竹山道雄のレビュー一覧
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「おーい、水島。一しょにかえろう!」
終戦後のビルマを舞台にした児童文学。戦闘態勢だった英国人と、歌を通して和解し、ともに合唱する場面がとても感慨深かった。ビルマの山奥で、極限状態のなか、敵陣地から耳慣れた曲が聞こえてきたときの心情とはどうゆうものなのだろう。読み終わってすぐ「はにゅうの宿(Home sweet home)」「庭の千草(The last rose of summer)」を聞いたが、素敵な曲だった。また本作は作者の想像で書かれたものだというのも驚きだった。作者いわく、戦争食後は戦時中の情報を得ることは厳しく、内情を知る手掛かりは人づてに聞くしかなかったそうだ。史実と異なる場所も -
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太平洋戦争終戦間近、
いまのミャンマーことビルマの戦線にいた一部隊の物語。
戦後間もなく発表された「童話」ということですが、
今読むと、子どもも読める「小説」のように思えます。
言葉がていねいで読みやすいのが子供向けなのでしょうが、
難しい言葉も注釈アリで使用されていたり、
その読解に子どもならば苦労しそうな箇所も終盤にあったりします。
それでいて「童話」なのですから、
当時と今の感覚の違いを感じさせられますね。
現代人はIQが低下していく一方だとする説や
実験からの根拠もあるようですが、
昔の子どもって、知的負荷が今よりも強い中を
たくましく育ったのかな、なんて思いました。
まぁ、面白か -
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戦争文学を語る際には避けて通れない作品の一つだと思います。
舞台となったビルマ(現ミャンマー)はかつて、「ジャワの極楽、ビルマの地獄、生きて帰れぬニューギニア」と言われた激戦地のひとつで、悪名高いインパール作戦が展開された地でもあります。
多くの日本兵が戦闘ではない飢餓や疫病で命を落とし、その亡骸が放置された「白骨街道」という言葉も有名です。
本作品の中心人物である水島上等兵は敗戦(戦闘停止)後も抵抗を続ける部隊に降伏を進めるために戦闘地域へと向かい、そのまま消息を絶ちました。所属部隊は捕虜となりますが、水島上等兵が舞台に復帰せずに「僧」となったのはなぜなのか。
彼の覚悟と、戦死者を悼む思 -
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久しぶりに再読しましたが、記憶していたよりも、文章もストーリーも優しく感じました。今更ながら、童話雑誌掲載の子供にも読める作品だと思いました。
日本軍の戦況は、悪化し、苦戦を強いられていた。ビルマの一小隊では、音楽学校出身の隊長が、隊員に合唱を教えていた。苦しい時、団結する時、彼らは歌う。今読めば、そんな事はなかったでしょうとは思うけど、こんな小隊もあったかもしれないと思わせてくれる。
その隊の一人、水島は、楽才に優れて竪琴も自作していた。敗戦となり、小隊は捕虜となるが、水島は、ある任務をきっかけにビルマの戦死者の霊を弔うため、出家しその地に止まる決意をした。
日本に帰る仲間は、生きて帰り日本 -
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ネタバレウェルテルはロッテに恋するが、彼女には婚約者がいる。それでも構わぬと友人として交際を始め、彼女を崇拝し、やがては自分が婚約者/夫たり得たらと空想し、それが叶わぬと知り悩み、絶望して、ついには自殺する。
本書はウェルテルが友人に送った書簡の体裁を取っている。そのため読者が知れるのはあくまでウェルテルの内面だけだ。彼がいくら心の底からロッテに惚れ、愛の言葉を紡ごうとも、当の本人には伝わらない。自分たちは相思相愛だと主張するが、ロッテに確認する術は無い。あまりに一方的だ。
ロッテに対して執着同然の恋心を抱いたウェルテルの破滅は、彼女への“呪い”になってしまったと自分は解釈する。「自分が彼を追い詰 -
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題名は聞いたことがあっても、読んだことはなく、手にとりました。古い本だけど、読みやすい。
作中で触れられるビルマの人々の性質や考え方、宗教感が印象に残りました。
われわれが国を出たときには、もう日本人は腹をすかせて、毎日追いたてるように忙しく働いて、おそれおののいて暮らしていました。
それにひきかえ、この国の人は、おとなしく、弱く、まずしく、しかもそれに安住して、ただしずかに楽しんで生きています。そして、ひたすら心の救いだけを求めているのです。
著者は、近代化とともに日本が失ったものを、この時代からこんな風に思っていたんだなぁと感じました。
子供むけに書いた本だと知り、驚きました。 -
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それまで冒険小説などのいわゆる娯楽小説が大半を占めていた中でいわゆる私小説というジャンルを創設したのがゲーテ。啓蒙主義に基づいた理性への信頼全盛の時代にあって、恋愛にまつわる激情を描き出した画期性はたしかにあったのだろう。あったのだろうけど人生経験の乏しさゆえか、そこまで没入は出来なかった。ゲーテに言わせればウェルテルに共感できない僕はまだまだ不幸な人間なんだろう。
しかし、表現がいちいちロマンチックで刺さった。一番好きなのはこれかな。
「ときどき不可解な気がする。私がこれほどまでにただあのひとだけを、これほどにも熱く、これほどにも胸いっぱいに愛して、あのひとのほかには何も知らず、何も解せず、 -
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新学社文庫より出ている学校指定の本で読みました。
なかなか言い回しを読解することが難しく苦戦しましたがウェルテルのロッテに対する恋慕と陶酔が表現されており、若くしてのため悩んでしまったのか。
気付いたときには遅かったのか。あの時代の背景として自由婚でなかったのか。時代に合わせた背景が解らないので深く読めなかった。勉強不足だった。
思いが募りすぎて最後の方で見つかる死にかたを選んで死んだことが見せしめのように見受けられちょっとサイコパスだなってかんじました。
思いに対して生きているウェルテルがアルベルトに対して嫉妬ではなく、自分への悲願として選んだのが死だった。恋慕が切なく儚く感じた作品でした -
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恋が成就せずに自殺するという流れは知っていたけど、思い詰めて思い詰めた先に自殺かと思ったら、結構序盤で自殺のことを仄めかしていた。
もとからウェルテルは自殺へのハードルが低い人だったんだろう。
さすが詩人、情熱的な描写が秀逸なんだけど、ちょっと長いな!!(特にロッテへの読み聞かせ)
ウェルテルは若者らしく、感受性豊かで、曇りない世界を愛している。けれども現実は権力欲に取りつかれた人間や、(ウェルテルにとって)この世の理をわかっていない連中ばかりで理解者がいない。
ロッテは唯一ウェルテルの安らぎだけど、別の人の物で、どうにもならなさが、この世の不条理がじわじわとウェルテルを蝕む。
ウェルテ