝負がつかず終いとなっていた地名についても 福崎は福岡に・博多は博多のまま という謂わば妥協案が採られる。如水にしてみれば 相手(に気概)無くしては勝負も何もあったものではないという処だが 私の眼には漸く宿痾を克服したかのように潔かった。そんな眼差しを支持するかのように 如水辞世の句が作品の幕を引く:
「おもいおく 言の葉なくてついに行く 道はまよわじ なるにまかせて」
――大往生だと思う。 -
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ネタバレ■太陽系における一個の彗星たり
書籍「坂本龍馬に学ぶ」(新人物文庫・堂門冬二・287頁)から。
以前から、堂門冬二さんの歴史人物作品が好きで
機会あるごとに、彼の作品は読んでいたが、
今回は、NHK大河ドラマ「龍馬伝」にあわせて、
この作品を読んでみた。
龍馬を、ワンフレーズで表現したい、と考えていた私には
「坂本龍馬は、太陽系における一個の彗星たり」が心に残った。
「維新土佐勤王史」に書かれている、
龍馬と武市半平太との関係らしい。
「坂本龍馬は、太陽系における一個の彗星たり。
故に必ずしも瑞山(武市半平太)を中心とする軌道を
回転するものにあらずして、時には遠ざかり、時には近づく。
又この彗星に吸引される一、二の遊星をも有せり。」
この彗星の動きは、龍馬像として、捉えることもできる。
彼の元に、多くの人が集まったのは、
彼がアウトサイダーであっても、反社会的ではないという
信頼感があったのではないか、と堂門氏はいう。
なるほど、彗星も太陽系を外れるわけではない。
私も、こんな生き方をしたいなぁ。