平井呈一のレビュー一覧
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『迷いの谷 平井呈一怪談翻訳集成』(創元推理文庫2023年5月初版)の感想。
平井呈一訳の怪奇小説を集めた一冊。『幽霊島』に続く第二集ということだが、間に『恐怖 アーサー・マッケン傑作選』を挟んで居り、今回マッケンの収録は無い。
収録作は、M.R.ジェイムズ2作、ブラックウッド6作、初期翻訳としてコッパード『シルヴァ・サアカス』、ホフマン『古城物語』、それと解説やエッセー等。
此の度読んで面白かったのは、ホフマン『古城物語』です。全体にゴシック小説的で、筋の運びはジェイムズ辺りと比べると巧みさに欠けるが、古風な舞台で展開する古風な物語にぴったりの古風な文体が実に好い。あんまり江戸っぽい言葉が出 -
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毎年お盆の時期になると、怪談が読みたくなる。
どこからともなく聞こえてくる祭囃子。
参道に連なる提灯。
神社の境内に並ぶ石灯籠。
迎え火のゆらめき。すすの匂い。……
日本の夏の風物詩とともに、怪談はあるように思う。
怪談を愛でることは、季節を愛でることでもあるのだ。
世に怪談は数あれど、どうせ読むなら極上の一冊がいい。
上田秋成『雨月物語』や柳田國男『遠野物語』。泉鏡花に内田百閒。
杉浦日向子や森見登美彦、夢枕獏も捨てがたい。
今年は八雲の『怪談』を読むことにした。
ちょっと風変わりな一冊だ。
『怪談』は1904年、ギリシャ出身のイギリス人、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが、日本の民話 -
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ラフカディオ・ハーンのことは知っていたし、
出雲市の小泉八雲記念館にも行ったことはあったが、
作品を読むのは初めてであった。
怪談と聞くと「怖い話」のイメージがハッと浮かぶが、
その概念をいい意味で打ち砕いてくれる作品。
ハーンの書く文体が誠実というか中立的というか、
あった(聴いた)できごとを、それこそ忠実に再現したかのような、
読んでいて読み心地のよい文章で、
それが本当の意味での「怪談」なのだと実感することができた。
印象に残ったフレーズはを挙げると、
「世に、怒り死ををした人、あるいは憤りのためにみずから命を断った人、
こういう人たちのいまわのきわの念願や誓言は、
なんらかの超 -
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日本人(とくに女性)をテーマにした抒情的な小編と、明治の日本社会・文化への評論がバランスよく併載されています。ハーンというと旅行記や民話の再話のイメージが強かったのですが、本書からは本来ジャーナリストであった著者の一面も窺われます。文明開化や富国強兵に沸く日本への批判は大変興味深く、また日本の祖先信仰や死の観念(西洋人である著者のみならず現代日本の読者にもまた目新しく感じられる)についての論評では、それが近代知に照らしていかに合理的なものであるかを説いていて面白いです。
著者は昔ながらの慎み深い日本女性に強い魅力を感じていたようで、本書に所載の「ハル」「きみ子」などにはそれが顕著に表れています -
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ネタバレ日本文化の価値観をよくぞ見出してくれました。ありがとう。
やっぱ外人だから日本の自然観に違和感を覚えたんだろうな。
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この本に載せられている怪談はハーンがきちんと選んでるってよくわかるね。
怪談ってようは怖い話である。だからより怖いものを創作しようとする。そうすると、路線はグロテスクや怨念にシフトしてしまう。
しかし、ハーンはそういう路線とはちょっと違う日本の怪談をチョイスしていると思う。
それらは日本の自然と融合した「不思議」な話である。
「青柳」「十六桜」「安芸之介の夢」なんか怖いというよりは、蜃気楼のような、不思議なものに出会ったというようなお話である。
でも、そういうお話 -
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明治の頃、実際にあったお話です。
強盗に入り捕まった犯人が、連行中に警察官を殺して逃走した。
やがて捕まった犯人は巡査に引き連れられて、停車場に降り立った。
この犯人を見るべく多くの人々が駅前に集まった。
その時突然、、巡査が「杉原おきびさん、来てますか」と怒鳴った。
すると背中に子どもを背負った婦人がしずしずと前に出てきた。
殺された警察官の寡婦である。
「ぼうや、これがお前のお父さんを殺した人だよ。
ぼうやを可愛がてくれるはずのお父さんがいないのはこの男のせいだよー」
母の肩越しに怖そうに見つめた男の子はやがて泣きだした。
と、いきなり、縛られたまま犯人は地面に顔をこすりつけ、
「ご -
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そういや幼稚園児の頃「ろくろ首」になりたかった。
記憶を忠実に言うと当時何かの絵本で見た「ろくろっくび」になりたかったのである。絡まる位伸びた首を持て余し(ここ重要)、頬を赤らめ(酒?)愉快な顔をしている姿が羨ましかったのだと思う。
しかしここに出てくる「ろくろ首」は少し形状が違う。もげるのだ。
もげるなんて、悲惨過ぎる。嘆いた。
あと形あるものが「消える」ってとても美しい事だと思う。
往々にして其々の末路の儚さが、線香花火を愛する日本人と重なり、そんな日本人の一人としてとても好きだった。
岩波版には蝶・蚊・蟻の「虫の研究」がついていた。
実を言うとそれの方が面白かった。 -
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